- 著者
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新井 洋一
- 出版者
- 中央大学人文科学研究所
- 雑誌
- 人文研紀要 (ISSN:02873877)
- 巻号頁・発行日
- vol.93, pp.71-105, 2019-09-30
本稿では,英語の罵倒語の中で,強意語的機能を持つdamn, fucking, bloodyを取りあげる。まず,高増(2000),Hughes(2006),McEnery(2006),Ljung(2011)などを含む既存研究を前提に,これらの共通の特徴をまとめた後,OED3(Online)の初例を基に,これらの罵倒語の通時的な発達順序を辿ることにする。その結果,bloody ⇒ damn ⇒ fucking の順序で,ほぼ100年間隔で強意語的機能が発達していることを確認する。そして,取り上げた3種類の罵倒語の共通の機能的進化として,adj.( pre-noun: attributive) ⇒ adj.( pre-noun: intensifier)⇒ adv.( pre-adjective: intensifier) ⇒ adv.( pre-verb:intensifier),という機能転換(functional shift)の1つである品詞転換(conversion)が起きていることを明らかにする。また同時に,これらの罵倒語が修飾する共起構造として,どのような構造があるのかについて考察する。 後半では,新井(2011)に倣って,「快性」素性[±PLEASANT](略して[±P])を導入し,罵倒語が快素性[+P]を持つ語との共起が,かなり進んでいることを明らかにする。そして,約30年の間隔があるBNC とNOW corpus(https://corpus.byu.edu/now/)の2つの大規模コーパスから,罵倒語の共起語の頻度の高いものを抽出し,特に快素性[+P]を持つ共起語の広がり度を調査してまとめ,最近は特に,「damn と共起する[+P]形容詞の種類と動詞との共起の種類が格段に増えていること」を明らかにする。