著者
森本 桂 岩崎 厚
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.177-183, 1972-06-25
被引用文献数
24

l)マツノザイセンチュウの最も有力な伝播者は, マツノマダラカミキリである。2)大矢野町の枯損木から羽化したマツノマダラカミキリは, 71%がこの線虫を持っており, また1頭当りの持っている線虫数は平均3,146頭, 最高8,783頭であった。3)マツノザイセンチュウは, 耐久型幼虫の形で, マツノマダラカミキリの体表面や上翅裏面に付着しており, また気門(特に腹部第1気門)の中には塊状になってはいっている。4)この耐久型幼虫は, マツノマダラカミキリを高湿度に保つか, 水に浸すと虫体から容易に離脱する。試験管による個体飼育では, 2〜3週目に線虫落下の山がある(20℃, 93%RH)。5)野外では, 耐久型幼虫はマツノマダラカミキリの羽化脱出から産卵を始めるまでの間に, 80%以上が虫体から落ちるものと思われる。6)マツノマダラカミキリの後食部で, 耐久型幼虫は脱皮を行ない, マツ樹体内へ侵入することができる。7)枝の一部を, 羽化脱出直後のマツノマダラカミキリに後食させると, 健全なマツでも枯れてしまい, その枯死木から多数のマツノザイセンチュウが検出できる。8)1939〜'41年にまつくいむしの激害地から採集されたマツノマダラカミキリの標本から, マツノザイセンチュウの耐久型幼虫を検出できたので, 当時のマツ枯損にもこの線虫が関係していたものと思われる。
著者
岩崎 真紀
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.467-492, 2004-09-30

本稿は、イスラーム社会の女性の在り方を考える上で重要な対象である身分法についてエジプトを事例として検討した。一九世紀後半に始まったエジプト身分法改革運動は、改革案自体はイスラーム法から逸脱することはなかったが、運動は西洋化志向の改革者によってなされた。夫の一方的離婚権や複婚権を規制する初の法となった一九七九年法制定に尽力したジーハーン・サーダートの運動もまた西洋的なものであり、宗教復興により保守化した当時のエジプト社会において大きな議論を巻き起こした。その結果、一九七九年法は手続き違憲とされ、若干の修正を伴い一九八五年法として制定された。このことは、身分法改革が西洋化を志向する運動として行なわれることの限界を示しているということができるだろう。一方、一九八五年法に続く重要な身分法として制定された二〇〇〇年法は、聖典に基盤を置いた内容であることを前面に押し出した改革であった。これは社会が一層保守化する中で女性がより多くの法的権利を得るためには、イスラーム的価値規範に則った改革運動が必要であることを表わしているということができるだろう。
著者
岩崎 憲治
出版者
日本結晶学会
雑誌
日本結晶学会誌 (ISSN:03694585)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.66-71, 2015-02-28 (Released:2015-03-05)
参考文献数
24

Recent advances that improve direct electron detectors have revolutionized structural determination of biological molecules by cryo-electron microscopy. It has brought about the advent of near atomic resolution in single-particle reconstruction even with membrane proteins of 200~400 kDa. In fact, such high-resolution structures have allowed de novo building of atomic models. This rapid progress will change the quality and quantity of the conventional hybrid approach combining cryo-electron microscopy and X-ray crystallography or light microscopy, and computational methods such as molecular dynamics will also take on added significance to create integrated models of huge and complex macromolecules.
著者
東本 裕美 岩崎 弥生 石川 かおり 野崎 章子
出版者
千葉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

最終年度にあたる本年は、これまでの調査で得られた結果をもとに高齢者の精神的健康の維持、増進を図るため健康教室を企画した。これまでの研究より「お互い楽しく話し合える場や、協力できる友達が必要」等の意見をふまえ、地域在住の高齢者を対象にグループ活動を実施した。このグループは参加を希望し研究の承諾が得られた6名の女性高齢者(60代~80代、平均年齢73.3歳)を対象とし全8回実施した。グループにはグループ回想法の技法を用い、1.回想を通じての情緒的交流の機会の提供、2.共有体験の分かち合い、3.孤立感の軽減、4.生活の活性化を目的とした。各セッションのテーマは参加者と話し合って設定したが、それにこだわることなく毎回自由な雰囲気で進行した。また、話し合いばかりではなく1回は「散歩」を取り入れた。結果としては、グループの中でお互いの情報を交換したり、悩みについてアドバイスをしあう様子がみられた。そして、実施後の参加者の感想としては、「楽しかった」、「だれかと話をする時が紛れる」、「また参加したい」、「最初はうまく話せるか不安だったけど、会が進む間に楽になった」と肯定的なものであった。また、実施前後でQOLを比較したところ、グループでの話し合いは高齢者のQOLを高める一定の効果があった。さらに、今後は「戦争体験について若い人たちに話したい」や「若い人たちに役に立つことは何か、自分たちができることは何か」ということをテーマに話したいという、高齢者自身が地域づくりのためにできることは何かを模索する姿勢が見られた。今後の課題としては、グループの中で、個々のプライベートや心的外傷体験に関する内容が話された場合に、その取り扱いについて十分な配慮が必要であり、今後は進行の方法などの運営側の体制づくりが必要となると考える。
著者
岩崎 愛一
出版者
二松学舎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

宇宙ダークマターの正体はいまだなぞである。また、宇宙物理学において、ガンマー線バースト、および、超高エネルギー宇宙線の起源に関しては、未だ解明されてはいない。ここでの理論研究では、その両者を解明するひとつの糸口として、この高エネルギー現象を説明する起源としてあるメカニズムを提唱した。それは、ダークマターであるアクシオンが重力的に集まり星となったアクシオン星と呼ばれるものと、中性子星との衝突である。その衝突で、アクシオン星は中性子星の強磁場の下で電磁波に転化し、それが中性子星の中で吸収され、結局、そこで蒸発してしまう。その結果、急速に開放されたエネルギーで、中性子星の外層(クラフト)が吹き飛ぶ。それが、ガンマー線バーストを発生させるもとになる粒子の風を生み出す。このメカニズムでは、その風の粒子は外層を構成していたもので、その全質量は太陽質量の10万分の一以下である。このことは、観測されるガンマー線バーストから、その起源を考えるとき要求されるものである。他のガンマー線バーストの起源も提唱されているが、この条件を満たすことが困難とされている。その点が、ここのメカニズムの利点である。ガンマー線バーストは以上であるが、そのとき仮定されていることが、中性子星の磁場の強さとして、10の12乗以下であることである。それ以上の磁場に対しては、アクシオン星は衝突前に崩壊してしまう。それはアクシオンが強磁場のもとで発生する強電場が、自発崩壊するためである。この電場で加速される荷電粒子は、超高エネルギー宇宙線として観測される10の20乗電子ボルト以上になるのである。これが、超高エネルギー宇宙線が発生するメカニズムとして私が提案したものである。両現象のエネルギースケールを説明するのに必要なアクシオン星の質量が、ちょうど銀河ハローに発見されたMACHOのそれに等しいことは注目に値する。
著者
岩崎 陽一 白柳 龍一 中村 京子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.5, pp.1-4, 2014-10-11

放送局の保有するラジオ番組の録音には,音楽史を知るための貴重な資料が含まれているにも関わらず,わが国ではそのほとんどが一般には公開されていない.本稿は,NHK アーカイブスの放送音源の一部をデジタル配信および高品位 CD で提供する,NHK エンタープライズとナクソスの共同事業を紹介する.そのなかで,人気ではなく資料価値を重視した場合のデジタル配信の優位性を明らかにし,また実演家の許諾取得に伴う法的および 「道義的」 課題とを論じる.Each broadcasting station has broadcast archives, which contain audio recordings that may be valuable materials for research in music history. Nevertheless, in our country, most of such archives are not available to the third party people. This paper introduces the joint projects of NHK Enterprises and Naxos for distributing a part of NHK radio broadcast archive digitally and physically. We will focus on the advantage of digital distribution as a means for spreading valuable but less popular materials, and legal and moral issues concerning rights handling.
著者
赤間 史隆 石川 啓 岩崎 啓介
出版者
長崎大学
雑誌
長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi (ISSN:03693228)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.28-31, 2009-06-25
被引用文献数
1

症例は53歳女性。平成16年7月12日、子宮体癌IIIa期の診断で準広汎子宮全摘術を施行後、TJ療法が2コース行われていた。平成17年7月7日、左下腹部膨隆を訴えて婦人科受診、子宮体癌再発の診断でTJ療法を2コース追加。その後、タール便が出現。胃内視鏡検査にて、巨大な潰瘍性病変を認め、外科紹介となった。手術では胃の腫瘍は横行結腸間膜を巻き込んでおり、横行結腸合併切除を行った。腫瘍は深い潰瘍を形成し、壁外性に増生しており、中心部に広範な壊死を伴っていた。病理所見では腫瘍は粘膜部から筋層、漿膜下に浸潤しており、cytoker-atin(AW1/3)及びCD34陽性で、ER、PgRは陰性を示し、epitheloid typeのsarcomaが疑われたが、子宮腫瘍でもstromal sarcomaの存在が疑われる部分を認め、子宮体癌からの転移と診断した。子宮体癌からの転移性胃腫瘍は、我々が検索した限りでは報告が無く、非常に稀と考えられるため、報告する。
著者
岩崎 学
出版者
日本行動計量学会
雑誌
行動計量学 (ISSN:03855481)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.223-231, 2002-12-25

Various types of ranking are in evidence throughout the real world. In this paper, we consider in particular, the field of sports, where ranking is most common. The 2002 FIFA World Cup Korea/Japan, which took place in June 2002, and the winner was Brazil. Since Brazil's FIFA world ranking was 2 just before the tournament, this result seemed quite plausible. On the other hand, however, France (ranking 1), Argentine (ranking 2) and Portugal (ranking 5) were not able to go to Stage 2 (best 16). These facts raise a question as to whether the FIFA ranking is credible in predicting the winners. In order to assess the credibility of such ranking, we introduce a simple model in this paper. Our model, which is an extension of the so-called Bradley-Terry model, contains an unknown parameter which indicates the credibility of the ranking. For the 2002 FIFA World Cup data, we estimated the credibility parameter and concluded that the FIFA world ranking for the 2002 tournament data was more credible in Stage 2 than in Stage 1.
著者
岩崎 宗治
出版者
人間環境大学
雑誌
こころとことば (ISSN:13472895)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.45-53, 2007-03-31

イギリス・ルネサンスの1590年代、<ソネット連作>流行のなかで書かれたシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』には、ペトラルカ恋愛詩の愛の観念がアイロニカルに扱われている。だが、ここにはまた、家父長制の維持装置としての結婚観も、発生期の「個人主義的情緒愛」と結びついた結婚愛の理念も、共存している。さらに、そうしたエリート文化に対して、カーニヴァル的肉体としての乳母に象徴される民衆的な性愛の観念がある。そうした文化のダイアロジズムのなかで、恋人たちの悲劇的な死は、生と死と再生の循環のなかに回収される。

2 0 0 0 OA 本草図譜

著者
岩崎常正 著
出版者
本草図譜刊行会
巻号頁・発行日
vol.5 (山草類5 56種), 1921
著者
伊井 義人 中村 伸次 岩崎 遥 西川 絵梨 足立 瞳 深澤 麻依 外川 茜
出版者
藤女子大学
雑誌
藤女子大学QOL研究所紀要 (ISSN:18816274)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.77-90, 2013-03-31

本論では、今年度で二年目を終えた藤女子大学の学生による石狩市立厚田中学校での学習支援(スクール・アシスタント・ティチャー:SAT)事業の現状と課題、そして将来的な展望を報告する。厚田中学校は、藤女子大学花川校舎から車で50分ほどの海岸部に位置する全校生徒22名の小規模校である。そこで主に教職課程を履修している大学生が、中学校教員や保護者と協力しつつ、数学や家庭科などの授業、学校行事の面で、生徒と触れ合い、多様な学習支援を行なっている。本論は、大学・中学校側のSAT担当教員だけではなく、実際に学習支援に参加した学生の視点から、今年度を振り返り、来年への展望を述べている。現状分析としては、1. 学校行事(学校祭・餅つき大会・卒業式)への参加、2. 地域との関わり(ピザ教室)、3. 学生主体の連絡調整が促進されたことが、今年度の成果といえる。その一方で、依然として、遠隔地域での学習支援という特色上、1. 厚田への交通手段、それに伴う2. 学生の時間の確保が課題として残った。しかし、来年度(2013年)は、厚田中学校での学習支援を経験し三年目の学生も4年生として在籍するため、SAT事業の継続性・発展性を視野に入れた、彼女たちの集大成に期待したい。なお、今年度のSAT事業は、石狩市教育委員会の予算と共に、藤女子大学QOL研究所からの補助金を通して、運営された。
著者
土井口 祐一 岩崎 勝郎 山田 健治 高端 克郎 手島 鍛 貞松 俊弘 富田 雅人 楢林 葉子
出版者
West-Japanese Society of Orthopedics & Traumatology
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.641-645, 1992
被引用文献数
33 15

This study was designed to identify the change in radiological shape of the pelvic cavity caused by sagittal pelvic inclination and to learn the correlation between inclination and progression of osteo-arthritis (OA) of the hip joint.<br>As a preliminary study, antero-posterior (AP) and lateral radiographs of 10 bleached pelves were taken simultaneously in seven different sagittal tilt angles.<br>The degree of sagittal tilt of the pelvis (A) was then compared to the longitudinal: transverse axis length (L/T) ratio of the radiological shape of the pelvic cavity in AP radiographs. This study revealed a linear relationship between the two parameters that led to the equation: A=-67.0°×L/T+55.7° in males and A=-69.0°×L/T+61.6° in females. Using this the sagittal pelvic tilt can be calculated from the radiological shape of the pelvic cavity.<br>Applying this equation to pelvic radiographs of 212 patients; 52 normal hips and 160 with OA hip of varying severity, pelvic tilt was calculated to investigate whether it relates to the aging of the patient or involves progression of OA.<br>There was a significant correlation between age and pelvic tilt angles of patients in both normal and OA hip groups; the pelvis tended to incline posteriorly with increasing age. Further studies are required to elucidate the participation of the pelvic inclination on progression of OA of the hip.