著者
松井 真雪 ホワン ヒョンギョン Mayuki MATSUI Hyun Kyung HWANG
出版者
国立国語研究所
雑誌
国立国語研究所論集 (ISSN:2186134X)
巻号頁・発行日
no.14, pp.89-97, 2018-01

置換反復発話とは,直前の発話の分節音を別の分節音に置き換えてプロソディー特徴を反復する発話である。置換反復発話はプロソディー研究の方法論として注目されているが,その性質については未解明の問題が多い。この小論では,疑問文の文脈(句末境界音調の1つである上昇音調がアクセントと共起する条件)で,通常発話と置換反復発話の音声特徴を比較した結果を報告する。とりわけ,アクセントの弁別にとって主要であると考えられる基本周波数(F0)特徴は,上昇音調が共起する場合でも,置換反復発話に遜色なく反映されることを示す。この結果から,置換反復発話は,アクセントパタン,即ち,語のプロソディーの研究において有用であるという先行研究の見解が支持・補強される。その一方で,イントネーション,即ち,文のプロソディーに関わるF0特徴の一部は置換反復発話に正確に反映されないことが明らかになった。"Reiterant speech" (Larkey 1983) refers to a particular kind of speech, in which the prosody of the preceding utterance is reiterated but segments are substituted with others to minimize micro prosody. The current paper reports on a complementary study designed to examine the replicability of lexical and post-lexical pitch patterns in the reiterant speech. Acoustic patterns of the reiterant speech were compared with those of the normal speech in an interrogative context with rising boundary tone. The results demonstrate that the F0 height and fall timing attested in normal speech, which are related to the lexical pitch contrast, were replicated in the reiterant speech even in the interrogative context, extending the finding of the previous study. On the other hand, the results suggest that some post-lexical F0 properties, such as the degree of the rise of the boundary rising tone, were not completely replicated in the reiterant speech.
著者
西山 順博 細見 美津子 松井 泰成 大西 延明 上坂 保恵 清水 満里子 千田 素子 松井 薫 坂口 和代 西山 直樹 西本 美和
出版者
Japanese Society for Parenteral and Enteral Nutrition
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.1119-1124, 2015

最後まで食べるためには、摂食嚥下支援を含む食支援が必要である。摂食嚥下支援には、栄養管理とリハビリテーションが重要であり、主に病院で医療職が中心の Nutrition Support Team(NST)で多職種が行うキュア要素が強い支援である。食支援は病院だけではなく、施設や在宅においても必要なものであり、医療職だけではなく、介護福祉職、ご近所さん、家族までもがチームとなって患者(利用者)をサポートできるケア要素が強い支援である。いずれの支援においても、栄養管理とリハビリテーションの両輪で最後まで食べることを支えていくことになる。十分な栄養管理をするためには、何らかの人工的水分・栄養補給法(Artificial Hydration and Nutrition;AHN)による栄養療法が必要となることがある。しかし、昨今、在宅療養でも AHNを望まないケースが増えてきている。このようなケースに対して、病院 NSTは介入を中止するのでなく、摂食嚥下支援を食支援へ上手く翻訳し、在宅 NSTへとバトンをいただきたい。また、AHNが栄養状態を改善することだけを目標とした延命治療ではなく、ある時は、緩和治療として必要栄養と水分を充足し、リハビリテーションのサポートを行い、ある時は、緩和ケアとして患者(利用者)や家族の Quality of Life(QOL)を向上するものであることを再認識していただきたい。高齢化を迎えている日本では、健康寿命を延伸することと、要介護状態(平均寿命-健康寿命)の QOLを向上させることが重要であり、それに向けた活動が評価される。在宅 NST、在宅療養サポートチーム(Home care Support Team;hST)の活動もそれを意識した取り組みを行い、成果を上げなければいけない。
著者
松井 一晃 的場 隆一
雑誌
研究報告ゲーム情報学(GI) (ISSN:21888736)
巻号頁・発行日
vol.2015-GI-34, no.8, pp.1-5, 2015-06-27

本研究では,不完全情報ゲームの中でも特にルールが複雑である麻雀においてコンピュータプレイヤに打牌選択させる方法を提案する.打牌選択の方法として,現在の局面の状態を入力することにより,各種類の牌について打牌に適しているかを評価した値を出力する 3 層ニューラルネットワークを評価関数として使用している.評価関数の各パラメータの調整には,バックプロパゲーションを用いて教師データの打牌とコンピュータプレイヤの打牌が一致するように調整している.教師データの打牌には,インターネット麻雀サーバである 「東風荘」 のレーティング 2000 以上のプレイヤの牌譜を使用した.現在は,教師データの打牌とコンピュータプレイヤの打牌の一致率は 31.3% である.
著者
中澤 芳則 松井 未来生
出版者
日本作物学会九州支部
雑誌
日本作物学会九州支部会報
巻号頁・発行日
no.76, pp.22-24, 2010

8品種系統の大豆品種系統を供試し,凝固剤として塩化マグネシウム6水和物,硫酸カルシウムおよびグルコノデルタラクトンを用い,その濃度を変えて充填絹ごし豆腐を作成し,その最大破断応力のピークを品種系統の最大破断応力とし,タンパク質含量との関係を調査した.その結果,硫酸カルシウムおよびグルコノデルタラクトンで品種系統の最大破断応力とタンパク質含量に有意な相関が認められたが,塩化マグネシウム6水和物では有意な相関が認められなかった.また,栽培条件が同じであるが,タンパク質含量の異なる同一系統の子実を供試し,塩化マグネシウム6水和物の濃度を変えて充填絹ごし豆腐を製造し,その最大破断応力の変化を調査した.その結果,タンパク質含量の高い方の子実が低い方の子実より最大破断応力のピークが高く,また,最大破断応力のピークを示す塩化マグネシウム6水和物の濃度はタンパク質含量の低い方の子実で高かった.
著者
沼田 真美 Hartling Linda M. 松井 豊
出版者
日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.89, no.3, pp.262-269, 2018-08
著者
長谷川 憲孝 松井 保 田中 泰雄 高橋 嘉樹 南部 光広
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C (ISSN:1880604X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.923-935, 2007 (Released:2007-10-19)
参考文献数
10

神戸空港は神戸港沖に埋立造成して築造されたが,海底地盤には沖積粘土層が厚く堆積している.埋立造成にあたっては,これら沖積粘土層の圧密特性を把握する必要があり,その特性を把握するために事前土質調査と各種計測器による計測を行ってきた.その結果,沖積粘土層は擬似過圧密状態であり,その程度は西~北西域で高いことが明らかとなった.施工の進行に伴って,過圧密比の高いエリアにおいて,室内土質試験結果による解析値よりも大きな沈下実測値が得られ,圧密進行後の間隙比も室内土質試験結果より小さい値を示すことが分かった.このことより,これらエリアにおいては解析を行う際に過圧密比を低減する必要が生じた.見直し後の解析値は,その後の実測値とほぼ一致しており,見直しの妥当性が確認できた.
著者
大熊 達義 佐藤 洋湖 湯浅 光悦 幡手 雄幸 長内 智宏 石田 正文 渡辺 孝芳 高梨 信吾 金沢 武道 小野寺 庚午 花田 勝美 方山 揚誠 工藤 一 藤田 〓 松井 哲郎 吉田 穣
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.21, no.12, pp.1213-1221, 1983-12-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
13

A 32-year-old taxi driver was admitted with complaints of coughing and exanthema. The respiratory symptoms and exanthema had appeared in April, 1980 and he had been tatooed on his back and arms about a year previously. His tatoo was composed of four distinctive colours (red, yellow, green and black). Exanthema was seen in only the red, yellow and green parts. Bilateral axillar and cervical lymph nodes were palpable. Chest X-ray films revealed diffuse shadows in both lung fields. Serum and urine test were normal. a biopsy of skin tissues and a lymphotic gland showed granulomatous changes caused by the tatoo dyes. Analysis of the dyes suggested that the red coloring matter consisted of organic mercury.Pathological findings of the specimen obtained from a lung biopsy showed thickening of the alveolar wall, with infiltration of lymphocytes and epitheloid granuloma. Electron microscopy showed that the tatoo dyes were localized in his skin, lymph nodes and lung. We concluded that this was a case of diffuse, granulomatous interstitial pneumonia due to his tatoo.
著者
松井 太樹 小山 聡 栗原 正仁
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第32回全国大会(2018)
巻号頁・発行日
pp.4Pin106, 2018 (Released:2018-07-30)

近年、深層強化学習が人工知能研究者の関心を集めている。深層強化学習とは深層学習と強化学習を組み合わせた手法であり、強化学習で用いる関数を深層学習で近似することで、3Dビデオゲームのピクセルのような複雑な環境を用いて学習を行うことが可能となった。しかし、このような学習はときより、少しの入力されたピクセルの差によりエージェントの行動が全く異なるものとなる、といったような問題に直面することがある。本研究ではこのような問題に対して、3D仮想空間Minecraft内のエージェントの視野の方向に着目して深層強化学習に与える影響を分析した。
著者
岩崎 武輝 奥村 次郎 山本 嘉昭 松井 薫 水口 善夫 宇野 正敏
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.531-538, 2011 (Released:2012-03-27)
参考文献数
16

目的:今までの子宮頸部細胞診のいわゆる日母分類からベセスダ新分類の移行に伴い,成績判定及び事後指導に関する日本人間ドック学会のガイドラインを再考する必要が出てきた.武田病院グループ健診施設の婦人科部門の子宮頸がん検診において,ベセスダ新分類を導入した判定基準を作成し,それを基に今後事後指導を実施したいと考える.方法:武田病院グループ5健診施設のうち,同一検査所に依頼している4施設の,2010年2月初めから6月末までの子宮頸がん検診受診者4,948人について,受診者年齢・ベセスダ分類・日母Class分類を行った.新分類に基づいて,健診施設としての判定及び診断をつけ,それに対応した事後指導表を新たに作成した.結果:武田病院グループの4健診施設における最近5ヵ月間の子宮頸がん検診受診者数は4,948人であった.ベセスダシステム2001分類では,異常なしを示すNILMは4,853人であった.従来の日母Class分類では,異常なしを示すClass I,IIは4,914人であった.異常なしに関して,単純に計算すると新分類(ベセスダ分類)では従来分類(日母分類)に比べて61人の減少,総受診者数の1.23ポイント減となった.主な原因は,採取方法による細胞数の不足によるものと考えられた.新分類では,NILMは異常なしの結果報告でよく,それ以外の診断のついた受診者はすべて受診勧奨となり,要精密検査の紹介状を必要とする事後指導が必要であった.新分類の結果に対する受診者への平易な説明文が重要と思われた.結論:NILM以外に判定された区分は,すべてD判定となり,事後指導が必要である.今後,現在学会で分類されているA,B,C,D,Eと子宮頸部細胞診結果の対応を,新しくベセスダ分類に対応した判定区分の新ガイドラインを学会としても設定すべきと考えられた.
著者
森永 太 伊東 隆利 阿部 成善 添島 義樹 土屋 直行 松井 孝道 飯島 俊一 川口 和子
出版者
公益社団法人 日本口腔インプラント学会
雑誌
日本口腔インプラント学会誌 (ISSN:09146695)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.170-179, 2018-06-30 (Released:2018-07-25)
参考文献数
15

長期症例のインプラントに対して,しばしばインプラントの残存率が一つの成功基準として使用される.しかし,患者の実態を知るにはそれだけでは十分といえない.この研究の目的はインプラント治療を受けた患者の長期経過の実態を知ることである.我々は,インプラント治療後20年以上経過した患者に対しアンケート調査を行った.患者は九州インプラント研究会に所属する歯科医師によって治療された.アンケートは1,168名に送付し509名からの回答を得た(回答率44%).回答者の内,78%がインプラントに何も問題ないと答えた.また,歯の経過については68%が何もないと回答した.食事については84%が何でもよく噛めると回答した.また93%がインプラント治療に満足していると回答した.
著者
三浦 景祐 松井 正宏 真栄城 玄一
出版者
一般社団法人 日本風工学会
雑誌
風工学シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.24, pp.337-342, 2016

台風のような自然現象の観測データを用いた風速予測には不確定性が存在するため、その影響も考慮する必要がある。一つは極めて稀に起こりうる事象に起因する現象論的不確定性、もう一つは知識やデータの不足に起因する認識論的不確定性である。前者は事象の偶然性に関わるものであるため、新たな観測データが蓄積したとしても低減させることができない。一方、後者は経験や知識を蓄積することで低減させることができるものである。本研究では、確率分布パラメータの推定方法が台風気圧場に及ぼす影響を検討するとともに台風観測記録のデータ数や分布パラメータの推定方法が風速評価に与える影響についても検討を行い、不確定性の低減を図る。
著者
小林 康宏 松井 正宏
出版者
一般社団法人 日本風工学会
雑誌
JWE : 日本風工学研究会誌 : Journal of Wind Engineering (ISSN:09121935)
巻号頁・発行日
no.135, pp.105-106, 2013-04-30
参考文献数
3

本研究は日本に来襲する台風気圧場パラメータの統計的性質について調べる。&nbsp; 耐風設計の設計風速を決定するために台風モデルを用いたモンテカルロ・シミュレーションが行われることがある。この時に重要なことは、台風気圧場の再現性と、風速場モデルの精度であると言われている。台風気圧場の再現性を向上させるために、過去の台風の気圧場の性質を調べることは重要である。このような研究は、日本の台風に対して、藤井、光田らの一連の研究<sup>1)</sup><sup>~</sup><sup>3)</sup>があるが、その研究以降20年以上経過しており本研究では最新のデータもふまえ1951年~2010年のベストトラックおよび1961年~2010年の日本全国の気象台における大気圧の地上観測記録を用いて気圧場を表すパラメータを求め北西太平洋全域にわたる分布について調べた。<sup></sup>
著者
小坂 浩司 浅見 真理 佐々木 万紀子 松井 佳彦 秋葉 道宏
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.125-133, 2017
被引用文献数
3

全国の水道事業を対象に2009~2011年度の原水での農薬の測定計画と検出状況の関連性を水道統計のデータを基に解析した。農薬を測定した水道事業は約650, その約20%で農薬が検出された。農薬を測定した水道事業を水道水源, 農薬の測定回数と測定種類数で分類したとき, 地表水を水源とし農薬の測定回数と測定種類数が多い水道事業のグループは農薬を検出した水道事業の割合 (検出率) や検出された農薬の種類数が多かった。農薬の測定回数が1回のグループは農薬が検出された水道事業の割合は少なく, その多くは1種の農薬を単年度のみで検出していた。地下水を水道水源に使用している水道事業は総じて検出率は低かった。検出された個別農薬は77種, 比較的多くの水道事業 (10以上) で検出されたのは10種程度であった。検出される可能性がある農薬には地域多様性があるが, いくつかは全国の多くの水道事業から検出される可能性が示された。
著者
井上 千尋 松井 三明 李 節子 中村 安秀 箕浦 茂樹 牛島 廣治
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療 (ISSN:09176543)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.25-32, 2006 (Released:2006-06-09)
参考文献数
17

本研究は、東京都心の医療機関における、1990年から2001年まで12年間の外国人分娩事例のうち、日本語によるコミュニケーションが困難な事例について検討することにより、言語の問題に伴う在日外国人の周産期医療上の課題を明らかにし、その対策について考察した。日本語によるコミュニケーションが困難なことにより、医療従事者と妊産婦との適切な意思伝達の阻害、保健・医療・福祉に関する情報不足、の2点が特有の問題として挙げられた。特に意思伝達の阻害は、病歴や自覚症状の確認困難、相互信頼関係形成と精神的支援の阻害、医療従事者の負担の増大を引き起こし、さらにインフォームドコンセントに基づく医療サービス提供の妨げになっていた。外国人妊産婦に対して、日本人と同じようにインフォームドコンセントに基づいた医療を提供するには、医療通訳制度を整えることが急務の課題であると考えられた。