著者
森際 克子 福田 淳 山下 勝幸
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.115, no.4, pp.185-192, 2000 (Released:2007-01-30)
参考文献数
48
被引用文献数
11 13

中枢神経系における傷害,虚血に際して,免疫細胞であるミクログリアやグリア細胞が活性化され,サイトカインを分泌して侵入物の撲滅と組織修復を図る.この免疫細胞が,プリン受容体のイオンチャネル型P2XおよびGタンパク共役型P2Yを発現し,傷害された細胞から放出されるATPに応答して,その機能を変化させることが明らかとなって来た.単離培養されたラット網膜ミクログリアでは,非刺激下で,Gタンパク共役型P2U(P2Y2,P2Y4)とイオンチャネル型P22Z(P2X7)が同等に発現しているのに対して,LPS刺激下では,P2Z優位となり,そのCa2+応答が増大する.一方,虚血(低酸素1%濃度)下で活性化されたミクログリアはP2UとP2Zの両受容体の感受性が共に高く,また,P2Uの応答が優位である.この低酸素濃度下では代謝型P2Uの活性化を介してミクログリアの増殖が誘導され,P2Uによる細胞内Ca2+動態と容量性流入がこの増殖機構に関与していると考えられる.さらに,LPS刺激と低酸素の両活性化においてTNF-αとIL-1βの分泌が見られ,その分泌がP2ZのアゴニストBzATPにより亢進し,アンタゴニストoATPにより抑制されることから,P2Z(P2X7)受容体がサイトカイン分泌機構に関与していると考えられる.P2Z(P2X7)はまた同時に増殖を阻止し,アポトーシスを誘導する.このP2Z(P2X7)受容体は,マクロファージ,単球,線維芽細胞のいずれにもあり,サイトカインのみならずプラスミノゲンの分泌にも関与する.TNF-αの転写,遊離にはMAPキナーゼのp44/42およびp38が関与することが示唆されており,P2Z(P2X7)の活性化はCa2+依存性に,NFAT,NF-κをも活性化させて,増殖のシグナル経路を阻止し,アポトーシス誘導経路とp44/42とp38を介する分泌経路を駆動する可能性がある.
著者
玉野 富雄 西田 一彦 Bimal SHRESTHA 金岡 正信 森本 浩行
出版者
公益社団法人 日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.5-8, 2004-01-15 (Released:2009-06-03)
参考文献数
2
被引用文献数
2 2

Japanese Castle masonry walls constructed from the end of sixteen century to the middle of seventeen century hold a historical heritage in the construction culture and are famous worldwide for their uniqueness with mortar-less construction. Present investigations on these walls have shown bulging at various locations and the engineering evaluation on the wall stability needs to be urgently required. Based on this viewpoint, this paper presents the FEM analysis results on the stability and deformation behavior with parametric analyses on Osaka Castle masonry wall. It is found that the cobble plays a significant role in reducing the stresses of stone wall and that the masonry wall structure ratio adds stability by the arching effect action on the masonry wall.
著者
森川 尚 安達 千波矢 筒井 哲夫 斎藤 省吾
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.9, pp.962-967, 1990-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
8
被引用文献数
3 32

種々のフタロシアニン(Pc)とベリレン誘導体(PTC)を用いて,(ITO(インジウム-スズ酸化物)/PTC/Pc/Au)構造の素子を作製した。これらの素子はすぺて遮光状態において・.Au電極に正電圧を印加したとき順方向となる整流性を示し,光照尉によってAu側が陽極になる光起電力を示した。短絡光電流は光量に対してほぼ比例して増加し,解放端光起電力の大きさは光量の対数に対して比例して増加した。また,これらの素子は光電流の波長依存性に,組み合わせたPTCとPcの吸収特性の違いによると思われる差が生じた。この光電流スペクトルの結果から,PTCおよびPcの両方で光電変換が行われていると考えられる。また,組み合わせたPc・PTCの種類によって・光電変換効率の大きさに明確な差が現れた。
著者
若森 和彦 カザウラ カムギシャ 鈴木 敏司 大前 和憲 松本 充司 高橋 浩一 松本 秀樹 村上 匡亮 有本 好徳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C, エレクトロニクス (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1, pp.28-37, 2008-01-01
被引用文献数
16

無線システムにとって,光ファイバ網との間でインタフェースを意識させない相互接続環境の実現は究極の目標の一つである.本論文では,光無線方式によるファイバ-空間-ファイバの間を一貫して光信号のまま伝送するフル光接続を提案し,その実現に向けた実験的検討,特に大気揺らぎの影響及び装置設計について述べる.ファイバと無線区間を意識させず,伝送する光信号に何ら変更を加えない,フル光接続を実現する次世代光無線システムを実現するためには,空間光をシングルモードファイバヘ安定して導光する技術を確立する必要がある.そのためには,大気揺らぎによる受光強度変動の制御が必須である.そこで,我々は大気揺らぎの特性を長期の実験により評価し,次世代光無線システムの設計に有効な性質や指標を明らかにした.そして,大気揺らぎによる到来角度変動を制御し,空間とシングルモードファイバを効率的に結合する受光光学系を導入した光無線装置を開発した.この装置を使い,10Gbit/s 伝送やDWDM伝送というこれまで実用化されている光無線システムでは実現できなかった大容量通信を安定的に実現できることを示した.この結果は,次世代光無線システムが,ビットレートや伝送プロトコルに依存しないファイバと等価な伝送路を提供できる可能性があること,更に光と無線システムの融合をファイバ中のみならず無線区間においても実現できる可能性を示唆している.
著者
大矢 隼士 森島 繁生
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2012-MUS-95, no.10, pp.1-6, 2012-05-26

インターネットの動画共有サイト上に存在するアマチュア制作の音楽動画を再利用することにより,自動的に音楽動画を生成するシステムを提案する.この音楽動画は,既存の音楽にゲームやアニメなどの映像を切り貼りして制作されたものであり,MAD 動画と呼ばれている.本稿では,以前筆者らグループが提案した DanceReProducer の学習手法を,マルコフ連鎖を使うことにより映像の時系列情報を考慮できるように改善し,Forward Viterbi アルゴリズムを用いて動画生成をおこなう.提案システムは,まずインターネット上にアップロードされている MAD 動画を大量に取得し,データベースとする.その後,データベースの動画から音楽特徴量,映像特徴量を抽出し一小節ごとにまとめ,楽曲の構造情報やテンポの推定をおこなう.次に,各特徴量をクラスタリングし,状態変数を音楽特徴量,潜在変数を映像特徴量として,潜在変数のマルコフ連鎖モデルを使用して学習する.動画の生成は,任意の楽曲 (入力楽曲) に対し,学習した同調関係から最も入力楽曲と同調する映像をデータベースから選び出し,切り貼りすることで新しい動画を自動的に生成している.
著者
森下 慎一郎 瀬戸川 啓 中原 健次 太田 徹 眞渕 敏 海田 勝仁 小川 啓恭 児玉 典彦 道免 和久
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.122-123, 2011-04-20

【目的】造血幹細胞移植患者に対し無菌室内で運動療法を実施し,その効果と安全性を検討することである。【対象および方法】造血幹細胞移植を受けた患者30名(運動療法群15名,コントロール群15名)を対象とした。造血幹細胞生着の有無,生着までの日数,感染症,移植前後の身体機能を評価した。【結果】運動療法群,コントロール群共に造血幹細胞は全例生着し感染症も認めなかった。身体機能は移植前と比べると移植後,筋力,体重,6分間歩行は低下したものの,歩数は有意差がなく,逆に15名中6名は増大した。【結語】免疫機能が低下している期間中でも感染予防を徹底すれば,安全に運動療法を実施できた。しかしながら,移植前と比べると移植後は身体機能は低下していた。本研究では,運動療法群のみ身体機能評価を行っており,今後,運動療法の効果を検証するには無作為化比較試験の実施が必要であると考えられる。
著者
森井 裕一
出版者
JAPAN ASSOCIATION OF INTERNATIONAL RELATIONS
雑誌
国際政治 (ISSN:04542215)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.167, pp.167_88-101, 2012

Germany ceased conscription for its military, the Bundeswehr, in July 2011. Ever since the establishment of the Bundeswehr, the system of conscription had played a key role in connecting the Bundeswehr and German society. The concept of "Staatsbürger in Uniform" (citizen in uniform) was a guarantee to keep the Bundeswehr as a military for peace. This paper discusses why Germany stopped conscription, even though it had long been regarded as a vital component of Germany's postwar security culture.<br>In the first section of this paper, historical developments in the German security culture and the role of the Bundeswehr are discussed. During the process of German rearmament in the 1950s, a new military was established in a way that would prevent it from being able to become an independent and undemocratic institution outside society—as it did in the days leading up to World War II. The Bundeswehr gained respect from society and became one of the most successful institutions in postwar Germany.<br>In the second section, the changing role and the military transformation of the Bundeswehr after the end of the Cold War are examined. The changing international security environment forced Germany to reconsider the role of its military. During the period up until the end of the Cold War, the use of Germany's military was restricted to the defense of its own and its allies' territories. However, this previously respected self-imposed restriction became an obstacle in the new international environment. The 1994 decision by the Federal Constitutional Court (FCC) made the deployment of the Bundeswehr outside NATO areas legally possible, although the FCC at the same time gave more power to the Bundestag, the German parliament, to control the deployment of the Bundeswehr. In the 1990s, the new military role for international crisis management demanded the military transformation of the Bundeswehr. Since the mid-1990s, many proposals were made to reform and reorganize the Bundeswehr, but they were not totally successful, because the domestic political discourse did not change as rapidly as the technical needs had changed. In addition, constraints upon the state budget made the reform even more difficult. After more than ten years of discussion, conscription was finally suspended under the strong leadership of the politically popular defense minister, Karl-Theodor zu Guttenberg. According to zu Guttenberg's reform, the Bundeswehr would be an effective, efficient and flexible military for international crisis management.<br>The final section analyzes the implications of the reform of the Bundeswehr on Germany's security culture and foreign policy. Germany's security policy defined in multilateralism, i.e. within NATO and the EU, would stay unchanged. However, the new security environment might change the domestic understanding of Germany's military, and thus Germany's security culture in the future.
著者
森島 直彦
出版者
慶應義塾大学
巻号頁・発行日
1981

博士論文
著者
森 順子
出版者
人間環境大学
雑誌
人間と環境 : 人間環境学研究所研究報告 : journal of Institute for Human and Environmental Studies (ISSN:13434780)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.87-97, 1998-03-31

シェイクスピアの『トロイラスとクレシダ』は難解な劇であるとこれまで多くの批評家によって指摘されている。登場人物たちは、まるで濃霧の中でうごめいているように思える。しかし、その深い霧の中で目を凝らせば見えてくるものがある。それは稀薄な人間関係である。本稿は、とりわけ主人公トロイラスとクレシダに顕著にみられる人間関係の稀薄さに焦点を当て、更にわれわれはどのような人間関係を築くべきであるのかを考察することを目的としている。その際、鍵となるのはサーサイテイーズの言葉である。その言葉を透かして見えてくるのは、互いに相手を思いやり尊重しあう心である。
著者
辻森 樹 石渡 明 坂野 昇平
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.106, no.5, pp.353-362, 2000-05-15
被引用文献数
7 34

蓮華変成帯, 新潟県青海町上路(あげろ)地区湯ノ谷にエクロジャイト質藍閃石片岩が産する.この岩石は主として藍閃石(37%), ざくろ石(21%), オンファス輝石(19%), 緑れん石(19%)と少量の石英, 曹長石, フェンジャイト, 緑泥石, ルチル, チタン石から構成される.エクロジャイト相鉱物組み合わせ 'ざくろ石+オンファス輝石+藍閃石+緑れん石+石英+ルチル' はマトリクスの片理(S_1)を構成し, わずかに二次的な緑泥石, 曹長石, 方解石に置換され, S_1片理形成以前の緑れん石青色片岩相の鉱物組み合わせ '藍閃石+緑れん石+チタン石+石英+曹長石' の包有物列(S_0)がざくろ石のコアに観察される.蓮華変成帯では, これまでにも残存エクロジャイト相鉱物の報告はあったが, 今回, 岩石組織と鉱物化学組成・累帯構造から, 初めて, 緑れん石青色片岩相からエクロジャイト相への累進変成作用を読みとることができた.
著者
桑田大徳 岡誠 森博彦 吉村宏樹
雑誌
第73回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.1, pp.399-400, 2011-03-02

現在評判サイトを商品の購入にあたり購入の検討のために利用するユーザが増えている。商品の購入検討をする上で閲覧者は、対象の商品のレビューすべてではなく、ユーザ自身の視点や状況と似たレビューアーの動作、感想などの意見を信頼し、それをみて購入判断のひとつとする。しかしそういったレビューを探すにあたって評判サイトのレビューの形式は自由形式で、閲覧者の求めるレビューは探しづらく大量のテキストをすべて隈なく読むことになり時間の浪費となってしまうことも少なくない。そこで商品のレビューを観点ごとに分類し、整理された状態で表示することで閲覧者が欲するレビュー、レビューアーを探す時間を短縮することを目的とする。
著者
森実 庸男 滝本 真一 西川 智 松山 紀彦 蝶野 一徳 植村 作治郎 藤田 慶之 山下 浩史 川上 秀昌 小泉 喜嗣 内村 祐之 市川 衞
出版者
The Japanese Society of Fish Pathology
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.207-216, 2001-12-15
被引用文献数
12 25

1996年以来発生している赤変化を伴うアコヤガイの大量へい死の実態を把握するため, 1997-1999年に母貝の生育, へい死率, 外套膜の病理組織学的変化を調査した。本疾病は冬季水温の高い南部の海域で6月に発生し, 8~11月には北部に至り, 宇和海全域に広がった。本病の発生には, 冬期の水温が影響するなど強い温度依存性が示唆された。