著者
松井 洋子
出版者
公益財団法人史学会
雑誌
史學雜誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.118, no.2, pp.177-212, 2009-02-20

After the Dutch Factory was moved from Hirado to Deshima in 1641, there are three known cases in which its members brought women to Japan. In this article the author examines these cases in order to reconsider the popular notion that foreign women were banned from Japan during the Edo period. The first case dates from 1661, when the newly appointed governor and the Dutch residents of Fort Keelung, situated in the northern part of Formosa, evacuated with their families and servants when the island was attacked by Cheng Ch'engkung. There were about 30 women among them, and they were all permitted to land on Deshima without problems. They stayed until the departure of the ships bound for Batavia. Two babies were born and baptized during that time, and one couple was married. This case leads us to conclude that neither the Japanese nor the Dutch thought that foreign women were prohibited from coming to Japan. The second case involved Mrs. Jan Cock Blomhoff, who accompanied her husband, the newly appointed chief factor, to Japan in 1817 along with their son, nurse, and maids. The Governor of Nagasaki at first permitted them to come ashore, but after further consultation with higher ranking officials in Edo, he refused the women and the son permission to stay in Japan. Mrs. Blomhoff did not give up, however, and tried to petition herself, but was rejected, with governor confirming that the wives of Dutch and Chinese traders were prohibited from accompanying their husbands, due to the lack of a precedent. The third case relates to a Dutch clerk, De Villeneuve, who was accompanied by his wife in 1829. The Dutch Governor-General in Batavia had allowed him to take his wife, notwithstanding the prohibition of 1817. The Japanese authorities immediately refused her entry and ordered the chief factor to accurately inform his superiors about this prohibition once again. These three cases lead the author to conclude that foreign women were first banned from entering Japan in 1817, but that the Dutch did not adequately understand the prohibition until 1829 and argue the necessity to reconsider the process of issuance, transmission and implementation of orders concerning foreigners by Japanese authorities during the Edo period.
著者
松井 圭介
出版者
一般社団法人 人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.515-533, 1993
被引用文献数
5 3

Geography of religion aims to clarify the relationships between the environment and religious phenomena. In Japan, this discipline has four major fields of research<br>The first field is that of the relationships between the natural environment and religion. The emphasis in this field, however, is on the influence of the environment upon religion. Whereas many scholars study how climate and topography change the formation of religious beliefs, there is almost no study of the influence of religion upon the natural environment. In order to fill this lack, it is necessary, for instance, to clarify the role of religion in environmental protection.<br>Secondly, geographers of religion study how religion influences social structures, organizations, and landscapes in local areas. They mainly examine the urban structure and its transformation within religious cities with regard to the dominant religion. There are also some studies about the significance of religion for the formation of new cities. The relationships of the religious orientation to the local structure of cities and villages, however, has not been thoroughly clarified yet.<br>Thirdly, pilgrimage forms another major field of research in the geography of religion. Most studies so far, however, remain preliminary, showing the routes of pilgrimage without reconstructing networks among sacred places and their surroundings. Moreover, the contemporary meaning of pilgrimage is not studied enough, though people today still carry out pilgrimages fervently.<br>Lastly, geographers of religion try to clarify the structure of space which is created by the sacred, through examining the distribution and propagation of religion. One of the major studies in this field is that of sphere of religion.<br>This geography of religion as the study of relationships between the environment and religion has two indispensable approaches, for the space created through these relationships has two aspects; empirical and symbolic. On the one hand, religion has power to organize local communities and this power generates the structure of space which is grasped empirically. On the other hand, religion supports human existence through offering a cosmology. This cosmology appears in the structure of space symbolically. Geography of religion should understand the religious structure of space throughly by adopting both positivistic and symbolic approaches.
著者
松井 博和
出版者
北海道大学
巻号頁・発行日
1984-12-25

203p.
著者
中奥 由里子 水本 智咲 萩原 麻衣 奥野 知子 松井 大
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.361-365, 2014 (Released:2014-09-25)
参考文献数
19
被引用文献数
1

要旨:症例は69 歳男性.胸腹水貯留,好酸球増多の原因精査中に多発性脳梗塞を発症した.基礎疾患はT 細胞性リンパ腫と診断でき,リンパ腫に付随した好酸球増多であった.頭部MRI では大脳皮質・皮質下の境界領域,小脳半球などに多発する微小梗塞を認めた.好酸球増多症候群の1 症状としての脳梗塞と考え,ステロイドパルス療法を施行し,反応性に好酸球数が低下した.T 細胞性リンパ腫に対し化学療法を施行するも奏功せず,DIC を発症し多臓器不全となり死亡に至った.剖検では脳の血管内・実質には好酸球の浸潤を認めなかった.好酸球増多による脳梗塞の病理学的症例報告は少なく,貴重な症例と考え報告する.
著者
新 清士 金子 晃介 松井 悠 三上 浩司 長久 勝 中林 寿文 小野 憲史 山根 信二
雑誌
研究報告コンピュータと教育(CE)
巻号頁・発行日
vol.2012-CE-114, no.18, pp.1-6, 2012-03-09

ゲーム開発を教育に取り入れる近年の試みにおいて,本発表では「ゲームジャム」型の協働ゲーム開発に注目する.これまで分散会場を結んだゲームジャム型の協働ゲーム開発は主に国際組織や政府機関によって主導されてきたが,発表者は地域の社会的な文脈に根ざした草の根の同時多発型協働ゲーム開発イベントを実施した.本発表ではこの2011年8月に実施された「福島GameJam in南相馬」の試みについて報告を行い,「ゲームジャム」の可能性について考察する.
著者
松井 理直
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究会
雑誌
トークス = Theoretical and applied linguistics at Kobe Shoin : 神戸松蔭女子学院大学研究紀要言語科学研究所篇 (ISSN:13434535)
巻号頁・発行日
no.17, pp.67-106, 2014-03

日本語の有声破裂音における声立ち上がり時間(Voice Onset Time, VOT) の分布は、しばしば双極的な性質を持つ。2つの分布ができることを説明する1つの可能性として、声帯振動の開始時点を決める基準点が1つではなく、2つあることが考えられる。例えば、1 つは破裂音の開放時点、もう1つは子音・母音間の音韻境界を過程できよう。本稿は、この子音・母音間の音韻境界が日本語の母音無声化、阻害音の有声性、借用語における促音挿入/促音抑制といった様々な音韻現象に影響することを考察する。また、最後に、母音・子音間の音韻境界に基づくモデルが、VOT の分布をよくシミュレートできることを述べる。
著者
松井 太郎 中川 慶一 山﨑 啓史 和田 大司 角谷 真人 海田 賢一
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001085, (Released:2017-12-22)
参考文献数
23
被引用文献数
1 3

症例は19歳女性.本人,母親にレイノー現象の既往がある.咽頭炎でロキソプロフェン(Loxoprofen; LP)を内服後,頭痛,悪心,発熱を生じ,その後意識障害,項部硬直が出現した.脳脊髄液検査にて単核球優位の細胞増多,蛋白上昇,Q albumin,IgG indexの上昇を認め,培養で病原体を認めなかった.血液・髄液で抗RNP抗体陽性.薬剤リンパ球刺激試験陰性.上記症状のLP中止後の速やかな改善から非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs; NSAIDs)誘発性無菌性髄膜炎と診断した.本例は抗RNP抗体等の自己免疫異常を背景としてLP投与が無菌性髄膜炎を誘発したと考えられた.若年女性の無菌性髄膜炎の鑑別では自己免疫異常の検索に加え服薬歴の聴取が重要である.
著者
喜馬 佳也乃 坂本 優紀 川添 航 佐藤 壮太 松井 圭介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

<b>1.はじめに<br> </b>「聖地巡礼」とはアニメや漫画の舞台となった場所をファンが訪問するコンテンツ・ツールズムの一形態である.大石(2011)によると,こうした「聖地巡礼」行動の歴史は2002年に制作された『おねがい☆ティーチャー』に端を発し,この背景には情報を共有するためのインターネット,そして現地の写真とアニメの描写を比較するためデジタルカメラとHDDレコーダーといったデジタル画像処理技術の普及が必要であったとされる.2010年代以降,アニメや漫画といったサブカルチャーコンテンツの一般化が進展する中,SNSとスマートフォンの普及により,ますます情報の共有,発信が盛んとなってきている.これに伴い「聖地巡礼」行動も隆盛を極め,地域活性化の一資源として注目されるに至っている.本研究では,こうした「聖地巡礼」行動の一大訪問先となった茨城県大洗町において,そこを訪れる巡礼をファンの属性や訪問回数,訪問先などを分析し,「聖地巡礼」を行うファンの変化を明らかにする.<br><br><b>2.大洗町とアニメ</b>「ガールズ&パンツァー」<b> </b><br> アニメ「ガールズ&パンツァー」は,架空のスポーツである戦車道に取り組む少女たちを描いた作品である.登場人物のほとんどを美少女キャラクターが占めるいわゆる「萌え」作品であると同時に,戦車といったミリタリー要素,そして「スポ根」と表現されうるストーリー展開を併せた点が特徴とされる.2012年10月から深夜帯で放送され,2015年には劇場版が上映された.2017年12月以降も劇場作品が制作され続けており,続編の多さからも人気作品であることが伺える.<br> 大洗はこの作品の主人公の所属する高校が立地し,作中にもアニメ本編,劇場版ともに戦車による試合の会場として登場する.大洗町のマリンタワーやアウトレットといったランドスケープが登場する以外にも,市街地の商店街内を戦車が駆け巡るなど,広範囲にわたって描写される.作中の背景描写は実際の大洗町を詳細に描いたものであり,ファンを引き付ける要素となっている.<br><br><b>3.大洗町を訪れるファンの分析</b><br> 大洗町を訪れるファンのほとんどは男性であり,年齢は10代から50代まで幅広い.劇場版の放映後に大洗を訪問したというファンが半数以上を占めている.訪問地は訪問回数と一部相関関係が見られ,商店街はほぼ全員が訪れる一方,アウトレットやマリンタワーには来訪頻度が少ないファンが訪れる傾向にある.商店街はアニメに直接描写された場所であるが,来訪頻度が高いファンには行きつけの店や馴染みの店としての意味も付与され,アニメの舞台として特別な場所という意味付けから,日常の一部にシフトしていったものと捉えられる.ファンの男性たちを顧客として受け入れる商店街の態度は,村田(2000)の疎外する場所とは逆の状況が生まれているとも指摘でき,こうした受容の結果,「聖地巡礼」を契機とした移住者の存在も確認される.
著者
大井 将生 中川 亮 岑 天霞 Desislava Bankova ピーピョミッ 季高 駿士 趙 誼 朴 美煕 張 宇傑 飯塚 陽美 松井 晋 Steven Braun 渡邉 英徳
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.119-124, 2021-04-01 (Released:2021-06-01)
参考文献数
20

本調査の目的は、COVID-19禍における国内及び国外の地域に暮らす人々の生活意識を記録することである。そのための手法として、生活実態や意識をはかるアンケートを作成し、スノーボールサンプリング方式で国内外からデータを収集した。収集したデータに対してワードクラウド・グラフを用いて可視化を行い、回答全体の傾向を考察した。また、回答者数の多かった言語・地域については比較分析を行った。その結果、COVID-19の影響によって意識・考え方が「変化し続けている」と感じている回答者が多いことが明らかになった。また、政治及び情報元への信頼性に関するトピックにおいて、人々の意識・考え方に、回答者の居住地域や使用言語属性による差異があることが示唆された。
著者
松井 美帆
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.128-134, 2007-09-20 (Released:2017-04-27)
参考文献数
15
被引用文献数
1

医療に対する自律性について、日米の高齢者を対象に自記式質問紙調査を実施し、比較検討を行った。対象者は国内の地域高齢者125人と米国ハワイ州ホノルル市における日系高齢者94人であった。医療に対する自律性に関連する要因として両群ともに、意思決定とかかりつけ医との関係が認められた。また、家族機能との関連では、国内高齢者では意思決定と家族の凝集性、適応性が正の相関、日系高齢者では情報希求との間に共に負の相関が認められた。また、国内高齢者では検査の目的や薬の副作用などに関する情報希求が日系高齢者に比較して高く、終末期ケアの意向についても意思決定と療養場所の希望、延命治療の意向との間に関連が認められた。以上のことから、高齢者において医療に対する自律性と医療従事者、家族関係は重要と考えられ、国内高齢者に対する支援として、医療に関する情報提供、さらに終末期ケアも含めた意向に関する理解が求められることが示唆された。
著者
喜馬 佳也乃 坂本 優紀 川添 航 佐藤 壮太 松井 圭介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2018年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.000328, 2018 (Released:2018-06-27)

1.はじめに 「聖地巡礼」とはアニメや漫画の舞台となった場所をファンが訪問するコンテンツ・ツールズムの一形態である.大石(2011)によると,こうした「聖地巡礼」行動の歴史は2002年に制作された『おねがい☆ティーチャー』に端を発し,この背景には情報を共有するためのインターネット,そして現地の写真とアニメの描写を比較するためデジタルカメラとHDDレコーダーといったデジタル画像処理技術の普及が必要であったとされる.2010年代以降,アニメや漫画といったサブカルチャーコンテンツの一般化が進展する中,SNSとスマートフォンの普及により,ますます情報の共有,発信が盛んとなってきている.これに伴い「聖地巡礼」行動も隆盛を極め,地域活性化の一資源として注目されるに至っている.本研究では,こうした「聖地巡礼」行動の一大訪問先となった茨城県大洗町において,そこを訪れる巡礼をファンの属性や訪問回数,訪問先などを分析し,「聖地巡礼」を行うファンの変化を明らかにする.2.大洗町とアニメ「ガールズ&パンツァー」 アニメ「ガールズ&パンツァー」は,架空のスポーツである戦車道に取り組む少女たちを描いた作品である.登場人物のほとんどを美少女キャラクターが占めるいわゆる「萌え」作品であると同時に,戦車といったミリタリー要素,そして「スポ根」と表現されうるストーリー展開を併せた点が特徴とされる.2012年10月から深夜帯で放送され,2015年には劇場版が上映された.2017年12月以降も劇場作品が制作され続けており,続編の多さからも人気作品であることが伺える. 大洗はこの作品の主人公の所属する高校が立地し,作中にもアニメ本編,劇場版ともに戦車による試合の会場として登場する.大洗町のマリンタワーやアウトレットといったランドスケープが登場する以外にも,市街地の商店街内を戦車が駆け巡るなど,広範囲にわたって描写される.作中の背景描写は実際の大洗町を詳細に描いたものであり,ファンを引き付ける要素となっている.3.大洗町を訪れるファンの分析 大洗町を訪れるファンのほとんどは男性であり,年齢は10代から50代まで幅広い.劇場版の放映後に大洗を訪問したというファンが半数以上を占めている.訪問地は訪問回数と一部相関関係が見られ,商店街はほぼ全員が訪れる一方,アウトレットやマリンタワーには来訪頻度が少ないファンが訪れる傾向にある.商店街はアニメに直接描写された場所であるが,来訪頻度が高いファンには行きつけの店や馴染みの店としての意味も付与され,アニメの舞台として特別な場所という意味付けから,日常の一部にシフトしていったものと捉えられる.ファンの男性たちを顧客として受け入れる商店街の態度は,村田(2000)の疎外する場所とは逆の状況が生まれているとも指摘でき,こうした受容の結果,「聖地巡礼」を契機とした移住者の存在も確認される.
著者
松井 一幸
出版者
名古屋大学教育学部附属中学校 : 名古屋大学教育学部附属高等学校
雑誌
名古屋大学教育学部附属中高等学校紀要 (ISSN:03874761)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.67-74, 1984-08-15

2年にわたって製作してきたマイコンシステムを,独自で,両画倍密度で走るCP/Mシステムに発展させることに成功した。このシステムを,音波教材の開発や,電圧自動測定に応用したので報告したい。また, CRTディスプレイを8台まで増設可能にし,本システムを,必修クラブにおけるマイコンBASIC講座に応用したので,マイコン教育の一つの試みとしてレポートしたい。
著者
藤代 富広 松井 豊 FUJISHIRO Tomihiro MATSUI Yutaka
出版者
Division of Physhology, Faculty of Human Sciences, University of Tsukuba
雑誌
筑波大学心理学研究 = Tsukuba Psychological Research (ISSN:09158952)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.27-37, 2018-02-28

The purpose of this article is to overview of research on critical incident stress of police officers. Based on prior resrach, we discuss four perspectives. (1)The possibility of probable PTSD prevalence among police officers who engaged in disaster relief is 10%. (2)Police officers who angaged in disaster relief cannot recover their critical incident stress spontaneously over time. (3)There are few studies on critical incident stress of Japanese police officers. (4)There are few researches on organaizational measures to the critical inscident stress of police officers. Further research in this area should investigate the critical incident stress of police officers in various disasters and accumulate knowledge to promote care for police officers from critical incident stress.