著者
山本 澄子
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.266-271, 2017-10-01 (Released:2018-10-15)
参考文献数
12

義肢装具に関する介入研究は,使用者に対して義肢装具を使用した何らかの介入を行ってその結果を示すものである.介入研究は対象者1名のシングルケーススタディ,複数名のクロスオーバー研究,多人数のランダム化比較試験があり,それぞれに利点欠点がある.いずれの場合もある介入の効果を他の条件と比較して結果を示すものであり,介入の持ち越し効果(キャリーオーバー)や対象者のばらつきの影響を少なくするための工夫が必要である.本稿ではこれらの手法について具体例と最近の研究の紹介を交えて解説する.
著者
太田 弘一 森岡 公一 山本 幸男
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.125-132, 1991 (Released:2008-05-15)
参考文献数
20
被引用文献数
23 35

ファレノプシスは近年生産の伸びが大きい花卉であり, その好適な栽培条件の設定のために研究が進められている. ファレノプシスの花序は低温条件によって誘導されることが知られており (17), 山上げ栽培や人工低温処理を行うことによって, 早期出荷が行われている. また, 温度処理の際の, 株の充実状態や光•変温条件などの環境要因も花序形成に影響することが知られている (3,8, 12,14, 17,18, 19).一方, ファレノプシスはCAM (Crassulacean acid metabolism) 植物として知られている (1,7). CAM植物は夜間に吸収したCO2を有機酸の形にして細胞の液胞中に蓄積し, 昼間にそれを分解して, 光エネルギーを利用してでんぷん合成を行うという特徴的な光合成を行う. この夜間と昼間を通した, CO2吸収からでんぷん合成に至る過程をCAM型光合成と呼ぶ (13, 14).典型的なCAM型光合成のCO2吸収の日周変動パターンは, 夜間の高い吸収 (phase I), それに続く光が当たった直後の高い吸収 (phase II) とその後の急激な減少およびCO2吸収がほとんど見られない期間 (phase III), そして, 夕方に再び低い吸収が見られる (phase IV), という四つの相に分けられる (13). そして, この過程を通して, 夜間に気孔を開き, 蒸散の多い昼間には気孔を閉じているために, CAM植物は強い乾燥耐性を獲得している (6).CAM植物には, 生育条件によってC3型光合成とCAM型光合成との間で変動が見られるfacultative-CAM plantと, 生育条件にかかわらずCAM型光合成を行うobligate-CAM plantがある (13). さらに,いずれのCAM植物も, 水分, 昼夜温, 光強度, 日長などの環境条件や葉齢, 窒素栄養条件によってCAM型光合成が影響を受けることが知られている (6, 11,13, 14).したがって, ファレノプシスのCAM型光合成も, これらの要因によって変動し, それが生育および花序形成になんらかの影響を及ぼすことが考えられる.本研究は, 上述の要因のうちで生育と密接に関連した外的要因の水分, 温度, 光の3条件および内的要因の葉齢と花序形成の有無に視点を当て, それらによってファレノプシスのCAM型光合成がどのような影響を受けるかを明らかにし, ファレノプシスの好適な栽培条件設定のための基礎的知見を得ることを目的として行った.
著者
北川 晃 成田 晶子 山本 貴浩 池田 秀次 泉 雄一郎 萩原 真清 太田 豊裕 石口 恒男
出版者
日本脈管学会
雑誌
脈管学 (ISSN:03871126)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.163-168, 2017-11-10 (Released:2017-11-10)
参考文献数
7
被引用文献数
3

四肢は動静脈奇形の好発部位であり,血管内治療の果たす役割は大きい。その理由として,表在(皮下)病変,深部(筋・骨)病変のいずれにも経動脈的,経静脈的あるいは直接穿刺によるアプローチが比較的容易であることがあげられる。また,硬化療法を併用する場合,硬化剤の中枢静脈への流出を防止し,標的血管内に長時間停滞させることがポイントとなるが,そのための血流コントロールを確実に行うことが可能である。病変の解剖,血流動態を正確に評価し,症例に応じた適切な治療方法を選択することが,治療効果の向上と合併症の予防に重要である。
著者
小林 尚輝 内山 秀樹 山本 仁 神尾 誠也 木下 拓史 島野 誠大 武井 大 松山 福太郎 内山 智幸 内田 匡 石代 晃司 渡辺 謙仁
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.79-86, 2020-06-10 (Released:2020-09-05)
参考文献数
15

2013 年の調査では日本の高校生の理科の有用感は米中韓と比較し低いが,一方で天文や宇宙開発への関心は高い。そこで,これらと関連し,理科の有用感も増す可能性のある教材として人工衛星電波受信実験に着目した。 受信実験の中では万有引力による運動やドップラー効果など高校物理で学ぶ多くの内容がわかりやすい形で現れ,物理や数学と科学技術との繋がりを実感できる。我々は科学教室と高校授業で実践を行い,理科の有用感と物理内容の理解の向上に対する効果を検証した。結果,多様な学生を対象とする高校授業の実践において効果が確認できた。
著者
山本 祐輝
出版者
日本映像学会
雑誌
映像学 (ISSN:02860279)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.24-41, 2015

<p></p><p>&emsp;Loudspeaker sounds, both announcements for army doctors and radio programs, are frequently inserted in Robert Altman's film <i>M*A*S*H</i> (1970). Accompanied by close-up shots of a loudspeaker, these sounds are undoubtedly diegetic; that is, they can be heard by the characters. However, none of the characters react to them, and the announcer is never seen. These sounds are located in a domain that cannot be grasped by the binary opposition of the diegetic and the non-diegetic.</p><p></p><p>&emsp;This paper considers that while the loudspeaker sounds are backgrounded within diegesis, they are simultaneously foregrounded outside of the diegesis to which the spectator belongs. This activity, the collecting sounds ignored by the characters and manipulating them for emphasis, is due to the "cinematic narrator."</p><p></p><p>&emsp;This cinematic narrator's activity is mimicked by the protagonists; they eavesdrop on and broadcast a sexual act of Houlihan and Burns. By sharing narrative authority with the cinematic narrator, they create and narrate an episode, which retells Houlihan as "Hot Lips." This paper demonstrates that Hot Lips' story, narrated by the protagonists, merges into the whole story of the cinematic narrator. Thus, two different narrative levels coexist without formal boundaries, as in Mikhail Bakhtin's concept of "hybrid utterance."</p><p></p>
著者
山本 誠子 栗山 尚子 小宮山 冨美江
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.17-22, 2001-01-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
11

ゆでたじゃがいもにデンプンを加えたための物性の変化がいももちの特徴であるので, じゃがいもデンプン添加量の異なるいももちについて, テクスチャー特性の測定, 破断特性の測定 (レオナーによる) と官能検査 (評点法による) を行い, 比較・検討した結果を要約すると以下の通りである.(1) いももちはデンプン添加量が多いほど硬く, 凝集性が大きく, 破断応力, 破断エネルギーも大きく, 強靭になった.また, 伸長破断による伸びは大きくなるが, 伸ばすのには大きな力が必要となった.出来たてはやわらかく伸びは大きい.しかし経時変化に伴い, 硬く, 凝集性は小さくなり, 破断応力, 破断エネルギーは大きいが, 伸長破断による伸びは小さく, 伸びなくなった.(2) 官能検査では30%が一番, 次に20%が好まれた.30%は適度な弾力とかたさ, 伸びがあり, もち感が感じられ, いももちとしてのイメ門ジに非常に近かった.(3) 官能検査と機器による客観測定値について相関係数を求めたところ, かたさと原硬さ, 弾力と凝集性, 弾力と破断ひずみとに高い相関がみられた.
著者
山本 大誠
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.15-20, 2011 (Released:2016-04-15)
参考文献数
23

ストレスに対する生体の反応は,ストレスの種類や期間など種々の要因によって身体および精神面への影響として現れ る.ストレスによる身体症状および精神症状に対する予防的および治療的手段として,身体運動を通したストレッサーの対処をどのように行っていけばよいのか,そのための理論と方法および可能性について提示した.生きていることは,自己の生物学的および環境の変化を常に伴い,それら種々の変化に対して適応を繰り返すことである.身体資源を十分に活用することは,身体の質の高い動きを引き出すことによるストレッサーの適切な対処であり,生活の質を向上させるための方法であると考える.
著者
山本 直弥 勝平 純司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1235, 2017 (Released:2017-04-24)

【目的】サッカーのキック動作に関する研究は下肢三関節を中心に行われており,腰部負担が客観的数値で示された研究の報告は見当たらない。腰部負担を示す指標として,椎間板圧縮力がある。椎間板圧縮力(以下,LBC)は年齢や性別の違いで許容値が異なるとされており,20代男性は6000Nとされている。この年齢性別の違いを総合して,National Institute of Occupational Safety and Healthは性別年齢問わず,3400N以下を推奨している。本研究では,この3400Nを許容値,20代男性の6000Nを限界値と定義して行った。本研究の目的はサッカーのキック動作における腰部負担を運動力学的に明らかにすることとし,その中で,インステップとインサイドのLBCを算出し,比較検討した。また,腰部体幹に着目し,それぞれのキックのLBCの増加に影響を及ぼす因子を比較した。【方法】対象はサッカー経験のある健常若年男性12名とし,全員右利きの者とした。平均年齢21.1±1.7歳,平均身長171.8±5.7cm,平均体重64.3±5.9kgであった。三次元動作解析装置,床反力計,赤外線カメラを使用し,被験者には赤外線反射マーカーを計36個貼付した。計測条件としては固定した位置から助走を開始し,その後床反力計の上に置かれたボールをインステップ,インサイドで3回ずつ蹴る。本研究では,ボールスピードの再現性のため65~75%のボールスピードで行うこととした。65~75%の算出方法は,計測前被験者に最大努力でのキックを実施させ,そこで得たボールスピードの値を100%として65~75%を算出した。計測期間は軸足の踵接地からボールインパクトまでを測定した。その期間内でLBCが最大となった時点での腰部モーメントを抽出した。また計測期間内での体幹と骨盤の角度を抽出した。統計解析は対応のあるt検定を用い,有意水準は5%とした。【結果】LBCのピーク値はインステップで3906.28±591.40N,インサイドで2647.31±401.68Nとなった。LBCを体重で正規化した値において,インステップはインサイドよりも有意に大きな値を示した。腰部モーメントについては,右側屈モーメント,左回旋モーメントでインステップのほうが有意に大きな値を示した。骨盤は全施行左へ回旋していき,その左回旋角度量はインステップで有意に大きな値を示した。【考察・結論】LBCは,インステップでは6000Nの限界値までは達しないが,3400Nの許容値は超えており,インサイドでは許容値以下に抑えられていた。体重で正規化すると,インステップで有意に大きい値を示した。この原因として,インステップでの腕の振りが大きいことや,またインサイドでは蹴り足股関節外旋モーメント発生に備えるため,腰部左回旋モーメントを抑えていたことなどが考えられる。以上の点から,インステップでの強いシュートを目指すだけでなく,インサイドでの正確なシュートも交ぜて練習を行うと,腰痛の障害予防になるのではないかと考えた。
著者
山本 純子
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.280-283, 2020-07-01 (Released:2020-08-24)

凸版印刷は、スポーツ庁の「スポーツ・デジタルアーカイブ構想」にもとづき、平成29年より令和元年までスポーツ系資料を所蔵している7機関と連携し、関係者への仮想環境「検証用公開システム」を公開し、スポーツ・デジタルアーカイブの在り方についての検証実施を支援した。スポーツ資料のデータモデルおよびデータ構造の在り方の解析、人名・競技・イベント・形状・分類等の辞書データの策定、他システムとの連携の検討等を通して、システム構築における課題を報告する。また、作業負荷の大きな分類付与作業に関するAI活用による省力化実験の作業削減策について、人手による分類結果との約80%の一致をみた成果と今後への期待を報告する。
著者
葛西響子 山本景子 倉本到 辻野嘉宏
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI)
巻号頁・発行日
vol.2014-UBI-44, no.8, pp.1-8, 2014-10-07

人前で話をする場面において,不安や緊張が生じてしまい,話し手の頭が真っ白になり,思った通りに話せなくなる場合がある.本稿では,この人前で話をするときに生じる不安や緊張を緩和することを目的とし,聴衆に肯定的な反応を重畳することによって不安や緊張を和らげる手法を提案する.この提案手法に基づき,聴衆ににこにこしてうなずくカボチャの画像を重畳するシステム 「コウテイカボチャ」 を実装した.そして,コウテイカボチャが,実際に人前で話をするときに生じる不安や緊張を緩和できるか,および,人やカボチャの表情が人前で話をするときに生じる不安や緊張にどのような影響を与えるかを評価する実験を行った.その結果,人やカボチャが睨んでいる場合は人前で話をするときに生じる不安や緊張が大きくなり,人やカボチャが笑顔である場合は人前で話をするときに生じる不安や緊張が小さくなることがわかった.つまり,コウテイカボチャは,睨んでいる人が見えるときよりも人前で話をするときに生じる不安や緊張を緩和できることがわかった.さらに,緊張しやすい性格の話し手に満足感を与える効果は,笑顔のカボチャよりも笑顔の人の方が大きく,緊張しやすい性格の話し手の緊張感を緩和する効果は,笑顔の人よりも笑顔のカボチャの方が大きいことがわかった.
著者
山本 政宏 横山 純子 永田 諒子 竹下 朱美
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 平成25年度大会(長野)学術講演論文集 第7巻 空気質 編 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
pp.105-108, 2013 (Released:2017-11-18)

学校などの公衆トイレでは尿由来の不快な臭いが問題となっている。本研究では、学校トイレの臭気発生メカニズムを検証し、臭気発生における床材と清掃方法の影響について調査した。実使用を想定した再現試験の結果、湿式清掃の場合、床タイルの目地に染み込んだ尿が腐敗することによって臭気が発生した。学校トイレ現場の調査結果でも、湿式清掃トイレで目地のある和式便器回りの菌、アンモニア量、臭気強度が高く、再現試験と同様の結果であった。
著者
大江 亮介 鈴木 育男 山本 雅人 古川 正志
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集 2010年度精密工学会秋季大会
巻号頁・発行日
pp.699-700, 2010 (Released:2011-03-10)

従来よりも現実感の高い蝶の飛行を表現するため,物理法則に基づく飛行シミュレーションを行う.剛体力学の処理には物理エンジンを利用し,抗力による高速な流体力学を新たに追加実装する.蝶の羽は,フラッピング(羽ばたき)とフェザリング(ひねり)が可能である.実際の蝶の測定データを基にフラッピングを行い,人工ニューラルネットワークと最適化手法を組み合わせることでフェザリング角度を適切に制御させる.
著者
眞田 奈緒美 嶋田 理菜 岡田 裕莉恵 山口 茜 木村 奈緒 根本(山本) 晴子 清水 邦彦 清水 武彦
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.466-473, 2018

<p>横紋筋肉腫は,骨格筋へ分化する胎児性間葉系細胞を発生母地とする軟部悪性腫瘍であり,小児の軟部悪性腫瘍としては代表的な疾患の一つである。今回我々は,横紋筋肉腫の治療に伴い歯および骨の形成障害を生じた7歳0か月の女児の1例を経験したので報告する。患児は2歳6か月時に右眼窩原発胎児型横紋筋肉腫(StageⅠ)と診断され,急速な腫瘍増大のため腫瘍の8割を経結膜にて摘出し,2歳7か月から4歳6か月まで化学療法が施された。更に,2歳8か月から2歳9か月までの期間に右側眼窩から上顎洞にかけて総線量45Gyの放射線治療が施行された。</p><p></p><p>口腔内所見およびエックス線所見から,上顎右側部において矮小歯,歯胚の欠如,歯根形成不全,歯槽骨の形成不全が認められた。他部位においても歯胚の欠如やエナメル質石灰化不全を認めた。また,これらの症状に伴い,叢生および開咬を認めた。</p><p></p><p>本症例に認められた,多数歯にわたる著しい形成障害や顎骨の発育不全は,横紋筋肉腫の治療の為に施された放射線療法および化学療法により誘発された可能性が示唆された。</p>