著者
大橋 幸子 小林 寛
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.592-599, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
8

交通安全に寄与する屈曲部(シケイン)の活用の幅を広げることを目的に、本研究では、一般的な幅員の歩車共存道路に設置が可能で、速度抑制効果を有する屈曲部の形状を示すことを目指した。研究では、屈曲間隔や横断面構成の異なる複数の屈曲部を試験用走路で被験者に走行させ、速度抑制効果、運転の安定性、車両の走行位置を調査した。それらの結果をもとに、速度抑制効果を有し、低速での運転が困難ではなく、走行位置にも特段問題のない屈曲部の形状を示した。併せて、白線より駒止のほうが心理的な速度抑制効果が高いことを示した。また、屈曲間隔が狭いほうが速度抑制につながることなど、屈曲部を構成する各要素が車両の速度抑制に与える影響を確認した。
著者
楠本 泰士 藤井 香菜子 林 寛人 高木 健志 網本 さつき 松田 雅弘 新田 收
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.181-188, 2020 (Released:2020-04-20)
参考文献数
21

【目的】痙直型脳性麻痺患者における日本語版Trunk Impairment Scale(以下,TIS)の信頼性と構成概念妥当性を検証することを目的とした。【方法】完成した日本語版TIS を用いて検者内,検者間信頼性は20 名で検討した。構成概念妥当性は69 名に対して,TIS と粗大運動能力分類システム(以下,GMFCS)との相関関係を調査した。【結果】検者内,検者間ともに級内相関係数は0.90 ~0.99 だった。検者内の最小可検変化量(以下,MDC)は,静的,動的座位バランス,協調動作,合計点の順に0.44,1.35,0.44,0.96だった。検者間のMDC は1.54,1.97,1.15,2.37 だった。GMFCS との相関係数は–0.63,–0.76,–0.30,–0.74 だった。【結論】痙直型脳性麻痺患者における体幹機能検査として,日本語版TIS は良好な信頼性があり,構成概念妥当性が支持された。
著者
北岡 さなえ 小林 寛和 金村 朋直 岡戸 敦男 横江 清司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C3O3046, 2010

【目的】膝前十字靱帯(ACL)損傷の受傷機転に関する報告は、1980年代より数多くなされており、ACL損傷の予防に役立つ知見が得られている。有効な外傷予防策を実践するためには、動作の特徴を含めた、スポーツ活動時の代表的な受傷状況を明らかにし、関係する要因を整理していくことが重要となる。我々は、過去20年間、ACL損傷の予防策につなげるための基礎的知見を得るために、受診者に対して、受傷状況の詳細な聞き取り及び再現調査を行ってきた。今回は、過去の報告にはない多数の女子バスケットボール選手を対象とした、ACL損傷の受傷状況に関する調査について報告する。<BR>【方法】1988年6月より2008年6月の20年間に、財団法人スポーツ医・科学研究所を受診し、ACL損傷と診断され、理学療法を施行した女子バスケットボール選手320名を対象とした。対象の年齢は16.4±7.9歳、身長は164.1±7.9cm、体重は58.0±8.7kg(平均±標準偏差)であった。理学療法の診療記録より、ACL損傷の受傷状況に関する2つの項目について抽出して分類、集計をした。<BR>調査1:受傷時のプレイ 受傷時のプレイ及び局面について分類した。プレイ及び局面は、「オフェンス」、「ディフェンス」、「その他」、「不明」に区分した。「その他」は、「オフェンス」、「ディフェンス」に分けることができないルーズボールやリバウンド中のプレイとし、「不明」は明示することができなかった場合とした。<BR>調査2:受傷時の動作 「オフェンス」、「ディフェンス」における受傷時の詳細な動作について分類した。動作は、「ジャンプ着地」、「ジャンプ踏切」、「ストップ」、「ターン」、「側方移動」、「コンタクト」、「その他」、「不明」に区分した。<BR>【説明と同意】本研究は、財団法人スポーツ医・科学研究所倫理審査委員会の承認のもとに実施した。対象の個人情報の取り扱い等については十分に配慮した。<BR>【結果】調査1:受傷時のプレイ 受傷に関係したプレイ及び局面は、「オフェンス」170名(53.1%)、「ディフェンス」52名(16.3%)、「その他」27名(8.4%)、「不明」71名(22.2%)であった。<BR>調査2:受傷時の動作 「オフェンス」では「ジャンプ着地」が最も多く、50名(29.4%)であった。以下「ストップ」34名(20.0%)、「側方移動」28名(16.5%)、「ジャンプ踏切」19名(11.2%)、「ターン」17名(10.0%)、「コンタクト」13名(7.6%)と続いた。「ディフェンス」では「ストップ」が最も多く、13名(25.0%)であった。以下「ターン」11名(21.2%)、「コンタクト」8名(15.4%)、「ジャンプ着地」7名(13.5%)、「側方移動」7名(13.5%)、「ジャンプ踏切」1名(1.9%)であった。<BR>【考察】受傷に関係したプレイは、「オフェンス」が半数以上を占めていた。スポーツ外傷は、個人が有する内的要因や床面などの外的要因に、ボールや他者の動きなどの様々な状況変化が加わることにより、身体への負荷が強まって発生に至るとされる。したがって、瞬時に相手の動きに反応して動作を遂行する「ディフェンス」時の受傷が多いことを予測した。しかし、実際は「オフェンス」時の受傷が多くなっていた。受傷時の動作は、減速性の動作が上位を占めたが、「オフェンス」と「ディフェンス」ではその傾向が異なっていた。「ディフェンス」で最も多かった受傷時の動作は「ストップ」であった。「ディフェンス」では、ボールを持った選手の動きに反応し、急激な減速、ストップをせざるを得ない状況が強いられ、これに対応できない際に受傷すると考えられる。一方、「オフェンス」では「ジャンプ着地」での受傷が多かった。「ジャンプ着地」はACL損傷の受傷が多い動作として知られ、受傷時の動作の特徴について検討が重ねられている。「オフェンス」におけるジャンプを伴うプレイとしてシュートやパスキャッチがあげられるが、これらのプレイでは、ボールやゴールとの位置関係、他者の存在、次のプレイへの準備、空中でのコンタクトなどがジャンプ着地時の動作に影響し、受傷に至ることが推察される。今後、さらに受傷時の状況を細分化し、加わった外力、外傷発生時のアライメント等との関連についても詳細に検討を行い、動作に影響を与える要因を明確にしていきたい。<BR>【理学療法学研究としての意義】本研究では、300名を超える女子バスケットボール選手を対象として、ACL損傷の受傷状況について調査し、受傷時のプレイや動作に関する傾向を見出した。この結果は、理学療法士が女子バスケットボール選手に対して有効なACL損傷予防策を企画、実践していく上での、基礎資料になるものと考える。
著者
木村 昭夫 五十嵐 英夫 潮田 弘 奥住 捷子 小林 寛伊 大塚 敏文
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.223-230, 1993
被引用文献数
7 3

全国国立大学付属病院より分離収集された黄色ブドウ球菌430株を, コアグラーゼ型別に加えてエンテロトキシン (SE) 並びにToxic Shock Syndrome Toxin-1 (TSST-1) 産生性をマーカーとして疫学的に細分し, これらの疫学マーカーと10種抗菌剤に対する感受性の関連性について調査した. 全黄色ブドウ球菌はVCMに感受性であった。OFLXには, コァグラーゼII型-SEA+SEC+TSST-1産生株は高度耐性傾向を示したが, 他の株では約半数が感受性であった. FMOXに対して, コアグラーゼIV型-SEA産生株では感受性菌が78%に認められた。しかし, コアグラーゼII型-SEA+SEC+TSST-1産生株には, 感受性菌は存在しなかった. IPMに対して, コアグラーゼIV型-SEA産生株, コアグラービIII型-毒素非産生株およびコアグラーゼII型-毒素非産生株においては, 50%以上の感受性菌が認められた。しかし, コアグラービII型-SEC+TSST-1産生株およびコアグラーゼII型-SEA+SEC+TSST-1産生株では耐性化が進んでいた。MINOに対して, コアグラーゼIII型-毒素非産生株およびコアグラーゼII型-毒素非産生株は良好な感受性を示した。しかし, コアグラービII型-SEC+TSST-1産生株およびコアグラーゼIV型-SEA産生株では中間的な感受性を示し, コアグラーゼII型-SEA+SEC+TSST-1産生株では感受性が著しく低かった。STに対して, コアグラーゼIV型-SEA産生株は耐性化が進行していたが, 他の株は良好な感受性を示した。
著者
進藤 順治 小林 寛
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.79-81, 2003 (Released:2018-05-04)
参考文献数
11

フンボルトペンギンの舌骨装置を観察した。中舌骨はすべて軟骨で構成され舌組織に埋没し,舌と同様に矢尻型を呈していた。底舌骨は短く,後舌骨と癒合していた。舌骨角のうち,角は中舌骨後方で小さく突出し,鰓角は角鰓骨と上鰓骨から構成され,その比は約3:1であった。フンボルトペンギンの中舌骨はすべて軟骨から成り,底舌骨と後舌骨の癒合は,この種の特徴であると思われた。
著者
酒谷 薫 岡本 雅子 小林 寛道 辻井 岳雄
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

現代社会に蔓延するストレスは、様々な疾患の主要原因の一つである。本研究では、近赤外分光法(NIRS)を用いて、前頭前野の神経活動を計測し、自律神経系・内分泌系機能及び心理状態とともに、ストレスを客観的に評価する方法を開発した。さらに本法を用いて、中高齢者における運動療法のストレス緩和効果について検討し、軽い運動でもストレス緩和効果があることを明らかにした。さらに高齢者に軽い運動を負荷することにより、前頭前野のワーキングメモリー課題に対する反応性が上昇し、パフォーマンスが向上することが示唆された。本ストレス評価法と運動療法を組み合わせることにより、ストレス性疾患を予防できる可能性がある。
著者
平部 正樹 小林 寛子 藤後 悦子 藤本 昌樹
出版者
学校法人 三幸学園 東京未来大学
雑誌
東京未来大学研究紀要 (ISSN:18825273)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.167-178, 2016

<p><b> </b> 本研究では通信制高校の生徒を対象とし、入学前・後の心の問題に関わる体験や、精神健康の実態把握のための調査を行った。対象は、私立の広域通信制高校2 キャンパスに所属する全生徒1,086 人であった。調査票については、基本項目に、通信制高校入学前の体験や通信制高校入学理由が含まれていた。 精神健康関連項目として、現在の悩みに加えて、K6 を用いて精神健康度を尋ねた。結果として、入学前には友人関係や不登校、親との問題を経験した生徒が多かった。通信制高校入学の主な理由については、学力や学習上の理由や、前校での不適応となっていた。現在の悩みについては、将来の進路が高かった。精神健康については、K6 による比較で、日本の同年代の精神健康度よりも低くなっていた。通信制高校生徒の精神健康の維持・向上のためには、それまでの学校体験や、生活背景を考え対応していくことが必要であることが示唆された。</p>
著者
平部 正樹 小林 寛子 藤後 悦子 藤本 昌樹 藤城 有美子 北島 正人
出版者
学校法人 三幸学園 東京未来大学
雑誌
東京未来大学研究紀要 (ISSN:18825273)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.135-144, 2017-03-31 (Released:2018-12-03)

本研究では、通信制高校の生徒を対象として質問紙調査を行い、入学形態と入学理由の関連、およびそれらと精神健康の関連について明らかにした。対象は、私立の広域通信制高校2キャンパスに所属する全生徒1,086人であった。調査票については、入学形態や通信制高校に入学した理由、精神健康を測る指標としてKessler-6が含まれていた。結果として、男女ともに「学力上の理由」は新入学で、「年齢上の理由」は編入学で、「前校での不適応」は転・編入学で高かった。女性では、転入学で「友人関係上の理由」が高かった。精神健康との関連では、男性で「学力上の理由」、「友人関係上の理由」、「前校での不適応」、「心の病気」等の入学理由や入学形態が精神健康に関わっていた。女性では、「友人関係上の理由」、「心の病気」等の入学理由が関わっていた。これらの情報は、生徒への支援の際に、重要な情報になりうることが示された。
著者
遠藤 博久 小林 寛伊 大久保 憲
出版者
東京医療保健大学
雑誌
医療関連感染
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.30-34, 2008-07

アルコール擦式消毒薬は、優れた殺菌力により確実に短時間で微生物を減少させることができること、手洗いシンク等の特別な設備は必要なく、ベットサイドへの設置や携帯用で持ち歩くことができることから予指衛生の遵守率向上が期待でき、院内の交差感染を防ぐ極めて有効な手段として臨床の現場で使用されている。しかし、Masciniらはvancomvcin-resistant Enterococcus faecium(VRE)のアウトブレークの介入において、アルコール擦式消毒薬の使用量増加がアウトブレイクコントロールの唯一の効果ではなく、流行株にターゲットを絞った感染制御、流行株保菌者の隔離、手指衛生の遵守率の増加と先制隔離によって流行株の広まりをコントロールできたとしている。また、Huangらはアルコール擦式消毒薬の導入または遵守率向上だけでは、MRSA菌血症数は減少せず、ICUの患者の鼻腔のMRSA保菌調査を行い、陽性者に接触予防策を導入することによって、MRSA菌血症数を減少させることができたとしている。これらは複数の対策によりえられた効果であり、care bundleの考え方の有意性を示している。そして、アルコール擦式消毒薬使用の遵守率と病原微生物の院内伝播率の間に相関関係はなかったとしているEckmannsらは、この原因としてアルコール擦式消毒薬使用の遵守率の平均が40%と低く、院内伝播率の相違が明確に出なかったためとしている。これらのことから、アルコール擦式消毒薬は、耐性菌などの院内伝播防止に有効であるが、臨床現場における効果として手指消毒の低い遵守率や感染対策の基本である標準予防策や接触予防策を疎かにした場合では、十分な病原体伝播の防止効果が得られないといえる。病院におけるアルコール擦式消毒薬の使用増加とC.Jifficile感染症に関してGordinらは、アルコール擦式消石鹸と流水の手洗いで落としたあと、付加的にエタノールで消毒を行うことは有用であると考えられる。今回行ったアルコール擦式消毒薬の臨床的効果に関する文献考察から、アルコール擦式消毒薬の特徴を理解し正しいタイミングや使用方法でアルコール擦式消毒を使用するとともに、感染対策の基本である標準予防策や接触感染予防策を遵守することが、より確実な交差感染予防につながると考えられる。
著者
浦辺 幸夫 小林 寛和 高橋 久美子 川野 哲英
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.355-360, 1988-07-10 (Released:2018-10-25)
被引用文献数
1

大腿直筋やハムストリングスは股関節と膝関節にまたがる二関節筋であり,その作用はこれまでに多く報告されている。しかし,膝関節と足関節にまたがる二関節筋としての腓腹筋の作用については,ほとんど注意がなされていなかった。今回は,Cybex IIを用いた膝関節の等速度性運動のなかで,足関節背屈による腓腹筋の伸張が,膝関節運動にどのような影響をもたらすか,筋トルクや筋電積分値について分析した。これらの結果をもとに,スポーツ活動における動作にどのように二関節筋が関与しているか検討を加え,スポーツ外傷の受傷機転やそのリハビリテーションの留意点について言及する。
著者
宮下 浩二 越田 専太郎 浦辺 幸夫 工樂 義孝 小林 寛和 横江 清司
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.C0172, 2008

【目的】投球動作の肩最大外旋位で疼痛を生じる選手が多く、投球障害を発生しやすい肢位である。肩関節外旋運動は、主に肩甲上腕関節外旋運動、肩甲骨後傾運動、胸椎伸展運動により構成されている。しかし、投球動作においてこれらの関節がなす角度を詳細に分析した報告は少ない。本研究では、肩最大外旋位における肩甲上腕関節外旋角度と肩甲骨後傾角度および胸椎伸展角度を明らかにし、さらに肩最大外旋角度と各関節角度との関係を分析することを目的とした。<BR>【方法】対象は男子大学生19名(年齢22.2±1.5歳、野球歴9.8±3.6年)とした。対象にオーバーハンドスローでの全力投球を行わせ、ステップ脚の足部接地時からリリースまでの肩外旋角度を三次元動作解析にて算出した。肩外旋角度は前腕と体幹のなす角度とした。これは肩甲上腕関節、肩甲胸郭関節、胸椎など肩関節複合体としての外旋角度を示す。肩甲上腕関節外旋角度、肩甲骨後傾角度、胸椎伸展角度を算出し、肩外旋角度が最大値を呈した時(肩最大外旋角度)の各角度をもとめた。さらに、肩最大外旋角度を目的変数、肩甲上腕関節外旋角度、肩甲骨後傾角度、胸椎伸展角度を説明変数として重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。さらに、各角度の相関についてピアソンの相関係数を用いて解析した。危険率5%未満を有意とした。なお、本研究は当大学の倫理審査委員会の承認を得て行った。<BR>【結果】肩最大外旋角度は149.6±9.5°であり、その時の肩甲上腕関節外旋角度は102.7±17.4°、肩甲骨後傾角度は25.1±14.2°、胸椎伸展角度は9.7±6.6°であった。肩最大外旋角度(MER)に対して、肩甲上腕関節外旋角度(G)、肩甲骨後傾角度(S)が関連する因子として選択された。重回帰式はMER=0.30G+0.47S+106.8であった。また肩甲上腕関節外旋角度と肩甲骨後傾角度は有意な負の相関が認められた(r=-0.48)。<BR>【考察】投球動作で肩最大外旋位を呈した際の肩甲上腕関節、肩甲胸郭関節、胸椎のなす角度を明らかにできた。肩最大外旋角度は過去の報告とほぼ同様に約150°であったが、この位相において肩甲上腕関節外旋角度は約100°にとどまっていた。肩最大外旋角度に影響を及ぼす要因としては肩甲骨後傾角度が最も強く、同時に肩甲上腕関節外旋角度と肩甲骨後傾角度は負の相関があることが示された。これは、肩甲骨後傾運動が減少することで肩甲上腕関節外旋角度が増大することを示しており、投球障害肩の予防的観点からも投球動作における肩甲骨の運動の重要性が確認された。今回は肩最大外旋位における各関節の影響を分析したが、今後は各角度の最大値との関係も分析する必要がある。これにより胸椎伸展運動の重要性も示されると考える。
著者
宮下 浩二 浦辺 幸夫 小林 寛和 横江 清司 河村 守雄 猪田 邦雄
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科学 = JAPANESE JOURNAL OF PHYSICAL FITNESS AND SPORTS MEDICINE (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.141-150, 2008-02-01
参考文献数
37
被引用文献数
1 1

The magnitude of mechanical stress at the shoulder and elbow appears to be directly correlated with the degree of maximum shoulder external rotation (MER) during throwing. Therefore, it is very important to prevent excessive MER to minimize the risk of throwing injuries. The purpose of this study was to investigate the relationships between MER during throwing and the kinematic parameters of throwing mechanics, shoulder muscle strength, and shoulder range of motion in high school baseball players. The subjects were 40 male high school baseball players with no elbow or shoulder joint problems. Three-dimensional analysis was performed to calculate the MER angle. Then, the shoulder and elbow angles at initial foot contact (IFC) were computed. ROM and muscle strength of shoulder joint were also measured in each subject. Multiple linear regression analysis was used to relate the MER angle to these factors. Significant correlations were observed between the MER angle and the external rotation (ER) angle (r=&minus;0.51, p<0.001) at IFC, and the ER range of motion (r=0.84, p<0.01). The MER angle significantly correlated with shoulder internal rotation (IR) at IFC. This finding suggests that stress on the shoulder and elbow could be increased by the degree of shoulder IR angle at the moment of IFC. Further, excessive ER range of motion may also be a risk factor.
著者
小林 寛子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.149-166, 2019-03-30 (Released:2019-09-09)
参考文献数
107

科学技術の発展は目覚ましく,それに対応できる資質・能力を育むことは,自然科学を対象とする理科教育において喫緊の課題と言えよう。本稿は,理科教育が果たすべき役割について心理学の観点から検討しようとするものである。折しも,2017年3月に公示された学習指導要領,及び,それに先立って発表された中央教育審議会の答申には,心理学的観点が数多く含まれた。本稿では,そうした観点の1つである,学習者の立場で「何ができるようになるか」を考えるという点を取りあげ,心理学研究を概観する枠組みとして用いた。具体的には,学習者が学習の過程で抱える困難を明らかにする研究,及び,困難の克服を目指す指導法を提案し,その効果を検証しようとする研究に特に焦点をあてた。さらに,それらを,理科教育を通して「できるようになること」,すなわち,育成が目指される資質・能力の3つの柱(知識及び技能,科学的に探究する力,科学的に探究しようとする態度)ごとに整理して示した。そうしてまとめた研究の知見を受け,最後に,これからの理科教育と心理学研究における課題について論じた。