著者
古澤 賢治 路 林書 中川 信義 李 暁西 植田 政孝 LU Lin shu LI Shao Xi 路 林暑
出版者
大阪市立大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

1.本研究は、中国の産業立地と広域経済圏の発展可能性を主たる課題とした.調査対象としては,北京,天津,山東,遼寧を含む環渤海領域と上海デルタを「竜の頭」とする長江経済圏を軸にし,それらの比較をしたいと考えた.広大な中国の研究は対象を絞り込まねばならないが,同時に中国の多様性を実際に体験し,様々な状況を比較検討する素地を固めることも不可欠である.2.具体的な研究課題としてはまず,90年代前半の大幅な外資導入によって引き起こされた中国各地の変化についての状況認識し,その意義を分析することであった.外資導入により,中国各地の変化は確かに急速であり,投資環境の整備で産業立地の改善は大きく進展した.とはいえ,各地の一部の指導者には中央政府の援助と外資導入に依存することを望むだけの者もいる.3.次の研究課題は,企業間,地域間の協力関係の進展についてであった.我々は各地における地域連携システム確立による広域経済圏の形成を調査した.しかし,企業の自律性は依然として行政的に阻害されており,地域間の協力関係は展開できないでいるのを改めて認識させられた.社会経済構造の根本的変革は容易ではなく,市場経済の発展に不可欠な地域経済の自由往来は思ったほど進んでいない.4.今回の調査研究ではまた,自動車と家電産業を中心に外資企業の進出状況と中国各地の産業拠点政策についても認識を深めた.国際的技術水準における格差は別にして,外資企業の中にも現地化に努力し,中国の技術者を養成する姿勢を示すものも多い.さらに各地の指導者の多くが,それぞれの特色を生かした発展の重要性を自覚し始めているように見えた.
著者
八幡 俊男 清水 惠司 中林 博道 梶 豪雄 政平 訓貴
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

癌幹細胞は、悪性腫瘍を根治するために重要な標的として考えられている。本課題では、悪性脳腫瘍の細胞株から分離培養した癌幹細胞が、薬剤を細胞内から排出することで化学療法に耐性となる遺伝子(多剤耐性遺伝子)を高発現し、抗癌剤に対して低い感受性を示すことを明らかにした。また、癌精巣抗原遺伝子は、癌幹細胞においてエピジェネティックな因子の制御を受けて高発現することを見出し、免疫療法の標的分子となる可能性が示唆された。
著者
林 泉忠
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は研究代表者が提起した「辺境東アジア」という東アジア研究の新たな地域概念(『国際政治』135号掲載)に基づき、「中心」と「辺境」、「近代」と「前近代」が交錯し衝突する過程において現出した「辺境東アジア」地域のダイナミックなアイデンティティ・ポリティクスを解明するため、17年から19年まで三年連続、沖縄、台湾、香港そしてマカオにおいて、住民のアイデンティティ構造・特徴・要因を中心に、国際調査を行った。この四地域においてアイデンティティに関する国際調査は初めてとされる。調査は、琉球大学のほか、香港大学、台湾政治大学の専門調査機関の協力を得て、毎年の11月に、同時に、18歳以上の現地住民を対象に、それぞれ20以上の設問(一部は共通質問)を設け、電話調査を行い、それぞれ1000以上の有効サンプルを集めた。調査から得た主な所見は、1.帰属意識の構造に関し、四地域は、共に、複合的アイデンティティをもつ社会である。2.地元社会のへ愛着度やエスニック・アイデンティティについては、四地域は共に強いが、沖縄の方が特に強い。3.自立意識やナショナル・アイデンティティに関し、台湾が最も高く、ほかの三地域に広い差を付けた。4.若い年齢層は、他年齢層よりアイデンティティの複合性と流動性が高い、などである。調査結果に基づいた分析は、アジア政経学会、台湾政治学会、ハーバード大学フェアバンク研究センターおよびイエンチン研究所、北京大学、復旦大学、台湾大学、台湾交通大学をはじめ、日本、台湾、香港、韓国、インド、アメリカ、スイスなどの20以上の学術機関において発表を行った。また、書籍(共著)5冊、学術論文8本、新聞・雑誌記事20本を日本語、中国語、英語で出版した。なお、社会に報告するため、毎年、調査を行った翌月に、沖縄、台湾、香港、マカオ四地域の主要メディアに公表し、高い注目を受け、反響を及んだ。
著者
坂本 元子 藤沢 由美子 石井 荘子 小林 幸子 川野辺 由美子
出版者
和洋女子大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

生体防衛反応に及ぼす無機質・微量栄養素欠損の影響を検討する目的で、栄養素としてマグネシウム(Mg)をとりあげ、Mg欠乏ラットを用いて検討を行った。初年度はMg欠乏時の補体系の動態を、2年目はMgのmarginal欠乏状態時及び欠乏初期の補体系の変動を観察した。更に3年目はMg欠乏時の免疫応答能について検討した。いずれもSD系の雄ラットを用い、Control食(Mg:73ppm)、Mg欠乏食(Mg:10ppm)及び2年目は低Mg食(Mg:30ppm)で飼育し実験に供した。補体系の検討は各飼料で3週間飼育後回復食を投与、各週毎の血中補体C3濃度、補体溶血活性(CH50)等を測定した。Mg欠乏初期の検討は、欠乏食飼育0、1、2、3、5、及び7日目の血液を同様に実験に供した。免疫応答能の検討では、欠乏食飼育1、2週目の脾臓及び腹腔マクロファージ(Mφ)を用い、マイトジェン(ConA、LPS)刺激による幼若化反応及びサイトカイン(IL-1、IL-2等)産生能を検討した。補体系の動態はC3濃度及びCH50がMg欠乏食飼育により著明な上昇を示し、この変化はMgの補充により回復した。また、Mg欠乏状態の程度が強くなるに従ってC3濃度及びCH50は上昇していた。Mg欠乏初期の観察では、C3濃度及びCH50の上昇が顆粒球数の増加に先がけて観察された。従って、Mg欠乏時の補体系の上昇はMg自体の欠乏で引き起こされ補体の活性化に伴って産生されるfragmentの作用により白血球の増加が起こる可能性が示唆された。一方、免疫応答に及ぼすMg欠乏の影響では、ラットの脾細胞マイトジェン刺激試験で、欠乏食飼育1週目においてConAに対する反応性が著しく低下していたが、その時のIL-2産生の低下はみられなかった。MφのIL-1産生低下も認められないことから、Mφの他の機能である抗原提示能やリンパ球増殖及び抑制等の機能の一部がMg欠乏により変化している可能性も考えられ、更に詳細な検討が必要であると思われる。
著者
小林 一三 蒔田 明史 星崎 和彦
出版者
秋田県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

研究代表者等はこれまで一貫して寒冷地域におけるマツ材線虫病の発症メカニズムの解明に取り組んできており、以下の知見を得ることができた。1.寒冷地におけるマツ材線虫病感染による枯死木発生は,感染直後の夏場のみならず,晩秋から翌年(年越し枯れ)にかけて通年発生すること。2.材線虫病の媒介者であるマツノマダラカミキリの羽化時期は秋田市においては6月中旬から7月末,産卵時期はそれより約一ヶ月遅れの7月中旬から8月一杯であること。3.カミキリの産卵は,マツの幹下部よりも幹上部や枝に多いこと。4.温暖地では通常1年1化であるマツノマダラカミキリは寒冷地では2年1化になるものがあり,特に夏が冷涼であった年にはその比率が高まること。5.1年1化の場合カミキリ1頭が数万頭のザイセンチュウを媒介するが,2年がかりで羽化したカミキリの体内に存するザイセンチュウ数は著しく少なくなること。6.ツチクラゲ病や雪害枯死などの在来要因によって枯れた木も,マダラカミキリの産卵対象木となり得ること。7.年越し枯れ木の材線虫保有数は,当年枯れ木に比べると著しく少ないが,6月以降に枯れた場合には,マダラカミキリの産卵対象木となるため,防除対象にしなければならないこと。これらの知見をもとに,マツ材線虫病の防除のためには,媒介者であるマツノマダラカミキリの生態に即した防除法をとることが重要であり,従来の全量駆除に変わって,マダラカミキリの産卵対象となった木に的を絞って防除するマツ枯れ防除の「秋田方式」を提唱した。この方式は秋田県行政にも採用され,「松くい虫専門調査員」の制度を生み,マツ枯れ防除法の改善に結びついている。また,枯死木の処理に当たり,それらを資源として有効活用する炭焼きに取り組んできたが,その活動が人々の森への関心を呼び起こして,官民学の協働によるマツ林の保護につながることも示された。
著者
林 文代 斉藤 兆史 斎藤 兆史
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、新しい文学研究のあり方を、英米文学とテクノロジーやメディアの表象に関する観点から探るものである。狭義な意味での文学研究の枠を越え、社会科学的、自然科学的要素などの視野も含め、テクノロジー(たとえば映画)やネットなどのメディアと文学の多様な関係について論証を試みた。このような研究は、まだ日本では新しい分野であり、さらに今後研究が必要であるが、研究成果欄に記載したように多くの成果をえることができた。
著者
小林 悟
出版者
岩手大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)の協力の下、中性子照射済み原子炉圧力容器鋼材の磁気計測を実施し、中性子照射脆化と磁気的物理量の相関データベースの構築を進めた。磁気マイナーループ法に基づく実験データ解析結果から、磁気的物理量において、降伏応力変化と同様な照射条件依存性が観測された一方、二つの異なる磁気特性変化メカニズム(銅リッチ析出物形成、応力緩和)を考慮したモデル解析から、磁気特性の脆化寄与成分と降伏応力変化量の間に正の比例関係が見つかった。以上の結果は、磁気的物理量の計測により、銅リッチ析出物形成による照射硬化の評価が可能であることを示している。
著者
門林 理恵子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.59, pp.73-80, 2003-05-30
被引用文献数
2

本稿では,2002年8月28日から9月9日まで,トルコ南西部リキア地方に位置し,サンタの島として知られるゲミレル島の初期ビザンティン時代の聖堂跡を対象として行なった3次元計測について報告する.最終的な目標は,全域に遺跡が点在するゲミレル島の地形および主な建築遺構を詳細に3次元計測して3次元モデルを作成し,写真などのデータとともに多目的利用可能なデジタルアーカイブを作成することである.その第一歩として,第二聖堂,第三聖堂と名付けられたバシリカ様式の聖堂をレーザースキャナで3次元計測するとともに,RTK-GPSを用いて地理座標を取得した.これらのデータをもとに,3次元モデルやオルソ写真などを作成したので報告する.We report our experience on 3D scanning of Byzantine Ruins that remain on Gemiler Island which is located in southwestern Turkey and is known as the "Island of St. Nicholas," the origin of our present-day Santa Claus. We started the Digital Gemiler Island project that was aimed at digitizing the terrain of the whole island and the historical sites scattered widely throughout it in 3D. We measured two churches using a laser scanner and a RTK-GPS system. The major tasks that were carried out at the site and the 3D models created from the laser data are discussed.
著者
小林 茂雄
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.566, pp.95-101, 2003-04-30
参考文献数
11
被引用文献数
2

This study aims to examine how graffiti in outdoor space is being perceived in the surrounding environment. The experiments were carried out to evaluate the impression one gets toward graffiti from the pedestrian's perspective using images of actually existing large-scale graffiti, and images that combine existing scenery and graffiti. As a result, it was found that graffiti is better tolerated in such bleak looking places with long stretch of inorganic facades than residential areas and maintained places. In addition it was found that men are favorable toward graffiti in general, and women tend to detest violent graffiti. Furthermore, it was found that middle-aged people in their 40's and 50's are strongly aware of graffiti's relation with the surrounding environment than younger people in their 20's.
著者
小林 茂雄
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.67, no.560, pp.59-64, 2002
参考文献数
13
被引用文献数
7 3

In conjunction with the analysis of the distribution and characteristics of unlawful graffiti drawn in the streets of the city, this study examines the measures for preventing graffiti damages. The distribution range and presence of graffiti on building shutters were examined in the vicinities of Shibuya Station where there is the most frequent occurrence of graffiti in the Tokyo metropolitan area. As a result, there was more graffiti on busy streets, and there was a tendency for graffiti being drawn more easily on shutters of such small scale buildings as a multi-tenant building compared to such large scale buildings as a department store. Moreover, there was a tendency for unmanaged shutters of vacant shops being easily damaged by graffiti, and well looked after shutters being less easily damaged by graffiti. Furthermore, there was also a tendency for a similar type of graffiti grouping around an elaborate piece of graffiti.
著者
小林 茂雄
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.71, no.609, pp.93-99, 2006
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

This research investigated the recent adoption of legal graffiti walls and mural paintings as preventative measures against illegal graffiti, and it outlined their advantages and limitations. Mural painting activities generally conflict with those of people engaging in graffiti, causing lack of contact between wall painters and graffiti writers. It has been reported that legal graffiti walls increase illegal graffiti in the surrounding areas even if they work in the early stages. Therefore, this research examined the possibility of mural painting activities for young people engaging in graffiti. It predicted that inviting public participation and cooperating with residents would lead to the prevention of illegal graffiti and to regional revitalization. Finally, the research experimentally produced two constructive and effective mural painting activities in Tokyo.
著者
小林 一義 佐々木 敦 菅原 宣義
出版者
釧路工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

送電線用碍子の絶縁特性は、その設置場所の気象条件や環境条件によって大きく変化する。その気象条件は地域による特徴があり、北海道東部の太平洋沿岸では、春から夏にかけて、北上する黒潮暖流と南下する親潮寒流のぶつかりによって、特有の海霧が出現し、また、秋には台風崩れの温帯低気圧の通過による海塩汚損がある。本報告書においては、大気中塩分の測定から海塩汚損の影響を調べ、また、海霧の影響を検討するために、タイムラプスビデオ装置を用いて海霧の出現・動向の観測を行った。その結果から、碍子の海塩汚損状況、その汚損と碍子の絶縁特性との関係、海霧の出現・動向、および、海霧が碍子の絶縁特性に及ぼす影響について述べている。結果を要約すると以下の通りである。(1)碍子の漏洩抵抗は、気温によって変化する湿度の影響が大きい。(2)濃霧の出現で湿度が高くなり、それで碍子表面が湿ると漏洩抵抗は低下する。(3)雨洗効果が働く前は、碍子表面の海塩付着が多く、そこへ濃霧が出現すると、その湿りによって漏洩抵抗は著しく低下する。
著者
李 謙一 中 臺文 岩田 剛敏 加藤 卓也 羽山 伸一 廣田 好和 林谷 秀樹
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 = The journal of veterinary epidemiology (ISSN:09128913)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, 2007-07-20

アライグマ(<I>Procyon lotor</I>)は北米を原産とするアライグマ科の中型哺乳類である。我が国では1960年代から持ち込まれた個体が野生化し,現在では全国各地で野生化が確認されている外来生物である。近年,野生化したアライグマは農作物の被害をもたらし,その分布の拡大に伴って社会問題化している。しかし,これら野生化したアライグマにおける人獣共通感染症原因菌の保有状況に関してはこれまでほとんど検討されていない。本研究では,我が国で野生化しているアライグマにおける人獣共通感染症原因菌の保有状況を検討するとともに,得られた結果からアライグマが生態系の中で占める位置や役割についても考察した。
著者
福林 徹 宇川 康二 新津 守 阿武 泉
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

2種類の前十字靱帯再建例に対してその筋萎縮とリハビリテーションによる回復過程をMRIを用いて検討した。1.腸脛靱帯を用いて関節内外2重再建を行い術後1年を経たスポーツ選手10名の検査結果では健側と比較して大腿四頭筋の体積は平均97%、大腿屈筋の体積は102%と膝伸筋に萎縮が見られた。大腿四頭筋の中でも内側広筋は健側の92%と最も萎縮が強く以下中間広筋、外側広筋、大腿直筋の順であった。また靱帯再建のため腸脛靱帯を採取したことにより大腿四頭筋全体に外旋傾向が見られた。外旋は外側広筋に一番強くまた末梢に行くほど増加し、平均として健側に比較し40%程度増加していた。CYBEXによる筋力測定では60deg/sec、180deg/secとも10〜15%程膝伸展筋筋力は健側より劣っていたが、屈筋筋力に差はなかった。MRIにより等尺性筋収縮時と筋弛緩時を比較すると筋収縮時は大腿四頭筋の外旋傾向は減少していた。2.半腱様筋腱と薄筋腱を用いて前十字靱帯の再建を行い1年以上経た33例では、大腿の外旋傾向は見られなかったものの、やはり内側広筋や中間広筋を中心として5〜9%程度の筋萎縮があった。靱帯再建のため採取した薄筋と半腱様筋はまだ正常な筋力ボリュームの60%と71%を維持しておりTagging Snapshotにて筋肉収縮が確認された。半膜様筋と大腿二頭筋のわずかな肥大が半数に観察された。薄筋腱と半腱様筋腱の再生は見られなかった。大腿筋群のこれらの形態変化は、膝関節伸展と屈曲のピークトルクと軽度の相関があった。