著者
辻野 一三 林下 晶子 渡部 拓 山田 安寿香 佐藤 隆博 板谷 利 高階 知紗 大塚 吉則 清水 祐輔 西村 正治
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.722-728, 2014-09-30 (Released:2014-10-07)
参考文献数
36
被引用文献数
1

症例は35歳,男性.糖尿病,うつ病にて当院通院中の平成25年5月,自殺企図にてインスリングラルギン300単位を皮下注したところを家族に発見され,当科へ救急搬送となった.血糖値の頻回モニタリングと経口および静脈内グルコース投与にて,皮下注射から約50時間の経過で重篤な合併症や後遺症なく低血糖状態から脱した.入院中の精査にてミトコンドリア病の診断基準を満たし,うつ病および糖尿病は同疾患によるものと考えた.うつ病と糖尿病の合併は臨床的に重要な問題であり,本報告ではうつ病合併糖尿病の診療上の問題点,インスリン大量投与時の対処と病態,さらにミトコンドリア病の本症例における関与について若干の文献的考察を加え報告する.
著者
平出 貴乗 米山 文彦 落合 秀人 中澤 秀雄 林 英司 北村 宏
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.399-404, 2008 (Released:2008-08-05)
参考文献数
16
被引用文献数
4

2000年12月から2006年9月までに魚骨による消化管穿孔を8例経験したので臨床的検討を加え報告する.年齢は59歳から89歳で男性7例,女性1例.穿孔部位は回腸4例,横行結腸2例,S状結腸2例であり,全症例に対して手術を行なった.慢性炎症型4症例のうち穿孔部不明症例が3例存在したが,魚骨の確実な摘出により治癒することが確認された.MDCT導入以前では術前に石灰化も含め病変を指摘できた症例は40%であったが,導入以降は魚骨同定率,術前診断率ともに100%でありその有用性が確認された.魚骨穿孔は,詳細な病歴聴取およびMDCTの施行により術前の確定診断が比較的容易となったが,魚骨遺残により再手術が必要となる症例もあり,急性腹症の鑑別診断として念頭におかなければならない疾患の一つであると考えられた.
著者
村山 幸子 倉岡 正高 野中 久美子 田中 元基 根本 裕太 安永 正史 小林 江里香 村山 洋史 藤原 佳典
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.452-460, 2020-07-15 (Released:2020-07-31)
参考文献数
30

目的 地域住民間のコミュニケーションの活性化や,子どもの公共心および社会性の醸成等を目的として,多くの自治体や小中学校で「あいさつ運動」が実践されている。しかし,こうした取り組みの意義を裏付ける実証データは乏しい。本研究では,1)周囲の人々からあいさつをされることが子どもたちの自発的なあいさつ行動と関連するのか,また,2)子どもたちにとって日常生活場面におけるあいさつの多寡が,地域愛着と援助行動と関連するのかを検証する。方法 東京都A区および神奈川県川崎市B区在住の小学4-6年生の児童1,346人と中学1-2年生の生徒1,357人を対象に自記式の質問紙調査を実施し,2,692人から有効回答が得られた。本研究では,小学生と中学生のデータを層別に分析し,それぞれについて以下の統計解析を行った;1)性別と学年を制御変数とし,周囲の人々からあいさつをされる頻度と児童・生徒が自らあいさつをする頻度の関連を検証する偏相関分析と,2)児童・生徒のあいさつ頻度と,居住地域への愛着および援助行動の関係を検証するパス解析を実施した。結果 偏相関分析の結果,調査対象者の性別と学年を問わず,周囲の人々からあいさつをされる頻度と,児童・生徒が自らあいさつをする頻度との間に正の相関関係が認められた。さらに,パス解析の結果,あいさつをされる頻度が地域愛着と関連し,あいさつをする頻度が地域愛着および援助行動と関連するというモデルが得られた。当該モデルは,小学生と中学生の双方で高い適合度が認められた。結論 子どもたちにとって,日常生活場面で周囲の人々とあいさつを交わすことは,居住地域への愛着を強めることが明らかとなった。とりわけ,彼らが自発的にあいさつをすることは,他者への援助という具体的な行動にも結びつくことが明らかとなり,家庭・学校・地域であいさつを推奨することの意義が実証された。あいさつされる頻度とあいさつする頻度に関連が認められたことから,周囲の大人による働きかけが,子どもたちに自発的なあいさつ行動を定着させる上で重要になると考えられる。
著者
小林 朋佳 稲垣 真澄 軍司 敦子 矢田部清美 北 洋輔 加我 牧子 後藤 隆章 小池 敏英
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.465-470, 2011 (Released:2014-12-25)
参考文献数
20
被引用文献数
3

数字や線画を単独あるいは交互に呼称する課題を通常級在籍中の小学1~6年生207名に行い, ひらがな音読能力との関連を検討した. 数字呼称時間は小学3~4年生まで短縮し続け, 単音音読時間と相関していた. 一方, 線画呼称は学童期の前半で特に短縮変化が目立ち, 以降はゆるやかに変化した. 交互課題はいずれの年齢においても単独呼称より時間がかかったが, エラーがほとんどなく施行できた. 呼称能力はひらがな音読能力と関連性がみられ, 交互課題は単語音読とより強く相関していた. 日本語話者の発達性読み書き障害の病態解明の一助として, 音読異常を持つ小児の数字・線画呼称スピードを今後検討する必要があると思われる.
著者
神内 謙至 橋本 善隆 新美 美貴子 山下 亜希 山内 光子 四井 真由美 西田 なほみ 山崎 徹 早川 太朗 中山 英夫 槻本 康人 並河 孝 笹田 侑子 前林 佳朗 高橋 正洋 磯野 元秀
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.256-263, 2014-04-30 (Released:2014-05-19)
参考文献数
9

50歳女性.平成4年に糖尿病を指摘され平成16年より当院にて加療中.低血糖で救急搬送された既往あり.インスリン治療で血糖コントロール不良,また低血糖も起こすため,平成23年2月教育入院となった.入院中,血糖正常であるものの低血糖症状のためパニックになることがあった.翌日のスケジュールを説明しても当日になると忘れる,糖尿病教室でテキストを忘れる,と言う出来事があった.そのため,注意欠如/多動性障害(ADHD)を疑い本人の同意の上で滋賀医科大学精神神経科に紹介しADHDの診断となった.抽象的な情報を処理する能力は低く,簡潔で具体的な手本を示し,時間的余裕が必要な症例であると判断された.全成人の4.7 %の有病率とされるADHDであるが,今のところADHDと糖尿病の合併にかかわる報告は極めて少ない.血糖コントロールが極めて悪化することが考えられ,適切な治療方法が必要である.
著者
小林 久高 釜床 美也子 安高 尚毅
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.83, no.743, pp.21-31, 2018 (Released:2018-01-30)
参考文献数
17

Japan is a country surrounded by seas and has abundant marine resources. Therefore, there are various hut for fishery along coast. Boathouse "Funagoya" is one of them, and is a hut to put a small wooden ship inside. There are a lot of boathouses in Oki Islands. A purpose of this study is to confirm the present conditions of the boathouse in Oki Islands. At first, we confirmed the distribution of boathouses. Then, we performed hearing investigation about the placement and made a survey of representative boathouses. Thereafter, we considered about relationship between boathouse and climate, occupations and local culture. We found new boathouses in 3 villages, and confirmed that there were boathouses in old days in 16 villages. There are few boathouses in northwest area of Okinoshima-cho, where we can see many cliffs. And, it became clear that there are many boathouses in areas rich economically in old days. We classified location of the boathouse into 3 types. Then, we checked placement and the possession relations of boathouses in Iibi village having representative landscape. We confirmed that boathouses protect wind from sea. And it was revealed that the tendency of the owner is different from the east side of the Iibi River in the west. We classified the form of the boathouse into 4 types. And we showed the difference of type and constructional element, by comparing all boathouses. Continuous type boathouses have long span in beam direction, and solo type boathouses have long span in ridge direction. The length 1-ken of solo type is bigger than continuous type. In areas where the length of ridge direction is big, they make walls to village side and make space for storage. Villagers built boathouses by themself. They made boathouses with miscellaneous small trees and scrap woods of houses. Pillar of boathouse was buried in the ground, roof was made with the peel of cedar. We investigated five representative boathouses, and clarified the details of the building method of boathouses. Solo type boathouses are made with many logs. Continuous type boathouses are made with square timbers and joint metals. Most of continuous type boathouses are new and are built by public fund. And one of them is made with traditional method of “Zairai-kouhou”using ground sill. Almost all boathouses are not in use now, and seaside landscape with boathouses is disappearing. But, boathouses are local precious cultural resources, and have high value as tourist attractions. It will be important to preserve and utilize them.
著者
山本 裕記 船登 有未 小林 憲太郎 佐々木 亮 木村 昭夫
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.101-106, 2022-12-28 (Released:2022-12-28)
参考文献数
14

さまざまな患者が訪れる救急外来では, 搬送後に新型コロナウイルス感染症 (以下, COVID-19) が偶発的に判明し, 感染対策上問題となることがある。そこで, 救急外来で来院時にCOVID-19を強く疑っていない患者のうち, COVID-19に罹患している患者の割合を明らかにし, 感染対策の観点からどのように対応をしていくべきかを検討した。2020年5月26日~2021年10月31日の間に国立国際医療研究センター病院救急外来を受診し, 来院時にはCOVID-19を強く疑わなかった患者のうち, COVID-19の併発が判明した患者の診療録を後方視的に調査した。偶発的にCOVID-19が判明した患者は49名 (0.20%) であった。偶発的にCOVID-19が判明した患者のうち, 41名はCOVID-19の蓋然性を評価したチェックリストに該当項目があり, 残りの8名は意識障害のため評価困難であった。COVID-19を疑う症状に乏しくても, チェックリストによるスクリーニングで検査前確率を上げる努力を行いながら, 大流行期ではその項目を評価できない患者に対してより積極的にPCR・抗原検査を行うことが感染対策上で重要である。
著者
下野 功 高橋 志郎 清水 健志 高村 巧 小林 淳哉 都木 靖彰
出版者
公益社団法人 日本セラミックス協会
雑誌
Journal of the Ceramic Society of Japan (ISSN:18820743)
巻号頁・発行日
vol.117, no.Supplement, pp.S5-S10, 2009 (Released:2009-04-01)
参考文献数
7
被引用文献数
3 3

In this study of the phosphor utilizing a scallop shell, it was researched that the luminescence center was estimated from the chemical composition of the shell for the final purpose of the improvement of the luminescence property. The luminescence centers were estimated to be Cu and Mn from the experiment result and literature investigation. Furthermore, these concentrations were small by more than two orders in comparison with the commercially available phosphors. Therefore, improvement of the luminescence property can be expected by doping Cu and Mn to the shell and to investigate the relationship between these concentrations and the luminescence property to find the optimum concentration.
著者
小林 泰名 栗田 とも子 河野 由香里
出版者
大学図書館研究編集委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.108, pp.1714-1-1714-9, 2018-03

障害学生支援は大学全体として取り組むべき課題であり,その中に「大学図書館の障害者へのサービス」が位置付けられる。北海道大学附属図書館では2012年3月から,障害学生支援担当部署と連携して「プリント・ディスアビリティのある利用者のための資料電子化サービス」等の障害学生へのサービスに取り組んでいる。2017年9月までの5年半の取り組みについて報告する。
著者
林 眞帆 織原 保尚 日和 恭世
出版者
別府大学会
雑誌
別府大学紀要 = Memoirs of Beppu University (ISSN:02864983)
巻号頁・発行日
no.61, pp.59-74, 2020-02

近年、医療における意思決定支援への議論は活発化している。ただし、判断能力の不十分な人を対象とする意思決定支援の議論は深まっているとは言い難い。とりわけ、実践の根拠となる成年後見制度の抱える課題は医療ソーシャルワーカーにも少なからず影響している。そこで、本稿は医療ソーシャルワーカーへのアンケート調査の結果を踏まえ、成年後見制度から弾かれている医療選択と同意という課題に対する医療ソーシャルワークの役割について検討した。
著者
浅野 彰之 石田 亮 森上 裕子 大橋 朋悦 山内 裕士 山田 浩史 錦見 俊徳 小林 弘明
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.111, no.4, pp.130-133, 2020-10-20 (Released:2021-10-20)
参考文献数
9

症例は50歳,男性.尿閉を主訴に当院受診.CTでは膀胱内に直径1.7cmの円形の膀胱異物を認めたため,膀胱鏡を施行.膀胱内にガラス玉を認めた.異物が球状であり,自己挿入が可能であった事から経尿道的手術を予定した.機器は軟性膀胱鏡,異物鉗子,滅菌経腟用エコープローブカバー等を用い,異物鉗子でプローブカバーの開口部をつかんだ状態で,タモ網を使用する要領でガラス玉をプローブカバー内に入れ,そのまま牽引し用手的に摘出した.術中出血はなく良好な視野のまま摘出可能であった.術後排尿は問題なく,以後一年間の外来フォローでは再発を認めていない.