著者
若林 正吉 田村 憲司 小野 信一 六本木 和夫 東 照雄
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.81, no.6, pp.573-583, 2010-12-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
52
被引用文献数
2

大宮台地の西縁部では,荒川の河川敷に存在する沖積土を台地上の火山灰土畑に運びこむ「ドロツケ」という客土作業が続けられていた.本研究は,ドロツケによる人為的土壌生成過程における土壌特性の変化を明らかにすることを目的として,長年のドロツケにより,沖積土が元来の土壌の上に厚く堆積した埼玉県北本市の圃場の土壌,台地上の火山灰土,および河川敷沖積土において,土壌断面調査と土壌理化学性の分析を行い相互に比較した.ドロツケにより,土壌の固相部が増大し,最大容水量および水分含量が減少した.沖積土中のAl_oおよびSi_o含量は,火山灰土の1/10以下であった.この沖積土の客土により,ドロツケ畑では客土層上層ほどリン酸吸収係数が減少し,可溶性無機態リン酸の内のCa型リン酸の割合,有効態リン酸量が増大した.沖積土には多量の交換性Caが含まれることにより,ドロツケ畑にCaが供給され,土壌pHも上昇した.ただし,ドロツケ畑では,Caの溶脱傾向が著しく,とくに,作土層では,土壌pHが低い値を示した.客土層の厚さと乾燥密度ならびにSi_oの分析結果から,この圃場への客土投入量は,1ha当たり5000t程度と試算された.
著者
小林 良二 酒井 昇 松木 浩二
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
日本鉱業会誌 (ISSN:03694194)
巻号頁・発行日
vol.99, no.1140, pp.81-86, 1983-02-25 (Released:2011-07-13)
参考文献数
12

It is well known that rocks are more or less deteriorated by sudden cooling after being heated. Furthermore, by repeating the cycle of heating-cooling, rocks might be expected to be weakened more severely.In this paper, measuring the changes of the physical and mechanical properties of rocks including apparent specific gravity, P-wave velocity, Young's modulus and uniaxial compressive strength, the thermal fatigue process of rocks is characterized for four kinds of rocks, namely, OGINO tuff, EMOCHI welded tuff, AKIYOSHI marble and INADA granite. The cylindrical specimens are suddenly submerged into water after being heated and the cycle is automatically repeated in the testing machine.The maximum temperature and the maximum cycles in the experiment are 600°C and 54, respectively.The main results obtained are as follows:(1) The main failure mechanism is different between the crystalline rock and the sedimentary rock. The failure of the former takes place by the thermal interaction between minerals and that of the latter by the transient thermal stresses. As the result, crystalline rocks collapse to be particles or powders and sedimentary rocks are fractured initiating regular thermal cracks (Fig.6).(2) The strengths of the rocks except welded tuff decrease remarkably within 5 cycles if the temperature is sufficiently high and the cooling time is larger enough (Fig.3).(3) The strengths of the rocks except marble decrease as the cooling time increases. However, the additional effect is very small if the cooling time is larger than that needed for the specimens to be perfectly cooled (Fig.4).(4) The cycles at which the specimens collapse exponentially increase as the temperature decreases (Fig.5).
著者
小林 益子
出版者
麻布大学
巻号頁・発行日
2021-03-15

【はじめに】 世界で約3500種存在するゴキブリの中で、人の生活環境にかかわる屋内棲息性のゴキブリは数種類であり、その中でもワモンゴキブリ、クロゴキブリ、チャバネゴキブリの3種は衛生害虫として重要であり、特に飲食店や食品工場における衛生管理上の重要な指標とされている。また家畜の飼育現場においては、家畜による捕食も日常的に観察される。これらは公衆衛生学、獣医衛生学および衛生動物学において重要な昆虫であり、その生態を明らかにすることは意義がある。一方、これらのゴキブリは、実験動物として古くから継代飼育され、研究に供試されてきた。しかし、ゴキブリの内部寄生虫についての研究は少なく、寄生種、寄生率および、感染状況が宿主ゴキブリに及ぼす影響等についてほとんど知られていない。哺乳類実験動物の内部寄生虫の存在が、研究目的によっては障害になることが知られており、実験昆虫として用いられるゴキブリについても、内部寄生虫の状況を把握することは重要である。\n第1章 国内棲息3種ゴキブリに寄生する線虫の感染状況 国内に棲息している屋内生息性の3種類のゴキブリに寄生する線虫の感染状況をまとめた。チャバネゴキブリBlattella germanicaについては3飼育個体群(WAT、NIIDおよびNK群)と野生個体320匹(26都道府県79ケ所の飲食店や宿泊施設等で捕獲)、ワモンゴキブリPeriplaneta americanaについては3飼育個体群(NKC、NIIDおよびNK群)と5匹の野生個体(畜舎で捕獲)、クロゴキブリPeriplaneta fuliginosaについては2飼育個体群(NKCおよびNK群)と40匹の野生個体(畜舎で捕獲)を用いて、それぞれの寄生線虫種および寄生率を調べた。その結果、3種すべてのゴキブリの後腸前部にThelastomatoidae上科の蟯虫が確認された。形態及び分子同定の結果、それらはBlatticola blattae、Thelastoma bulhoesi、Hammerschmidtiella diesingiおよびLeidynema appendiculataであることが確認された。チャバネゴキブリではB. blattaeが単一種で感染しており、個体群によっては非感染群が存在したことから、感染が生命維持に直接影響を与えないことと、非感染な状態を通常の飼育管理で長期間維持できることが分かった。また、野外で捕獲されたチャバネゴキブリの67%(213/320匹)にB. blattaeの単一種感染が確認された。以上の結果から、B. blattaeはチャバネゴキブリに寄生して、日本各地に広範に棲息していることが明らかになった。チャバネゴキブリにおけるB. blattae感染は国内初報告になる。また、ワモンゴキブリ飼育個体群からは3種の蟯虫が検出され、2種蟯虫の混合感染、あるいはT. bulhoesi の単独感染がみられた。野生個体からは全てL. appendiculataの単一種感染が確認された。クロゴキブリでは飼育個体群と野生個体からL. appendiculataの単一種感染がみられた。\n第2章 チャバネゴキブリBlattella germanicaに寄生する蟯虫Blatticola blattaeの暴露感染 チャバネゴキブリの蟯虫Blatticola blattaeについて、感染経路の解明を目的として、感染ゴキブリの糞を非感染ゴキブリの飼育槽に混在させることによる暴露感染実験を行った。その結果、感染糞の混在10日後には非感染個体群ゴキブリからB. blattaeの幼虫が検出され、感染糞混在20日後には蟯虫の未成熟雌が検出された。さらに感染糞混在30日後には蟯虫の成熟雌成虫が検出された。以上の結果から、B. blattaeの感染経路として、感染糞の暴露が実証された。さらにチャバネゴキブリの近縁在来種で完全屋外生息型であるモリチャバネゴキブリBlattella nipponicaについては、国内4か所で捕獲された野生個体に蟯虫の感染はみられなかったが、実験室飼育系のモリチャバネゴキブリの10%(3/30匹)にB. blattaeの感染が認められた。\n第3章 チャバネゴキブリB. germanicaの蟯虫B. blattaeに対する駆虫薬の効果 蟯虫非感染個体群の確立を目的として、飼育個体群の蟯虫自然感染チャバネゴキブリを用いて動物用駆虫薬による駆虫効果を検討した。市販されているパモ酸ピランテル(Pyrantel pamoate)、パモ酸ピルビニウム(Pyrvinium pamoate)、イベルメクチン(Ivermectin)およびクエン酸ピペラジン(Piperazine citrate)を飲水に溶かして蟯虫感染ゴキブリに摂取させ、投与後3〜35日に消化管内の寄生蟯虫数を調べ,駆虫薬の有効性を評価した。その結果、パモ酸ピルビニウムとパモ酸ピランテルはゴキブリへの影響が低く、今回用いた濃度でゴキブリに死亡や衰弱はみられず、飲水として設置後10および17日で蟯虫が検出されなくなった。しかしながら、設置後30日にゴキブリの1個体から蟯虫の幼虫が検出されたことから、完全駆虫のためには、投薬の継続または追加が必要なことが示唆された。イベルメクチンでは0.5ppm投与区でゴキブリは生存したが、蟯虫の生存も確認され、5ppm以上でほぼ100%のゴキブリが死亡した。クエン酸ピペラジンでは200ppm投与区で蟯虫の生存が確認され、同じ濃度で50%のゴキブリが死亡した。以上の結果から、パモ酸ピランテルとパモ酸ピルビニウムは、宿主を死亡させることなく、チャバネゴキブリに寄生するB. blattaeの駆虫に有効であることがわかった。また、イベルメクチンやクエン酸ピペラジンなどが宿主ゴキブリに対して殺虫性を示したことから、ゴキブリの駆虫においては駆虫薬の選択が重要であることが示された。\n第4章 ゴキブリ用殺虫剤の効果に及ぼすチャバネゴキブリB. germanicaの蟯虫感染の影響 実験昆虫としてのゴキブリの蟯虫感染が、殺虫剤の効果に及ぼす影響について検討した。有効成分ヒドラメチルノンを含有する毒餌剤をゴキブリに与え、死亡するまでに排泄された糞を毒餌剤を食していないゴキブリに餌として与えたときの致死効果について、蟯虫感染群と非感染群のチャバネゴキブリで比較した。その結果、ヒドラメチルノン含有糞の糞食または糞への接触によると考えられる二次的殺虫効果は、蟯虫感染群が非感染群に比べて有意に高くなった。ヒドラメチルノン含有食毒剤の二次効果に蟯虫感染が影響したことから、食毒効果(帰巣後の二次的殺虫効果を含む)を有する殺虫剤の評価試験において、ゴキブリの蟯虫感染の有無が試験結果に影響する可能性が示唆された。この成績は、実験の種類によっては、実験昆虫の蟯虫感染を管理することも視野に入れる必要があることを示唆している。\n第5章 チャバネゴキブリB. germanicaの生存に及ぼすB. blattae 感染の影響 飢餓時のゴキブリの生存における蟯虫感染の影響を調べることを目的に、チャバネゴキブリの蟯虫自然感染個体群と非感染個体群を用いて、無給餌(通常の固型飼料を給餌しない条件)の場合の糞食嗜好性と生存率の関係を調べた。その結果、糞給餌区(固型飼料の代わりに餌として糞を与える)において、感染個体群の生存日数は非感染個体群に比べて長くなった。さらに、蟯虫非感染個体群と人為的に作成した感染個体群の無給餌の場合における生存率を同じ個体群内で比較した。その結果、蟯虫感染群の生存率は有意に高くなることが明らかになった。以上の結果から、感染個体群はより多くの糞を食して栄養源としたことで生存期間が長くなる可能性が考えられ、蟯虫感染が飢餓時のゴキブリの生存に有利にはたらく可能性が示唆された。\n【総括】1)国内棲息ゴキブリから蟯虫 Leidynema appendiculata、Hammerschmidtiella diesingi、Thelastoma bulhoesiおよびBlatticola blattaeが検出されその宿主特異性が示された。2)チャバネゴキブリにおけるB. blattaeの寄生を国内で初めて報告し、全国に分布していることが示された。飼育個体群では非寄生群が存在したことから、本種感染は生存維持には影響せず、非感染状態の維持も可能なことがわかった。3) B. blattae 感染糞のゴキブリ飼育環境への暴露による感染の成立を確認した。4) 野外生息型モリチャバネゴキブリについて野生個体は非感染であるが、飼育個体群ではB. blattaeの感染を確認した。5)パモ酸ピルビニウムとパモ酸ピランテルが、チャバネゴキブリの蟯虫を駆虫するのに有効であることを実証した。6) 実験用ゴキブリの蟯虫感染は、ゴキブリ用食毒殺虫剤の二次的殺虫効果の試験結果を変動させる可能性が示唆された。7)蟯虫感染が飢餓時のゴキブリの生存に有利にはたらく可能性が示唆された。\n【終わりに】 本研究により、国内のゴキブリに寄生する蟯虫種、寄生率、分布および駆虫法が明らかとなり、ゴキブリ宿主と寄生虫相互関係に関する新しい知見が得られた。これらの成績は、実験動物としての昆虫およびその他の無脊椎動物の管理手法の改善に貢献する。また、宿主寄生虫相互関係の解明においてゴキブリ-蟯虫感染モデルは、比較的制御しやすく、生物間の相互関係における寄生現象の解明において、ユニークかつ有用なモデルであり、今後の寄生虫学の発展に寄与するものと考えられる。
著者
松政 正俊 阿部 博和 小林 元樹 鈴木 孝男
出版者
日本ベントス学会
雑誌
日本ベントス学会誌 (ISSN:1345112X)
巻号頁・発行日
vol.77, pp.54-59, 2022-12-25 (Released:2023-01-27)
参考文献数
25
被引用文献数
2

The tidal flats at Otomo-ura (Iwate Prefecture), which had been converted to farmland through a reclamation project from 1959 to 1969, have been partially restored after the tsunami caused by the Great East Japan Earthquake in 2011. In the course of monitoring the benthic fauna of the tidal flats for 11 years after the tsunami, we found some adult sentinel crabs of the genus Macrophthalmus at a muddy area for the first time on July 28, 2022. During subsequent observations of the mud flat, we noted that the adult male crabs exhibited waving display of vertical non-forward-pointing type. Allocleaning, performed by both sexes, was also observed. Morphological characters include: the carpus and propodus of the ambulatory leg 3 of the adult male are not associated with tuft of setae on their ventral surfaces, and the subdistal tooth of leg 3 is not distinct. Based on these behavioral and morphological characteristics, the macrophthalmid crab was identified as Macrophthalmus japonicus. This is the first record of this species along the coast of Iwate Prefecture. In addition, five of six females captured on July 28 and August 14, 2022, were ovigerous (range in carapace width: 19.1–25.0 mm), which indicates that the crabs are reproducing on the tidal flat.
著者
岩崎 直哉 小林 江梨子 田口 真穂 山田 博章 佐藤 信範
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.247-257, 2022 (Released:2022-09-30)
参考文献数
10

地域連携薬局と専門医療機関連携薬局の知事認定制度は2021(令和3)年8月に開始した.そこで,薬局機能情報提供制度の情報を活用して,各薬局の機能を分析し,千葉県の各医療圏の薬局が地域連携薬局の認定基準をどの程度満たしているのかの実態を明らかにすることを目的とした.解析には千葉県内の薬局の薬局機能情報を用い,2019年は2,405件,2020年は2,430件の薬局を対象とした.解析項目は地域連携薬局の認定基準から一部を抜粋した.全項目のうち,最も達成率が低い認定基準は “地域における医療機関に勤務する薬剤師などに対して報告および連絡した実績” であり,達成していたのは,2020年で千葉県全体の2.3%(57薬局)だけであった.無菌製剤の調剤応需体制を有する薬局も少なく,自らの薬局の無菌調剤室を利用している薬局は,千葉県全体で2020年は87薬局(3.6%)しかなかった.在宅業務の実施に関連する要因を調べるために2項ロジスティック解析を行った.結果として “麻薬の調剤応需体制を有する”,“無菌製剤の調剤応需体制を有する”,“健康サポート薬局である”,“お薬手帳(電子版)に対応している” の4項目が在宅業務の実施に関連する要因であると判明した.
著者
佐々木 秀文 春日 井貴雄 小林 学 堀田 哲夫
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.861-863, 1995-10-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
5
被引用文献数
1

今回私どもは経肛門的直腸内異物の1例を経験したので報告する. 症例は37歳男性で, 自分でラムネのびんを肛門から挿入後, 摘出できなくなった. 当院入院後, 腰椎麻酔下にびんを摘出した.
著者
小林 健彦
出版者
新潟産業大学経済学部
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要
巻号頁・発行日
no.49, pp.49-89, 2017-07

日本に於いては、同じ様な場所に於いて繰り返されて来た、殆んど周期的な地震の発生に依り、人的、物的にも多大な被害を被って来たのである。人々(当該地震に関わる被災者達)は、そうした大規模な震災の記憶を、文字情報としては勿論のこと、それ以外の非文字認知的手法―説話・伝承・地名・宗教施設・石造物・信仰等、としても残し、子孫への警鐘・警告、又、日常生活上の戒めとして来たのである。それは、日本社会で大多数の人々(為政者層、被支配者層の人々)に依って、或る事柄の記録が、文語資料として残される様になるのは、近世に入って以降のことであったからである。これは、寺子屋・郷学・私塾・藩校・藩学等に見られる教育機関の普及や、社会の安定、貨幣経済の成熟、農業振興等の理由に依る。それ以前の段階に於いては、文字を使用した形式での情報共有は困難であったのである。本稿では、そうした視角に立脚し、地震鎮めの効果を期待して実施されていた、「要石(かなめいし)信仰」に焦点を当てつつ、その太平洋沿岸諸地域と、日本海沿岸諸地域間での残存状況を比較、検討しながら、その差異の検証、分析や、その背景、経緯等に就いて考察を加えたものである。
著者
小林 瑠美子 小谷 スミ子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成17年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.171, 2005 (Released:2005-09-13)

【目的】旧暦の2月15日、涅槃会(お釈迦様が亡くなった日)に、佐渡地方では「やせごま(やせうま、しんこだんご)」を供えお参りする。これは団子の一種で、直径5cm、長さ15cm位の円筒形をしていて、輪切りにすると金太郎あめのように同じ模様がでる。本研究ではやせごまが作られるようになった由来、風土との関係を調べると同時に、佐渡以外の地域に見られる類似した伝統食を調べることを目的とした。【方法】佐渡在住者10名を対象に2004年11月_から_12月に聞き取り調査を行った。文献調査は、日本の食生活全集および各種資料を用いた。【結果】1.聞き取り調査の結果、「やせごま」は国仲平野の新穂(にいぼ)、畑野地区を中心に、両津、金井、佐和田地区で作られていた。羽茂(はもち)地区では「くじらもち」の名で作られており下北半島で端午の節句に作られる「べこもち(くじらもち)」との関連が伺えた。小木地区では法事にも作られていた。相川地区では寺で作るが家庭で作る習慣はなく、真野、赤泊地区ではあまり作られていなかった。2.涅槃会の供え菓子は主に北陸地方に見られた。3.長野県全般で作られている「やしょうま」、長野県に隣接する新潟県津南町の「やしょうま(みみだんご)」と岐阜県恵那市の「花くさもち」、長野から離れた福井県遠敷郡の「花くず」は「やせごま」に似た作り方であった。4.北陸地域では「涅槃会のだんごまき」をする風習が残っており、新潟県中越では「だんごまきの涅槃だんご」、富山県氷見市や魚津市では「お釈迦のだんご」、福井県では「ねはんだんご」と呼ばれる赤、白、緑、黄に彩られた大小さまざまな団子がお寺でまかれていた。能登半島の寺では「犬の子(いんのこ)」と呼ばれる団子をまく風習が残っていた。
著者
金高 有里 小林 道 土肥 聡 荻原 重俊
出版者
一般社団法人 日本DOHaD学会
雑誌
DOHaD研究 (ISSN:21872562)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.69-75, 2021 (Released:2021-12-02)

【目的】我が国では、胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減のために、妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性及び妊娠初期の妊婦は、通常の食品から摂取する葉酸以外に、サプリメントや食品中に添加される葉酸(狭義の葉酸)を400 ㎍/日摂取することが望ましいとされている。受胎期に重要な葉酸サプリメントの摂取が普及する一方で、海外において母親の葉酸過剰摂取による児の喘息発症のリスクが報告されている。そこで本研究では日本における妊娠期の葉酸サプリメントの摂取と児の喘息発症リスクとの関連を検討した。 【方法】2014年7月から8月に、北海道札幌市、石狩市の計17か所の保育所に通う児童の保護者589人を対象に、児の性別と月齢、児の喘息の有無と発作頻度、児のRSウイルス罹患状況、両親の喘息の有無と発作頻度、両親の喫煙歴、妊娠前および妊娠20週まで(妊娠前半期)と 21 週以降(妊娠後半期)のサプリメントによる葉酸摂取状況について自記式質問紙調査を行った。解析対象は、児の性別、児の月齢、喘息の有無、妊娠期の葉酸サプリメント摂取の有無について欠損が無かった305人(51.8%)とした。 【結果】多重ロジスティック回帰分析の結果、葉酸サプリメント非摂取群と比較した摂取群の喘息有症の調整オッズ比は、4.54(95%CI: 1.20-17.30)であった。 【考察】本研究では、妊娠期の葉酸サプリメント摂取と喘息の罹患に正の関連が見られた。妊娠期に葉酸サプリメント摂取が無かった群と比較して、葉酸サプリメントを摂取していた群で喘息の有症率が高かった。葉酸摂取を否定するものではないが、本研究の結果から、葉酸サプリメントの摂取は、児の喘息発症のリスクであることが示された。
著者
小林 一樹 糟谷 大河
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 = The University Bulletin of Chiba Institute of Science (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
no.10, pp.53-56, 2017-02-28

千葉県版レッドリストで一般保護生物(準絶滅危惧種)とされている,リンドウ科の草本植物コケリンドウが銚子市に生育することを2016年に初めて発見した.確認された生育地は千葉科学大学マリーナキャンパス内のシバ草地1か所で,開花個体数は10~100個体の範囲であった.本種の生育地の状況から,人為的に植栽された形跡は認められなかった.また,今回発見された生育地は海岸を埋め立てて造成された土地であることから,造成時の土砂等に種子が混入し発芽して定着した可能性が推測される.今回発見された生育地では定期的に草刈りが実施されており,このことがコケリンドウの生育に適した環境を維持していると考えられる.
著者
林 隆之 齊藤 貴浩 水田 健輔 米澤 彰純 川村 真理 安藤 二香
出版者
政策研究大学院大学科学技術イノベーション政策研究センター (SciREX センター)
雑誌
SciREX ワーキングペーパー = SciREX Working Paper
巻号頁・発行日
no.SciREX-WP-2020-#04, 2020-10

我が国は生産年齢人口の減少がすすむ中、デジタル化による産業構造転換に遅れて国際競争に劣後し、さらに、近年は感染症や災害などの問題にも直面するなど、厳しい状況におかれている。この中で、大学は、高度な能力を有する次世代の人材を育成・輩出し、また、先端的な研究開発を通じて新たな知識を形成し社会や産業の課題解決へつなげていく重要な機能を有している。とりわけ国立大学は、公的資金に基づいて、高度な研究開発の実施や国として必要な高度人材の育成を担うことが強く期待されている。しかし、大学はこれまで、大学改革の要求に受け身で対応することによる疲弊や、国立大学法人における運営費交付金の削減等による財政基盤の弱体化により、その機能を十二分に発揮している状況とは言えない。 大学が教育研究活動の現状を国や社会に示し、その方向性を共有することで公的存在としての大学への支持を構築していく手段の一つとして、大学評価があげられる。日本では2004年から、大学評価制度として認証評価と国立大学法人評価という2つの評価が実施されてきた。しかし、現在、2つの評価制度は大学に多大な対応負担を求めているにもかかわらず、現実的には何に活用されるのかが不明瞭な状況になっている。日本の大学評価は、大学の「個性化」を重視してきたがゆえに、大学間の比較可能性を限定的なものとしており、学生や社会が意思決定のために求める大学情報として機能しにくく、また大学自らの切磋琢磨にもつながりにくい状況になっている。 その一方で、大学評価制度とは別に、資金配分のための評価が行われるようになった。大学単位の競争的資金配分や、国立大学の運営費交付金配分のためのKPIによる「機能強化経費」配分、ならびに共通指標による競争的配分である。そもそも先述の2つの大学評価制度は評価結果を運営費交付金の配分に強く影響させないことを前提としており、それゆえに、資金配分のためには別の評価が必要となり、大学に重複した負担をかける状況になっている。 この状況は大学評価の在り方の問題だけではなく、運営費交付金の配分の在り方の問題と一体である。第三期中期目標期間に新たに導入された競争的配分は、運営費交付金の8割以上を占める「基幹経費」部分を圧縮することによって各大学が拠出した額が、毎年の改革状況や実績によって再配分される方法であり、不安定かつ短期的な配分をもたらしている。 一方、基幹経費は、前年度額をもとに算定される方式が法人化以降15年以上続き、大学が現在行っている教育・研究活動に必要なコストと整合した額が配分されているかも不明な状態であるとともに、教育研究実績を向上させるインセンティブが存在しない。 このように、我が国の高等教育や社会を発展させるための全体としての財政理念や長期的な将来展望を欠いたまま、前年度踏襲の漸増減が繰り返されたり、対症療法的な改革点検項目を指標とした評価が行われたりすることは、大学を疲弊させることにつながる。 この点について海外諸国をみれば、財政配分については、その根拠や効果を透明性をともなってわかりやすく社会に提示するため、広い意味での大学評価と関連づけた議論や取組みが進んできている。すなわち、海外では運営費交付金のような基盤経費の配分は、日本のような前年度額や非公式の交渉に基づく配分から、必要コスト(学生数等)や実績指標を総合的に用いた算定方式や、大学と国との契約に基づく配分を含むものへと次第に変化している状況がある。大学評価の方法についても、教育面では、学生満足度調査や卒業率・雇用状況等を、研究面では研究成果の学術的質や社会的効果(インパクト)に対する評価者による研究評価等を活用する国もあるなど、実績を定量的・定性的に測定する方法の開発が進んでいる。一方で、教育の質保証を目的とする評価は、大学内部の評価である内部質保証を厳しく実施することによって、外部からは簡素に評価を行い、大学内部では自ら意義ある取組としての内部評価を実施することが可能となりつつある。 これらの国内外の状況を踏まえれば、我が国の大学評価を、効率的な財政配分への貢献をも正面から見据えて、根本的に問い直すべき時期にきている。本報告では、大学評価と運営費交付金配分方式の一体的改革が必要であることを提言する。 運営費交付金は前年度額に基づく理論なき配分から、大学の教育・研究・社会貢献の機能ごとに、必要コストや実績の測定を行い、配分に反映させる透明な算定方式へ移行することが必要である。そこでは、インプット指標に基づくコストを保証する基盤的部分、教育・研究・社会貢献の実績を測定してインセンティブを付与する部分、大学の戦略をもとに国の政策課題に対する貢献を「契約」する部分など、統合的で一貫性を持った体系へと再設計することが望まれる。このような方法をとることで、運営費交付金が安定的、あるいは期間中の増減が予め把握可能な資金配分となり、また、社会からは大学の実績への理解と支持がえられることで、大学による長期的な視野に立つ自律的経営が可能となることが期待される。 国立大学法人評価は、大学の教育研究活動の状況や実績を量的・質的に把握・評価し、運営費交付金へ反映させることが可能な情報を提供することを目的とする評価へと転換することを提言する。そこでは現在のように、中期目標・計画の達成を厳密に評価するのではなく、教育面では将来必要となる人材の育成のために、学習者や社会のユーザーの視点を反映した基準に基づく評価を行い、研究面では学術的な質の国際的卓越性や研究による社会への効果(インパクト)を把握し、その評価結果を理解しやすい形で提示する。それにより、幅広いユーザーへの有効な情報提供や、資金配分の説明責任を果たすことも期待される。 加えて、大学の戦略的経営の面からは、各大学は独自に「戦略計画」を策定し、それを踏まえて国が提示する政策目的・課題(たとえば、将来社会において必要な領域の人材養成、国際的な拠点となる学術研究、地域創生の拠点としての大学)への貢献を国と契約し、そのための資金配分がなされることも考えられる。これにより、国は、個々の大学の個性や自律性を尊重しつつも、大学セクターへの公共投資の目的を明確化し、大学間での機能分担を促進し、有効性と効率性を高めることが必要である。 一方、認証評価は内部質保証を重視した方向性を堅持しつつ、大学単独だけでなく大学セクターが共同して教育内容や学修成果の水準を外部のステークホルダーの視点も入れながら点検し、教育の質向上を図るよう取組を進めるべきである。 令和2年度において、新型コロナウイルスのパンデミックが緊急の大きな財政出動につながったが、経済状況の回復後は財政再建のための緊縮財政を覚悟しなければならない。そうした中、大学への公共投資には投資効果に関する明確で一貫したわかりやすい全体設計による効率性・透明性の確保と社会からの広範な理解と支援が必要となる。そのためにも、運営費交付金配分と大学評価の一体的改革が不可欠である。
著者
小林 達 澤田 歩 葛西 智 後藤 聡 松本 和浩 工藤 智
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.287-294, 2021 (Released:2021-09-30)
参考文献数
34
被引用文献数
1

近年のリンゴ開花期間における低温傾向に対応するため,10°Cの低温条件でも発芽が可能で,主力品種 ‘ふじ’ に対する人工受粉用花粉として適する品種を選定した.まず,受粉専用品種を含む全26品種を対象とし,10, 15および20°Cの各条件における花粉発芽率を調査した結果,10°Cにおける発芽率は ‘ふじ’ を除くと2か年とも ‘はるか’ が最も高く,‘王林’ が最も低かった.次に,‘はるか’ および ‘王林’ の他,10°Cでの花粉発芽率が高かった品種のうち,広く生産され花粉を獲得しやすい ‘シナノゴールド’ を加えた3品種について,10または20°C条件でそれぞれの花粉を ‘ふじ’ の花に受粉した.その結果,‘はるか’ および ‘シナノゴールド’ の花粉の場合は両条件とも高い結実率を示したのに対し,‘王林’ の花粉の場合,10°C条件では20°C条件に比較して明らかに低かった.また,50花当たりの花粉重量は,これら3品種の中で ‘王林’ が最も少なかった.さらに,3品種のいずれの花粉を受粉しても,‘ふじ’ の果実形質および果実品質に差はないことを確認した.以上より,‘はるか’ および ‘シナノゴールド’ の花粉は低温発芽性を有し,花粉量も多いことから,低温条件下の ‘ふじ’ に対する人工受粉用の花粉として有望であると考えられ,現在一般的に使用されている ‘王林’ よりも優れた特性を有することが明らかとなった.
著者
五十嵐 陽介 田窪 行則 林 由華 ペラール トマ 久保 智之
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.134-148, 2012-04-30 (Released:2017-08-31)
被引用文献数
6

In this paper we test the hypothesis that Ikema, a dialect of Miyako Ryukyuan, has a three-pattern accent system, where three accent classes, Types A, B, and C, are lexically distinguished, contra previous studies which have claimed that it has a two-pattern accent system. The results of our analysis confirm the existence of three distinct accent classes. The three-way distinction can only be observed in quite restricted conditions, including when nouns followed by one or more bimoraic particles precede a predicate. The results also reveal that Type A words are few in number, indicating that Type A words are in the process of merging with Type B.
著者
小林 盾
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.163-176, 2017 (Released:2017-07-19)
参考文献数
39

この講座は,合理的選択理論がどのような理論構造をもち,どのように社会現象へと応用できるのかを考える.もともと合理的選択理論は人びとの行動を「個人が合理的に選択したもの」と仮定する.しかし,現在の合理的選択理論は,狭い利己的個人像に限定されず,ネットワークや文化を考慮するなど,より多様で豊かな人間像を想定するようになってきた.そこで,この講座ではまず合理的選択理論の理論構造を整理し,人的資本,社会関係資本(ソーシャル・キャピタル),文化資本という3つの資本投資メカニズムを取りあげる.つぎに,どうすれば合理的選択理論を用いて,実証的な仮説を立てられるかを考える.合理的選択理論は理論構造が明確で体系的なため,シャープな仮説を検証可能な形で導出できる.そのため,じつはこの理論は計量分析と相性がよい.
著者
伊奈 林太郎 五十嵐 淳
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.2_18-2_40, 2009-04-24 (Released:2009-06-24)

静的型システムと動的型システムの両者の利点を活かす枠組みとして,SiekとTahaは漸進的型付けを提唱している.漸進的型付けでは,型宣言された部分のみ静的型検査が行なわれ,残りの部分については実行時検査が行なわれる.これにより,当初型を付けずに書いたプログラムに型宣言を徐々に付加し,静的型付けされたプログラムを完成させることができる.本研究では,漸進的型付けをクラスに基づくオブジェクト指向言語で実現する理論的基盤として,Igarashi, Pierce, Wadlerらの計算体系Featherweight Java (FJ)に動的型を導入した体系FJ?を定義し,型付け規則を与える.さらにFJ?からFJにリフレクションを加えた体系への変換を定義することで意味論を与え,静的に検査した部分の安全性が保証されることを示す.
著者
小林 庸平 中田 大悟
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.147-169, 2016 (Released:2021-08-28)
参考文献数
24

社会保険料負担の増加は,日本国内の投資を阻害し,空洞化を促進しているのではないかとの指摘があるが,それを実証的に分析した研究は,国内外を問わず非常に乏しい。本稿では,健康保険料データと企業データをマッチングさせた個票データを用いて,企業の健康保険料負担が,設備・研究開発・対外直接投資にどのような影響を与えているかを実証的に分析した。分析の結果,健康保険料負担の増加は,⑴企業の国内投資を一定程度抑制させた可能性がある,⑵研究開発投資には大きな影響は与えていない,⑶海外進出を行うかどうかの意思決定には影響を与えていないものの,既に海外進出を行っている企業の対外直接投資を増加させた可能性がある,といった結果が得られた。