著者
小林 俊光
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.15, no.7, pp.7_42-7_45, 2010-07-01 (Released:2010-08-20)
参考文献数
4
著者
池田 勝久 小林 俊光 伊東 善哉 高坂 知節
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.535-538, 1988-03-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
5

Twenty-two patients (30 ears) with tinnitus were given Tsumura-Daisaiko-to and its clinical usefulness was evaluated. The drug was remarkably effective in 16.7% of the ears, moderately effective in 6.7%, slightly effective in 26.7%, and not effective in 49.9%. About 46% of the patients showed a tendency to improve tinnitus. The drug showed a significant decrease of serum cholesterol and triglycerol values and was suggested to affect the auditory system via metabolism of lipid.
著者
山内 大輔 川村 善宣 本藏 陽平 小林 俊光 池田 怜吉 宮崎 浩充 川瀬 哲明 香取 幸夫
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.159-166, 2020 (Released:2021-04-05)
参考文献数
25

上半規管裂隙症候群は,1998年マイナーによって最初に報告され,これまでいくつかの手術法について報告されてきた.正円窓閉鎖術はいわゆる“third window theory”に基づいた術式であるが,その効果は限定的であることが報告されている.一方,中頭蓋窩法によるpluggingまたはresurfacingの場合は,ほとんどの症例で裂隙部を直接確認できる.しかし,裂隙部が上錐体静脈洞に位置している場合は困難となる.さらに頭蓋内合併症のリスクのため,安易には手術を勧められないジレンマがある.そのため,耳鼻咽喉科医にとって中頭蓋窩法よりも経乳突洞法によるpluggingの方が容易な術式であるが,下方からでは裂隙部を確認しづらく,また感音難聴の合併症のリスクが潜んでいる.著者らは経乳突洞法によるpluggingに水中内視鏡を用いることで安全性を高める方法に改良した.乳突削開術後,浸水下に内視鏡を用いることで,膜迷路と裂隙部を明瞭に観察することが可能であった.たとえ裂隙部が上錐体静脈洞に位置していても,内側からアプローチできるので有用であった.本術式の方法や適応,術後成績について報告する.
著者
鈴木 淳 小林 俊光
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.113, no.11, pp.844-850, 2010-11-20
参考文献数
16
被引用文献数
3

目的: 2009年におけるインターネット人口普及率は75.3%であり, 今後インターネット上での医療情報収集がますます進むと予想される. インターネット上には顔面神経麻痺に関するさまざまな情報が存在するが, それらを検討した報告はない. 今回, インターネット検索サイト (Google Japan, Yahoo! Japan, Google USA) にて「顔面神経麻痺」, 「facial palsy」「facial nerve paralysis」をキーワードに検索を行い, 上位50サイトについて検討を行った. 結果: 鍼灸院のサイトは日本語サイトの約40%と多数を占めた. 日本語サイトでは, 医師作成サイトや公共性の高いサイト (大学・学会・公共組織) の割合が英語サイトに比較し少なかった. 耳鼻咽喉科医以外が作成した日本語サイトでは, 中耳炎・耳下腺腫瘍・側頭骨腫瘍の記載率が少なかった. 医師作成サイトと鍼灸師作成サイトの比較では, 改善率, 改善時期, NET (nerve excitability test)・ENoG (Electroneuronography), ステロイド, 形成外科手術の各記載率について, 医師作成サイトが有意差をもって多かった. 結論: 十分な情報が記載された日本語サイトは少ない. 今後は公共性の高い組織から, 質の高い情報が発信されることが望まれる. 耳鼻咽喉科医は, インターネット上での情報提供により積極的に参加していくことが必要と考えられる.
著者
香取 幸夫 川瀬 哲明 小林 俊光
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.67-74, 2005 (Released:2012-09-24)
参考文献数
19
被引用文献数
1

This paper reviews the diagnosis and treatment of foreign bodies in the tracheobronchial tree of children. From 1986 to 2005, sixty-four cases were treated in the Tohoku University Hospital. According to previous reports, children under the age of three years were the most common sufferers. The most freguently found foreign bodies were peanuts, but non-organic materials were also the cause in a few cases. For the diagnosis and examination of the sites of foreign bodies, the history of aspiration and coughing attacks, weakness of respiratory sounds, chest roentgenogram f indings, and also CT scans were found to be valuable. In all cases, i t was possible to remove the foreign bodies by ventilation bronchoscopy.
著者
和田 仁 小林 俊光 高坂 知節
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

我々はこれまで、主に耳小骨連鎖離断・固着の診断を目的とする診断装置MIDDLE EAR ANALYSER(MEA)の開発を行ってきた。しかし、従来型インピーダンスメータ同様外耳道に挿入したプローブで測定するため、測定結果に及ぼす鼓膜の影響が大きく、アテレクタシスや鼓膜が薄い場合にはMEAによる耳小骨連鎖異常の診断は難しい。そこで本研究では、超音波を利用した、鼓膜物性値および厚さの測定手法を開発し、鼓膜物性値および厚さを定量的に測定することを試みる。これまでに1.外耳道に挿入できる超小型センサを試作し、内視鏡付きのマニピュレータ、カメラおよびモニタを組み合わせることにより、外耳道内を観察しながらセンサを自在に動かし、測定が行えるシステムを構築した。2.物性の異なる境界面での、超音波の反射と透過の割合を求めることができる、インピーダンス理論を適用し、システムの出力に対する式の導出を試みた。その結果、鼓膜密度を既知とすることで、鼓膜の厚さおよびヤング率を求めることが理論上可能であることが明かとなった。今後の計画1.構築したシステムを用いて、人工中耳モデル、側頭骨標本、正常者および鼓膜疾患例を測定する。2.測定および数値計算結果より、鼓膜物性値および厚さの定量的測定可能性について検討する。
著者
長谷川 純 川瀬 哲明 菊地 俊晶 小林 俊光
出版者
医学書院
雑誌
耳鼻咽喉科・頭頸部外科 (ISSN:09143491)
巻号頁・発行日
vol.77, no.12, pp.905-909, 2005-11-20

Ⅰ.はじめに 後天性中耳真珠腫の発症機序は単一ではない。過去には,種々の成因に関する学説が呈示されてきた。内陥説1~4),基底細胞乳頭状増殖説5),穿孔説6)などがその代表である。このなかでは内陥説が広く支持されるに至っているが,内陥から真珠腫が形成されるためには,表皮ならびに皮下組織の増殖・分化にかかわる各種サイトカインの関与が必要と考えられている7,8)。 鼓膜内陥の原因としては,耳管機能不全が想定しやすく,過去にも多くの耳管閉塞実験が行われた9,10)。一方,本庄(1987)11)は,陥凹型真珠腫では耳管の通気圧は正常かむしろ低いものが多く,耳管の器質的狭窄はないことを指摘した。また,多くの症例が陰圧を能動的に解除できることから,Bluestone(1978)12)のいう機能的閉塞も少ないことを述べた。森山(2004)13)は後天性真珠腫の耳管機能について,音響法では正常型が約半数と最も多かったが,健常者に比較すると狭窄型が多かったとしている。 真珠腫の成因説として発想を転換したものに,1970年代後半にMagnusonら14)が提唱した鼻すすり説がある。耳管閉鎖障害(耳管開放症)患者では,嚥下やあくびの際に耳管が開放状態となると,耳閉感や自声強聴などの不快感が生じる。このときに「鼻をすする」ことにより中耳腔の陰圧化に続いて「耳管のロック」が起こり,不快感が取り除かれる(図1)。このとき,鼓室内陰圧は時に1,000mmH2Oにも達し,これが鼓膜の内陥やポケット形成を引き起こし,真珠腫を発症する基盤となるとの考えである。 筆者らもこの説に注目し調査を行ってきた。その結果,真珠腫症例全体の約25%にMagnusonの説を裏付ける鼻すすり癖が認められ15),上鼓室陥凹例でも20%に鼻すすり癖を認めた。もちろん,鼻すすり説以外にも真珠腫の成因は複数存在する可能性があるものの,鼻すすり癖は真珠腫の重要な成因の1つであると考えられる。 本稿では,後天性真珠腫の耳管機能について耳管閉鎖障害の観点を中心として述べ,鼻すすり癖を有する真珠腫(以下,「鼻すすり真珠腫」)の取り扱いおよび治療について述べる。
著者
和田 仁 小林 俊光 未武 光子 豊島 勝
出版者
THE JAPAN OTOLOGICAL SOCIETY
雑誌
Ear Research Japan (ISSN:02889781)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.67-69, 1988 (Released:2011-08-11)
参考文献数
6

Temporal bones are extracted from fresh cadavers, and the condition of only the ear-drum attachment to the temporal bone is made. Then, the dynamical characteristics of the ear-drum of the specimen are measured with a newly developed measuring apparatus. At the same time, applying the impedance theory of the tube to the external auditory canal and the energy method to the ear-drum, the equation corresponding to the output of the apparatus is obtained. Comparing the measurement results and the numerical results, the Young's modulus EE and Damping parameterξE=cE/2 (mEkE) 1/2 are determined to be EE=3.25×108 dyn/cm2 andξE=0.158.
著者
谷川 嘉伸 中山 良幸 石崎 健史 林 俊光 星 徹
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.197-198, 1995-09-20

LANの発展とパソコンの低価格化と高性能化に伴い,物理的に離れた人と同じ画面を見ながらリアルタイムに打ち合わせることを可能にする電子対話システム(例えば,パソコンベースのデスクトップ会議システム)が普及しつつある.従来のシステムでは,着信した電子メールに対して,電子対話で返信する場合に,電子メールアドレスとは異なるアドレス体系をもつ送信元の電子対話アドレスを調べたり,そのアドレスに対して電子対話の接続操作を行うといった繁雑な手続きをする必要があった.報告者らは,アドレス変換機能と電子メール内の送信者アドレス情報を取得するための電子メールシステムとの通信機能の方式を検討し,着信した電子メールに対して,簡単な操作で即座に電子対話で返信できる電子対話システムを提案する.
著者
西川 仁 日高 浩史 工藤 貴之 小林 俊光
出版者
日本鼻科学会
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.481-488, 2012
被引用文献数
1

2003年から2011年の9年間に入院加療を要した鼻出血症例203例の検討を行った。男女比は2:1で,50~70歳代に多く,また冬季から春季に多く,夏季に少ない傾向であった。出血部位は,部位不明47%,キーゼルバッハ24%,下鼻道および中鼻道が各々8%であった。初回時の止血方法は,ガーゼタンポン55%,電気焼灼29%,バルーンタンポン8%であった。再出血症例は46%に認められ,再出血なしの症例と比較して,キーゼルバッハ例や電気焼灼例の割合が有意に低く,出血部位不明例やガーゼタンポン例の割合が有意に高かった。基礎疾患および出血素因となる薬剤の服用は,再出血症例との関連がなかった。入院理由は,止血困難な絶対的入院適応が13%のみで,他は反復性のため24%,処置時意識障害22%,不安等の入院希望13%と経過観察目的の入院が多かった。平均入院期間は7.8日であり,再出血症例で10.4日,再出血なしの症例で5.8日であった。経過観察目的入院の症例でも再出血例が多く,また,再出血症例の全てが4日以内の再出血であり,入院経過観察期間として4日間(5日目の退院)が妥当と考えた。出血部位不明症例の初回治療はガーゼタンポン67%(再出血率74%),バルーンタンポン15%(再出血率50%)であったが,54%に入院中出血部位が判明できた。迅速に対応し出血部位を同定できることが入院加療の利点と考えた。<br>
著者
小林 俊光 八木沼 裕司 末武 光子 高橋 由紀子
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.342-346, 1997-06-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
18

耳管閉鎖不全に基づく耳疾患には, 鼓膜に異常のない耳管開放症のほかに, 中耳真珠腫, 滲出性中耳炎, 中耳アテレクタシスなどがある。中耳真珠腫の25%に耳管閉鎖不全に基づく鼻すすり癖が誘因と考えられる症例が認められた。診断に当たっては, 耳管閉鎖不全の存在を疑うことが重要であり, とくに真珠腫では両側耳に病変のある弛緩部型真珠腫, 滲出性中耳炎では鼓膜内陥の強い貯留液の少ない症例においては, 鼻すすり癖の綿密な問診と鼻すすり時の鼓膜内陥また中耳腔陰圧形成の確認が必要である。治療に当たっては, 鼻すすり癖と病変の関係を患者に理解させることが, 再発防止に重要である。重症例では開放耳管に対する治療が主病変の治療とともに必要であり, 開放耳管の効果的治療法の開発が待望される。
著者
西川 仁 日高 浩史 工藤 貴之 小林 俊光
出版者
Japan Rhinologic Society
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.481-488, 2012 (Released:2012-12-27)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

2003年から2011年の9年間に入院加療を要した鼻出血症例203例の検討を行った。男女比は2:1で,50~70歳代に多く,また冬季から春季に多く,夏季に少ない傾向であった。出血部位は,部位不明47%,キーゼルバッハ24%,下鼻道および中鼻道が各々8%であった。初回時の止血方法は,ガーゼタンポン55%,電気焼灼29%,バルーンタンポン8%であった。再出血症例は46%に認められ,再出血なしの症例と比較して,キーゼルバッハ例や電気焼灼例の割合が有意に低く,出血部位不明例やガーゼタンポン例の割合が有意に高かった。基礎疾患および出血素因となる薬剤の服用は,再出血症例との関連がなかった。入院理由は,止血困難な絶対的入院適応が13%のみで,他は反復性のため24%,処置時意識障害22%,不安等の入院希望13%と経過観察目的の入院が多かった。平均入院期間は7.8日であり,再出血症例で10.4日,再出血なしの症例で5.8日であった。経過観察目的入院の症例でも再出血例が多く,また,再出血症例の全てが4日以内の再出血であり,入院経過観察期間として4日間(5日目の退院)が妥当と考えた。出血部位不明症例の初回治療はガーゼタンポン67%(再出血率74%),バルーンタンポン15%(再出血率50%)であったが,54%に入院中出血部位が判明できた。迅速に対応し出血部位を同定できることが入院加療の利点と考えた。
著者
綿貫 幸三 高坂 知節 草刈 潤 古和 田勲 西条 茂 小林 俊光 新川 秀一 飯野 ゆき子 六郷 正暁 柴原 義博 富岡 幸子 佐久間 眞弓 粟田口 敏一 三好 彰 荒川 栄一 橋本 省 大山 健二 原 晃 沖津 卓二 郭安 雄
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.85, no.7, pp.766-776, 1982
被引用文献数
6

The laryngeal cysts were treated in 14 cases in our in-patient clinic during the last 9 years and 8 months between the April 1972 and the December 1981. The laryngeal cysts at the vocal cord were excluded in this study. The clinical, histological and some other findings of these cysts were briefly described. After some considerations regarding the origin and the developing mechanism of the cysts, a new classification of the laryngeal cysts was proposed as follows. <br>Laryngeal cysts. <br>1) Retention cysts: The cysts due to stenosis of the glands, their ducts, lymph vessels or other similar structures. <br>2) Epidermoid or dermoid cysts: The cysts due to stray germs, implantation or the result of down growth with separation and eventual isolation of a fragment of epidermis or dermis. They may also due to dysontogenesis of a foetal epithelial tissue. Dermoid cysts are extremely rare. <br>3) Cysts of a special origin: Branchiogenic cysts, thyroglossal duct cysts, and cysts of laryngocele origin.
著者
菊地 俊彦 高村 博光 藤山 大佑 須賀 美奈子 石丸 幸太郎 高野 潤 神田 幸彦 小林 俊光 吉見 龍一郎
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.251-255, 2001-07-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
16

アンギオテンシン変換酵素阻害剤 (ACE阻害剤) およびアンギオテンシンII受容体拮抗薬の重大な副作用として血管性浮腫の存在が知られている。今回、われわれは、ACE阻害剤の一つであるマレイン酸エナラプリルを内服後、重篤な喉頭浮腫を来した1症例を経験した。患者は62歳、男性で、マレイン酸エナラプリルの投与開始後、約1週間で発症しており、舌、喉頭および顎下部に高度の浮腫性病変を呈していた。ステロイドの投与およびマレイン酸エナラプリルの投与中止により治癒せしめることができた。現在、ニフェジピンにより血圧のコントロールを行っているが、血管浮腫の再発もみられず、経過良好である。このように、ACE阻害剤およびアンギオテンシンII受容体拮抗薬の投与により、時に致死的な高度の浮腫性病変を来すことがあるため、われわれ耳鼻咽喉科医も本疾患の存在を十分に理解しておく必要があろう。
著者
小林 俊光 川瀬 哲明 吉田 尚弘 大島 猛史 和田 仁 鈴木 陽一
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

耳管開放症の疫学研究を行った。とくに慢性腎不全に伴う腎透析患者における耳管開放症の発症の実態を調査した。その結果、腎透析を行った147人中13人(8.8%)が透析後に耳管開放症を発症したことが透析病院での検診結果で判明した(Kawase T, et al.:参考文献)。腎透析と耳管開放症の関係を示した世界で初めての報告である。耳管開放症の画像診断を検討した。その結果、座位で行うCTが有用で臨床応用可能であることを示した。また、バルサルバ法の負荷によって、診断精度が向上することを示し、臨床的な重症度ともよく相関することを示した(Kikuchi T, et al.:参考文献)。耳管開放症・耳管閉鎖障害に影響する因子としての聴力の影響を検討した。その結果、耳管開放症の症状は難聴があると、軽減つることが判明した。例えば、鼓膜穿孔、耳硬化症、真珠腫などのために伝音難聴があると、経耳管的に中耳に伝達され知覚される自声が低く知覚されるために、耳管開放症の症状が軽減する。しかし、一度、手術などの治療によって、聴力が改善すると、知覚される自声が大きくなり、不快な症状が自覚されることとなる。このような病態を潜在性(隠蔽性)耳管開放症と新しく提唱した。中耳真珠腫においても、以上のメカニズムが働いているかどうかを、真珠腫新鮮例171例において検証した。真珠腫の中には約30%の鼻すすり型耳管開放症が含まれているが、鼻すすり(+)群と鼻すすり(-)群の聴力の比較を行ったところ、鼻すすり(+)群が有意に聴力は良好であった。また、術後に鼻すすりを継続した群は鼻すすりを停止した群よりも有意に聴力が良好であった。つまり、鼻すすり癖の停止、継続には、聴力が影響すること、そしてそれは自声強聴を知覚する度合いの違いによるものと解釈された(Hasegawa J, et al.:参考文献)。
著者
浅野 太 鈴木 陽一 曽根 敏夫 林 哲也 佐竹 充章 大山 健二 小林 俊光 高坂 知節
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.373-379, 1991-06-01
被引用文献数
28

単一のディジタルフィルタを用いて、入力のスペクトルの変化に追従し、出力信号を装用者の聴野内に収めるよう増幅特性が変化する補聴方式を提案する。更に、ディジタルシグナルプロセッサを用いて本方式を実時間で実現するシステムの構築法を述べる。また、システムの評価を行うため、模擬難聴耳3例、感音系難聴耳2例に対し、単音節明瞭度試験を行った結果についても報告する。この評価実験から、特に、健聴耳に比べて聴野の狭い感音系の難聴者に対し、本システムによる聴野の拡大の効果が示された。