著者
小林 京子 高橋 美与子
出版者
広島大学
雑誌
中等教育研究紀要 (ISSN:09167919)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.39-46, 1999-03-19

今日の食生活は, 食材・調理手法共に国際色豊かになると共に, 「食」の社会化も高まっている。また, 一方家族形態の多様化, 個人の生活重視あるいは家庭事情等によって, 家族揃っての食事回数は少ない。従って「食」を通しての家族の絆は希薄化し, 家庭の味や伝統的な食文化の継承・伝授は困難である。本研究では, 高校生及び高齢者が食文化の継承・伝授について, また今日の食生活の状況や望ましい食生活をどのように考えているのか意識調査し, 多くの高校生や高齢者は食文化の継承・伝授の大切さ・意義を認識しながらも生活時間のずれや食嗜好の差から家族揃っての食事ができていないことが伺えた。そこで, 高齢者と共に伝統的なお菓子作りを授業実践してみた。大半の生徒が交流体験を通して生活の知恵等多々学び, 意義深かったと述べている。今後はこのような体験機会をいかに設定していくかが課題となる。
著者
平井 正志 久保 中央 寺林 敏 松元 哲 鈴木 徹
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

アブラナ科野菜の根こぶ病は病原菌(Plasmodiophora brassicae)が長年土壌中に生存し、野菜産地が壊滅的な打撃を受けるほど重要な問題である。抵抗性ハクサイ品種はいくつか発表され、利用されているが、近年これら抵抗性品種の罹病化が問題になっており、新たな抵抗性品種育成のために、抵抗性の遺伝解析が望まれている。本研究ではBrassica rapaにおける、根こぶ病抵抗性遺伝子座の比較解析を行った。ヨーロッパ原産カブSilogaに由来する抵抗性遺伝子座Crr1及びCrr2を同定した。またMilan Whiteに由来する抵抗性遺伝子座Crr3を同定し、これらが互いに独立した座であることを明らかにした。さらにGelria Rに由来する抵抗性遺伝子座を解析した。その結果、最近韓国のグループより発表された抵抗性遺伝子座、CRbとほぼ同一の座であることが明らかになった。以上より少なくとも4座の根こぶ病抵抗性遺伝子座がB.rapaにあることが明らかになった。またマイクロサテライトマーカーに基づいたBrassica rapaの詳細な連鎖地図を作製し、シロイヌナズナゲノムとのシンテニーを明らかにした。それによるとCrr1,Crr2およびCRb座の近傍はシロイヌナズナ第4染色体長腕部と相同性のある部分であり、これらの3つの抵抗性遺伝子座が祖先ゲノムの同一部分に由来するものであることが明らかになった。しかし、Crr3座近傍はシロイヌナズナ第3染色体と相同性があり、他の抵抗性遺伝子座と由来を異にすることが明らかになった。Crr3座近傍を詳しくマッピングするためにシロイヌナズナのゲノム情報をもとにBrassica rapaで利用できるDNAマーカーを多数作成した。これらのマーカーを用いてF2集団(n=800)からCrr3近傍で組み換えを起こしている約80個体を選抜し、マーカーのみによるマッピングを行った。またCrr1付近についても詳細なマッピングを行った
著者
林 雄二 村井 章夫 野老山 喬 菅 隆幸 後藤 俊夫 磯江 幸彦 正宗 直
出版者
大阪市立大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1987

天然性のイリドイド、ゲニビンを原料にして、多くの多官能性イリドイド及びセコイリドイド類の合成を達成した(磯江)。皮膚刺戟性があり発癌プロモ-タ-として注目を集めているテレオシジンの全合成をおこなった。インド-ル環に直接置換基を導入する新しい方法で、インドラクタムVおよびテレオシジンB3及びB4を合成した(後藤)。環状モノテルペノイド生合成の際に、ゲラニル2-リン酸(GPP)は、(i)環化酵素内で2-リン酸基を引抜かれてリナリル状のカチオンを発生すること、(ii)酵素内で発生するカチオンは、植物種に特異的なConfigurationをもっていることを明らかにした(菅)。2-(6'-シリル-4'-キセニル)-3'、4'-ジメチル-2-シクロヘキセノンの2'位にかさ高い置換基(シリル基あるいはアルコキシカルボニル基)をもつ基質の環化による8,9-ジメチル基をもつクレロダン骨格の合成を検討した(野老山)。さきに開発した鎖状ポリエン環化剤を用いて、センダン科Lansium domesticumの抗アレルギ-性セコオノセラノイドのアグリコンLansiolic acidを合成した。同じ植物の種子の二重転位形リモノイドを構造決定し生合成経路を推定した。又、同植物の魚毒成分アファナモ-ルAを、分子内光環化により生じるブルボナン形中間体を経て合成する経路を検討した(林)。ジャガイモ塊茎組織はジャガイモ疫病菌あるいはアラキドン酸を接種されると過酸化水素を発生し、これに伴ってフィトアレキシンの蓄積が誘導される。人為的に過酸化水素で処理してもフィトアレキシン生成は誘導されるので、過酸化水素はジャガイモでのフィトアレキシン生成の直接の引金物質であることがわかった。同様の現象は、サツマイモ、インゲン、サトウダイコンでも見出された。ジャガイモを用いてフィトアレキシンの内因性エリシタ-の実在をはじめて証明すると共に、その単離研究をおこなった(村井)。
著者
大串 隆之 高林 純示 山内 淳 石原 道博
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

植物-植食性昆虫-捕食者からなる多栄養段階のシステムを対象にして、フィードバック・ループの生成メカニズムとしての植物-植食者相互作用の重要性を実証し、その高次栄養段階に与える影響とメカニズムの生態学的・化学的・分子生物学的基盤を明らかにした。さらに、植食者の被食に対する植物の防衛戦略とその結果生じる間接効果についての理論も発展させた。これまでの3年間の総括を行い、間接効果と非栄養関係を従来の食物網構造に組み込んだ新たな「間接相互作用網」の考え方を提唱した(Annual Review of Ecology, Evolution, and Systematics 36:81-105)。さらに、「間接相互作用網」の生態学的意義とその概念の適用について世界に先駆けて単行本の編集を行った(Ohgushi, T., Craig, T. & Price, P.W. 2006. Ecological Communities : Plant Mediation in Indirect Interaction Webs, Cambridge Univ. Press)。本プロジェクトの成果の多くは、すでに国際誌に公表されている(研究発表リストを参照)。これらの成果に基づいて、植物の形質を介した間接効果が植物上の昆虫群集における相互作用と種の多様性を生み出している重要なメカニズムであることを指摘し、間接相互作用網に基づく生物群集の理解のための新たなアプローチを確立した。このように、本プロジェクトは陸域生態系の栄養段階を通したフィードバック・ループの実態解明と理論の確立に大きな貢献を成し遂げた。
著者
小河 久朗 林崎 健一 黒倉 寿 佐野 光彦 馬場 治 堀之内 正博 小河 久志 KANGUWAN JUNTARASHOTE CHATCHAREE KAEWSURALIKHIT ANCHANA PRATHEP PRASART TONGUNUI
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

津波後の水産資源は回復しつつあるが、大型海洋植物の植生回復が遅れたところでのイカ・カニ漁業への影響は大きく、資源と漁業の回復への植生の重要性が分かった。一方、津波後、沿岸漁業と沖合漁業間に新たな漁場競合問題が発生しており、援助の不平等性と重複がこの問題の複雑化の一因であった。津波後の水産資源や漁業の回復には、植生に重点を置いた環境修復や零細漁民への被害実態に即した公平な援助の重要性を示唆した
著者
王 文涌 池田 満 仲林 清 柏原 昭博 乙守 信行 林 公生 長谷川 忍
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.315, pp.11-16, 2008-11-14

本研究はカスタマイズ可能な学習コンテンツを中心にした知識循環型e-Learning環境を提案する.本環境では,SCORM,LOMという標準化技術とオントロジーに基礎にして,学習コンテンツをカスタマイズする機能を提供することにより,学習者が学習共同体に蓄積された学習コンテンツやWeb学習リソースから学習情報や経験知,応用知,理解知などを参照・利用しながら,自分自身の知識を獲得・再構成する場を提供する.そして,再構成された知識を学習共同体に蓄積して,集合知の形成と知識の再利用に貢献しながら,自らの学習を続けるという知識循環型e-Learningを実現する.
著者
山下 光雄 室岡 義勝 小野 比佐好 林 誠 山下 光雄
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

マメ科植物と根粒菌との共生系を利用して、生物的窒素固定能に加えて重金属集積などの有用機能を付与し発現する共生工学基盤技術を構築し、環境浄化に応用する目的で下記の研究を行った1.共生工学基盤技術の開発:共生分子遺伝機構を解明するため、マメ科モデル植物のミヤコグサを用いて共生状態と非共生状態における遺伝子発現の違いをマクロアレー技術を用いて測定した。2.メタロチオネイン4量体遺伝子およびファイトケラチン合成酵素遺伝子の根粒バクテロイド内での発現:メタロチオネイン4量体遺伝子とアラビドプシスより分離したファイトケラチン合成遺伝子をベクターにつないでレンゲソウ根粒菌Mesorhizobium fuakuii subsp. rengeiに導入し、この組換え根粒菌をレンゲソウ種子に感染させ根粒を形成させた。インサイチュハイブリダイゼーションにより根粒バクテロイド内で両遺伝子が発現していることが観察された。3.根粒バクテロイドの輸送系の改変による植物組織への物質移動の試み:上記遺伝子を導入した組換え根粒菌は、野性株に比べて20倍のカドミウムの取り込みを示したが、この組換え菌をレンゲソウに接種して、根粒を形成させたところ、組換え根粒では野生型根粒の1.5-1.8倍のカドミウム蓄積にとどまった。これは根粒内への重金属取り込み能の不足と考えられた。そこで、金属イオンの膜透過に関与するシロイヌナズナのIRT1(iron-regulated transporter)遺伝子を取得し、上記組換え根粒菌株に組み込んだ。IRT1遺伝子を組み込んだ根粒菌はカドミウムを1.5倍近く取りこんだ。そこで、この組換え根粒菌をレンゲソウに感染させ、根粒を形成させた。4.創生レンゲソウの重金属集積能試験:B3:PCS(IRT1)を感染して根粒形成させたレンゲソウを、カドミウムを含む人工土壌で生育させ、植物組織各部位のカドミウム濃度を測定した。その結果、IRT1遺伝子発現によるカドミウム集積能には差が見られなかった。したがって、根粒内における根粒菌によるカドミウム集積の限定要因は、植物細胞によるものだと考えられた。5.土壌のファイトレメディエーション:稲田の土壌を用いて組換えレンゲソウを栽培して、カドミュウム浄化能を試験した。非組換え根粒菌を感染させたレンゲソウでは、汚染人工土壌中のカドミウム取り込み効率が約0.4%であったのに対して、MTL4およびAtPCSの2つの重金属結合遺伝子を組み込んだ根粒菌を感染させたレンゲソウは、同程度のカドミウムに汚染されたフィールド土壌中のカドミウムを約9%も吸収していた。
著者
渡辺 征 並河 和彦 相馬 武利 林 繁利 西尾 和男 小儀 昇 山口 直樹 菅野 紘行 須永 藤子 菅野 康則
出版者
動物の原虫病研究会
雑誌
動物の原虫病 = Journal of animal protozoosis (ISSN:09157506)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.25-30, 2004-12-15

四国徳島県および大阪府(吹田市)の動物病院由来のBabesia(B.)gibsoni感染疑いの犬60症例からB.gibsoni特異P18遺伝子の増幅法(PCR)により自然感染陽性と診断された38例について、末梢血中の血小板数および白血球数に及ぼす感染の影響を調べた。PCR法は血液のWrigh-Giemsa染色塗抹標本の鏡検法よりも感染の検出感度が高く、塗抹で検出できなかった7症例も検出可能であった。感染犬の血小板数は平均50000/μl(9000-97000/μl)というように低値を示し、非感染犬22例の平均306000μl(120000-448000μl)と比べると6分の1以下であった。このように感染に伴い血小板減少症が認められた。しかし、感染犬における白血球数は非感染犬との間に2例を除いて明らかな差が認められないことから、白血球数の減少傾向は見られなかった。
著者
林 直人
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

本研究では,通常プラズマCVD(chemical vapor deposition)法など高エネルギー・高コストプロセスによって作られるDLC(diamond like carbon)皮膜を,加速されたボールの衝突によって常温・常圧条件下で誘起される瞬間的な高温・高圧反応場(メカノケミカル効果)を利用して迅速に形成することを目的とする。そのために鉛直方向に高速振動加速したボールによって繰り返しインパクト処理を行う新規のメカノケミカル法(ボールインパクト法)を提案し,密着性の高いDLC皮膜の創製を目指すと共に,離散要素法を基づく数値シミュレーションによってプロセス条件の最適化を図っている。本年度はまず,電気モーターによる機械的な回転を鉛直方向振動に変換し,ボールが装入された振動チャンバーが任意の周波数および振幅で振動するようにした,ボールインパクト法実験装置の作製を行った。周波数は最大100Hz,振幅は最大50mmまで上げられる。処理雰囲気を変えることができるよう,振動チャンバー全体をアクリルカバーで多い,騒音防止のためにカバー内部に吸音材を貼り付けた。予備実験として,粒子皮膜を作ることが困難なヒドロキシアパタイト粉末を利用し,空気雰囲気下で周波数および振幅を変更させて実験を行い,迅速に緻密かつ密着性の高い粒子皮膜の形成を確認した。また高速振動に基づく装置の負荷を計算し,安全な運転範囲を求めた。また同時に,ボールインパクト法の数値シミュレーションモデルの構築も行った。離散要素法に基づき,各ボールにかかる全ての力を時々刻々計算することで,全ボールの挙動が解析できる環境を整えた。
著者
土井 元章 林 孝洋 細川 宗孝 水田 洋一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

花卉の香り育種に有用な知見を得るため,バラを用いて以下の実験を行った.芳香性品種の花弁からは,モノテルペノイド,セスキテルペノイド,芳香族アルコール,酢酸エステル,ジメトキシトルエンが検出された.また,これらのバラ切り花の香りには鎮静効果と精神的疲労低減効果が認められた.モノテルペノイド合成酵素遺伝子として2遺伝子がクローニングされた.このうちRhMTS2は被子植物の非環式モノテルペノイド合成酵素遺伝子群に分類され,芳香性品種のかたい蕾で高発現していた.ゲラニル二リン酸合成酵素としては,RhGPPS-LSU1,RhGPPS1が単離でき,前者は芳香性品種すべてと非芳香性の1品種で高発現していた.
著者
佐藤 馨一 清水 浩志郎 為国 孝敏 竹内 伝史 小林 一郎 馬場 俊介 古屋 秀樹
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

平成16年度の研究は個別の大規模社会資本の整備事例をもとに、これらの総合的な評価を行い、今後の課題を整理した。平成15年度は道路公団の民営化論議が集中的に行われたこともあり、その是非や問題点について活発な意見交換がなされ、研究分担者間の共通認識が確立した。以下に平成16年度の研究成果を取りまとめる。(1)「公共事業方式と政府企業方式の混同の危険性」が指摘された。最近の民営化論議は大規模社会資本の将来展望を持つこともなく、財務分析のみが突出している、との批判がなされた。また、中部国際空港の整備事例を研究した結果、大規模社会資本が公共事業方式でなくとも実施可能なことを検証した。(2)大規模社会資本の更新投資の問題が取り上げられた。新幹線も高速道路も減価償却という発想がなく整備されてきた。このことにより更新のための投資財源がまったく存在しない事態を招いている。その結果、「荒廃する日本」と言われる日も間近にせまり、民営化論議はそれに拍車をかけている。(3)受益者負担による社会資本の整備方式は社会的便益を無視しており、公的な財源を用いて大規模社会資本を整備し、その利用価格を安くすることによって社会的便益を増大するという基本的な考え方に立ち戻るべきである。(4)大規模社会資本は土地依存型であり、ITのように技術依存型とは整備の仕方や活用はまったく異なる。地形も気象条件も多様な国土において経済効率を追い求めると、地域格差が増大し、過疎地域の切り捨てにつながる。竹島という小さな島の領有をめぐって日本と韓国が深刻な諍いをしているとき、国内の過疎地域を無視する国土政策は根本的に間違っている。「均衡ある国土の発展」という目標は、極めて重要な国家政策となる。
著者
冨永 達 小林 央往 植木 邦和
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.164-171, 1989-10-31
被引用文献数
9

チガヤ(Imperata cylindrica (L.) BEAUV.)は,世界の熱帯から温帯にかけて広く分布するイネ科の多年生草本で,家畜の飼料として利用されている。本研究はチガヤの日本列島における形態および生活史に関する地理的変異を明らかにしようとしたものである。北海道から沖縄県に至る各地で1983年までに採集し,系統維持していた402クローンを1985年から同一条件下で栽培し,稈の節毛の有無および生活史について調査した。このうちの52クローンについては,1クローンにつき5ラミートを8号素焼鉢(直径20cm,深さ19cm,容積約6000cm^3)に移植し,乾物生産量を調査した。栽培実験は京都大学農学部附属亜熱帯植物実験所(和歌山県串本町)において行った。調査した402クローンは,稈の節毛の有無により,2変種に分類された。無毛のvar.genuinaに属するクローンの分布は,北海道,東北北部および福島,群馬,長野各県の高地に限定され,紀伊大島での出穂は極めて早く,草型は小型であった。一方,有毛のvar.hoenigiiに属するクローンは,東北南部以南に分布し,生活史に基づいてさらに2群に類別された。すなわち,奄美大島以南から採集したクローンは5月から10月にかけて断続的に出穂し,冬期も枯死しなかったのに対し,東北南部から九州にかけて採集したクローンは年に一度だけ5月に出穂し,冬期には休眠状態に入った。また,一般に植物体の大きさや生活史に関して採集地の緯度に伴うクラインが認められ,北方産のクローンほど植物体が小型で遅く出芽し,出穂は早く,地上部が早く枯死した。これらの結果は主として採集地の気候要因,特に冬期の温度の差異に起因するものと推定された。
著者
釘宮 雄一 林 健司 都甲 潔
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.612, pp.49-52, 2002-01-19

食品, 化粧品, 香料の製造において, 現在でも官能検査と呼ばれる人間の鼻を使った品質管理や製品開発が不可欠である.しかし人間は長時間の検査に耐えられず, 健康状態などによっても結果が左右される.また, 環境計測や安全管理においては, 悪臭・危険臭などの人間が嫌がる検査を行わなくてはならない.さらに個人差による評価結果の違いが存在することが大きな問題である.以上のことから匂いを客観的に評価できるデバイスの開発が望まれている.本研究では新しい匂いセンサ用トランスデューサとなるガスセンサとしてグラファイト分散系に注目し, パーコレーション(percolation, 浸透)現象を利用した素子を作製した後, その特性を明らかにした.またその特性を利用し, 匂い物質のひとつであるクロロホルムに対する感度を向上させることが出来た.
著者
林 巌 岩附 信行
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

我々の住む社会において,機械の振動,騒音,不快さといったNVHの分野における問題を解決し,人間にとって快適な居住空間を作り出すことが重要な課題となっている.しかし,機械から発生する騒音を最小にし,かつ心地よくリズミカルな音で機械の稼働状況を知らせる静音最適構造設計手法といったものがまだ十分に明らかにされていない.そこで本研究では,すずむし,こおろぎ,あるいはかんたんなどの鳴き声の美しい昆虫の翅の構造と発音メカニズムを工学的に解明するため,昆虫の翅の構造の精密測定と振動モード解析を行い,そしてその結果を工学的に静音最適設計へ応用するため,平板を対象として厚さを局部的に変更し,またいくつかの編み目パターンを掘り,発生する振動モードおよび音のコントロールについて検討した.本研究で,得られた結果は以下の通りである.(1)昆虫の翅の構造の精密測定こおろぎの翅をプラスチックでモ-ルドし,微少量ずつ削り出し断面を写真撮影する方法により,翅脈のため凹凸が激しい翅の形状を精密に測定でき,翅脈は波板状の構造であることが分かった.(2)昆虫の翅の振動モード解析(1)で測定したデータから,こおろぎの翅の有限要素モデルを作成し,翅脈の端にある翅と胴体の付け根,およびこすり器にたいして種々の境界条件を与え振動モード解析を行った結果,こおろぎの鳴き音の主成分の周波数に一致する固有振動数は見られなかったが,音に寄与している振動モードを確認することができた.(2)編み目模様をもつ平板の振動モード特性局部的な厚さの変化を含む編み目パターンをもつ平板の実験モード解析を行った結果,編み目による固有振動数および振動モードの特性を明らかにすることができ,編み目の変更による音響放射パワー最小化のための検討を行った.
著者
林 真照 渡辺 幸信 加来 大輔 中島 秀紀 相良 建至
出版者
九州大学大学院総合理工学府
雑誌
九州大学大学院総合理工学報告 (ISSN:13467883)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.321-328, 2005-12

We have investigated the response of a 6Li loaded neutron coincidence spectrometer to MeV neutrons. The spectrometer has a structure consisting of three 6Li-glass scintillators in a liquid organic scintillator BC-501A, which can detect selectively neutrons that deposit the full energy in the BC-501A using a coincidence signal generated from the capture event of thermalized neutrons in the 6Li-glass scintillators. The efficiency and response functions were measured using 4.7, 7.2 and 9.0 MeV mono-energetic neutrons, and were compared with those derived by combination with both neutron transport calculation in the spectrometer and scintillator response calculation. The calculation results showed fairly good agreement with the measured ones. Finally, the response function matrices were obtained for 1 to 10 MeV neutrons.
著者
本田 裕子 林 宇一 玖須 博一 前田 剛 佐々木 真二郎
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
vol.122, pp.41-64, 2010-03-25

ツシマヤマネコは,長崎県対馬市にのみ生息し,野生復帰の将来的な実施が検討されている。ツシマヤマネコ及び野生復帰計画を含めツシマヤマネコの保護を住民がどのように捉えているのか,本研究ではその住民意識を探る。本研究は検討段階を対象としており,野生復帰直前・直後を対象としていた先行研究に対して新規性がある。方法は,長崎県対馬市全域住民のうちの20歳以上79歳以下の男女1000人を対象とし,住民基本台帳使用による無作為抽出郵送方式を採用,回収率は48.8%であった。住民によるツシマヤマネコの捉え方は,「対馬にだけ生息する生き物」「対馬を象徴するもの」として,その固有性が評価された。検討されている野生復帰に関しては,実施場所としては検討されている下島が適当とする回答は少なかったが,野生復帰そのものに関しては全体として肯定的に捉えられていた。ツシマヤマネコは,ほとんど目撃されない存在でありながら,主に交通事故対策を中心とした保護活動の展開や新聞テレビ報道によって,「対馬にのみ生息する」や「絶滅のおそれがある」という認識は普及していることが背景にあると考えられる。ただし,生活とは遠い存在であるがゆえに利害関係が想像されにくく,保護活動が肯定的に受け入れられているとも考えられる。
著者
宇都宮 裕貴 高野 忠夫 八重樫 伸生 小林 里香 山崎 幸 高林 俊文
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

子宮内膜癌細胞株を用いてERαが直接結合する新たな転写制御領域を同定しその機能解析を行うことにより、新たな分子機構の解明を試みた。始めに転写制御領域を同定するためにChIP クローニングを行い、47 の標的部位を得た。それらの中には、従来まで重要でないとされてきたイントロンも多数含まれていた。そして、ERα転写コアクチベーターであるGRIP1 に着目しその機能を検討したところ、子宮内膜癌細胞株においてGRIP1はアポトーシスを抑制することにより生存細胞数を増加させる可能性が示唆された。