著者
原 樹子 立 正伸 横澤 俊治 平野 裕一
出版者
独立行政法人 日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター
雑誌
JAPANESE JOURNAL of ELITE SPORTS SUPPORT (ISSN:21888183)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.21-31, 2008 (Released:2019-09-04)
参考文献数
19

本研究では,スクワットジャンプの動作初期の股関節角度の違いが跳躍高に与える影響について検討し,体力測定や競技の現場に役立つ知見を提示することを目的とした.被験者にマットスイッチ上で,3種の股関節初期角度(個人が至適と考える任意の角度:SJV,最大伸展角度:SJL,最小伸展角度:SJS)からジャンプを行わせ,同時に矢状面より画像を撮影し,跳躍高と動作初期の下肢関節角度を求めた.股関節の初期角度はSJL,SJV,SJSそれぞれ91.6±13.3 ,70.0±19.5,49.7±11.0°であり,有意差が見られたのはSJL>SJS,SJV>SJS,SJL>SJVであった.跳躍高はSJL,SJV,SJSそれぞれ0.34±0.05 m,0.37±0.04 m,0.40±0.06 mであり,有意差が見られたのはSJL<SJS(17.6%増加),SJV<SJS(8.1%増加),SJL<SJV(8.8%増加)であった.被験者の任意の股関節初期角度(SJV;70.0±19.5°)はSJSとSJLのほぼ中間であった.以上の結果,股関節の初期角度を個人が至適と考える任意の角度ではなく,可能な限り小さくするほうが,跳躍高が増加することがわかった.
著者
中島 遼 平野 大輔 赤坂 清和 澤田 豊 乙戸 崇寛
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.51-54, 2012 (Released:2012-02-21)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

〔目的〕拮抗筋に対するストレッチが主動筋の関節トルクに与える影響について,筋硬度柔軟性,および3種類の速度による等速性運動時の膝関節伸展トルクにより検証した.〔対象〕立位体前屈で手掌が床につかない男子大学生20名.〔方法〕被験者をストレッチ実施群,非実施群に無作為に分け,介入は7日間のセルフストレッチとした.介入前後に筋硬度,下肢伸展挙上角度(以下SLR角度),指床間距離(以下FFD),角速度60,120,180°/secでの膝関節伸展トルクを測定した.〔結果〕実施群ではストレッチによる介入により,筋硬度には変化がなかったものの,SLR角度は有意に改善した.また,伸展-30°での膝関節伸展トルクは,180°/secで有意な増大を示した.〔結語〕拮抗筋の柔軟性の増加は,主動筋による速い運動での関節トルクを増加させる可能性が示唆された.
著者
袴田 航 平野 貴子 西尾 俊幸
出版者
一般社団法人 日本応用糖質科学会
雑誌
応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌 (ISSN:21856427)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.72-78, 2021-05-20 (Released:2022-03-09)
参考文献数
25

糖鎖は細胞内で糖タンパク質・糖脂質などとして存在し,重要かつ多様な生命機能を提供している.それら糖鎖の構築には,多種類の糖加水分解酵素・糖転移酵素が関わっている.ヒト細胞内の主要なオルガネラには複数のexo-型糖加水分解酵素が存在し,その阻害剤は細胞内で糖鎖構造を変化させることにより,免疫機能調節・がん転移制御・抗がん作用・バクテリアおよびウイルス感染抑制と予防効果等を示すため,有望な創薬ターゲットとなっている.これら酵素の阻害剤を開発するためには,ヒト細胞を用いた標的酵素阻害評価系の構築が必要となる.本研究では,ヒト培養細胞を酵素源とし生細胞中の微弱な標的酵素活性を効率的に検出可能な蛍光基質を開発し標的酵素阻害評価系の構築することによって,目的阻害剤の探索を可能とした.本稿では特に小胞体グルコシダーゼ阻害剤がエンベロープウイルスに対して抗ウイルス活性を示すこと中心に述べる.小胞体グルコシダーゼ阻害剤は,薬剤耐性ウイルスの出現回避・ウイルス感染予防薬となりうる宿主標的型抗ウイルス剤に大別される.しかしながら,糖構造を基盤とする既知小胞体グルコシダーゼ阻害剤は,抗ウイルス活性を示すが高い親水性に基づく低い膜透過性の問題があり,問題解決を目指したそれらの誘導体も抗ウイルス薬として上市には至っていない.そのため,既知阻害剤の構造展開といったアプローチではなく,標的酵素の蛍光基質開発,それを用いたヒト培養細胞における阻害剤探索系を構築し,化合物ライブラリより阻害剤探索する方法を採用した.その結果,目的の性質を有するヒット化合物が得られ,その合成法を確立,さらに構造展開を行うことによって,既知阻害剤よりも高い抗ウイルス活性を有する誘導体を得ることができた.
著者
平河 則明 平野 羊嗣 鬼塚 俊明
出版者
九州精神神経学会
雑誌
九州神経精神医学 (ISSN:00236144)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.55-62, 2018-08-15 (Released:2020-03-26)
参考文献数
23
被引用文献数
1

近年の神経生理学的検査の技術進歩に伴い,精神疾患においても新たな知見が次々と報告されている。本稿では主に,脳波や脳磁図を用いた統合失調症の神経生理学的な知見について概観した。例えば,統合失調症者では,感覚フィルタリング機能を反映しているとされる聴覚P50の抑制機構の障害や,前注意過程の指標とされる聴覚ミスマッチ陰性電位の振幅低下が報告されている。さらに,最新の研究では,統合失調症における高周波ガンマ帯域の神経同期活動の障害が多く報告されており,これは統合失調症の脳内における興奮性ニューロンと抑制性介在ニューロンの相互バランスの破綻を反映していると考えられている。精神現象を神経生理学的にとらえようとするこの試みは“神経現象学”という新たな分野にも通じる。最後に,これらの知見をもとに,今後の統合失調症研究の展望について考えてみたいと思う。
著者
藤生 雅子 光増 高夫 平野 実
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.2-7, 1988-01-25 (Released:2010-06-22)
参考文献数
30
被引用文献数
1 1

妊娠に伴い著しいピッチの低下をきたした音声障害の1症例について, 声域, 話声域, および楽な発声時の声の基本周波数 (F0) を経時的に観察した.妊娠23週で, 声域の上限は6半音, 話声域の上限は9半音低下した.F0もB2まで低下した.出産後5カ月間経過観察した後, 保存的治療として音声治療を2カ月施行した.出産後の7カ月間, 声域の上限は妊娠前より5~15半音低い範囲で変動し, 経時的な声域拡大はなかった.話声域は上限が徐々に上昇し, 音声治療後はさらに上昇した.F0は音声治療後, わずかに上昇した.いずれの場合も妊娠前の状態にまでは回復しなかった.音声障害の発現について, エストロゲンのピアルロン酸に対する作用から若干の考察を加えた.
著者
長野 真弓 白山 正人 平野 裕一 宮下 充正
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.436-446, 1992-08-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
20
被引用文献数
1

トレーニングを行っていない健康な成人男性9名を被検者として, 運動処方の有効な指標となっている換気性閾値 (ventilatory threshold: VT) 強度の運動がその後の過剰酸素消費量 (excess postexercise O2 consumption: EPOC) に及ぼす影響を調べた.被検者は, 早朝空腹時に快適なソファーで30分間座位安静を保った後, VT強度で自転車エルゴメーター駆動を1時間行った.運動終了後はソファーで12時間座位安静を保ち続けた.また, 運動終了後24時間目にも前日と同じ要領で座位安静をとった.その間, 採気・心拍数の測定を行い, 運動が終了して2, 7, 12時間後には高糖食を摂取させた.この測定の他に, コントロールとして, 運動を行う代わりにソファーで1時間座位安静を保ち, その後も12時間にわたって座位安静を保つ非運動実験を行った.運動 (座位安静) 前の安静値と運動 (座位安静) 後の値を比較したところ, EPOCは食事あるいは運動の影響を受けて, 有意に変動することがわかった.また, VT強度の運動を1時間行うと, EPOCは少なくとも12時間にわたって運動を行わない場合より増加し, 脂質代謝も少なくとも24時間にわたって高まることが示唆された.さらに, 運動後12時間で, 運動中の消費エネルギー (約550kcal) の22% (約120kcal) のエネルギーが過剰に消費されることがわかった.以上のことから, この結果は運動に対する動機づけやウエイトコントロールなど, 運動処方の場で有効に活用できると考えられた.
著者
阿蘇 司 原 正憲 藤原 進 平野 祥之
出版者
富山高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究は、量子化学・分子動力学計算による知見を組み込んだDNA損傷の確率的計算モデル開発を目的としている。今年度は、(1)開発シミュレーションソフトウェアでの間接作用の影響を評価するためのラジカル発生と、その拡散・再結合相互作用の評価、(2)空間クラスタリング法を用いたDNA損傷の確率モデル検証、(3) 分子動力学計算を用いたDNA分子置換に起因する分子構造変化の影響評価、(4)ガンマ線照射による重水中DNA分子の水素置換評価実験を解析するための量子科学計算の導入を実施した。以下に概要を示す。(1) 間接作用では、ラジカル発生からその拡散・再結合を追跡して時間的な空間分布を計算してDNA分子の空間形状との対応によりDNA損傷の有無を判断する。計算アルゴリズムは試作したが、計算時間が長く精密な計算を行うことが容易ではないことがわかった。現在、文献調査等を通じてアルゴリズムの改良に着手している。(2) 空間スラスタリング法を利用して、直接作用と間接作用の両方を考慮したDNA損傷が評価できる状況にある。このソフトウェアを用いて、多様な条件でのシミュレーションを行なっている。また、(1)のシミュレーション開発のアルゴリズム改良に際しての参考に用いている。(3) DNA分子置換が生じた後に、DNA損傷に至る過程を分子動力学計算で評価を行なっている。また、トリチウム水の水分子がDNA分子構造にアクセスする様子を調べるために、水分子とDNA分子構造を入力した分子動力学計算によって、確率的なアクセス頻度を計算できる状況となっている。(4) 重水へのガンマ線照射により、DNA分子構造の水素が重水素に置換する可能性を調査している。ガンマ線照射実験で得られた赤外線吸収スペクトルを量子化学計算により解析して、置換反応の有無を評価している。
著者
草刈 洋一郎 平野 周太 本郷 賢一 中山 博之 大津 欣也 栗原 敏
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.123, no.2, pp.87-93, 2004 (Released:2004-01-23)
参考文献数
25

正常の心臓は律動的な収縮·弛緩を繰り返し,全身に絶え間なく血液を送り出している.これは,細胞内Ca2+-handlingを中心とした興奮収縮連関が規則正しく行われている結果である.一方で興奮収縮連関が破綻すると,収縮不全や拡張不全が招来されることが明らかになってきた.心筋細胞内Ca2+handlingの調節には多くのタンパク質が関わっているが,中でも筋小胞体のCa2+ポンプであるSERCA2a(心筋筋小胞体Ca2+-ATPase)が中心的な役割を果たしている.近年,分子生物学的手法を用いて,SERCA2aを心筋に選択的に過剰発現させると,心肥大や心不全になりにくいことが指摘されている.しかし,これまでの遺伝子変異動物を用いた研究では主として慢性心不全に関する研究は多いが,急激に起こる心機能の低下の原因に関する研究は少ない.そこで,今回我々は,SERCA2a選択的過剰発現心筋を用いて,急性の収縮不全や拡張不全を起こす病態時に,SERCA2aの選択的機能亢進により細胞内Ca2+-handlingと収縮調節がどのような影響を受けるのかについて調べた.急性収縮不全をきたす病態として,呼吸性(CO2)アシドーシスを用いた.アシドーシスならびにアシドーシスからの回復時における細胞内Ca2+と収縮張力を,SERCA2a過剰発現心筋と正常心筋とで比較した.アシドーシス時の収縮抑制に対しても,またアシドーシスからの回復時の収縮維持に関してもSERCA2a過剰発現心筋は正常心筋よりも収縮低下が抑制された.この結果は虚血性心疾患の初期などでおこるアシドーシスによる収縮不全に対して,SERCA2aの選択的発現増加による細胞内Ca2+-handlingの機能亢進が有用であることを示唆している.
著者
袁 博 高木 教夫 岡崎 真理 平野 俊彦
雑誌
日本薬学会第141年会(広島)
巻号頁・発行日
2021-02-01

Arsenic and its compounds are widely distributed in the environment and exist in organic and inorganic forms. Although as a well-known poison, arsenic has been used medicinally for over 2,000 years. Notably, administration of trivalent arsenic derivatives (arsenite, AsIII) such as arsenic trioxide (ATO) has demonstrated a remarkable efficacy in the treatment of acute promyelocytic leukemia (APL), the vast majority of which is characterized by the promyelocytic leukemia (PML)-retinoic acid receptors (RARα) fusion caused by the t(15;17) translocation. Differentiation associated with the degradation of fusion protein PML-RARα, apoptosis induction, cell cycle arrest as well as autophagy induction have been shown to be linked to the therapeutic effects of ATO against APL. Several research groups including us have conducted detailed pharmacokinetic studies of ATO in APL by using biological samples such as peripheral blood, cerebrospinal fluid, bone marrow from patients. Aquaporin 9 and multidrug resistance-associated proteins (MRP1/MRP2/MRP4) have been reported to play pivotal roles in the uptake/efflux of arsenic, respectively. Here, we are going to introduce the mechanisms underlying the antitumor activity of AsIII and provide new insights into its potential novel application in terms of combinational treatment. Despite organic arsenicals mainly contained in seafood are known to be harmless, a novel organic arsenical, S-dimethylarsino-glutathione (darinaparsin, Dar), synthesized by conjugating dimethylarsenic to glutathione, has shown promising anticancer activity and is currently in use in human clinical trials in cancer patients. It has been demonstrated that Dar has overlapping, but distinct, signaling mechanisms of cell death induced by AsIII. We also provide some recent evidence of the cytocidal effect of Dar on several leukemia cell lines for understanding the arsenic compound in comparison to AsIII.
著者
竹内 咲恵 ラン トラン ソニア ボーランド 市原 学 サンドラ ブラニッチ 渡邊 英里 長田 百合果 平野 明穂 櫻井 敏博 佐藤 聡 市原 佐保子 ウ ウェンティン
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.45, pp.P-70, 2018

<p>【背景・目的】</p><p>ナノテクノロジーが発展途上にある現在、その基盤となっているナノマテリアルの特性と生体影響との関係を明らかにすることは、安全なナノマテリアルを開発するため、あるいは安全に使用するために必要である。ナノマテリアルの中でも多く用いられているシリカナノ粒子(SiO<sub>2</sub>NPs)にカルボキシル基、アミノ基、水酸基を付加してマウスの肺に曝露し、肺胞洗浄液中のマクロファージ、好中球の数をカウントしたところ、水酸基を付加したSiO<sub>2</sub>NPs(OH-SiO<sub>2</sub>NPs)を曝露したときのみマクロファージや好中球が他の2種類の粒子よりも少なかったことが先行研究より明らかになっている。また、OH-SiO<sub>2</sub>NPsはマウスマクロファージ細胞株RAW264.7細胞への曝露において、細胞生存率を著しく低下させたことも明らかになっている。そこで本研究では、それがアポトーシスによるものであると仮説を立て、経時的にLDHとCaspase-3,Caspase-7の活性を測定することにより検討を行った。</p><p>【方法】</p><p>マウスマクロファージ細胞株RAW264.7を96wellプレートに15,800 cells/cm<sup>2</sup>で播種した。37℃、5%CO<sub>2</sub>で24時間培養後、メディウム中に分散させたOH-SiO<sub>2</sub>NPsを19.5 µg/mLの濃度で曝露し、曝露から1,6,12,18,24時間後にLDH活性を、0,6,12,18時間後にCaspase-3,Caspase-7の活性を測定した。</p><p>【結果】</p><p>LDH活性、Caspase-3,Caspase-7の活性は共にOH-SiO<sub>2</sub>NPs曝露後6~18時間で著しく増加し、相関していた。</p><p>【考察・結論】</p><p>LDH活性の測定結果から、OH-SiO<sub>2</sub>NPs曝露後6~18時間の間に細胞障害、あるいは細胞死が起こっていると考えられる。また、同じタイミングでCaspase-3,Caspase-7の活性が上昇していることから、OH-SiO<sub>2</sub>NPsがアポトーシスを誘導すると考えられる。</p>
著者
平野 大信 小林 孝男
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.787-793, 2014 (Released:2014-10-01)
参考文献数
3

近年,省資源,省コストなどの観点から,段ボール原紙の軽量化が進行することが予測されている。このような状況において懸念される段ボール原紙の品質トラブルの1つに,巻取の吸湿シワが挙げられる。吸湿シワとは,巻取が吸湿することによって,胴面にドラム缶状の膨れシワが発生する現象であり,その発生メカニズムから,吸湿伸びが大きいこと,座屈のしやすさ,の2点が主な要因として考えられる。しかし,これらに関連する物性と実際に発生する吸湿シワとの関係について,系統的に調査した例は見当たらない。そこで,段ボール原紙巻取における吸湿シワ発生要因を解析するために,異なる複数の工場にて抄造した巻取を同一条件下で保管し,各巻取の吸湿シワ発生状況および水分変化率の調査を実施した。その結果,巻取間で吸湿シワの発生状況,水分変化率に差異が見られ,吸湿シワ発生状況とその関連原紙物性との重回帰分析から,吸湿シワ発生要因として,剛度,吸湿伸び,地合の3要素が重要であることがわかった。吸湿伸びは水分伸縮係数と水分変化率の積の形で表され,水分変化率はワインダー巻取り時の初期水分と原紙の平衡水分に影響されるが,特に初期水分の寄与が大きいと見積もられた。また,有限要素解析シミュレーションから,地合改善は吸湿シワの発生を遅らせる効果はあるものの,一旦吸湿シワが発生してしまえば,成長を抑制するだけの効力は持ち合わせていないことが示唆された。
著者
五味 雅大 平野 正広 加藤 宗規 清水 菜穂
出版者
了德寺大学
雑誌
了德寺大学研究紀要 = The Bulletin of Ryotokuji University (ISSN:18819796)
巻号頁・発行日
no.11, pp.165-170, 2017

[目的]肘関節屈曲筋力の徒手筋力測定における再現性の問題に対して,定量的測定値を得るためにハンドヘルドダイナモメーターを徒手で用いる従来の方法と,考案したハンドヘルドダイナモメーターをベルトで固定した方法における再現性を検討した.[対象]若年健常成人31名の利き手である右上肢31肢であった.[方法]ハンドヘルドダイナモメーターを徒手で固定する従来の方法とベルトで固定する方法による肘関節屈曲筋力測定を行い,測定値を比較,検討した.[結果]ハンドヘルドダイナモメーターをベルトで固定した方法における検者内の級内相関係数は0.90であり,Bland-Altman分析では,1回目と2回目の測定値において系統誤差を認めなかった.[結論]1回練習をした後,1回目,2回目の測定値を採用することで,考案したハンドヘルドダイナモメーターをベルトで固定した肘関節屈曲筋力測定方法は,臨床使用が可能な再現性を有することが示唆された.
著者
鈴木 浩子 山中 克夫 藤田 佳男 平野 康之 飯島 節
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.139-150, 2012 (Released:2014-04-24)
参考文献数
25
被引用文献数
1

目的 何らかの在宅サービスが必要であるにもかかわらず,介護サービスの利用に至らない高齢者に関して,介護サービスの導入を困難にしている問題を明らかにし,問題の関係性を示すモデルを共分散構造分析にもとづいて作成することにより,有効な対策について検討する。方法 高齢者相談業務に従事する本州地域657か所の行政保健師に対し,自記式質問紙による郵送調査にて事例調査を実施した。調査対象事例は,本研究に該当する介護サービスの導入が困難な高齢者で,回答する保健師が,2000年 4 月以降家庭訪問による介入援助を行った,とくに印象に残る 1 事例とした。調査内容は,回答者および所属する自治体の属性,対象事例の基本的属性,対象事例への介入援助の結果,事例調査および文献検討により作成した介護サービスの導入を困難にする問題43項目である。有効回答を得た311通(有効回答率47.3%)を解析対象とした。介護サービスの導入を困難にする問題について,因子分析を行った後,共分散構造分析により関係性の検討を行い,最も適合度の高いモデルを選定した。結果 1) 介護サービスの導入を困難にする問題は,項目分析,因子分析の結果,第 1 因子『生活の変化に対する抵抗』,第 2 因子『親族の理解•協力の不足』,第 3 因子『手続き•契約における能力不足』,第 4 因子『インフォーマルサポートの不足』,第 5 因子『受診に対する抵抗』が抽出•命名された。2) 因子分析で得られた 5 因子を潜在変数として共分散構造分析を行った結果,GFI=0.929,AGFI=0.901,CFI=0.950と高い適合度のモデルが得られた。このモデルから,『生活の変化に対する抵抗』,『親族の理解•協力の不足』の問題に,『手続き•契約における能力不足』,『インフォーマルサポートの不足』,『受診に対する抵抗』の問題が重なり,介護サービスの導入が困難となっていることが示された。結論 行政保健師を対象とした事例調査により,介護サービスの導入を困難にする問題の関係性が示された。このような高齢者への支援には,個々の問題に応じた介入援助方法の他,手続き能力やサポートが不足し,支援が必要な高齢者を早期に把握,対応する体制を地域レベルで検討することが必要である。
著者
平野 悠一郎
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.132, 2021

<p>日本では1960~90年代にかけて、アウトドア・レジャー活動としてのキャンプへの関心が高まり、各地の国有林・民有林内にも多くのキャンプ場が設立された。しかし、1990年代後半以降は、経済不況と利用者の減少による施設過剰状態となり、大多数のキャンプ場の経営が悪化した。これを受けて、2000年代以降は、民間の経営主体を中心に、キャンプ場の再生の動きが顕著となる。その一環として、ウェブを通じた情報集約・予約システムの構築や、宿泊・体験の「質」を重視する動きが見られてきた。近年では、そうしたキャンプ場再生の動きが、幾つかの方向性を伴って加速しつつある。例えば、グランピングやワーケーションの場としての施設整備に加えて、自然教育の機会としてのプログラムを充実させ、また、地域資源活用による地域活性化の基点として位置づける等の傾向が、事例調査を通じて確認できた。</p>