著者
岡 秀郎 岡田 守彦 木村 賛 葉山 杉夫
出版者
Primate Society of Japan
雑誌
霊長類研究 (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.207-220, 1996 (Released:2009-09-07)
参考文献数
16

サル類の樹上運動への最高の適応としての腕渡り動作を取り上げ,喉頭腔を特殊化しなかったヒトの動作時の喉頭動態について,新たに開発された高解像度内視鏡ビデオシステムを用い,直接,喉頭の動態を観察すると共に,動作ならびに筋の作用機序の面から喉頭括約作用の動作への関与について検討した。腕渡り動作時,被験者の経験している運動形態の差異により,喉頭動態ならびに上肢・上肢帯筋群の活動様式に差異が認められた。喉頭動態に関しては,二次元平面運動(柔道・剣道)経験者では喉頭閉鎖が観察されたが,三次元空間運動(体操)経験者では喉頭は終始開放されていた。筋活動様式に関しては,二次元平面運動経験者の場合,右手懸垂スイング時に上腕骨の内転動作に参画していると考えられる,三角筋前部,大胸筋胸肋部に顕著な放電の出現・増大が観察され,これらの放電の増大時に喉頭括約が認められた。二次元平面運動経験者の場合,内転動作時に運動支援として胸郭の固定が必要となり,胸腔内圧をあげるための喉頭括約作用が要求されるようになったものと考えられる。一方,三次元空間運動経験者の場合,同時期,三角筋前部,大胸筋胸肋部の顕著な放電の出現は観察されず,喉頭括約は認められなかった。また,二次元平面運動経験者でも右手懸垂スイング時,三角筋前部の放電は減少傾向を示し,大胸筋胸肋部に顕著な放電の減少が認められた場合,喉頭括約は認められなかった。これらのことから,肩関節への負荷状態により,運動支援としての胸郭の固定が必要となり,胸腔内圧をあげるための喉頭括約作用が要求されるようになったものと考えられ,ヒトの動作と喉頭括約作用との関係について,肩関節への負荷量の状態に起因する運動支援としての前庭ヒダ・声帯ヒダの関与の存在を強く示唆するものであった。
著者
細谷 聡 宮地 力 岡田 守彦
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.64, no.623, pp.2411-2416, 1998-07-25

The purpose of this study was to clarify the influence of different strings on the dynamics of Japanese Bow, and to investigate the relationship between the measured mechanical data and the feeling of shooter. Four strings, aramid fiber "Kevlar", "Technora", polyester fiber "Vectran", and hemp string were used for the shooting experiment by nine subjects. At that time, feeling data through questionnaires were collected. The results were summarized as follows: (1) in the logarithmic decrement of bending and torsional oscillation after release, hemp string was highest in this four strings, (2) the difference of fibers didn't have influence on frequency of the oscillation, (3) in the energy transmission efficiency, Kevlar, Technora and Vectran were about 69%, hemp was 67.7%, (4) it is also found that the feeling of shooter was related to the measured mechanical data significantly.
著者
石垣 琢麿 丹野 義彦 井上 果子 岡田 守弘
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、わが国ではこれまでほとんど調査されていなかった中高大学生の妄想的観念を比較検討し、青年期のメンタルヘルス向上の一助とすることを目的にしている。まず、Petersらが開発したPeters, et. al. Delusion Inventory(PDI)の日本語版(山崎ら,2004)を、中学校教師の協力を得て日本の中学生に適用できるよう改変し、中学生用PDIを作成した。この尺度を用いた調査結果から、中学生にも妄想的観念と考えられる思考は存在し、とくに中学2年生からそれが増加する傾向がみられた。高校生と大学生には成人版PDIを用いた調査を実施したが、PDI得点分布には大きな違いはみられなかった。なお、中学生と高校生では、女子生徒のほうがPDI得点は高かった。原質問紙では、妄想的観念の有無だけでなく、その思考の苦痛度・心的占有度・確信度の各側面を調査することが可能である。妄想的観念に関する苦痛度・心的占有度は大学生のほうが高いが、体験頻度は中学生のほうが高いことが示唆された。加えて、中学生・大学生ともに、妄想的観念と対人不信感および敵意が強く関連することがわかった。これは、成人で確認された結果とほぼ同じであり、青年期前期から成人と同質の妄想的観念が出現しうることが示唆された。また、妄想的観念をもつ成人には、「性急な結論バイアス(Jump to Conclusion:JTC)」とよばれる認知的特徴があることが知られている。本研究では、ベイズ理論に基づいた心理学実験を、大学生を対象にして実施した。その結果、妄想的観念を多く体験する大学生が確率的判断を行う場合には、JTCに関連する「情報収集量が少ない」というバイアスが存在することが示唆された。
著者
岡田 守弘 大草 正信 高安 睦美
出版者
横浜国立大学
雑誌
横浜国立大学教育紀要 (ISSN:05135656)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.37-63, 1997-11-28 (Released:2016-09-15)

近年の中学生・高校生の1対1の男女交際・性意識・性行動の実態とその背後にある要因との関連を明らかにすることを本研究の目的として,横浜市内公立中学校22校,横浜地域の高等学校11校に在籍する中学生・高校生を対象に質問紙調査を実施した。実施時期は1995年11月,回収数は8420部,特定の学校による分布の偏りを避けるために5038人を抽出して分析した。結果は,次の通りである。(1)1対1男女交際の経験率は学年を追って高くなり,高校3年女子では30%を超える。キス経験率は中学3年女子で2割を超え,性交経験率は高校2年女子で2割を超え,女子の性に関する経験率が男子を上回っている。(2)性的衝動には「心理愛情的」と「心理生理的」の次元があり,若者文化許容には「制止」と「風潮」の次元があり,性的衝動の高さと若者文化許容度の高さが男女交際・性行動を積極的にする。(3)中学生・高校生は同世代の愛し合っている者同士のキスや性交に対する容認率は高く,1対1の男女交際や性経験が中学生・高校生にとって「あたりまえ化」し,「日常化」しているが,一部の突出した部分に幻惑されずに彼らのけじめ感覚を理解することが大切である。 This study was aimed at investigation about datings and sexual behaviors of recent junior high school and high school students, and exploration into the relation between their behaviors and the factors hidden behind. The survey was conducted through questionaires in 22 public junior high schools in Yokohama City, and 11 high schools around Yokohama City. 8420 students answered the questionaires in November 1995. 5038 questionares were sampled for analysis. Results are as follows; 1) Dating rate increases as the grade goes up. Dating rate of the third year female students is over 30%. The number of students who have experienced kissing is over 20% in the third year female students of junior high schools. The number of female students who have experienced sexual intercourse surpassed 20% in the second grade in high school. In every grade female students 'sex experiencing rate is higher than boys'. 2) Two dimentions were found in sexual urge. They are 'psycho-affectional' and 'psycho-psysiological' dementions. And permissiveness toward youth culture included dimentions of 'inhibition' and 'fashion'. The ones who showed high sexual urge and high permissiveness are comparatively active in datings and sexual behaviors. 3) Junior high school and high school students tend to think it's natural to kiss or have sex, if they love each other. Dating and having sex have become a part of every day life and nothing special for junior high and high school students. And it's important to understand that most of them have their own standards of behaviors. The number of students who show excessive behaviors are quite limited.
著者
大槻 剛巳 中野 孝司 長谷川 誠紀 岡田 守人 辻村 亨 関戸 好孝 豊國 伸哉 西本 寛 福岡 和也 田中 文啓 熊谷 直子 前田 恵 松崎 秀紀 李 順姫 西村 泰光
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.543-552, 2011 (Released:2011-06-24)
参考文献数
73
被引用文献数
1

The research project entitled “Comprehensive approach on asbestos-related diseases” supported by the “Special Coordination Funds for Promoting Science and Technology (H18-1-3-3-1)” began in 2006 and was completed at the end of the Japanese fiscal year of 2010. This project included four parts; (1) malignant mesothelioma (MM) cases and specimen registration, (2) development of procedures for the early diagnosis of MM, (3) commencement of clinical investigations including multimodal approaches, and (4) basic research comprising three components; (i) cellular and molecular characterization of mesothelioma cells, (ii) immunological effects of asbestos, and (iii) elucidation of asbestos-induced carcinogenesis using animal models. In this special issue of the Japanese Journal of Hygiene, we briefly introduce the achievements of our project. The second and third parts and the third component of the fourth part are described in other manuscripts written by Professors Fukuoka, Hasegawa, and Toyokuni. In this manuscript, we introduce a brief summary of the first part “MM cases and specimen registration”, the first component of the fourth part “Cellular and molecular characterization of mesothelioma cells” and the second component of the fourth part “Immunological effects of asbestos”. In addition, a previous special issue presented by the Study Group of Fibrous and Particulate Substances (SGFPS) (chaired by Professor Otsuki, Kawasaki Medical School, Japan) for the Japanese Society of Hygiene and published in Environmental Health and Preventive Medicine Volume 13, 2008, included reviews of the aforementioned first component of the fourth part of the project. Taken together, our project led medical investigations regarding asbestos and MM progress and contributed towards the care and examination of patients with asbestos-related diseases during these five years. Further investigations are required to facilitate the development of preventive measures and the cure of asbestos-related diseases, particularly in Japan, where asbestos-related diseases are predicted to increase in the next 10 to 20 years.
著者
長谷川 誠紀 田中 文啓 岡田 守人 中野 孝司
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.93-96, 2008-04-20
被引用文献数
5 4

背景.平成18年度文部科学省科学技術振興調整費「アスベスト関連疾患への総括的取り組み」の一環として,我が国における悪性胸膜中皮腫に対する集学的治療の現状を調査した.対象と方法.2002年1月〜2006年12月の5年間に悪性胸膜中皮腫に対して胸膜肺全摘術(EPP)を完遂した症例のみを対象とした.アンケートは本プロトコールへの参加表明施設とJCOG参加施設の計69施設に送付し,うち61施設から返答を得た.結果.対象5年間にEPPを完遂した症例は計171例,男性/女性154例/17例,右/左91例/80例,年齢14〜78歳,平均59歳.手術後30日以内の死亡は1例(間質性肺炎),在院死は6例(腫瘍再発4例.MRSA膿胸1例,肺梗塞1例).シスプラチンを含む術前化学療法を行った症例は38例,うち12例ではシスプラチンを含む術前化学療法と術後片側全胸郭照射を完遂した.術後生存期間の中央値は23ヶ月であった.結論.我が国の悪性胸腹中皮腫に対するEPPは症例数の増加と安全性の改善が確認された.しかし,集学的治療のfeasibilityに関しては現時点でなお十分なデータが存在しない.
著者
西村 秀樹 清原 泰治 岡田 守方
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

戦前から嶺北地域でおこなわれてきた相撲大会の運営資金は、地区の総代が集めた寄付金による。当日に向けての練習指導も、土俵づくり、桟敷づくりもすべて地区総ぐるみでなされる。戦前も現在も、行政の側とは無関係に、地区の熱意によって脈々と続けられる"フォーク・ゲーム"なのである。社会体育とかコミュニティ・スポーツの原点として見直すべき姿であろう。強い力士には、ひいき連中すなわち地縁・血縁を媒介とした後援会によって「しこ名」がつけられ、また「化粧まわし」が贈られた。ひいき連中は熱烈な応援を繰り広げ、喧嘩沙汰になることもたびたびあった。ここには、各集落の「ローカリズム」といったものがうかがえる。しかし、そうした緊張を緩和させる集落間の対外的調和機能をも宮相撲は有していた。「勧進元預り」といった勝負を引き分けにする裁定があったこと、大会には出店が並び、各集落の特産物が集められ、集落間の交流がなされたこと、集落を越えての男女交際・婚姻の契機となったことなどは、そうした意味をもっている。宮相撲は、こうして地域的共同性の再生産をもたらしていたと考えられる。相撲という力くらべの大会を通して老若男女が共通の時空間へ参加した。人々は、そうした共通の体験を通じて、日常生活における利害を超越した共同性の感情を確認していったのである。その共同性は、各集落を核としながらも、他集落を含んだより広域のものへとなっていったと考えられる。地域社会はこうして編成されていくのである。
著者
岡田 守人 伊藤 彰彦
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

がん浸潤部において高発現が確認されたNotch2とSix1について機能解析を行い、Notch2-Six1転写カスケードとして2分子が協調的に一連の遺伝子群の発現を活性化し、肺上皮細胞においてepithelial-mesenchymal transition, EMTや核の腫大を促進させることにより肺腺癌の悪性化が進展する可能性を明らかにした。新たにGGO/ Solid混在の肺腺癌症例において2分子の免疫組織染色による発現パターンと臨床データとの関連性の検討を行い、2分子が浸潤部で高発現を認める肺腺癌症例は浸潤部で高発現を認めない症例よりも悪性度が高い可能性が示唆された