著者
小林 俊行 森口 洋佑
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.30, no.9, pp.5-8, 2015 (Released:2018-04-07)
参考文献数
5

大学生の物理分野における素朴概念の実態を解き明かすために,各種調査問題が作られ,その実態が報告されてきた。今回は,長洲・武田らが用いた小・中学校で学習する力の概念に関する調査問題を利用して,中学・高校の理科の教師を目指す大学生 1 年生と 3 年生の認知状況を調査,分析するとともに,当時の中学生の認知状況と比較してみた。その結果,調査内容のほとんどで大学生となっても素朴概念が修正されずにいることがわかった。
著者
森本 峰子
出版者
英米文化学会
雑誌
英米文化 (ISSN:09173536)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.141-159, 2000

While attempts were being made in Europe to discover the "Terra Australis Incognita" (unknown southern land), imaginary land which had long been thought to exist at the bottom of the earth since the times of Greek geographer, Ptolemy, Japan was under National Isolation Policy. It was not until Captain Cook's explorations that precise maps of Australia and New Zealand were drawn. Captain Cook also found that the legendary land which had been thought to occupy the whole bottom of the earth did not exist. In Japan, however, cartographers kept on producing out-dated maps. The shape of some land masses especially that of Australia differed according to Buddhists, Confucianists, and those Japanese Dutch scholars who were so-called positivists. It was a Japanese feudal government officer, Kageyasu Takahashi, who finally drew the first correct map. Though the Japanese government publicly acknowledged Confucianism to be the "orthodox" ideology, they on the other hand pursued European knowledge. However, this knowledge was restricted to themselves. That is why private scholars were behind the times. In this essay, three styles of maps of Australia during the Edo Period are described along with the discussion as to why such lack of unity occurred
著者
松下 秀鶴 森 忠司 田辺 潔
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.250-255, 1983-06-20 (Released:2011-11-08)
参考文献数
13

室内空気中のニコチン濃度およびこれへの個人被暴露量の簡易分析方法を開発した。本法は, 次の各操作すなわち, 固体捕集法による室内空気中のニコチンの捕集, 固体捕集剤への内標準物質 (イソキノリン) の添加, アルカリ性メチルアルコール溶液によるニコチンの溶出, そして熱イオン化検出器付ガスクロマトグラフィー (GC-FTD) によるニコチンの分析から成り立っている。本分析方法は98.8±2.1%と高いニコチンの捕集効率が得られ, 内標準物質であるイソキノリンに対するニコチンの脱着効率の比の平均値は1.01±0.01と再現性がよく, 分析手法の簡易化に有用であることが判った。また本捕集剤中でのニコチンは暗室 (室温) および冷凍庫 (-20℃) 内での保存では少なくとも7日間は安定であることが判った。本分析条件でのニコチンの絶対検出下限は4.5pg (S/N=2) であり, 本法を用いると0.30μg/m3までの濃度のニコチンを精度よく分析できる。室内空気中のニコチン分析の一例として研究室内の空気中のニコチン濃度を調べた結果, 0.57~2.36μg/m3であった。また談話室内空気中のニコチンの経時変化を調べた結果, ニコチン濃度は2.5~23μg/m3と10倍近く変動すること, ニコチン濃度の変動のパターンはタバコの喫煙本数のそれとよく類似することが判った。
著者
森川 嘉一郎
出版者
青土社
雑誌
ユリイカ (ISSN:13425641)
巻号頁・発行日
vol.40, no.7, pp.196-202, 2008-06
著者
河原 常郎 土居 健次朗 大森 茂樹 倉林 準
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0320, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】変形性膝関節症や半月板損傷による歩行は,膝関節の疼痛を訴えるケースが多い。このような症例に対して,歩隔を大きくした歩行(以下,WB歩行)は,膝関節における疼痛の軽減につながることが多くあった。本研究は,WB歩行を運動学的に解析し,その有用性を検討することを目的とした。【方法】対象は整形外科的,神経学的疾患の無い健常成人男性11名(年齢25.6±2.8歳)とした。使用機器は,VICON MXシステム(Vicon Motion System:カメラ7台,200Hz),床反力計(AMTI2枚,1,000Hz),使用ソフトはVICON NEXUS 1.7.1とした。運動課題は歩行動作とし,両踵骨間の距離を,①N:規定なし,②W:左右上前腸骨棘間距離,③WH:②の1.5倍の3パターンとした。マーカは,15体節(頭部,体幹,骨盤,左右の上腕,前腕,手部,大腿,下腿,足部)の剛体リンクモデルを用い,35点を貼付した。解析項目は,歩隔,足角,歩幅,歩行速度,ケイデンス,下肢(股関節,膝関節,足関節)関節角度,関節モーメント,身体重心(COG)位置とした。計測は右脚立脚期に行った。計測時間は,自然3次スプライン補間を用いて,各データのサンプル系列から,全データのサンプル数が同じ長さになるようにデータを正規化した。統計処理は,一元配置の分散分析後,有意差を認めたものに対して多重比較Bonferroni法にて検証した。【結果】1)歩隔:歩隔は,N:93.7±31.0mm,W:288.5±33.3mm,WH:429.0±47.1mmであり,各歩行パターン間に有意差を認めた。2)歩行速度:歩行速度は,N:72.1±5.3m/min,W:70.1±6.4m/min,WH:72.6±7.2m/minであり,各歩行パターンに有意差を認めなかった。3)歩幅,足角,ケイデンス:歩幅は,N:596.0±36.1mm,W:575.4±49.9mm,WH:644.0±31.3mm,足角は,N:5.8±5.1°, W:4.0±2.9°, WH:10.1±3.0°であった。WHはN,Wに対して有意に大きい値を示した。ケイデンスはN:121.1±7.4steps/min,W:122.0±6.2steps/min,WH:112.5±8.2steps/minであった。WHはN,Wに対して有意に小さい値を示した。4)関節角度,モーメント:股関節における関節角度は,立脚期を通して,歩隔の増大に伴い,外転角度増大,外旋角度減少を示した。関節モーメントは,立脚期を通して,歩隔の増大に伴い,股関節内転モーメント(N:760.5±17.9Nmm,W:563.2±53.9Nmm,WH:342.1±84.2Nmm)・膝関節内反モーメント(N:668.3±61.1Nmm,W:599.5±54.2Nmm,WH:555.1±119.2Nmm)減少,足関節内反モーメント(N:34.6±8.5Nmm,W:108.8±22.1Nmm,WH:211.4±16.1Nmm)増大を示した。歩行周期において,WHは,初期接地から荷重応答期にN,Wと比較して股関節内転・内旋モーメント,膝関節内反モーメント減少を示した。その他の関節角度,関節モーメントは,各歩行パターン間において有意差を認めなかった。またWHは,立脚終期に,N,Wと比較して足関節背屈角度減少,股関節内転・外旋モーメント・膝関節内反・外旋モーメント・足関節外転モーメント減少を示した。5)COG:COGの側方変位量は,N:29.9±11.4mm,W:34.6±10.2mm,WH:76.0±11.0mmとなり,歩隔の拡大に伴い増加を示した。重心側方変位の増加量は,歩隔の増加量と比較して減少した。COGの鉛直変位量は,N:37.9±7.2mm,W:38.1±6.0mm,WH:39.0±7.4mmとなり,各歩行パターン間に有意差を認めなかった。【考察】WB歩行による歩隔の拡大は,膝関節内反・外旋モーメントを小さくした。その量は,軽く足を開く程度のWにて約1割,さらに足を開くWHにて約3割のモーメントの減少が可能であった。WB歩行は,変形性膝関節症(内側型),内側半月板損傷などの有痛性膝関節疾患のケースにおいてストレスとなる関節運動の制御が「安全」かつ「容易」に可能であるという点で有効であるという事が示唆された。ただし本研究は,対象を健常成人としており,WHは,N,Wと比較してケイデンス減少を示したものの,歩行速度が変わらず,歩幅は増大を示した。また,WB歩行はCOGの側方変位過多や足関節内反モーメント増大など,デメリットの要素も残しており,完全な安定した歩行戦略であるとは言い切れないことがわかった。【理学療法学研究としての意義】今回,我々はWB歩行の解析を行い,その運動学的な特徴を示した。その中でWB歩行は,歩行時の膝関節のストレスが軽減することを明らかにした。このことは変形性膝関節症における疼痛回避の一手段となりうる可能性が示唆された。
著者
横田 俊平 名古 希実 金田 宜子 土田 博和 森 雅亮
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.98-107, 2020 (Released:2020-07-11)
参考文献数
41

2019年12月中国武漢市から始まった新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染症(COVID-19)はパンデミックとなり,世界215か国に広がり,多くの感染者,重症者,死亡者を出しつつその勢いを減じる気配はない.臨床的特徴は,発熱,乾性咳嗽,倦怠感を訴える例が多く,また,病態的には無症状から急性呼吸窮迫症候群や多臓器不全まで幅が広い.小児例は罹患数が少なく重症化することが少ないとされるが,一方,こども病院に搬送される例を詳細に検討すると多くの低年齢児が罹患しており,呼吸不全や多臓器不全を呈する例が少なくない.また,アメリカにおいて重篤感染例から逆算したSARS-CoV-2感染例はきわめて多く,早急の対策が求められている.妊娠中の母親がCOVID-19を発症した場合,帝王切開による分娩が勧められ,また,児への垂直感染は稀であることが明らかになった.他方,出生直後から感染が高頻度に起こるため,出生後直ちに母子分離を図り母乳栄養は避けることが推奨されている.小児期の慢性疾患の中でもステロイド薬,免疫抑制薬,生物学的製剤などを使用している小児リウマチ性疾患児は感染症に対して高感受性群と考えられるが,一方で,抗IL-6受容体モノクローナル抗体やhydroxychloroquineなどの抗リウマチ薬がCOVID-19の呼吸窮迫症候群から多臓器不全への移行期におけるcytokine storm interventionに有効であることが報告されている.免疫抑制薬をこのような慢性炎症性疾患の小児に継続投与を維持するかどうかは大きな問題である.最近,欧米においてSARS-CoV-2感染と川崎病発症との関連性が疑われているが,報告も少なく診断の点で問題があり,川崎病ではなく全身性血管炎として推移を見守ればよいと思われる.
著者
渡邊 敬子 森下 あおい 大塚 美智子 諸岡 晴美 丸田 直美 石垣 理子 持丸 正明 小山 京子
出版者
京都女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

3Dでスキャンした人体形状や類型化されたグループの平均形状のデータをそのままボディとして用いるのではなく、ドレスボディのようにゆとりの入った形状に変換したものを用いると、より効率良くパターン設計ができると考えられる。そこで、a)ヌードボディとドレスボディを3D計測し、断面を比較するb)ボディ制作者・ボディメーカー等の聞き取りを行うc)研究室所蔵の体表の伸縮データを再検討するなどして、ゆとりを入れる場所と量について検討した。この結果を参考に、LookStailorXで既存のヌードボディに対して、適量のゆとりを入れたガーメントを作成した。このヌードボディとガーメントデータの差分を利用して、HBM-Rugleでモーフィングによる変形を試みた。腕付根位の周囲長で2cm、5cm、8cmのゆとりが入るように変換したボディを基に、タイトフィットのパターンを作成し、厚地のトワルで実験着を作成した。モーフィングで変換した断面図を観察すると、意図した箇所にゆとりを付与できていた。また、製作した実験着の外観には不自然なつれや余り皺はなく、衣服圧の検討からは、ゆとり2cmでも日常の小さな動作には対応できることが分かった。さらに、体格が違う男性や子どもにも同様にモーフィングを行ったところ、意図した箇所にゆとりを付与できており、汎用性があることが予想された。一方、昨年度までは、体型の分類のため、体幹部と下肢部に分けて相同モデルを作成し、解析してきた。全身のモデルは腋下や股下の欠損があり、計測器に付属したソフトの補間では、この部位が実際の位置よりも下方でつながれ、寸法算出や着装シミュレーションの際に問題が生じていた。そこで、ジェネリックモデルやランドマーク位置を工夫することで、これらの位置が正しく表現できる相同モデル作成が可能にした。この方法を用いて、今までに計測したデータをモデル化している。
著者
近森 高明
出版者
慶應義塾大学法学研究会
雑誌
法学研究 = Journal of law, politics and sociology (ISSN:03890538)
巻号頁・発行日
vol.90, no.1, pp.149-174, 2017-01

1 都市をめぐる批評的言説の現在2 オーセンティシティ論と本質主義の危うさ3 「つまらなさ」を引き受ける : コールハースとオジェ4 複製的なものとジェネリックなもの5 アウラとオーセンティシティ6 アウラへの両義的なまなざし : ズーキンの可能性7 時間軸の導入によるオーセンティシティの複数化8 時間軸の導入によるジェネリシティの複数化9 ジェネリシティとオーセンティシティの反転有末賢教授退職記念号
著者
森 三樹三郎
出版者
大阪大学
雑誌
大阪大學文學部紀要 (ISSN:04721373)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.223-328, 1954-03-25

This is a report of the overseas research project "Field Research on Japanese Language and Culture Remaining in the Former Japanese Mandate Pacific Islands", supported by a Ministry of Education Scientific Research Grant (International Grant, Satoshi Toki, representative), 1994-1996.
著者
木下 ひとみ 中村 吏江 幸 絢子 天野 愛純香 白石 剛章 森本 忠雄
出版者
医学書院
雑誌
臨床皮膚科 (ISSN:00214973)
巻号頁・発行日
vol.73, no.11, pp.863-867, 2019-10-01

要約 62歳,男性.賞味期限切れの納豆を摂取し,蕁麻疹と血圧低下を生じた.大豆製品を日常的に摂取し問題ないこと,クラゲ刺傷の既往があったことから,クラゲ刺傷によって生じた納豆アレルギーを疑った.クラゲ刺傷によってポリガンマグルタミン酸(poly-gamma-glutamic acid:PGA)に感作されるが,納豆の粘稠物質にもPGAが含まれており,このPGAは納豆の発酵過程で経時的に増加すると考えられている.そこで賞味期限内および賞味期限切れの納豆,納豆の粘稠物質,大豆の水煮,ミズクラゲ,PGAを用いてプリックテストを施行した.賞味期限切れの納豆,納豆の粘稠物質,PGAで陽性であり,PGAによるアナフィラキシーショックと診断した.PGAは医薬品で使用されるほか,食品や化粧品等広い分野で使用されているため,原因不明のアナフィラキシーでまず疑うことが大切であり,クラゲ刺傷の既往や詳細な食事歴の聴取が重要である.
著者
丁 国際 徐 開欽 西村 修 稲森 悠平 須藤 隆一
出版者
Japanese Society of Water Treatment Biology
雑誌
日本水処理生物学会誌 (ISSN:09106758)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.105-115, 1995-06-15 (Released:2010-02-26)
参考文献数
26
被引用文献数
1 2

A survey of nematodes in drinking water treated by an advanced water treatment plant with biological treatment and granular activated carbon filter bed has been conducted for one year. Some nematodes with average 5.3%survival were observed in all samples from drinking water and the densities of nematodes seasonally fluctuated. Three genera 4 species were detected, but only two genera often appeared in which Plectus was abundant and Rhabditis was lesser. There was no relationship between rainfall and the densities of nematodes in drinking water. It was found that water temperature has a strong influence on the densities of nematodes. The species of nematodes in drinking water were much less than those in the water resource, which indicated that nematodes from the water resource were able to be removed by the water treatment facilities. On the other hand, the densities of nematodes in drinking water were much more than those in the water resource especially in the warmer seasons. It was suggested that some species like Plectus were able to breed within some treatment facilities, probably within the GAC filter.
著者
森 茂美 太田 善博
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.Supplement, pp.61-69, 1985-12-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
25

ネコの脳幹内には, 既に2つの歩行中枢が同定されている.その1つは視床下核歩行誘発野 (SLR) であり, もう1つは中脳歩行誘発野 (MLR) である.解剖学的に, SLRおよびMLRはそれぞれ外側視床下部および楔状核に相当する.SLRは歩行運動の“発動的”側面を制御していると考えられる.一方, MLRは四肢間協調のような“自動運動的”側面を制御していると考えられる.上丘前縁と乳頭体後縁を結ぶ面で脳幹を切断した除脳ネコ (precollicular-postmammillaly decerebrate cat) において, MLRに連続微小刺激を加えると, 流れベルト上で歩行運動が誘発される.これら2つの歩行中枢に加えて, 最近, 姿勢筋の筋緊張 (postural muscle tone) を“セット”したり“リセット”したりする橋中心部の神経機構が同定されている.正中線上の橋中心被蓋野背側部および腹側部に連続微小刺激を加えると, 同一標本においてpostural muscle toneは, それぞれ長時間抑制および増強した.MLRと背側部を同時刺激すると, MLRの刺激で誘発された歩行のパターンは協調のとれた四足歩行から後肢のステッピングへと変化し, さらにステッピングから歩行運動の完全な抑制へと変化した.その際, postural muscle toneはかなり減弱していた.それと対照的に, MLRと腹側部を同時刺激すると, 歩行パターンは完全な抑制から後肢のステッピングへ, ステッピングから歩行へ, さらに歩行からギャロップへと変化した.その際, 姿勢筋の筋緊張レベルは段階的に増大していた.腹側部により強い単独刺激を加えると, 伸筋の筋緊張の著明な増強を伴なった痙性歩行運動が誘発された.中枢無傷ネコが自発歩行をしている際に橋中心被蓋野の背側部に刺激を加えると, 一連の姿勢変化が誘発された.刺激の開始から数秒後, ネコは歩行を停止し, そのままの状態で直立姿勢を維持した.この刺激を持続するとネコは坐り込み, 次に床の上に腹這いになった.刺激停止後も数分間にわたりネコはその最終姿勢を維持し続けた.橋中心被蓋野の腹側部に刺激を加えると, ほとんど正反対の一連の姿勢変化が誘発された.刺激の開始から数秒後, ネコは腹這いの姿勢からお坐りの姿勢をとり, さらにこの刺激を持続すると歩きはじめた.刺激によってネコは常に覚醒反応 (aler-ted) を示し, また歩行の開始に先行してその頭部を挙上し, 周辺を見まわして相対的位置関係を測るような反応 (oriented) を示した.これらの成績はすべて“歩行”制御系および“姿勢”制御系が脳幹および脊髄内において共通の神経機構を共有していることを示唆する.本諭文においては姿勢および歩行運動の“発動的”および“自動運動的”制御面との関連において, これら橋中心被蓋野のもつ機能を考察した.この内容は特定研究 (1) 「発育期の体力に関する基礎的研究」代表, 小野三嗣教授の研究集会に際して発表した研究成果の要旨をまとめたものである (課題番号: 57123109.58124037, 59127034, 分担課題: 姿勢保持能力と脳幹神経機構) .