著者
植野 健造
出版者
アート・ドキュメンテーション学会
雑誌
アート・ドキュメンテーション研究 (ISSN:09179739)
巻号頁・発行日
no.14, pp.18-23, 2007-03-31

The author has been considering the importance of the newspaper article as a staff in the museum of modern art or a researcher of the history of Japanese modern art. This paper draws attention to some cases with the investigation of the newspaper article related to the art, and especially three cases that the author has tried up to now. 1. practical use of the newspaper clipping scrapbook kept by the Ishibashi Museum of Art, 2. Research of Hakubakai group and the newspaper article, 3. A modern art of Yanagawa, Fukuoka Prefecture appeared to The Yanagawa Shinpo newspaper. This paper, thus, explores the profit and the necessity of the investigation of the newspaper article by the project.
著者
植野 弘子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.526-550, 2011-03-31

父系社会である台湾漢民族社会における親と子のつながりを、娘を視点として再考することを、本論文の目的とする。娘としての女性の生き方に注目することは、婚姻を契機として所属集団を変更する女性にとって、その一生にわたる家族との関係を見直すことになる。また、変化する家族関係の有り様を、継承・相続の権利義務から除外されてきた娘の役割の変化から、より端的に描き出すことが可能である。漢民族の親族に関する従前の研究は、父系出自イデオロギーの優位を前提とした枠組みで考察される傾向にあり、母方親族関係・姻戚関係の研究も行われてはきたが、これらの関係を繋ぐ女性が果たす役割、女性の娘としての役割に関しては、十分な研究はなされてこなかった。本論文では、まず、台湾における伝統的家族慣行にみられる娘の役割を、その儀礼的側面を考慮に入れて再確認する。さらに、日本による植民地統治下における近代的な学校教育、とくに高等女学校教育を受けた女性達の語りを通して、親と娘とのつながりを変化する時代の日常から探っていく。彼女たちは、旧来の家庭の倫理と近代教育がもたらす知識や理念を習得し、さらに日本化の狭間の中で生きたのであり、植民地統治によって変動した台湾社会の有り様を象徴する存在である。また、変化した現代女性の原型ともいえる。こうした女性は、その親や出生家族の表象としての役割を果たし、婚出後にも娘と親の関係は維持されていく。日本統治終了後における女性の教育と就職の機会の拡大は、女性の生き方に変化をもたらし、また、娘と親との関係は、より緊密にみえる様相を呈してきた。子どもとしての娘と息子の役割の差異は、今後、より減少していくことが予想され、家族関係における娘の役割を考えることの意味はさらに増してゆこう。
著者
白石 太一郎 酒井 龍一 植野 浩三 千田 嘉博 碓井 照子 岸本 直文 福永 伸哉
出版者
奈良大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

大阪府南部には、日本列島内で最大規模の大仙陵古墳(現仁徳天皇陵)を含む堺市の百舌鳥古墳群、それに次ぐ規模をもつ誉田御廟山古墳(現応神天皇陵)を含む羽曳野市・藤井寺市の古市古墳群など、5世紀前後の倭国王墓と想定される巨大前方後円墳からなる大型古墳群が展開している。本研究は、これらの古墳群周辺が都市化される以前め航空写真に基づいて、開発以前の大縮尺の旧地形図を作成し、古墳詳研究の基礎資料を整備し、学界の共有財産として多くの研究者の利用に供するとともに、あわせてこれら近畿の大型古墳群の形成過程やそれら相互の関係、さらにその歴史的意味を追求したものである。3年計画の最終年度にあたる本年度は、(1)前年度までに中心部の図化を終えている古市、百舌鳥両古墳群の周辺部の図化作業を完成した。また(2)古市古墳群に続いて6世紀後半から7世紀代の倭国王墓と想定されるいくつかの古墳を含む太子町磯長谷古墳群周辺について、大阪府が1961年に作成した地形図をもとに、古市、百舌烏古墳群と同縮尺・同仕様で2,500分の1の開発以前の地形図を作成した。さらに(3)この地域で、古墳や同時代の遣跡の調査・研究を進めている地域の研究者や宮内庁書陵部の研究者の参加協力をえて、古市、百舌鳥古墳群り既往の発掘調査のデータ集成を行い、GISを利用してそのデータベース化を進めるとともに、(4)出土埴輪の実測図等の資料集成を行うとともにその編年作業を進め、(5)作成した旧地形図をも利用してこれら古墳群の形成過程の復元的研究を行った。(5)また本年度が最終年度にあたるため、研究報告書を作成した。
著者
森 俊勇 井上 公夫 水山 高久 植野 利康
出版者
公益社団法人 砂防学会
雑誌
砂防学会誌 (ISSN:02868385)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.44-49, 2007-09-15 (Released:2010-04-30)
参考文献数
21

As many as 19 landslide dams have been formed in the northern region of Nagano prefecture, central Japan, in last 500 years except one case. Of this number, seven were formed when the Zenkoji Earthquake occurred in 1847. This abundance is likely because of the geotectonic background of this area which is located at the western end of the “Fossa Magna, ” or Japan's central graben belt.The Tobata landslide occurred in the early morning of June 24, 1757 due to heavy rain. Blocking the Azusa River, which is upstream of the Shinano River, a landslide dam with a height of 130 m and a storage capacity of 85 million m3 was formed. Around 10 a.m. on the third day (54 hours later), this landslide dam burst and its water flooded the area up to the confluence with the Narai River. According to calculation using the Manning's formula, it is estimated that the flood water ran down the river in a concentrated path with a velocity of 12 m/s and a peak flow of 27, 000 m3/s.When the dam burst, local people were quickly ordered to evacuate and no casualties were caused during this flood.
著者
五十嵐 創 植野 研 尾崎 知伸 森田 想平 古川 康一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告知能と複雑系(ICS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.30, pp.1-6, 2003-03-13
被引用文献数
1

チェロ演奏スキルは,訓練によって獲得される,筋骨格系の整合的な一連の動作を行う能力であり,、身体知の一種である.身体知の獲得の目的は,演奏,踊り,各種のスポーツなどのスキルを向上させることである.身体知のもんだいは,それが暗黙的であり,職業演奏家や,プロスポーツプレイヤーが自身で何をおこなっているのかを把握できない点である.本研究の目的は,身体知をモデル化し,その暗黙知を言語化することである.本論文では,特に基本的なチェロ演奏スキルのひとつとして,しなやかな弓の返し動作を取り上げ,そのモデル化にベイジアンネットワークを用いることを検討した.ここでは,その基本構想を明らかにする.In this paper, we discuss the problem of modeling human skill in Bayesian network. The purpose of skill modeling is to use the model to improve performances in such activities as playing instruments, dancing, and playing various kinds of sports. The difficulty of human skill analysis comes from its tacitness: even professional viloinists or cellists do not know how they are playing. This paper defines a basic framesork of the research by proposing possible representations and structures of the Bayesian networks for human skill, and by defining the purpose of model usage. We furthermore discuss how to assign conditional probability tables in each node of the proposed Bayesian networks by accumulating obserbational data by a motion capturing system as well as by a surface electromyogram. We also discuss how to compare profeessional players with amateurs using Bayesian network representations.
著者
武田 弘輝 藤田 勝久 宮崎 長生 植野 祝
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
関西支部講演会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2005, no.80, pp."6-27"-"6-28", 2005-03-18

This paper proposes a estimation method of dynamic forces between 4 wheels and road using strain information of steering nuckle. First, we propose a vehicle-tyre model. It contains nonlinear caracteristics of tyre by Magic Formula function. In addition, we design multi-body dynamics suspension model. And we conduct the coupled simulation to obtain the boundary condition of steering nuckle. Then, in order to decide the optimum positions of strain sensors to estimate the forces, FEM simulations are conducted.
著者
植野 仙経 上田 敬太 村井 俊哉
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3+4, pp.172-181, 2018 (Released:2019-02-01)
参考文献数
42

【要旨】1900年ごろ、Kraepelinはその『精神医学教科書』において人物に対する見当識の障害を含むさまざまな見当識障害を記述した。また見当識障害について、健忘やアパシー、認知機能の低下が関与するものと妄想性のものとを区別した。その後、精神医学において妄想性人物誤認の現象は既知性や親近感・疎遠感といった気分ないし感情の側面から考察されるようになった。また1930年前後にフランスの精神医学者が記述したカプグラ症候群とその類縁症状は、1980年前後に妄想性同定錯誤症候群としてまとめられ、神経心理学的なアプローチが盛んに行われるようになった。1990年、Ellisらは同定錯誤に関する鏡像仮説を提唱した。それによれば、相貌の認知には顕在的認知の経路(相貌の意識的な同定)と潜在的認知の経路(相貌に対する情動的応答)とがあり、前者が損なわれれば相貌失認、後者が損なわれればカプグラ症状が生じるという鏡像的な関係がこれらの症状にはある。この仮説は妄想性人物誤認において感情や情動に関わる異常が果たす役割を重視しているという点で、伝統的な精神医学と同様の観点に立っている。一方でKraepelinの見解が示唆するように、妄想的ではない人物誤認(人物に対する見当識障害)にはアパシーや健忘を背景として生じる場合が多い。
著者
水川 展吉 冨永 進 木股 敬裕 小野田 友男 野宮 重信 杉山 成史 川本 知明 山近 英樹 植野 高章 高木 慎
出版者
岡山医学会
雑誌
岡山医学会雑誌 (ISSN:00301558)
巻号頁・発行日
vol.119, no.3, pp.267-272, 2008-01-04 (Released:2008-07-04)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

There is a medical team approach used in many hospitals for oral cancer patients. The members are head & neck surgeons and plastic surgeons, or oral surgeons and plastic surgeons. However, in Japan, it is very difficult for oral surgeons to cooperate with head & neck surgeons, except in the case of extractions and oral health care, because both surgeons treat oral carcinomas and there is therefore a conflict in their scope of practice. We believe it desirable for head & neck surgeons to treat oral cancer patients with tumors extending to other regions, and oral surgeons should be in charge of occlusion in head and neck carcinomas. We treated two patients with oral carcinomas in collaboration with head and neck surgeons and plastic surgeons, with head & neck surgeons resecting the tumors, plastic surgeons reconstructing, and oral surgeons (dentists) taking charge of the occlusion for patients in the operating room. This collaboration resulted in patients having good position of the temporomandibular joint and occlusions after the operation. We therefore conclude that this collaborative team approach may be of benefit to the patients.
著者
植野 真臣
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.e1-e6, 2023-04-15

CBT(Computer Based Testing)は,従来の日本型テストとはまったく異なる考え方に基づいたテスト技術で,単にペーパーテストをコンピュータ上に置き換えたものではない.本稿では,CBTの考え方,最先端技術と問題,について解説する.具体的には,1.CBTの世界標準,2.テストの測定誤差と等質性,3. CBTでしか実現できない能力測定,4. CBTを用いた大学入学者選抜,について述べる.
著者
堤 瑛美子 郭 亦鳴 植野 真臣
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J106-D, no.2, pp.72-83, 2023-02-01

近年,教育現場ではオンラインラーニングシステムで収集された教育ビッグデータをいかに有効に活用するかが課題となっている.人工知能分野では,これらの教育ビッグデータに機械学習手法を適用し,学習者の課題への反応を予測することにより,学習者への適切な支援を行うアダプティブラーニングが注目されている.Tsutsumiら(2021)はアダプティブラーニングのために深層学習手法と項目反応理論を組み合わせ,パラメータの解釈性をもちながら高精度な反応予測を可能とするDeepIRTを開発し,高い予測精度とパラメータの解釈性を実現している.しかし,DeepIRTでは学習者の潜在的な能力値を推定する際に最新の学習データのみを用いるために,過去の学習データを十分に反映できていない可能性がある.本研究では,DeepIRTに新たなHypernetworkを組み合わせ,学習者の過去の学習データと最新の学習データの重要性を推定することで両者のバランスを最適化しながら能力値推定を行う.評価実験では,提案手法が最先端の反応予測手法を上回る反応予測精度を示した.
著者
木村 郁郎 坪田 輝彦 上田 暢夫 多田 慎也 吉本 静雄 十川 重次郎 白石 高昌 玉木 俊雄 植野 克巳 藤田 豊明 今城 健二 入江 正一郎 難波 次郎 福田 俊一
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.27, no.9, pp.1074-1081, 1989-09-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
9

びまん性汎細気管支炎 (DPB), 特発性間質性肺炎 (IIP) の中にATLを発症ないし抗ATLA抗体陽性を示すもののあることを見いだしたが, ATLの側からみればその肺病変の中に肺炎とか腫瘍細胞浸潤以外に細気管支肺胞領域に特異的な病態像を形成するものがあり, この病態をHTLV-I関連細気管支・肺胞異常症, HTLV-I associated bronchiolo-alveolar disorder (HABA) と称した. そして, これまでに見いだした細気管支型5例及び肺胞型1例の計6例の臨床的特徴について述べた. 本病態はHTLV-I感染後長年の間に形成されるものと考えられるが, DPB, IIPの成因についての示唆を与えるものと思われる.
著者
植野 洋志 武市 陽一郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

1.CAD65遺伝子をパン酵母に組み込み、酵母内可溶化タンパク質としてグルタミン酸デカルボキシラーゼを発現する系を作成した。2.発現効率の向上を目指して、培地中に加える炭素元の検討、誘導をかけるためより効率のよい誘導因子の探索、ベクターの変更、プロモーターの変更、ターミネータの変更、及び宿主の変更を行った。3.発現タンパク質の安定性に関わる因子について見当を行った。熱安定性について調べた結果、発現タンパク質は40℃に置くことで失活するが、基質アナログ、特に拮抗阻害剤、の存在下では顕著な熱安定性を示した。この結果より、基質アナログはGAD65の構造安定化に寄与し、その抗原性を長期にわたり保持できる可能性を示唆することができた。4.GAD活性の測定は従来より放射性同位元素であるC-14でラベルされたグルタミン酸を気質として用い、遊離の二酸化炭素中の放射線量を定量する手法がとられてきた。放射性同位元素の使用は環境問題とも関連して避けたいのでこれに代わる高感度で簡便な二酸化炭素測定装置の開発を行った。その結果、マイクロキャピラリー管と光センサー・カウンターの組み合わせが有効であることが判明し、現在さらなる改良を加えている。5.我々が開発した発現系は外来タンパク質の発現に有効利用できることをヒト由来のヒスチジンデカルボキシラーゼを発現することで示すことができた。これにより、従来困難であった微量タンパク質の大量培養・精製に応用できると考える。
著者
植野 晶 渕本 壱真 植野 真臣
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J105-D, no.8, pp.485-498, 2022-08-01

本論文では,項目露出を考慮した整数計画法による等質テストの自動構成手法を提案する.等質テストとはテストに含まれる項目は異なるが,受験者得点の予測誤差が等質なテスト群である.等質テストでは同一能力の受験者ならば,どのテストを受験しても同一得点となる保証があり,出題可能な項目のデータベース(アイテムバンク)から自動構成される.項目の露出数(出題回数)が大きい項目は受験者間で共有されやすく,経年劣化につながりその項目の信頼性が失われやすいため,露出数の偏りの軽減が重要な課題の一つである.Ishii and Ueno (2015) は構成した等質テストを全て保存し,その中から最も露出率(=露出数の最大値/テスト構成数)が小さい等質テストを出力して,露出率を軽減する手法を提案した.本論文では乱数を用いた整数計画法でテスト構成することで,露出数の偏りが改善されることを示し,整数計画法のみでは解決されなかった項目露出のバイアス問題を露出数上位の項目をアイテムバンクから除外しながらテスト構成することで解決する手法を提案する.評価実験では従来手法とテスト構成数及び露出率を比較し,提案手法の有効性を示す.
著者
藤田 昌幸 海江田 健作 植野 薫文 岩本 知広 里中 忍
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
年次大会講演論文集 2006.1 (ISSN:24331325)
巻号頁・発行日
pp.253-254, 2006-09-15 (Released:2017-08-01)

This study deals with the nondestructive discremination between the corona bond and the nugget in the spot welds using a newly developed ultrasonic measurement with the line focussed probe. Four types of spot welded specimens were prepareed. The transmission charactaristics of ultrasound in the nugget was investigated by the measurement of one sheet specimen, which were made by grinding after removing upper plate of spot welds. The nugget size was measured by the scanning measurement over the spot welded specimens with and without the indentation. The measurement result of one sheet specimen showed that the reflected wave from the back wall in the nugget exhibited higher or lower amplitude than that in the base metal, which depended on the water path in the measurement. The scannning results of spot welds also showed that the nugget was possible to discriminate from the corona bond as long as the indentation in the surface was shallow.
著者
フィリップ グザヴィエ 植野 妙実子 兼頭 ゆみ子
出版者
日本比較法研究所
雑誌
比較法雑誌 (ISSN:00104116)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.135-150, 2016

パリ同時多発テロが発生した数日後の2015年11月16日,フランス共和国大統領は両院合同会議での演説において,国民を脅かすテロの脅威に対し国民の結集を呼びかけた。大統領は,テロとテロから生じるさまざまな行為に対する対策に必要な手段と措置の強化が重要であることを確認し,このような状況においても公共秩序と安全が維持されるよう,法的枠組の見直しが必要であると強調した。彼は,フランスが「戦争状態」にあるとしても,法治国家を尊重した上で,自衛のために力強く対処しなければならないと述べた。この演説は,二つの提案を明確にしていた。一つは,非常事態という特殊な状況を憲法に示す形で憲法を改正し,緊急の状況や例外的な事態に関する法的枠組を強化することが必要であること,もう一つは,11月13日の事件を受けて,国民社会を攻撃する者からフランス国籍を剝奪するという制裁を課す必要が生じたことである。2015年12月に首相から提出された憲法改正案には,非常事態と国籍剝奪,この二つの憲法規範化が盛り込まれていた。非常事態を憲法規範化する目的は,立法府のコントロールに基づきながらも,いくつかの基本的自由を制限し,場合によっては奪うことにもなる行政警察権限を執行府に自由に行使することを許す憲法枠組を定めることにあった。一般的に,今回の改正案のこの点に関しては,原則的にほとんど反対はなかった。他方で,国籍剝奪については,非常事態よりも多くの問題が提起され,賛同者と反対者の間に鋭い対立が生まれた。とりわけフランス社会を二分することになった問題は,国籍が剝奪される対象範囲についてであった。なぜなら,提出された憲法改正案では,テロ行為の犯人と認められ,有罪判決を受けた二重国籍者だけが国籍剝奪の対象とされていたからである。この要件は,平等原則に反すると考えられた。このことが,今回の憲法改正案を頓挫させる直接の原因となった。こうした憲法改正案が出てきた背景と失敗の原因を考察しながら,憲法改正に必要な要素を検討している。
著者
植野 真臣 植野 真理 相馬 峰高 甲 圭太 山下 裕行
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.217-229, 2006
被引用文献数
4

長岡技術科学大学においてeラーニング授業を正式授業として配信して4年が経過した.2004年現在では,77の授業を配信し,正規通学生以外のeラーニング履修学生は,年間400人以上を超え,正規通学生に対する比率では国内最大規模となっている.本論では,これまで4年間のeラーニング運営の経験を通じて構築されてきた独自のeラーニング・マネジメント手法を「大学におけるeラーニング運営モデル」のひとつとして提案する.本論でのeラーニング・マネジメントの特徴は,1.知識創造を伴う自律的学習を支援するeラーニング授業モデルの導入,2.膨大な学習履歴データを逐次データ・マイニングし,知的エージェントを介して学習者に逐次(学習方法等について)アドバイスするという学習支援機能を持つLMSの利用,3.学習者の履修受付,LMSへの登録等の事務的手続きが完全にオンラインで行われる受付システムの利用,4.特に専門的で高度な技術を必要とせずに自動的に行えるコンテンツ開発支援システムの利用,5.遠隔地からも複数のスタッフによって設定できる遠隔マネジメント・システムの利用,等が挙げられる.これらにより,学習者の満足度を下げることなく,運営スタッフ,教師の負担を減少させながら,eラーニングの実践規模の拡大を実現できたことを示し,本手法の有効性を示す.