著者
森下 信雄
出版者
阪南大学学会
雑誌
阪南論集. 社会科学編 (ISSN:03881814)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.45-62, 2019-10
著者
赤尾 静香 朴 玲奈 梅田 綾 森野 佐芳梨 山口 萌 平田 日向子 岸田 智行 山口 剛司 桝井 健吾 松本 大輔 青山 朋樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】妊娠,出産は急激な身体の変化を伴うことで,さまざまなマイナートラブルが起こるといわれている。その中でも骨盤痛含む腰痛は妊婦の過半数が経験し,出産後も痛みが継続するという報告もされている。また腰痛を有する妊婦は身体活動が制限されることにより,ADLやQOLが低下すると報告されている。妊娠中に分泌されるリラキシンホルモンの作用により,仙腸骨靭帯や恥骨結合が弛緩することが原因で発症する腰痛を特に骨盤痛と呼び,出産後はオキシトシンの作用によりすみやかに回復するとされている。しかし実際に出産後1ヶ月以上経過した女性を対象とした研究は少なく,妊娠期の身体変化が及ぼす影響が出産後どのくらい持続しているか報告している研究は少ない。そこで,本研究では,妊娠期での身体変化が回復していると考えられる産褥期以降の女性における骨盤痛の有無と骨盤アライメント,腰部脊柱起立筋筋硬度に着目し,その関連性について検討することを目的とした。【方法】対象は名古屋市内の母親向けイベントに参加していた出産後3ヶ月以上経過した女性77名(平均年齢30.7±4.2歳,平均出産後月6.3±2.6ヶ月)とした。測定項目として骨盤アライメントの測定には,骨盤傾斜の簡易的計測が可能なPalpation Meterを上前腸骨棘と上後腸骨棘の下端に当て,静止立位時の左右の骨盤前後傾角度,上前腸骨棘間距離(以下ASIS間距離),上後腸骨間距離(以下PSIS間距離)を測定し,骨盤前後傾角度の左右差,ASIS間距離とPSIS間距離の比を算出した。腰部脊柱起立筋筋硬度の測定には,生体組織筋硬度計PEK-1(株式会社井元製作所)を使用し,第3腰椎棘突起から左右に3cmおよび6cm離れた位置を静止立位にて測定し,一ヵ所の測定につき5試行連続で行った。得られた値の最大値,最小値を除いた3試行の平均値を代表値とした。アンケートは基本項目(年齢,身長,体重,妊娠・産後月齢,過去の出産回数),骨盤痛,腰背部痛の有無,マイナートラブルの有無(尿漏れなど),クッパーマン更年期指数,エジンバラ産後うつ病質問票,運動習慣に関して行った。対象者は産後3ヶ月から12ヶ月までの者を抽出し,今回は骨盤痛に腰背部痛のみを有する者を除外した。骨盤痛(仙腸関節,恥骨痛のいずれか)の有無により痛みあり群と痛みなし群の2群に分けた。統計解析は,SPSS22.0Jを用い,Mann-Whitney U検定およびχ<sup>2</sup>検定を行った。【結果】痛みあり群は42名(79.2%),痛みなし群11名(20.8%)であった。痛みあり群は痛みなし群と比較してASIS間距離とPSIS間距離の比が有意に小さかった(痛みあり群2.82±0.81:,痛みなし群:3.47±1.29,p<0.05)。その他の骨盤アライメントと腰部脊柱起立筋筋硬度に有意差はみとめられなかった。また,尿漏れについて,痛みあり群では7名(16.7%),痛みなし群にはいなかった。【考察】本研究の結果より,産後女性において骨盤痛が持続していることが明らかとなった。またこれまで妊婦において非妊娠者と比較しASIS間距離,PSIS間距離が有意に大きくなると報告されている。本研究では痛みあり群でASIS間距離とPSIS間距離との比が有意に低いことから,PSIS間距離がASIS間距離と比較し回復が遅いことが,痛みの誘発に関連しているのではないかと想定される。また妊娠後期おいてPSIS間距離と臀部痛,尿漏れに有意な負の相関がみとめられるという報告もあり,本研究の結果から産後女性においても同様の結果が得られた。これらから骨盤の安定性に関与するとされている筋が,出産後も十分に機能していないことが想定される。しかし本研究では腹筋群,骨盤底筋群の評価は行っておらず,骨盤アライメントと筋の関連性は証明できなかった。今後は評価項目を増やし,骨盤アライメントが回復しない原因を検討することが必要である。本研究により産後女性の骨盤痛に対し,妊娠期での影響を考慮した上でのアプローチが必要であると示唆された。【理学療法学研究としての意義】本研究結果より,産後女性でも妊娠期に特徴的な骨盤痛が持続していること,出産後3ヶ月経過しても骨盤アライメントが回復していないことが明らかとなった。現在,日本では妊婦,産後女性に対する理学療法士の介入はほとんどない。しかし今後産後女性の骨盤痛と骨盤アライメントの関連性を明らかにすることで,骨盤痛に対する治療やその発症を予防するための理学療法介入方法の検討につながると考えられ,理学療法士の介入の可能性が示唆された。
著者
太田 弘一 森岡 公一 山本 幸男
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.125-132, 1991 (Released:2008-05-15)
参考文献数
20
被引用文献数
23 35

ファレノプシスは近年生産の伸びが大きい花卉であり, その好適な栽培条件の設定のために研究が進められている. ファレノプシスの花序は低温条件によって誘導されることが知られており (17), 山上げ栽培や人工低温処理を行うことによって, 早期出荷が行われている. また, 温度処理の際の, 株の充実状態や光•変温条件などの環境要因も花序形成に影響することが知られている (3,8, 12,14, 17,18, 19).一方, ファレノプシスはCAM (Crassulacean acid metabolism) 植物として知られている (1,7). CAM植物は夜間に吸収したCO2を有機酸の形にして細胞の液胞中に蓄積し, 昼間にそれを分解して, 光エネルギーを利用してでんぷん合成を行うという特徴的な光合成を行う. この夜間と昼間を通した, CO2吸収からでんぷん合成に至る過程をCAM型光合成と呼ぶ (13, 14).典型的なCAM型光合成のCO2吸収の日周変動パターンは, 夜間の高い吸収 (phase I), それに続く光が当たった直後の高い吸収 (phase II) とその後の急激な減少およびCO2吸収がほとんど見られない期間 (phase III), そして, 夕方に再び低い吸収が見られる (phase IV), という四つの相に分けられる (13). そして, この過程を通して, 夜間に気孔を開き, 蒸散の多い昼間には気孔を閉じているために, CAM植物は強い乾燥耐性を獲得している (6).CAM植物には, 生育条件によってC3型光合成とCAM型光合成との間で変動が見られるfacultative-CAM plantと, 生育条件にかかわらずCAM型光合成を行うobligate-CAM plantがある (13). さらに,いずれのCAM植物も, 水分, 昼夜温, 光強度, 日長などの環境条件や葉齢, 窒素栄養条件によってCAM型光合成が影響を受けることが知られている (6, 11,13, 14).したがって, ファレノプシスのCAM型光合成も, これらの要因によって変動し, それが生育および花序形成になんらかの影響を及ぼすことが考えられる.本研究は, 上述の要因のうちで生育と密接に関連した外的要因の水分, 温度, 光の3条件および内的要因の葉齢と花序形成の有無に視点を当て, それらによってファレノプシスのCAM型光合成がどのような影響を受けるかを明らかにし, ファレノプシスの好適な栽培条件設定のための基礎的知見を得ることを目的として行った.
著者
橋口 克頼 永田 智久 森 晃爾 永田 昌子 藤野 善久 伊藤 正人
出版者
The University of Occupational and Environmental Health, Japan
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.271-282, 2019-09-01 (Released:2019-09-20)
参考文献数
25
被引用文献数
1 5

WHOは「各国・地域において,人々が経済的困難を伴わず保健医療サービスを享受すること」を目標としており,その指標としてEffective Coverage(EC)という概念を提唱している.ECとは“その国または地域における健康システムを通して,実際に人々に健康増進をもたらすことができる割合”と定義されており,産業保健の場面では治療が必要,もしくは治療を受けているうち,適切に疾病管理されている率に該当すると考えられる.本研究では産業保健サービスの効果を評価することを目的とし,「常勤の産業保健スタッフ(産業医または産業看護職)による労働者への産業保健サービスの提供は,高血圧,糖尿病,脂質異常症の各項目について,ECを向上させる」という仮説をたてて検証した.2011年度の一般健康診断,人事情報,及びレセプトからの個々のデータを分析した横断的研究である.特定の大規模企業グループの91,351人の男性労働者を対象とした.常勤の産業保健スタッフがいる事業場に所属する労働者(OH群)とそれ以外の事業場に所属する労働者(non-OH群)において高血圧,糖尿病,脂質異常症の各項目別にECを算出し,比較した.OH群はnon-OH群に比べて,高血圧・糖尿病において有意にECが高率であったが,脂質異常症については有意な差を認めなかった(高血圧aOR 1.41: 95%CI 1.20-1.66,糖尿病aOR 1.53: 95%CI 1.17-2.00,脂質異常症aOR 1.11: 95%CI 0.92-1.34).常勤の産業保健スタッフによる産業保健サービスの提供は,健康診断後の適切な管理に大きく影響する.
著者
森 重雄
出版者
東京大学
雑誌
東京大学教育学部紀要 (ISSN:04957849)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.21-46, 1985-02-28

Recently, sociology of education is characterized by ,the ascendence of Marxist school. We examine what Marxists assert and contribute to the sociology of education, and we do this with the reference to Marx himself. Then, we can find many problems in the Marxzst scociology of education. We define the cause of these problems from the fact that the Marxist sociology of education understands Marx superficially (in many case emotionally, not logically). So, we criticize it and seek to logical and academic implications which Marx himself has to modern sociology of education. In this context, we introduce our category, Critical Sociology of Education, through developing a new connotation of educational system.
著者
宮田 真宏 大森 隆司
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.712-721, 2019-06-15 (Released:2019-06-15)
参考文献数
23

従来,人の推論には直観的推論と論理的推論の2種類があるとされる.これまでに直観的推論はベイズ推論に代表される確率的な手法により,論理的推論はTree探索に代表されるシンボル的な手法により,それぞれモデル化されてきた.一方で,推論と脳部位とを対応付けた研究はあるが,脳の神経回路を考慮した論理的推論のメカニズムについて言及したものは少ない.脳における論理的推論過程のモデルは未解決である.そこで本研究では人の推論過程は直観的推論と論理的推論に明確に分かれているのではなく,一つの分散ニューラルネットワークのモード切り替えで実現されると考え,そのモデルを提案する.そのモデルでは連想記憶を用い,現在状態より関連する記憶を連想的に探索し,その記憶に価値を紐づけることで行動選択をする直観的推論を実現し,直観的推論にて見出された価値状態に対し,その利得に繰り返しバイアスをかけることにより論理的推論に見える動作を実現した.迷路探索シミュレーションでは,直観的推論に相当する確率的な行動選択と,論理的推論に相当する枝刈りを含むTree探索のような振る舞いが同一モデルのパラメータ変更により表出されることを確認した.
著者
小野 孝明 友成 航平 森 名生 冨阪 吉登 西 英二
出版者
日本法科学技術学会
雑誌
日本法科学技術学会誌 (ISSN:18801323)
巻号頁・発行日
pp.686, (Released:2014-12-11)
参考文献数
18
被引用文献数
6 3

Accurate DNA quantification is required for the short tandem repeat typing of forensic samples. Various commercial DNA quantification kits for forensic DNA analysis have recently been released. However, DNA quantification may fail if too much PCR inhibitor is extracted with the target DNA sample. Therefore, this study experimentally evaluated the degree of the alteration of DNA quantification results of various commercial DNA quantification kits (Takara RR281, Quantifiler Duo DNA Quantification Kit, Plexor HY System, Investigator Quantiplex HYres Kit, Quantifiler Trio DNA Quantification Kit, and Quant-iT dsDNA HS Assay Kit) in the presence of various concentrations of PCR inhibitors such as hematin, humic acid, indigo carmine, melanin, and tannic acid. Compared to the other kits, the DNA quantification abilities of the Investigator Quantiplex HYres Kit and Quant-iT dsDNA HS Assay Kit were not negatively affected by high concentrations of hematin. The DNA quantification abilities of the Quantifiler Trio DNA Quantification Kit and Quant-iT dsDNA HS Assay Kit were not negatively affected by high concentrations of PCR inhibitors containing humic acid, indigo carmine, or melanin. The DNA quantification abilities of the Investigator Quantiplex HYres Kit and Quantifiler Trio DNA Quantification Kit were not negatively affected by high concentrations of tannic acid. Furthermore, the DNA quantification ability of the Quantifiler Trio DNA Quantification Kit was more reproducible than those of the other kits. Moreover, this kit was able to assess the degree of DNA degradation by comparing quantified both the short amplicon (80 bp) and long amplicon (130 bp). However, the short amplicon was not negatively affected by high concentrations of PCR inhibitors in contrast to the long amplicon. These results indicate forensic DNA analysts should select the appropriate DNA quantification kits that are unaffected by PCR inhibitors and carefully interpret DNA quantification results.
著者
米森 和子
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第47回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.S24-1, 2020 (Released:2020-09-09)

構造生物学は、タンパク質の構造情報を明らかにすることで創薬に貢献してきた。この20年間はX線を用いた構造解析が中心であり、とくにキナーゼに代表される酵素では、合成化学者が構造情報をもとに活性向上を指向したStructure-Based Drug Discovery(SBDD)を精力的におこなってきた。 近年注目を集めているクライオ電子顕微鏡により、さらに構造生物学の幅がひろがろうとしている。クライオ電子顕微鏡はチャネルやトランスポーター、複合体など、X線結晶構造解析での構造取得が難しかった分子量が大きく、かつ、複数コンホメーションを取り得る生体分子の構造解析を得意としている。これらのターゲットクラスにはhERGなど毒性に関与するタンパク質が多くあり、構造情報が得られることでオフターゲット回避もSBDDを用いて効率的におこなえるようになると期待できる。 クライオ電子顕微鏡を用いた構造解析例は年々増えている一方で、残念ながら日本では絶対数としてクライオ電子顕微鏡の数が少なく企業が個別に利用できる環境にはない。毒性や動態で課題となるタンパク質は共通であることから、当社をはじめとする製薬企業では非競合領域での産官学連携組織を立ち上げて、毒性・動態関連タンパク質の構造解析に共同で取り組んでいる。本講演ではこの連携について紹介し、毒性領域へのさらなる応用について議論したい。
著者
森 尚子 佐藤 祥子
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.177-181, 2018 (Released:2018-07-31)
参考文献数
7

在宅で,終末期の苦痛緩和のためにミダゾラムによる持続静注を用いた思春期小児がん患児2例(18歳 類上皮肉腫,17歳 横紋筋肉腫)を経験した.2例とも,家族だけでなく本人からもinformed consentを取得した.Palliative Prognostic Indexを用いた推定予後は2例とも3週間未満で,鎮静の適応となった症状は,1例は終末期の身の置き所のなさ・不眠・不安,もう1例は難治性の口渇感と嘔気・嘔吐であった.ミダゾラムの開始量は,各々3 mg/hr,1.25 mg/hrで,呼吸抑制がないことを確認しながら,20~30%ずつベースの流量を増量し,1~2段階増量したところで苦痛緩和を得た.持続鎮静の期間は2週間未満で,鎮静に関連した致死的合併症は認めなかった.在宅でも,医療スタッフ間の密な協力体制があれば,ミダゾラムの持続静注による鎮静は安全に施行可能であると考えられた.
著者
森川 茂 朴 ウンシル
出版者
岡山理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome; SFTS)は、フェニュイウイルス科フレボウイルス属に分類されるマダニ媒介性のSFTSウイルス(SFTSV)による急性ウイルス感染症で、高熱、血小板減少、白血球減少、肝機能低下、出血、多臓器不全などを主徴とする。SFTSの致死率はヒトで約17%、ネコで約50%と極めて高い。ネコのSFTSには有効な特異的治療法もなく、獣医医療従事者や飼育者が発症動物から感染して発症した例も報告されている。One Health及び人獣共通感染症の観点からネコ及びヒトのSFTSの予防に寄与する。本研究ではネコに有効なSFTSワクチンを開発する。
著者
久岡 朋子 森川 吉博 北村 俊雄 小森 忠祐
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

自閉症リスク遺伝子として知られているKirrel3遺伝子の欠損マウスを作成し、その行動解析を行った結果、自閉症様の行動に加えて、多動(ADHD様行動)を伴うことを見いだした。さらにKirrel3欠損マウスにおいて、小脳や副嗅球のシナプス部の構造異常を見いだした。これらの結果から、Kirrel3遺伝子欠損による小脳や嗅覚神経回路・シナプス回路の形成異常は、ADHDを伴う自閉症様行動の発現に関与している可能性が考えられた。ADHDを伴う治療抵抗性の自閉症患者で異常となる脳領域・神経回路に関しては不明であり、本研究結果はADHDを伴う自閉症の病態解明につながる重要な知見を提供すると考えられる。
著者
加藤 栄司 東野 哲也 森満 保
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5Supplement2, pp.761-765, 1996-09-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
11

過去5年間に当科外来を受診し, 原因を特定できない感音難聴506症例のなかに剣道有段者13例が含まれていた. オージオグラムを検討した結果, 閾値異常を示した25耳の中に, 4kHz-dip型6耳 (24%) と全く同数の2kHz-dip型聴力像を示す感音難聴が含まれていた. また, 2, 4kHz障害型5耳 (20%), 2, 4, 8kHz障害型6耳 (24%) 認めたことより, 剣道による感音難聴が2kHz-dip型と4kHz-dip型に由来する聴力障害が複合した形で進行するものと推定された.同対象感音難聴症例506例のオージオグラムの中から2kHz-dip型聴力像または2, 4kHz障害型オージオグラムを抽出すると, 2kHz-dip型が43耳, 2, 4kHz障害型が18耳認められた. これらの症例の中に難聴の原因としての頭部外傷が明らかな例は認められないが, 問診上, 剣道, 交通外傷, 衝突, 殴打, 転倒などによる頭部打撲の既往があるものが半数以上を占めた.以上の結果より, 剣道による2kHz-dip型感音難聴発症の機序として竹刀による頭部の強い衝撃が関与していることが示唆された.
著者
森川 晃 川上 弘 田北 徹
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.271-277, 2002-09-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
14

1998年4月から2000年4月に島原半島沖の有明海で漁獲されたマゴチ603尾とヨシノゴチ263尾について, 耳石薄片標本により年齢と成長の解明を試みた。耳石輪紋形成時期は両種とも年1回, マゴチでは6~7月, ヨシノゴチでは4~5月であり, いずれも産卵期にほぼ一致し, 輪紋数は年齢を示すと考えられた。満年齢時における両種の雌雄別逆算全長をもとに, 非線形最小二乗法を用いて, von Bertalanffyの成長式をあてた結果, t歳における全長Ltは次式で表された。マゴチ雄: Lt=458.26 (1-exp (-0.417 (t+0.439) ) )雌: Lt=728.44 (1-exp (-0.192 (t+0.978) ) )ヨシノゴチ雄: Lt=469.72 (1-exp (-0.215 (t+3.008) ) )雌: Lt=657.45 (1-exp (-0.267 (t+1.076) ) )両種とも, いずれの年齢においても雌の方が雄より大きい体サイズを示した。