著者
松本 亮介 三宅 悠介 力武 健次 栗林 健太郎
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2017-IOT-37, no.1, pp.1-8, 2017-05-18

インターネットの利用に際して,ユーザーや企業においてセキュリティ意識が高まっている.また,HTTP のパフォーマンス上の問題を解消するために,HTTP/2 が RFC として採択された.それらを背景に,常時 HTTPS 化が進む中で,高集積マルチテナント方式の Web サーバで管理している大量のホストも HTTPS 化を進めていく必要がある.同方式は単一のサーバプロセスで複数のホストを管理する必要があるが,Web サーバの標準的な設定を用いて事前にホスト数に依存した数の証明書を読み込んでおく方法では,必要なメモリ使用量が増大することで,サーバプロセスの起動時や,CGI のようなプロセスの複製時に OS のページテーブルのエントリ数に依存するシステムコールの性能が著しく低下する.そこで,Server Name Indication (SNI) を利用可能である条件下において,事前にサーバプロセスに証明書を読み込んでおくことなく,SSL / TLS ハンドシェイク時にホスト名から動的にホストに紐づく証明書を読み込み,メモリ使用量を低減させる手法を提案する.実装には,我々が開発した,mruby を用いて高速かつ少ないメモリ使用量で Web サーバの機能を拡張するモジュール ngx mruby を採用して,動的にサーバ証明書を選択する機能を実装した.また,サーバ証明書データは,Redis によるキャッシュサーバによって管理し,本手法の有効性を評価した.
著者
足立 勝 中林 健一 東 理恵 倉田 裕文 高橋 芳弘 下川 敬之
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.1139-1145, 1999-11-15
被引用文献数
4 7

暗所下においてエチレン処理したカイワレダイコン(Raphanus sativus L.)子葉の脱緑機構を明らかにするために, クロロフィルαの分解を子葉のタンパク質を用いて検討した.粗酵素はエチレンにより脱緑が誘導されたカイワレダイコン子葉から調製した.クロロフィルα分解酵素は, H_2O_2-2, 4-ジクロロフェノール/pクマリン酸依存であった.クロロフィルα分解反応の最初の分解産物はHPLCとHPTLC分析により分析された.その分解産物が標準C-13^2-ヒドロキシルークロロフィルαのRf値/リテンションタイムと同じことよりC-13^2-ヒドロキシルークロロフィルαのRf値/リテンションタイムと同じことよりC-13^2-ヒドロキシルークロロフィルαと同定された.C-13^2-ヒドロキシルークロロフィルα生成反応はアスコルビン酸(2mM)そしてKCN(2mM)の添加により完全に阻害された.しかし, 嫌気性条件下では阻害されなかった.つまり, C-13^2-ヒドロキシルークロロフィルα生成酵素は, H_2O_2を利用した1原子酸素添加反応を触媒するペルオキシゲナーゼまたは, ペルオキシゲナーゼ作用を持つペルオキシダーゼの一種であると考えられる.さらに, 三次元蛍光分光解析により無色の蛍光クロロフィル代謝産物(FCC : Ex 350 nm/Em 455 nm)がクロロフィルαの分解につれて生成されることが明らかとなった.以上の結果よりクロロフィルαはカイワレダイコン子葉より調製したタンパク質により, 以下の反応で分解されることが示唆された.Chl α→C-13^2-HO Chl α→→colorless Rs-FCC(無色の蛍光クロロフィル代謝酸化開環産物).
著者
金折 裕司 小林 健治 安野 泰伸 割ヶ谷 隆志 山本 哲朗
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.220-230, 1999-10-10 (Released:2010-02-23)
参考文献数
27
被引用文献数
1 3

1997年6月25日に発生した山口県北部地震 (M6.1) の震央付近の阿武川河床で確認された断層露頭の性状を記載するとともに, 地震動による家屋被害のデータを再検討し, 震源断層と断層露頭や被害域との関係を議論した. 断層露頭は地質境界として指摘されていた迫田-生雲断層の北東端付近に位置し, NE-SW方向で幅5m以上のカタクレーサイト化したゾーンが発達している. このゾーン内部には最大幅50cmの断層ガウジ帯が “杉” 型に雁行配列して発達し, 右横ずれの運動センスを示唆する. この運動センスは山口県北部地震の発震機構と一致した. さらに, この地震の余震は迫田-生雲断層北東部に集中する.家屋被害率を被害家屋総数/世帯数と定義し, 山口県阿武郡阿東町とむつみ村の地区 (字) ごとに被害率を計算した. 被害率の最も高かった生雲西分地区は震央の南西約5kmに位置し, 迫田-生雲断層上にあった. また, 被害域は生雲西分を中心とし, 迫田-生雲断層を軸とする半径10kmの円内に収まっている. これらのことから, 山口県北部地震は迫田-生雲断層北東部の活動で発生したことが裏付けられた.
著者
金折 裕司 小林 健治 安野 泰伸 割ヶ谷 隆志 山本 哲朗
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.220-230, 1999-10-10
参考文献数
27
被引用文献数
5 3

1997年6月25日に発生した山口県北部地震(M6.1)の震央付近の阿武川河床で確認された断層露頭の性状を記載するとともに, 地震動による家屋被害のデータを再検討し, 震源断層と断層露頭や被害域との関係を議論した.断層露頭は地質境界として指摘されていた迫田-生雲断層の北東端付近に位置し, NE-SW方向で幅5m以上のカタクレーサイト化したゾーンが発達している.このゾーン内部には最大幅50cmの断層ガウジ帯が"杉"型に雁行配列して発達し, 右横ずれの運動センスを示唆する.この運動センスは山口県北部地震の発震機構と一致した.さらに, この地震の余震は迫田-生雲断層北東部に集中する.家屋被害率を被害家屋総数/世帯数と定義し, 山口県阿武郡阿東町とむつみ村の地区(字)ごとに被害率を計算した.被害額の最も高かった生雲西分地区は震央の南西約5kmに位置し, 迫田-生雲断層上にあった.また, 被害域は生雲西分を中心とし, 迫田-生雲断層を軸とする半径10kmの円内に収まっている.これらのことから, 山口県北部地震は迫田-生雲断層北東部の活動で発生したことが裏付けられた.
著者
林 健太郎 久野 義徳 白井 良明
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.556-566, 1999-02-15
被引用文献数
9

本論文では 画像から抽出した上半身の3つの特徴点を基準とし 手の3次元位置 方向を計測する手法を提案する. 著者らが先に発表した手法では 3次元情報を計算する際に基準となるアフィン座標系を作るための4つの特徴点をユーザの体から抽出していた. このとき 4点は同一平面上にあってはならないので ユーザの姿勢は大きな拘束を受けていた. 本論文では アフィン座標系を作る特徴点のうちの3点を体上にとり その3点が作る平面の法線上の1点を仮想的な4点目とする. このようにすれば3つの特徴点でアフィン座標系が作れるので ユーザの姿勢を拘束しないヒューマンインタフェースを構築できる. 実験として シミュレーションによって仮想基準点を求める手法を検証する. また 応用例として本手法を用いたプレゼンテーションシステムを構築し ヒューマンインタフェースとして有効であることを示す.This paper describes a method to measure the user's 3D hand position and orientation using 3 features on the upper body of the user. The method proposed by the authors before used 4 feature points attached on the user's body. The user's pose was restricted because these 4 features must not be coplanar. Thus, we propose to use a virtual feature as the 4th feature, which is calculated by using the normal direction of the plane made by the 3 features. This method allows the user to move freely. The experimental results show that the proposed method is useful for the interface of presentation systems.
著者
林 健一
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.32, pp.17-29, 1986-03-25

文部省の海外学術調査により1984年7月から9月にかけてギルバート,ナウルとソロモン諸島を訪れ,調査の一員として甲殻類の採集を行った.今回はそのうちのテッポウエビ科とテナガエビ科を除くエビ類について簡単に報告する.低潮時にサンゴ礁上とその周辺の浅海域でスノーケルや一部SCUBAを使って採集を行った.調査標本は2亜目,5科,20種に分類された.ナウルの採集物の中には該当するエビ類は1種も発見できなかった.ソロモン諸島で採れたモエビ科の1種Hippolyte sp.は既知種のどれにも一致しなかった.クルマエビ科の唯一の種であるMetapenaeopsis tarawaensisはその名前の通り,タラワ環礁が基産地であり,今回はアベママ環礁で採集されたが,この科のものとしては特異な分布を示し,キリバス以外からは報告がない.その他の種類はほとんどインド西太平洋種で,広い分布域を持つ.ただモエビ科の2種とオトメエビ科の2種は稀であり,今回の標本がそれぞれ2〜3回目の報告となる.日本にはこのうちの13種が分布している.
著者
神尾 幸則 稲葉 行男 渡部 修一 小山 基 大江 信哉 林 健一 千葉 昌和
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.35, no.10, pp.1634-1638, 2002-10-01
被引用文献数
10

症例は84歳の女性.脳梗塞の既往があり,心房細動,うっ血性心不全で近医通院中.腹痛,嘔気が出現し,イレウスの診断で入院となった.大腸内視鏡検査でイレウスの原因が直腸S状部の2型腫瘍のためであると判明したため,経肛門的に腫瘍口側にイレウスチューブを留置した.肝機能異常のため手術を延期していたが,入院20日目,腹痛出現,翌日には腹膜刺激症状を認め,緊急手術を施行した.開腹すると膿性腹水が骨盤内を中心に貯留しており,腹膜炎の原因は腫瘍直上の口側腸管の穿孔と判明した.手術はハルトマン手術を施行した.標本を切開したところ,癌腫の口側腸管に線状潰瘍とPTP包装薬剤を認めた.最近,PTP(press through package)誤飲による消化管損傷が増加しているが、大腸穿孔の例は本邦では5例と少なく.直腸穿孔は本症例が本邦初の報告である.
著者
渡辺 真吾 神谷 幸宏 梅林 健太 鈴木 康夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.135, pp.79-84, 2008-07-10

基地局等の固定インフラを使用せず,端末のみで通信が実現されるアドホックネットワークが注目を集めている.このシステムでは,送信元から宛先までデータパケットを送信するために近隣端末を中継するマルチホップ通信が用いられる.MACプロトコルには無線LANの標準規格であるIEEE802.11DCFが広く用いられているが,この方式は元々シングルホップ通信用に考案されたものであるため,マルチホップ通信には適さないということが指摘されている.この問題を改善しようといくつかの手法が提案されているが,これらの多くはマルチパスフェージングのような現実の無線環境が考慮されていない.よって既存の手法ではマルチパスフェージング環境においてその性能を大きく損なってしまう恐れがある.本稿ではIEEE802.11DCFよりも高効率かつマルチパスフェージングへの耐性を持つMACプロトコルの提案を行なう.
著者
石林 健一 崎村 祐介 俵 広樹 林 憲吾 加藤 嘉一郎 辻 敏克 山本 大輔 北村 祥貴 角谷 慎一 伴登 宏行
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.217-224, 2022-03-01 (Released:2022-03-31)
参考文献数
25

症例は45歳の女性で,20年前にくも膜下出血による水頭症に対して脳室腹腔シャント(ventriculoperitoneal shunt;以下,VPSと略記)挿入術が施行された.意識障害があり当院を受診し頭部CTで脳室拡大を認め,脳室ドレナージが施行された.VPSの閉塞が疑われ施行した全身CTでVPSチューブが上行結腸を穿通しており,治療目的に当科紹介となった.開腹するとチューブ状の繊維性被膜が上行結腸に付着しており,繊維性被膜を全周性に剥離するとVPSチューブが同定できた.VPSチューブを結紮,離断し,腸管に穿通しているカテーテルは抵抗なく抜去できた.腸管の瘻孔は縫合閉鎖した.VPSチューブ腹側端は髄液漏出を確認し,繊維性被膜内から出さずに閉腹した.術後第9病日に脳室ドレーン感染からの髄膜炎を来し,VPSチューブの全抜去を施行した.まれなVPSの消化管穿通の1例を経験したので報告する.
著者
小林 健二
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 = National Institure of Japanese Literature (ISSN:18802230)
巻号頁・発行日
no.37, pp.59-92, 2011-03-18

能《源氏供養》は『源氏供養草子』を典拠としていることが指摘されていたが、《源氏供養》は石山寺を供養の舞台とし、また供養の依頼者である紫式部が実は石山の観音であったという大きな相違を有する。本稿では、石山寺という紫式部伝承の磁場に注目し、紫式部が観音の化身であったとする言説や、源氏の間という特殊な宗教空間、崇拝の対象となったであろう紫式部画像、そして歌人達の紫式部を尊崇する文芸行為を通して、石山寺において源氏供養がなされていた可能性を追究し、《源氏供養》が制作された背景の一斑について考察した。Though it has been regarded that the Noh “Genji-kuyo” has its narrative source in “Genji-kuyo-soshi”, it also should be noted that the Noh differs from “Genji-kuyo-soshi” in two significant ways; one is that the site of Genji kuyo service is set at the Ishiyama-dera temple,and the second is that Murasaki Shikibu who requests the service is eventually found out to be Bodhisattva of Ishiyama. Focusing on Ishiyama-dera temple functioned as a sacred site of Murasaki Shikibu legend, this paper will point out, as a background of the Noh “Genji-kuyo production, the possibility that the Genji-kuyo service had actually been performed at Ishiyama-dera temple. I will examine the possibility by taking up the following points: the discourse which recognizes Murasaki Shikibu as an incarnation of Bodhisattva, the existence of Room of Genji in Ishiyama-dera temple as a particular ritual space, the pictorial imagery of Murasaki Shikibu which would have functioned as an object of worship, and the literary practices done by poetsthose who honor Murasaki Shikibu.
著者
栗林 健太郎 三宅 悠介 力武 健次 篠田 陽一
雑誌
インターネットと運用技術シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2021, pp.48-55, 2021-11-18

物理空間上のセンサーやアクチュエーター等のデバイスとサイバー空間上の計算処理とを架橋する IoT システムにおいては,物理空間とサイバー空間との間における双方向のデータフローの構成が重要な課題となる.デバイス層,エッジ層,クラウド層の 3 層からなる IoT システムのアーキテクチャーモデルにおいては,設計・実装における構造的な複雑さが課題となる.その要因として(1)プログラミング言語や通信プロトコルの選択肢が多様であること,(2)データの取得方式が多様かつデータフローが双方向性を持つ,(3)IoT システムの全体を通じたデータフローの見通しが悪くなることの 3 つがある.本研究は,課題のそれぞれに対して(1)3 層を同一のプログラミング言語と通信プロトコルを用いて統合的に設計・実装できる手法,(2)push,pull,demand 方式のいずれにも対応し使い分けられる基盤,(3)3 層からなるデータフローを一望のもとに把握できる記法を提案する.提案のそれぞれに対して(1)提案手法を用いて 3 層からなる IoT システムを実際に統合的に設計・実装できること,(2)提案手法を用いるとデータの取得方式のいずれにも容易に対応できること,(3)提案する記法がデータフロー全体を十分に表現できることを評価することで,提案手法の有効性を示す.
著者
橋口 一弘 若林 健一郎
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.123, no.1, pp.24-29, 2020-01-20 (Released:2020-02-05)
参考文献数
16

アレルギー性鼻炎の治療選択肢は近年増加してきたが, 薬物治療の中心となるのは第2世代抗ヒスタミン薬である. 抗ヒスタミン薬は第1世代と第2世代に分類されるが, 基本的な構造は共通である. 第1世代抗ヒスタミン薬の特徴として, 脂溶性が高く組織移行性が良好である. このため中枢移行しやすくなり, 眠気などの副作用を起こす. また H1 受容体に対する選択性が低いため, ムスカリン受容体, セロトニン受容体などアミン受容体に共通構造を持つほかのアミン受容体にも結合をする. 口渇, 食欲増進などの副反応はこのためである. こういった不要な反応を軽減することを目的として第2世代抗ヒスタミン薬が開発された. 第2世代抗ヒスタミン薬の特徴として, 脂溶性が低下し血中タンパク結合が多くなった. このため組織移行性が悪くなったが, 中枢移行が少なくなり眠気などの副作用が減った. H1 受容体に対する選択性が高くなったことから, ほかのアミン受容体への結合が少なくなり, 第1世代抗ヒスタミン薬で見られた副反応が減ってきた. 一方で組織移行性の低下なども見られることから, その効果には個人差があることも理解しておく必要がある. 近年経口剤ではなく, 投与経路を変更した貼付剤の抗ヒスタミン薬が開発されてきた. さまざまな投与法の選択肢が増えてきたことで, 第2世代抗ヒスタミン薬の特徴を理解し, 患者満足度を上げるように使用することが大事である.
著者
常田 賢一 小田 和広 中平 明憲 林 健二 依藤 光代
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
地震工学論文集 (ISSN:1884846X)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.596-604, 2007 (Released:2010-11-22)
参考文献数
7
被引用文献数
4

地震時の道路では路面の段差により車両の走行機能が阻害されるが, 社会的影響の低減のためには, 特に一般車両の迅速な開放が必要である. そのためには, 段階的な補修とそのレベルに応じた車両の解放が有効であるが, このような性能評価型道路管理の視点による補修, 交通開放の基準は明確でない.本研究は既往地震での地震直後の交通規制から解除までの運用の現状を把握するとともに, 地震時に発生する段差に関して, 模擬段差に対する車両の走行実験を行い, 段差通過時の車両の挙動, 段差量と車両の走行速度の関係, 段差通過時のドライバーの意識を明らかにした. また, 地震直後の交通止めから通常走行までの段階的な補修水準および車両の種類, 車両の走行速度に応じた交通開放の運用方法を提示した.
著者
江川 香奈 内田 聡 野田 五十樹 依田 育士 堀内 義仁 小林 健一 筧 淳夫 長澤 泰
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.76, no.669, pp.2057-2064, 2011
被引用文献数
2

The study aims at finding out potential capacity for admitting casualties suffering from devastating disasters occurred in the vicinity of hospitals within a limited time frame during ordinary day to day hospital services. Three stages of analysis on admitting casualties were carried out. As the results, quite significant implications were obtained, inter alia, number of CTs / X-rays as well as the treatment space are found to be critical factors in order to complete the treatment of casualties in limited period of time.
著者
小林 健彦
出版者
新潟産業大学経済学部
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 = Bulletin of Niigata Sangyo University Faculty of Economics (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.58, pp.55-83, 2021-06

日本では、古来、様々な自然災害―大雨、洪水、土石流、地滑り、地震、津波、火山噴火、雪害、雹、暴風雨、高波、高潮、旱害、冷害、蝗害等、そして、人為的災害―疫病流行、戦乱、盗賊・海賊、略奪行為の発生等々、数え切れない程の災害が人々を襲い、彼らは忍耐を伴ないながらも、その都度、復旧、復興しながら、現在へと至る国家や、その基盤となって来た地域社会を形成、維持、発展させて来た。世界史的に見ても、日本はあらゆる災害の多発地であったし、その様相は現在でも変わりは無いのである。ここに住む限りに於いては、そうした災異は誰にでも降り懸かって来ていたのである。それ故の、独特で、固有の感性=対災異観を、ここに住み続けて来た人々は伝統的に醸成して来たと言うことができる。本稿では、今回、同時に発表している別稿(本誌掲載「「土左日記」に見る災異観 ~祈りのかたち~」)と共に、日本に於ける対災異観や、災害対処の様相、及び、思想を、意図して作られ、又、読者の存在が想定された「文学作品」を素材としながら、「災害対処の文化論」として窺おうとしたものである。作品としての文学に、どの様な災異観の反映が見られるのか、否かに関して、追究を試みた。今回、具体的な素材としては、紀貫之の筆に依るものと見られる「土佐日記」を取り上げ、そこに見られる「年中行事と習俗」を元にしながら、対災異観を明らかにしたものである。
著者
小林 健彦
出版者
新潟産業大学経済学部
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 = Bulletin of Niigata Sangyo University Faculty of Economics (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.58, pp.27-54, 2021-06

日本では、古来、様々な自然災害―大雨、泥雨、洪水、浸水、土石流、地滑り(陸上・水底)、地震、津波、火山噴火、大雪、雪崩、雹、台風(大風)、暴風雨、竜巻(辻風)、落雷、高波、高潮、旱害、低温、高温、蝗害、黄砂、飛砂、塩害、山火事等、そして、人為的災害―疫病流行、戦乱、火災(失火)、盗賊・海賊、略奪行為の発生等々、数え切れない程の災害が人々を襲い、彼らは忍耐を伴ないながらも、その都度、復旧、復興しながら、現在へと至る国家や、その基盤となって来た地域社会を形成、維持、発展させて来た。文字認知、識字率が必ずしも高くはなかった近世以前の段階に在って、人々は口承、地名、石造物等の方法論を以って、そうした災害情報を後世へ伝達するべく、多大なる努力を払っていたものと見られる。カナ文字(ひらがな)が一般化する様になると、記録としての個人の日記や、読者の存在を想定した物語、説話集、日記、紀行等、文学作品の中でも、各種の災害情報が直接、間接的に記述される様になって行った。しかしながら、文学作品中に描写された災害事象が全て事実であったとは言い難い。ただ、最初から嘘八百を並べたものでは読者からの支持を得られる筈も無く、その作成に際しては、素材となる何らかの事象(実際に発生していた災害事象)を元にして描かれていたことは十分に考慮されるのである。従って、文学作品中には却って、真実としての、当時の人々に依る対災異観や、思想が包含されて反映され、又は、埋没していることも想定されるのである。本稿では、こうした点に鑑み、日本に於ける対災異観や、災害対処の様相、及び、思想を、意図して作られ、又、読者の存在が想定された「文学作品」を素材としながら、「災害対処の文化論」として窺おうとしたものである。作品としての文学に、どの様な災異観の反映が見られるのか、否かに関して、追究を試みた。今回、具体的な素材としては、紀貫之の筆に依るものと見られる「土佐日記」を取り上げ、そこに見られる「祈りのかたち」を明らかにしたものである。
著者
小林 健彦
出版者
新潟産業大学経済学部
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 = BULLETIN OF NIIGATA SANGYO UNIVERSITY FACULTY OF ECONOMICS (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.57, pp.81-103, 2021-01

日本では、古来、様々な自然災害や人為的災害が人々を襲い、人々はその都度、復旧、復興させながら、現在へと至る地域社会、国家を形成、維持、発展させて来た。日本は列島、付属島嶼を主体とした島嶼国家であり、そこでは「水災害」が多く発生していたが、こうした地理的理由に依る自然災害や、人々の活動に伴う形での人為的な災害等も、当時の日本居住者に無常観・厭世観を形成させるに十分な要素として存在したのである。文字認知、識字率が必ずしも高くはなかった近世以前の段階でも、文字を自由に操ることのできる限られた人々に依った記録、就中(なかんづく)、災害記録は作成されていた。特に古い時代に在って、それは宗教者(僧侶や神官)や官人等に負う処が大きかったのである。正史として編纂された官撰国史の中にも、古代王権が或(あ)る種の意図を以って、多くの災害記録を記述していた。ここで言う処の「或る種の意図」とは、それらの自然的、人為的事象の発生を、或る場合には自らの都合の良い様に解釈をし、加工し、政治的、外交的に利用、喧伝することであった。その目的は、災害対処能力を持ちうる唯一の王権として、自らの「支配の正当性、超越性」を合理的に主張することであったものと考えられる。それ以外にも、取り分け、カナ文字(ひらがな)が一般化する様になると、記録としての私日記や、読者の存在を想定した物語、説話集、日記等、文学作品の中に於いて、各種の災害が直接、間接に記述される様になって行った。ただ、文学作品中に描写された災害が全て事実であったとは言い難い。しかしながら、それも最初から嘘八百を並べたものではなく、素材となる何らかの事象(実際に発生していた災害)を元にして描かれていたことは十分に考えられるのである。従って、文学作品中には却って、真実としての、当時の人々に依る対災害観や、ものの見方が反映され、包含されていることが想定される。都が平安京(京都市)に移行する以前の段階に於いては、「咎徴(きゅうちょう)」の語が示す中国由来の儒教的災異思想の反映が大きく見られた。しかしながら、本稿で触れる平安時代以降の段階に在って、それは影も形も無くなるのである。その理由に就いては、はっきりとはしていない。しかしその分、人々に依る正直な形での対自然観、対災害観、対社会観の表出が、文学作品等を中心として見られる様になって来るのである。本稿では、以上の観点、課題意識より、日本に於ける対災害観や、災害対処の様相を、意図して作られ、又、読者の存在が意識された「文学作品」を素材としながら、文化論として窺おうとしたものである。作品としての文学に如何なる災異観の反映が見られるのか、見られないのかに関して、追究を試みた。今回、具体的素材としては「伊勢物語」を取り上げながら、この課題に取り組んだものである
著者
小林 健彦
出版者
新潟産業大学経済学部
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 = Bulletin of Niigata Sangyo University Faculty of Economics (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.57, pp.123-178, 2021-01

日本では、古来、様々な自然災害―大雨、洪水、土石流、地滑り、地震、津波、火山噴火、雪害、雹、暴風雨、高波、高潮、旱害、冷害、蝗害等、そして、人為的災害―疫病流行、戦乱、盗賊、略奪行為の発生等々、数え切れない程の災害が人々を襲い、人々はその都度、復旧、復興しながら、現在へと至る地域社会を形成、維持、発展させて来た。日本に於ける地理的理由に起因した形での自然災害や、人の活動に伴う形での人為的な災害等も、当時の日本居住者に無常観・厭世観を形成させるに十分な要素として存在したのである。文字認知、識字率が必ずしも高くはなかった近世以前の段階でも、文字を自由に操ることのできる限られた人々に依った記録、就中(なかんづく)、災害記録は作成されていた。特に古い時代に在って、それは宗教者(僧侶や神官)や官人等に負う処が大きかったのである。カナ文字(ひらがな)が一般化する様になると、記録としての個人の日記や、読者の存在を想定した物語、説話集、日記等、文学作品の中でも、各種の災害が直接、間接に記述される様になって行った。ただ、文学作品中に描写された災害が全て事実であったとは言い難い。しかしながら、素材となる何らかの事象(実際に発生していた災害)を元にして描かれていたことは十分に考えられるのである。従って、文学作品中には却って、真実としての、当時の人々に依る対災害観や、ものの見方が包含されて反映され、又は、埋没していることも想定されるのである。本稿で触れる平安時代以降の段階に在っては、人々に依る正直な形での対自然観、対災害観、対社会観の表出が、文学作品等を中心として見られる様になって来るのである。以上の観点、課題意識より、本稿では日本に於ける対災害観や、災害対処の様相を、意図して作られ、又、読者の存在が意識された「文学作品」を素材としながら、文化論として窺おうとしたものである。作品としての文学に如何なる災異観の反映が見られるのか、見られないのかに関して、追究を試みることとする。又、それらの記載内容と、作品ではない(古)記録類に記載されていた内容に見られる対災害観との対比、対照研究をも視野に入れる。