著者
塚田 岳大 後藤 勝
出版者
東邦大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本申請は、古くからの謎であるウナギの「血清毒」の解明に切り込む。この血清毒は、タンパク性で熱に弱く、摂取や接触により下痢、嘔吐、皮膚炎などの症状を引き起こすことが知られているが、毒の本体(遺伝子)はまだわかっていない。本研究の目的は、ウナギ血清毒を同定・単離し、その毒性を調べることにある。さらに、タンパク質X線結晶構造解析を組み込み、血清毒の立体構造から毒の作用機序を明らかにするとともに、他の生物種における血清毒遺伝子の探索を行い、魚類の血清毒の進化的意義を考察する。
著者
森田 陽子 福内 靖男 厚東 篤生 鈴木 則宏 五十棲 一男 後藤 淳 清水 利彦 高尾 昌樹 青山 正洋
出版者
The Keio Journal of Medicine
雑誌
The Keio Journal of Medicine (ISSN:00229717)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.120-127, 1997 (Released:2009-03-27)
参考文献数
25
被引用文献数
10 15

We investigated rapid changes in pial arterial diameter and in cerebral blood flow (CBF) caused by transient ipsilateral common carotid artery occlusion (CCA-O) in anesthetized rats in order to elucidate how the cerebral circulation reacts to acute stem artery occlusion. In separate groups of rats, pial arterial diameter was recorded through a dosed cranial window and CBF was recorded by laser-Doppler flowmetry. CCA-O was performed for 5 minutes under normotension and normocapnia (control) and under graded hypotension, hypercapnia and hypocapnia. In the control condition, pial arterial diameter increased rapidly, triggered by CCA-O. It took 12±3 s to reach the maximum of 204±42% of the value before CCA-O, and 60±24 s to become stable at 131±11%. CBF decreased rapidly to 66±11%, then increased reactively to 135±9%, and again decreased to 91±3%. The reactive increase in CBF caused by CCA-O decreased in parallel with the degree of hypotension, and also became barely detectable under hypercapnia. Our data suggest that active vascular dilation in the territory of the occluded artery is important for inducing collateral circulation.
著者
後藤 美希 鈴木 蓉子 竹入 洋太郎 大村 美穂 神野 雄一 竹内 真 永井 美和子 江口 聡子 中林 稔 東梅 久子 横尾 郁子 有本 貴英
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.289-294, 2021-03-10

▶概要 常勤内視鏡技術認定医不在下で子宮体癌に対する腹腔鏡手術を導入し,治療成績について以前の開腹手術症例と後方視的に比較検討した.腹腔鏡手術では開腹手術に比べて出血量の減少,術後在院日数の短縮を認めた.合併症に関しては重篤なものは認めず安全に腹腔鏡手術の導入ができたと思われるが,腹腔鏡手術で有意に多いという結果になり,そのうちの50%は下肢の神経障害であった.いずれもBMI30以上の肥満症例であり,術者が手術操作に熟練するまでは手術適応のBMI基準を低く設定することも必要と考えられた.また,内視鏡技術認定医と婦人科悪性腫瘍専門医が密に連携して手術操作を行うことが重要と思われた.
著者
奥田 章子 斉藤 俊 後藤 善光
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.27, no.65, pp.42-47, 2021

<p>Basic physical properties and weatherability were evaluated in order to evaluate the practicality of the fluororesin powder coating. As a result, the basic physical properties of various powder coatings were almost the same as those of solvent-based fluororesin coatings (PVDF). As a result of the accelerated weather resistance test and outdoor exposure test in Okinawa, a difference in weatherability was observed depending on the type of powder coating, and a fluororesin powder coating with the same performance as PVDF was confirmed. One of the causes of deterioration of the powder coating was presumed to be photocatalytic reaction.</p>
著者
後藤 康仁
出版者
一般社団法人 日本真空学会
雑誌
Journal of the Vacuum Society of Japan (ISSN:18822398)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.184-191, 2016 (Released:2016-07-16)
参考文献数
25
被引用文献数
2

In this article, potential dangers of vacuum technologies are revealed, and safety measures for these dangers have been suggested. These dangers include considerable difference between the vessels' inner and outer pressures, condensation of flammable gases to the pump, electric shock due to a high voltage or electric leakage, involution to mechanical motion, touching of a high temperature during baking. Furthermore, many dangers exist when the system is under repair or maintenance. In addition to the vacuum system itself, the materials used for its operation such as liquid cryogen and organic solvents are more hazardous. Finally, some of the safety measures are proposed for the aforementioned dangers.
著者
野﨑 秀正 川瀬 隆千 立元 真 後藤 大士 岩切 祥子 坂邉 夕子 岡本 憲和 Hidemasa NOSAKI Takayuki KAWASE Sin TATSUMOTO Hiroshi GOTO Shoko IWAKIRI Yuko SAKABE Norikazu OKAMOTO 宮崎公立大学人文学部 宮崎公立大学人文学部 宮崎大学 都城新生病院 いわきりこころのクリニック 細見クリニック カリタスの園 Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities Miyazaki University Miyakonojo Shinsei Hospital Iwakiri Mental Care Clinic Hosomi Clinic
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.105-120, 2021-03-10

本研究では、子育て支援サービスを提供する公的相談機関に対する母親の援助要請に焦点を当て、母親の育児に対する感情(育児感情)と信念(母性愛信奉)が、援助要請態度を媒介して援助要請意図に影響を及ぼす一連のプロセスを示した仮説モデルを検証することを目的とした。宮崎市内及びその近郊にて就学前の幼児(3 歳以上)の育児に携わる母親1000名に調査協力を依頼した。質問紙が返送され、かつ回答に不備のなかった470 名の回答を分析対象とした。仮説モデルに従い共分散構造分析を行った結果、育児感情及び母性愛信奉から3 つの援助要請態度を媒介して援助要請意図に影響を及ぼすいくつかのプロセスが明らかになった。このうち、利益とコストの態度を媒介したプロセスについては、いずれも子どもにとっての利益とコストを媒介したパスが有意であり、母親自身にとっての利益とコストの態度を媒介したパスはいずれも有意ではなかった。これらの結果より、子育ての悩みに関する母親の公的相談機関に対する援助要請については、母親の精神状態の解決に動機づけられているというよりも、その原因となっている子どもの問題を解決させることに動機づけられていることが明らかになった。こうした結果は、公的相談機関に対する母親の援助要請促進を促すには、援助要請が子どもにもたらすポジティブな影響を強調することや子どもと担当職員間の良好な関係づくりなど、子どもに焦点を当てたアプローチが有効になることを示唆した。
著者
結城 和博 佐藤 久実 中場 勝 櫻田 博 佐野 智義 本間 猛俊 渡部 幸一郎 水戸部 昌樹 宮野 斉 中場 理恵子 横尾 信彦 森谷 真紀子 後藤 元 齋藤 信弥 齋藤 久美
出版者
山形県農業総合研究センター
巻号頁・発行日
no.2, pp.19-40, 2010 (Released:2011-05-27)

「つや姫」(系統名:山形97号)は、1998年に山形県立農業試験場庄内支場(現:山形県農業総合研究センター水田農業試験場)において、次期主力品種の育成を育種目標に、「山形70号」を母に、「東北164号」を父にして人工交配を行い、選抜・育成した良食味の品種である。本品種は本県で育成された粳種では初の“晩生”に属し、短稈で草型は“中間型”、耐倒伏性は“やや強”である。いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pii、Pik”をもつと推定され、圃場抵抗性は葉いもち“強”、穂いもちは発病が少なく不明である。障害型耐冷性は“中”、穂発芽性も“中”である。「コシヒカリ」に比較し、収量性が高く、玄米千粒重は並で、玄米外観品質は白未熟粒の発生が少なく、光沢があり高品質である。「コシヒカリ」に比べ精米粗タンパク質含有率は並、精米アミロース含有率はやや低く、味度及び炊飯米の白色度はやや高い。食味は、炊飯米の外観と光沢が優れ、味と粘りも優り、「はえぬき」及び「コシヒカリ」を上回る。山形県における適応地帯は平坦部で、本県のさらなる良食味米の安定生産と「米どころ山形」として本県産米全体の評価向上を目指し、2009年に山形県の水稲奨励品種に採用された。さらに、同年9月には宮城県の奨励品種に採用された。
著者
廣瀬 喜貴 後藤 晶
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.13, no.Special_issue, pp.S19-21, 2020 (Released:2021-03-24)
参考文献数
9

本研究は,地方公共団体が開示している会計情報は幸福と結びついているのか,を検証するために,各都道府県が開示している財務書類から会計指標を計算し,アンケート調査で得られた幸福度との関連を分析した.本研究の結果は,以下の3点である.第1に,多くの資産形成がなされている都道府県の住民ほど幸福度が高い.第2に,現世代の負担が将来世代の負担よりも相対的に高い都道府県の住民ほど幸福度が低い.第3に,住民一人当たり負債額が大きい持続可能性が低い都道府県の住民ほど幸福度が低い.これらの結果は,これまで伝統的に分析されてきた財政指標のみでは得られなかった結果である.これまで会計情報は財務情報の補足資料として位置づけられてきたが,2017年度から新たに全面適用となった地方公会計基準にもとづいた会計指標は主観的な幸福度と関連しており,会計情報の有用性を示した点が本研究の貢献である.
著者
Chowdappa Rekha 長谷川 信美 後藤 正和 小薗 正治 藤代 剛 高橋 俊浩 高木 正博 野上 寛五郎 園田 立信
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.149-156, 2005
参考文献数
21
被引用文献数
2

幼齢ヒノキ造林地(YF区, 2003年6-9月)および野草地(NG区, 2003年10・11月)に放牧された黒毛和種雌牛の行動とルーメン内性状の特性を明らかにするために、24時間行動観察とGPSによる移動距離測定を各月1回, ルーメン液採取を各区2回行った。採食行動時間は平均537.7±109.8分/日で、Miscanthus sinensis採食割合と正(r=0.436, p<0.05)、Pleioblastus simonii採食割合と負(r=-0.676, p<0.001)の有意な相関を示した.M. sinensis採食割合は、P. simoniiおよびその他の植物採食割合と負(p<0.001)、横臥姿勢割合と正(p<0.05)の相関を示した。放牧期間中の移動距離は5001-6879mであった。ルーメン液中総VFA濃度に大きな変動はみられなかったが、個々の脂肪酸割合には牧区と時期によって変動に違いがみられた。NH_<3^->N濃度はYF区がNG区よりも高かった.総プロトゾア数/mlはYFで放牧初期2.0×10^6から放牧後期3.0×10^5に減少し、NGでは変化は示さず1.0×10^6で、両区ともEntodinium割合が最も高くかった。総バクテリア数/mlは1.4×10^7-8.2×10^8で、cocci (+)とcocco (-)の割合が高かった。この研究において、牛は幼齢造林地と野草地放牧に、行動を変化させ多様な植物を選択することで適応する能力があることが示された。
著者
後藤 伸之 山田 成樹 藤森 研司
出版者
Japanese Society of Drug Informatics
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.165-168, 2014-02-28 (Released:2014-04-02)
参考文献数
5

Objective: The purpose of this study was to clarify the importance of therapeutic drug monitoring (TDM) at acute care hospitals using Diagnosis Procedure Combination (DPC) data.Methods: We used DPC data from about 3,500,000 inpatients at about 950 acute care hospitals.  The investigation period was from July 2010 to December 2010.  Patients were divided into 2 groups: TDM intervention (n=22,012); and non-TDM intervention (n=26,400).  We compared the clinical indicators (length of hospital stay, payment based on performance and drug costs) and use of antimicrobials.Results: TDM intervention was carried out in 45.5% patients for whom an anti-MRSA agent was prescribed.  The duration of anti-MRSA agent administration was significantly longer in the TDM intervention group than in the non-TDM intervention group.  The total daily cost of anti-MRSA agents was significantly lower in the TDM intervention group than in the non-TDM intervention group.Conclusion: Our results suggest that TDM intervention is often performed for seriously ill patients who require continuous treatment.  TDM intervention may prevent adverse reactions as a result of adjusting the dosage of the anti-MRSA agent.
著者
後藤 康志
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.29, no.Suppl, pp.77-80, 2006-03-20 (Released:2016-08-02)
参考文献数
7
被引用文献数
1

メディア・リテラシー教育におけるカリキュラム開発の基礎的データを提供するためのメディア・リテラシー尺度を,メディア操作スキル,批判的思考,主体的態度の3つを下位尺度として作成している.本研究では批判的思考,主体的態度についての項目を作成し,信頼性と妥当性を検討した.結果として次の2点が明らかになった.(1)IT相関分析,GP分析,信頼性係数の分析から,作成した尺度は一定の信頼性をもつ.(2)主体的態度が高い者はインターネットを「速報性があり,正確で,簡便で,好む」のに対し,そうでない者はテレビに依存する傾向があるなど,先行研究の知見と合致する結果が得られ,尺度の妥当性が示唆された.さらに,今後尺度の信頼性・妥当性を高めるための課題についても検討する.
著者
鵜野 いずみ 後藤 寛
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

ヘアーサロンは首都圏を例にみると東京の青山,原宿,渋谷地区にかなりの集中がみられる.このことを前提に客が移動コストをかけて美容院に通う動機と美容院業界および美容師業の構造,そしてそれに多大な影響を与えていると思われるファッションメディアによる情報発信の構造を明らかにすることを目指す.<br>また直接に客を相手にする美容院と,ファッション雑誌の中で活動するヘアーメイクアーチストの関連は近くと遠いものではあるが,雑誌をはじめメディアが振りまくファッションの中心地としての青山/渋谷地区のイメージは多分に,同地区美容院の広域集客に貢献しているものと考えられる.<br>美容院の立地分布をNTTのiタウンページデータをもとに描くと,東京都心西部の青山,渋谷,原宿周辺に極めて強い集積が確認できる.この集積は周囲のオフィス従業者分布や小売業の集積とは分布が異なり,それらと比べてもはるかに大きなものである.このことからこれらの地域の美容院はかなり広域からの集客によって成り立っているとみられる.<br>他方で,昨今ではリクルートの「ホットペッパービューティー」に代表されるサイトに希望の条件を入力して美容院を検索し,同時に予約を入れるシステムが普及している.このようなサイトの構成自体が広域集客を可能にしているとともに,ヘアースタイルに対する需要を発掘,あるいは顕在化させながら美容院自体の多様化,専門分化をも促し,全体として美容院市場の深耕を促していると考えられる.
著者
後藤 大介 赤崎 将 北川 敏一
出版者
基礎有機化学会(基礎有機化学連合討論会)
雑誌
基礎有機化学討論会要旨集(基礎有機化学連合討論会予稿集)
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.147, 2008

1,2-ジクロロエタン中、AlCl<SUB>3</SUB>とC<SUB>60</SUB>の反応により、クロロエチル付加体(CH<SUB>3</SUB>CHCl-C<SUB>60</SUB>-Cl)が得られた。この付加体をフラレノール(CH<SUB>3</SUB>CHCl-C<SUB>60</SUB>-OH)に変換した後、強酸で処理することにより、新規フラーレンカチオン (CH<SUB>3</SUB>CHCl-C<SUB>60</SUB><SUP>+</SUP>)を発生させNMR観測することに成功した。これらのカチオンの構造と安定性を、これまでに報告した他のアルキルC<SUB>60</SUB>カチオンと比較して報告する。
著者
前原 理佳 吉野 奈美 後藤 聖子 赤嶺 美樹 吉田 友美 豊田 珠里 阿南 祐衣 大野 陽子 添田 悠希 竹中 夕奈 工藤 菜々美 小山 美紀 後藤 としみ 江藤 陽子 山本 恵美子 廣瀬 理恵 金松 友哉 石原 和美 前原 加代子 安藤 道雄 安藤 道子 兼田 眞 二ノ宮 綾子 岩本 隆記 三浦 みち子 濱﨑 洋子
出版者
一般社団法人 日本在宅薬学会
雑誌
在宅薬学 (ISSN:2188658X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.17-23, 2020 (Released:2020-04-25)
参考文献数
6

地域包括ケアシステムの構築が急がれる中,薬局薬剤師の責務は広く深く重要である.その職能を十分に生かすことが今後迎える医療情勢の変化に必要不可欠であると考える.そのためには薬剤師の十分な気力体力が必要であり,それには機械化・ICT 化は不可欠であり,さらにパートナーという新しい医療資源の役割が重要となる.0402 通知を踏まえてパートナー業務の手順書,研修制度の構築,さらにパートナーの医療人としての育成成長を図ることで,薬剤師の職能が最大限に発揮できると考える.患者の薬物療法を支援するために必要な薬局薬剤師の取り組みとして,服用期間中の継続的な薬学的管理と患者支援が義務となり,医師への服薬状況に関する情報提供が努力義務となる.ますますパートナー制度の確立と薬剤師自らが希望している職能が最大限発揮できるやりがいのある,よい時代になると考える.
著者
後藤 昌義 池田 佳津子
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.129-139, 1984

周知のように心臓拍動の本体は古くHippocrates (B.C.460-370) 以来の疑問であり, プネウマ説ほか諸説があったが, いずれも前近代的な学説であり, 実験科学的な追究はやはりHarvey (1628) の血液循環の発見以後に始まったといえよう。この17世紀以後の研究は心臓拍動の神経原説neurogenic theoryと筋原説myogenic theoryの論争をめぐって展開された。神経原説はWillis (1664) に始まるといわれ, 彼は心臓に至る神経を発見, 骨格筋におけると同様に心臓の収縮もこれを支配する神経の働きによると考えた。しかし一方, 骨格筋の収縮が筋の直接刺激でも出現することを見出したHaller (1754) は心臓へ還流する血液の伸展効果が心房拍動の原因であり, 心房収縮による心室の血液充満が心室収縮の原因と考え, いわゆる筋原説を提出した。<BR>Stannius (1852) がカエルの洞, 房, 室各部の結紮実験を行った頃は神経原説の最盛期であって, Claude Bernardが頸部交感神経の切断でウサギ耳血管の拡張を見出し, 血管収縮神経を発見した歴史的な年でもあり, Stanniusの実験結果も当時は静脈洞のRemakの神経細胞が自動能を支配し, 下位の神経節では自動能が弱いと, 現在の筋原説とは異なった神経原説で説明されていたようである。<BR>今世紀初めの田原 (1906) の房室結節, 刺激伝導系の発見, KeithとFlack (1907) の洞房結節の発見にひきつづき, 数多くの筋原説支持の研究があったが, CoraboeufとWeidmann (1949) の心筋へのマイクロ電極法の導入により, はじめて細胞レベルでの心筋自動能の筋原説が確証されたといえよう。以来, 細胞膜電位, 膜電位固定下の膜電流, 単一分離心筋における膜電位と膜電流, 単一イオンチャネルsingle channelの追究へと研究は飛躍的に発展し, 自動能の本態についても詳細な所見が明らかにされてきた。本総説では正所性または異所性自動能についての最近の進歩を紹介するとともに, その回顧と展望を試みたい。