著者
山田 明義
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要
巻号頁・発行日
vol.38, no.1-2, pp.1-17, 2002-01-31

日本の野生きのこ類の主要な位置を占める菌根性きのこ類について,食資源としての利用性を明らかにすることを目的に,文献調査を行った。その結果,これまでに300種を超えるきわめて多様なきのこ類が利用されており,今後さらに研究の進展にともない,より多くのきのこ類が利用される可能性のあることが示唆された。これら菌根性きのこ類は,これまで殆ど人工栽培の研究が行われていなことから,産業利用の見地からは研究の必要性が指摘された。
著者
山田 明義
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.127, 2016

菌根性食用きのこが地域再生に貢献できる前提として,山林を活用した栽培技術の開発が挙げられよう.腐生性きのこの菌床栽培技術をそのまま応用しただけでは,必ずしも地域再生には結びつかない.マツタケで言うならば,経験的なマツタケ山の施業を元にしつつ,施業内容の科学的な再検証と,新たな生物工学的技術の導入が考えられる.また,野生食用きのこの資源価値を吟味することも大いに意義があろう.戦後,菌根性きのこを含む野生きのこの収穫や生産は,栽培きのこの量産化に伴ってその価値が低下した.しかし,食文化の成熟とともに,菌根性きのこにしかない風味や食感に対するニーズが,今後大きくなると予想される.また,欧米のきのこという見られ方の強いトリュフ,ポルチーニ,シャントレルも,実は国内の山林に自生する.このため,まずは,資源となる菌根性きのこが地域にはどのくらいあるのか明らかにし,その活用法や活用先について知恵を絞る手が考えられる.同時に,地域の山林でどの菌根性きのこをどのくらい収穫したいのかといった青写真をかざしながら,菌根苗の生産と植林や,菌床埋設によるきのこ山の造成などの技術面を詰めていく手が考えられる.
著者
山田 明夫 宮原 和郎 井上 千春 亀谷 勉
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.41, no.10, pp.709-713, 1988-10-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
14

著者らは先の報告で, 乳用経産牛の腎石の存在状況と組成を検索し, その96.4%の症例に腎石が存在し, 潜在性尿石症が高率に認められたことから, 牛尿石症に対する早期診断法の0確立の必要性を強く指摘した.今回は超音波検査による牛尿石症の早期診断の可能性を検討する目的で, 牛62例の腎臓78検体 (右腎62検体, 左腎16検体) での超音波映像所見と剖検所見との関連を検索した.超音波所見で78検体中52検体に腎石の存在が指摘され.腎石エコーの形状は, 3タイプに分類された.タイプI (5検体) は, 腎杯内に貝殻状の結石エコー (SE) とその後方にSEと同じ幅の音響陰影 (AS) が見られたもので, 剖検所見では全例とも腎杯を満たすように腎石が存在していた. タイプII (33検体) は, 5~10mmの斑状SEとその後方に明瞭な線状のASが観察されたもので, 剖検所見では全例とも腎杯内に10mm程度の腎石が単在または1.5mm程度の腎石が10数個集まって存在していた.タイプIII (14検体) は, 点状あるいは不明瞭なSEとその後方に細い線状のASが観察されたもので, 剖検所見では1検体を除いて, 米粒大の腎石が単在あるいは0.5mm程度の微細な腎石が集まって存在していた.超音波所見で腎石エコーの存在が指摘できなかった26検体中4検体は, 剖検所見で腎石が存在したが, 腎石の大きさはいずれも3.5mm以下であった.超音波縁による腎石の有無の的中率は93.6%で, 2~4mm程度の腎石が存在すれば, これを超音波所見で指摘できたことから, 超音波検査法は牛尿石症の早期診断法としてきわめて有用であると思われる.
著者
山田 明義 久我 ゆかり 小倉 健夫 増野 和彦
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

1.マツタケ菌根合成系にエビオス(窒素源)を添加することで,苗の生育不良を回避できることを明らかにした.2.新たに開発した二層培養法により大量調製したマツタケとショウロの土壌接種源を野外の自然土壌条件下でアカマツ実生に接種した結果,ショウロでは外生菌根の形成に成功し本技術が実用的側面を有することを明らかにした.3.アミタケ,ショウロ,シモフリシメジ,ホンシメジの菌根苗を直接野外条件下に大量に植え付けた結果,菌株によっては十分な菌根の増殖が見られ,菌根苗定着の実用的な技術になりうる事を明らかにした.4.マツタケ類、イグチ類、チチタケ類を含む39種64菌株について菌根苗をポット培養し順化した結果,シモフリシメジ,ミネシメジ,クマシメジ,スミゾメシメジの4種で子実体発生に成功した.5.マツタケ,アミガサタケ,チャナメツムタケで複数の菌株を確立し培養特性を把握した.このうちマツタケでは,チョウセンゴヨウ,ヒメコマツ,ならびにドイツトウヒとも菌根形成する事を明らかにした.6.ハルシメジがウメの実生根系にも菌根を形成することを明らかにし,また,ウメ苗木根系に胞子散布することで菌根形成させうる事も明らかにした.これにより,ウメ苗木とハルシメジ胞子を用いた実用的な菌根苗作出が可能なことを明らかにした.7.マツタケのシロに接してアクリルチューブを埋設し,ミニリゾトロンを用いて継続観察した結果,チューブ近傍でのシロの回復は必ずしも速やかではなく,他の菌根菌が散発的に増殖しうることを明らかにした.8.ミニリゾトロンを用いてクリタケの土壌中での動態を長期継続観察した結果,菌糸束の発達,分枝,分解と再形成といった動的挙動があり,菌糸束が地中での菌糸体拡散において重要な役割を果たしうることを明らかにした.発達した菌糸束の顕微鏡観察により,主に外層と内層からなる二重構造が形成されることを明らかにした.
著者
品川 森一 久保 正法 山田 明夫 古岡 秀文 中川 迪夫 堀内 基広
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

本研究では、従来から行われているウエスタンブロット(WB)法の試料調整法の改良を行った。その結果、マウスモデルでは、腹腔内接種1週目から脾臓にプリオン蛋白が検出できるようになった。多数検体を検査するためには、より簡便なプリオン検出法が必要であり、マウスモデルを用いてELISA法を開発した。検出感度はウエスタンブロット法のおよそ2倍であった。中枢神経系組織からの試料調整を簡便化し、実際に羊材料に応用可能なことを確かめた上で、この方法の有用性を北海道のと蓄場から分与を受けた羊材料を用いて検証した。また、さらに検出感度を高めるために、ELISAの検出系に光化学反応試薬を導入したところ、およそ20倍ほど検出感度が上昇した。まさらに、コラーゲン中のプリオン検出のための試料調整法も検討し、前処理法としてコラーゲンの粘性を低下させ、大容量から比較的選択的にプリオン蛋白を濃縮することが可能となり、プリオン汚染の検出法に目処がついた。一方、プリオン病は宿主のプリオン蛋白の遺伝子に多型があり、その型によって感受性が異なる。国内の羊プリオン遺伝子型の出現頻度とスクレイピ-との関連を検討した。またプリオンの蓄積は主として中枢神経系であり、少量であるが細網内皮系の組織にも起きる。診断に有用な組織採取部位を決定するためにも、詳細なプリオン蛋白発現の違いを明かにする必要があり、羊体内のプリオン蛋白発現を調べた。さらに伝達性海綿状脳症のプリオン以外の危険因子の検討を人海綿状脳症に倣い、アポ蛋白Eを標的として検討した。
著者
山田 明
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.27-36, 2006-06-24

財政優遇措置により市町村合併を推進してきた合併特例法は、2006年3月末で経過措置も期限が切れ、「平成の大合併」は第2ラウンドに入った。1999年3月末からの合併件数は582、関係市町村は1993にのぼり、基礎自治体のかたちは様変わりした。合併にたどりつく前に破綻したケース、当初の構想とはかなり異なるケースも少なくない。破綻の典型的なケースとして、合併の目的やメリット、新市の名称や庁舎の位置、合併を揺るがす事件、財政状況などの原因があげられる。「3市1町」の合併協議が破綻した愛知県知多北部など、合併破綻の検証から「平成の大合併」の問題点と今後の課題を探っていきたい。
著者
中村 好徳 金子 真 林 義朗 莟 博行 山田 明央
出版者
日本暖地畜産学会
雑誌
日本暖地畜産学会報 (ISSN:2185081X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.181-194, 2012-09-28 (Released:2012-12-29)
参考文献数
36
被引用文献数
1

褐毛和種去勢雄牛(4頭,8~9ヵ月齢)を用いて,配合飼料無給与で暖地型牧草(バヒアグラスなど)放牧地と寒地型牧草(イタリアンライグラス)放牧地で周年放牧育成(草地育成期間:293日)後,放牧を続けながら自家産のサイレージ(トウモロコシと大豆の混植)を併給する肥育方法により飼養(草地肥育期間:248日)し産肉性と肉質を調査した.放牧期間中の1日増体量は,草地育成期間で0.35 ±0.03 kg/日,草地肥育期間で1.02 ±0.10 kg/日であった.供試牛の血液性状は飼料成分(特に生草)の変化に顕著な影響を受け,季節変動が激しかったが正常値範囲内の変化に留まった.供試牛は26.8 ±1.0ヵ月齢で体重676 ±50 kgで出荷され牛枝肉格付評価はB-2であった.また,屠畜後の内臓廃棄率は0%であった.本研究で調査された食肉科学および栄養学的データを他の慣行肥育牛のデータと比較検討することにより,褐毛和種去勢雄牛の草地肥育牛は,1)産肉性として,‘まえばら’と‘そともも’の発育が良好であること,2)肉質として,ほとんどの部分肉の脂質含量が和牛肉と乳用肥育牛肉の間に位置すること,β-カロテン含量が高くコレステロール含量と脂肪酸組成のn-6系多価不飽和/n-3系多価不飽和比率が低いことが明らかになった.これらのことから褐毛和種去勢雄牛の草地肥育における産肉性や肉質の特徴が明らかになった.
著者
安田 倫己 山田 明宏 田中 武
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌. A, 基礎・材料・共通部門誌 = The transactions of the Institute of Electrical Engineers of Japan. A, A publication of Fundamentals and Materials Society (ISSN:03854205)
巻号頁・発行日
vol.132, no.12, pp.1112-1117, 2012-12-01
参考文献数
5
被引用文献数
1

LSI systems are used at all places in modern society. A number of different technologies are used to produce LSI systems, therefore it becomes difficult to understand these systems. The education which was consistent from an integrated circuit (IC) design to a printed circuit board mounting was mainly attained at universities and graduate schools. In this study, the training for understanding IC stacked structure and layout design was conducted on the education of a senior high school. Exclusive CAD software for LSI design, α-SX was used to IC layout design. Each Student had designed an inverter and a NAND circuit. They had designed a full adder circuit in a group. Then with public development equipment, IC chips were actually manufactured along with this layout design. Bare chips were observed with scanning electron microscope (SEM). SEM and Energy Dispersive x-ray Spectroscopy (EDX) analysis were effective to deeply understand between stacked structures and material characteristics of an IC. This project was taken as a cooperation education of a high school and a university. We showed the possibility to take in an integrated circuit structure education to one of the training subjects in a senior high school.
著者
山田 明
出版者
名古屋市立大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.27-36, 2006-06-24

財政優遇措置により市町村合併を推進してきた合併特例法は、2006年3月末で経過措置も期限が切れ、「平成の大合併」は第2ラウンドに入った。1999年3月末からの合併件数は582、関係市町村は1993にのぼり、基礎自治体のかたちは様変わりした。合併にたどりつく前に破綻したケース、当初の構想とはかなり異なるケースも少なくない。破綻の典型的なケースとして、合併の目的やメリット、新市の名称や庁舎の位置、合併を揺るがす事件、財政状況などの原因があげられる。「3市1町」の合併協議が破綻した愛知県知多北部など、合併破綻の検証から「平成の大合併」の問題点と今後の課題を探っていきたい。
著者
小堀 正雄 根岸 秀 細山田 明義
出版者
克誠堂出版
雑誌
麻酔 (ISSN:00214892)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.p225-231, 1992-02
被引用文献数
9
著者
清水 哲朗 加藤 博 山下 巌 斎藤 智裕 竹森 繁 中村 潔 穂苅 市郎 山田 明 島崎 邦彦 小田切 治世 坂本 隆 唐木 芳昭 田沢 賢次 藤巻 雅夫
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.753-757, 1990-03-01
被引用文献数
6

食道の小細胞型未分化癌に対し,温熱療法を併用した集学的治療を施行し,約9か月の生存を得られた症例を経験したので報告する.症例は75歳男性.昭和62年7月より嗄声,嚥下困難が出現,近医にて食道癌と診断され,11月16日当科入院となった.入院後の諸検査により,ImEiIuにわたる切除不能食道癌で,生検により小細胞型未分化癌と診断された.11月30日より放射線療法計47Gy,免疫・化学療法として,BLM計65mg,CDDP計150mg,5FU計4,500mg,VP-16計180mg,OK432計57.2KE,PSK99gを投与し,これらに局所温熱療法9回を加えた集学的治療により,症状はもちろん,食道造影上も,腫瘍陰影が消失した.しかし,昭和63年7月になり,多発性肝転移により再入院,8月6日死亡した.放射線・温熱併用療法の局所に対する効果は期待されるが,より有効な化学療法の検討が必要であると考えられた.
著者
山田 明日香 谷川 孝弘 巣山 拓郎 松野 孝敏 國武 利浩
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.407-412, 2008-07-15
参考文献数
15

トルコギキョウの冬春出し栽培における白熱灯を用いた効果的な長日処理方法について検討した.10品種を供試し2004年10月8日にガラス温室に定植し定植から開花まで4時間の暗期中断を行い,対照として無処理区(自然日長10-12時間)を設けた.10品種の暗期中断区における第1花の平均開花日は無処理と比較して22日から49日,平均で35日早くなった.'ネイルピーチネオ'を供試し5時間の暗期中断を定植から雌蕊形成期まで,雌蕊形成期から開花まで,発蕾から開花まで,花芽分化開始期から開花まで,定植から開花までの5つの発育ステージで行った.定植から発蕾までの期間は,無処理の66日に対し暗期中断を定植から開花まで行った区では50日,定植から雌蕊形成期まで行った区では53日と大幅に短くなった.雌蕊形成期以降に暗期中断を開始した区では無処理との差が認められなかった.発蕾から開花までの期間は,暗期中断を定植から雌蕊形成期まで行った区で47日と短くなったが,そのほかの区では無処理の54日と有意な差が認められなかった.暗期中断による開花促進により,第1花までの主茎の節数が減少した.5時間の長日処理を暗期中断,日の出前電照,日没後電照の3つの時間帯で行った結果,定植から発蕾までの期間は,無処理の65日と比較して,暗期中断と日の出前定照でいずれも52日と最も短くなったが,日没後電照では58日と開花促進効果が劣った.以上の結果から,トルコギキョウの冬春出し栽培における開花促進には,白熱灯を用いた暗期中断または日の出前電照を定植直後から雌蕊形成期まで行うと効果が高いことが明らかになった.
著者
安井 仁 清水 正啓 山田 明 前田 知行 小林 義典
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.148-152, 1991-01-01
被引用文献数
14

過去18年間に上行結腸癌, 早期胃癌, 直腸癌および残胃癌の消化管領域に限局した異時性4重複癌が発生し, そのおのおのに右半結腸切除術, 幽門側胃切除術, 腹会陰式直腸切断および残胃全摘除術の根治手術を施行しえた75歳, 男性の症例を経験した. 患者はおのおのの手術後, 再発なく社会復帰を果たすことができた. 本症例は当院において長期に経過観察する過程で比較的早期に発見され, すべて根治手術が可能であった. 重複癌発生の特殊要因は認めなかった. 4・5重複癌は臨床例, 剖検例をあわせて本邦で107例報告されているが, このうち消化器に限局したものは15例である. 本邦における剖検重複癌の統計的検討を行った. 重複癌の悪性腫瘍に占める頻度は10年間で倍増しており, かつ4重複以上の高次重複癌が増加する傾向があるので, 術前・術後の他臓器原発癌に対する配慮が重要である.
著者
長谷 巧 山本 匠 原 正憲 山田 明 西垣 正勝
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.20, pp.97-102, 2009-02-26

近年,増え続けるスパムブログが問題となっている.スパムブログを作成する主な目的の1つとしてアフィリエイト収入を得ることが挙げられる.そこで本稿ではブログに含まれるアフィリエイトに着目する.ブログからのアフィリエイトサイトへのリンク数,利用しているアフィリエイトプログラムの種別からスパムブログを判定する方式について検討する.収集したブログに対する調査を通じて本方式の有効性を確認する.Recently, the number of spam blogs has been dramatically increasing, causing a serious problem. The one of the main reasons of spam blog increase is attractive affiliate income. Thus most of spam blogs have lots of affiliate links to get income. Therefore we propose a technique to detect spam blog by checking the number and/or the sort of affiliate links included in the target blog. This paper carries out a fundamental survey to evaluate the trend of the average number of affiliate links and frequently-used affiliate program in spam blogs.
著者
山田 明
出版者
共栄学園短期大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

身体障害者療護施設における介護ー被介護場面の観察調査をした結果以下のような諸点が研究成果として確認された。1)身体介護場面における精神的(心理的)側面の重要性介護を要する重度障害者に対して起床、摂食、排泄、入浴、その他の介護が行なわれているが、身体的介護としてだけで実行されている場合が少なからずある。食事介助場面を例にとると、食事をただ口に運ぶだけになっていて、楽しい食事の雰囲気づくりなどに留意されていない場合が過半であった。介護福祉士の養成教育でも事故防止などのための技術は学ぶが、被介護者との介護場面におけるあたたかい精神的関係づくりの方法などを学ばせていない。介護技術の最重要点のひとつがここにあるだけにないがしろにできない問題であろう。2)言語活動過程における指示・抑圧的特徴介護職員が介護場面で発する言葉は「早くしなさい」「がんばって食べて」などの指示的言語であったり、「〜しないで」などの禁止、抑止言語である場合が多い。その反対に「そうね,いたいんだよね」などの共感語は少ない。言葉を出す声のト-ンも冷たくて固いものが多く、やわらかくてあたたかいものが少ない。これは被介護者の心理的活力を減少させるものとなっている。3)非言語活動としての身体表情の非共感的特徴介護者の被介護者を見るまなざしも指示・抑圧的であったり非共感的である場合が多い。身体の表情、動作の表情も全体に固く、非受容的、非共感的である場合が多い。パ-ソナルスペ-スは大きくなりがちで、意識的なアダチメントやアイコンタクトも少ない。パ-ソナルな近親性に乏しい。これが被介護者の孤立感、無力感をつよめていることが考えられる。