著者
宇都 雅輝 鈴木 宏昭 植野 真臣
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (Japanese edition) (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.96, no.4, pp.998-1011, 2013-04-01
参考文献数
35

本論文では,アカデミックライティングにおける論証の推敲を支援するシステムを開発する.従来の論証推敲支援システムでは,論証の規範モデルとして知られるToulminモデルにユーザの論証を当てはめ可視化する支援を行っていることが多い.しかし,論証の主目的である「主張」の正当化のためには,Toulminモデルへの当てはまりの良さよりも,文章間の因果の強さ,すなわち「論証の強さ」を重視した論証の推敲が重要である.論証の推敲では,論証構成が複雑になったとき,以下の問題が生じると考えられる.1.「論証の強さ」を全ての文章間について評価することが困難である.2.論証中の各文章がどの程度正当化できているかの推定が難しい.3.「主張」の正当化に対して各文章がどのように影響しているかを把握することが困難である.これらの問題を解決するために,本論文では,Toulminモデルのベイジアンネットワーク表現を用いて,1.論証の強さ,2.文章の正当性,3.主張への影響度,という三つの指標を算出し,その値に応じて論証改訂のためのアドバイスをフィードバックする論証推敲支援システムを開発する.
著者
菅原 利夫 三島 克章 植野 高章 南 克浩 森 悦秀
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

身体各部の関節は加齢や種々の疾患により形態と機能が低下するため、人工関節による置換術によってその回復が行われている。しかしながら日本のおいては現在まで人工関節が開発されておらず、顎関節の構造的喪失による種々の障害に対しては有効な治療法がなかった。私達研究グループはヒト顎関節の形態計測、咀嚼時に顎関節に負荷すると考えられる力学的要件や運動性を基礎的に検討し日本で初めての臨床応用できる菅原式人工顎関節を試作し、臨床応用を行ってきた。私達研究グループは人工顎関節を開発する目的で、解剖実習用屍体、ヒト乾燥頭蓋骨の顎関節を三次元精密計測装置を用いた実例計測やCT三次元再構築画像からの立体計測を行った。またこれら形態計測から得られた関節頭と下顎窩の表面形状から咀嚼時に負荷すると考えられる荷重をHetzの理論式や三次元有限要素法を用いて解析して、人工顎関節の生体材料を選択し、形状をデザインして菅原式人工顎関節を試作した。臨床応用は主として慢性関節リウマチ(RA)の変形性顎関節炎により、下顎骨が後退し、咬合の異常による咀嚼障害と気道の狭窄あるいは閉塞による睡眠時無呼吸症候群をおこした患者であり、菅原式人工顎関節全置換術を行い、咀嚼機能については食物粉砕実験、顎関節の動きについては超音波画像、X線シネマグラフ、および顎運動の計測を行った。その結果、個々の患者間に相違が見られるものの吸収の起きた下顎頭を中心とした蝶番運動が主体をなし、滑走運動および側方運動はほとんど観察されず、健常人とは異なる顎運動が観察された。節電図での計測では、健常者に比べ術前の咬筋、側頭筋の筋活動は弱く、術直後は更に弱まり、術後の咬合位に開閉口筋が適応するためには数ヶ月の開口訓練の必要性が認められた。また、下顎骨の前方移動に伴い、気道腔が確保され、呼吸障害が解消され、発生機能も向上する傾向がみられた。これらの結果を基にし、更に機能性が高く安全な人工顎関節を開発するため人工顎関節のデザインを改良し、人工顎関節を開発してきた。また、この人工顎関節を作る過程で私達が開発したCT三次元再構築画像計測・評価システム、接触型および非接触型高精度三次元計測・評価システム、重ね合わせ評価法、曲面および球面定量評価法などの新しい研究法は口腔、顎、顔面、口蓋等の微細な発育様式や発育方向などが定量的に測定評価できるようになり、他の領域の研究にも貢献し、1997年第8回国際口蓋裂学会(Iutennational Congress on cleft Palate and Related,Craniofacial Anomalies)のOwen Cole記念賞の受賞に連った。
著者
植野 健造
出版者
九州大学
巻号頁・発行日
2000

博士論文
著者
岩本 誠一 吉良 知文 植野 貴之
出版者
九州大学経済学会
雑誌
経済学研究 (ISSN:0022975X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.1-22, 2009-09

映画「ダ・ヴィンチ・コード」では8つの数字からなる暗証番号が中心的な役割を果たしている。本論文ではこの暗証番号が双対最適化理論の格好の教材でもあることを数学的に示す。主要な成果は3つである。(1)主問題と双対問題の最適解の間に美しい関係―フィボナッチ相補双対性―が成り立つことを示している。(2)最適化の一階条件として新たにフィボナッチ条件を導出して、この条件に基づく分割法によって簡単に最適解を求めることができることを示している。すなわち、フィボナッチ分割法を提案している。(3)さらに、2つの方法―(i)ラグランジュ乗数法と(ii)準線形化法―によって主問題から双対問題を導いている。
著者
植野 和文
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.76-76, 2003

本稿では明石海峡大橋の開通(平成10年4月)が津名町民の余暇活動に及ぼした影響を分析した。ここでの影響とは、本州への交通がより便利な陸上ルートに切り替わったことに住民の余暇活動がどのように反応したか、そしてその結果を彼らはどのように評価したのか、ということである。 調査は開通の4ヶ月前の平成9年12月と、開通の1年9ヶ月後の平成12年1月に、いずれも20歳以上の住民400人を対象に郵送調査法で行われた。設問では余暇活動の場所として提示した23地区から活動の領域ごとに重要な地区を複数(最多3つ)選ばせたうえで、それらを地理的条件、交通条件、余暇活動機会などを考慮して7地域(津名町、津名町を除く淡路地域、神戸・阪神、京阪地域、西・北地域、徳島県、その他全国)にグループ化した。活動の9領域における回答を地域ごとに合算し、それらをいずれかの領域で余暇活動を行っている有効回答者数で除した値を余暇活動水準とした。得られた知見は以下のとおりである。 第一に開通後の活動水準の変化でみる限り、大橋の影響はあまり大きくはない。それでも開通後に余暇活動が「神戸・阪神」「その他全国」で活発になり、「津名町」「京阪地域」を除く地域では活動水準の個人差が広がった。さらに余暇活動環境(神戸・大阪へのアクセス、公共交通サービス、余暇活動の利便性、余暇生活)のすべてにおいて満足水準が上昇した。ただし活動圏が地域的に分散する傾向はみられなかった。 第二に大橋を多用する人はそうでない人に比べると、島外での余暇活動が活発で、かつ活動水準の個人差も大きく、さらに活動圏が一層地域的に分散している。そのうえ余暇生活の満足水準が高い。 第三に大橋を多用する人でも活動圏が拡大した人はそうでない人に比べると、本州の一部地域で余暇活動が活発で、かつ活動の個人差も大きいが、活動圏の地域的な分散では差はみられなかった。さらに余暇活動環境のすべてにおいて満足水準が高い。 第四に余暇活動が本州で活発になっても、島内での活動水準と活動の地域分布は安定しており、活動が島外に流出して島内の活動が低迷するという現象はみられなかった。最 後に大橋は多くの地域で余暇活動水準の個人差を広げたが、このことは影響が住民均等に及ぶのではなく、余暇活動に対する彼らの態度や生活状件に依存することを示している。 同時にいくつかの課題も残された。第一に今回の分析では9領域の余暇活動を統合したデータを用いたが、余暇活動の領域によって活動圏や大橋利用の必要性が異なるため、余暇領域ごとの実践者を対象にした分析が必要である。 第二に今回の知見の一つは大橋が余暇活動の個人差を拡大することであった。これが住民一般を対象にした開通前後の影響分析で明瞭な結果が得られなかった理由の一つと考えられる。属性、生活条件、大橋の利用パターンなどをもとに調査対象を選別して影響分析を行う必要がある。 第三に余暇活動への影響には大橋の出現が活動を誘発する側面と、開通にともなって整備された島内外の余暇資源が活動を誘発する側面がある。いずれも長期的な観察が必要であるが、今回は開通後2年足らずの短期的な影響を分析したに過ぎない。得られた知見を仮説として継続的な調査と研究が必要である。 第四に調査で得られたデータの数が少なかったことが、いくつかの統計的検定を難しくし、影響分析の結果に曖昧さを残したことは否めない。上記の課題に応えるためには、十分なデータの確保に努める必要がある。
著者
植野 真臣 吉田 富美男 石橋 貴純 樋口 良之 三上 喜貴 根木 昭
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.115-128, 2001-09-20
被引用文献数
8

本論では,多人数の複数クラスにおける遠隔授業の特性を明らかにし,その授業方法論の構築に貢献することを目的とする.具体的には,複数の工業高等専門学校に対する遠隔授業の実施とそれに伴うアンケート結果,客観データを数量化III類法を用いて要因分析を行った.本分析の特徴は,5段階の順序性を持つ授業の好ましさに係わる質問項目とその理由を聞く名義尺度項目を同一尺度上で数量化したことにある.その結果,複数クラスにおける遠隔授業の特性として授業の好ましさに関する項目の重要度は,「遠隔授業という授業方法について」,「教育テレビに比較してよかったか」,「実感が持てたか」,「教師との親近感」,「学校間の違い」「質問ができたか」,「授業回数」,「授業内容の理解」の順であり,評定の理由に関する項目として,「学習者が教師に認識されているかどうか」が主な要因となっていることが示された.すなわち,質問などの顕在的な双方向性以上に,まず認識的な教師との双方向性(相互作用)が重要であり,複数クラスにおける遠隔教育でも,教師-学習者個人の関係が要求されていることが示された.
著者
植野 和文
出版者
兵庫県立大学
雑誌
研究資料 (ISSN:21853592)
巻号頁・発行日
vol.233, pp.1-249, 2011-06
著者
宇都 雅輝 植野 真臣
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J98-D, no.1, pp.3-16, 2015-01-01

近年,構成主義における学習評価法としてピアアセスメントが注目されている.ピアアセスメントでは,評価の信頼性が評価者の特性に依存する問題が指摘されている.この問題を解決するアプローチの一つとして,評価者の特性を表すパラメータを付加した項目反応理論が提案されてきた.しかし,ピアアセスメントでは,評価者数が学習者数と同程度まで増加するため,パラメータ数に対してデータ数が少なくなり,既存モデルでは高精度なパラメータ推定が期待できない.そこで,本論では,通常の項目反応理論について,できる限り評価者パラメータ数が少なくなるように評価者パラメータを付加した,ピアアセスメントのための新たな項目反応理論を提案する.提案手法の特徴は次のとおりである,(1)既存モデルより高精度なパラメータ推定が可能である.(2)評価者特性として評価の一貫性と厳しさの影響を反映した学習者の能力推定が可能である.(3)学習者の正確な能力推定が期待できる.更に,本論では,シミュレーション実験及び被験者実験により提案手法の有効性を示す.
著者
植野 雅之 高見 友幸 和田 慎二郎 対馬 勝英
出版者
大阪電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

(1)対話的タスクを用いた実験の結果,心拍間隔の標準偏差やポアンカレプロット等の指標では安定した結果が得られるが,LFHFに対しては,ばらつきが大きくなる結果が得られた.(2)タスクの種別によって脳波成分の偏りが見られることがわかった.また,暗算などの内省的なタスクで負荷を変えると,脳波成分はほとんど変化しないが,対話的なタスクでは,負荷が大きくなると,δ波成分が小さくなり,他の成分は増大する傾向があるという結果を得た.さらにゲーム状況でも同様の傾向が見られるが,負荷過大状況では,β・γ波成分が著しく増大するなどの傾向が見られるということがわかった.
著者
高橋 由典 伊藤 公雄 新田 光子 吉田 純 河野 仁 植野 真澄 高橋 三郎 島田 真杉
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

当初の計画に従って、戦友会関係者へのインタビュー調査を行うとともに、全国に散在する戦友会関係文献資料の収集・分析を行った。これらの調査結果と戦友会に関する統計調査(2005年、未公刊)の結果とを合わせ、戦友会に関する総合的研究の成果報告書として『戦友会研究ノート』(青弓社刊、2012年)を刊行した。同書によって戦友会をめぐる諸問題が網羅的に解説されるとともに、戦後日本社会における戦友会の意味も明らかにされた。
著者
安藤 雅洋 植野 真臣
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.109-123, 2011
参考文献数
23

本論では,eラーニングにおけるタブレットPCの効果について,人間の情報処理モデル「デュアル・チャンネル・モデル」に基づいて分析を行った.具体的には,eラーニングでの書込みに用いられる入力デバイスに,紙媒体,キーボード,ペンタブレット,タブレットPCを用意し,アイマークレコーダで学習者の注視点を測定し,記憶・理解テスト,アンケート調査およびメモ書きの評価により,各デバイスの評価を行った.その結果,タブレットPCを用いたeラーニングでは,1)書込みにかかる外的認知負荷が少ない,2)ナレーションと同期してコンテンツに注視しやすい,3)学習者の理解,記憶保持が高い,4)メモ書きが効率的に行え,学習メモとしての正確性も高い,ことがわかった.
著者
植野 雅之 和田 慎二郎 木田 豊 上田 和浩 金村 仁 対馬 勝英
出版者
大阪電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

3DCGにおける造形能力を育成するための空間的・論理的な操作トレーニングとして,ゲーム的なフィードバックを持った空間トレーニングゲームを複数個考案し,実装をおこなった.また,それらの有効性を検証するための実験環境を構築し,それを用いて実験をおこなった.実験の結果,このようなトレーニングゲームにおいて,熟達者と初心者にパフォーマンスの差が明らかに見られること,フィードバック方法として,得点の表示・非表示,得点の提示方法によって,一定のパフォーマンスの差が見られること,トレーニング状況につられてパフォーマンスが短期的に向上するなどの現象を確認し,トレーニングシステムの設計に対するヒントを得た.
著者
森下 民平 植野 真臣
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.24, 2010

大規模変数・大量データ環境に適したベイジアンネットワーク学習アルゴリズム TPDA を高速化する手法を提案する.提案手法により計算量を削減できること,また実験により,実行時間と実行時間のばらつきを大幅に抑えられることを示す.
著者
中道 潤 安川 邦美 田端 克俊 森下 啓太郎 福井 健太 植野 孝志 下田 哲也
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.7-11, 2011-03-20 (Released:2012-04-04)
参考文献数
6

動脈管開存症(PDA)による重度の心不全の犬において,貧血と血小板減少症および脾臓の腫瘤病変が認められた。内科治療により心不全の改善を図った後,脾臓摘出術を実施した。術後一旦全身状態は改善したが,貧血,血小板減少症,低アルブミン血症,肝不全,腎不全が進行し死亡した。病理組織学的検査により血球貪食性組織球肉腫と診断した。本症例の貧血および血小板減少症の原因は,脾臓の腫瘍組織における細血管障害性溶血性貧血と腫瘍細胞の血球貪食によるものとが考えられたが,脾臓摘出後も貧血および血小板減少症が進行したことから,腫瘍細胞による貪食が血球減少の主な原因であると考えられた。