著者
石田 克久 北原鉄朗 武田正之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.743-746, 2004-03-15
参考文献数
8
被引用文献数
1

本稿では,即興演奏における不自然な旋律を自動的に補正するシステムについて述べる.旋律補正の一アプローチとしてアヴェイラブルノートスケールから外れる音(アウト音)を補正対象とする方法が考えられるが,アウト音が必ずしも不自然とは限らない.本研究では,アウト音が補正されるべきか否かを,N-gramモデルを用いて決定する手法を提案する.実際の即興演奏に対して補正処理を行ったところアウト音をすべて補正する手法に比べて,適合率を約13%改善(ただし再現率は約2%低下)することができた.This paper describes a system that corrects unnatural melodies inimprovisation. It is not suitable to correct all notes out of the available note scale because these notes are not necessarily unnatural.We propose a method for determining notes to be corrected based onthe N-gram model.Experimental results show that our methodimproves the precision rate of melody correction.
著者
武田 正中 立花 久大 奥田 文悟 川端 啓太 杉田 實
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.363-368, 1993-05-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
20
被引用文献数
6 9

パーキンソン病 (PD) 患者を痴呆群と非痴呆群とに分け, 事象関連電位 (ERP) と視覚誘発電位 (VEP) を測定し, それぞれ比較検討した. 対象はPD痴呆群9例, 非痴呆群19例, 正常対照群28例である. ERPは聴覚刺激の oddball 課題を用い, VEPは図形反転刺激を用いた. その結果PD痴呆群ではERPのN200, P300潜時およびVEPのP100潜時は正常者群およびPD非痴呆群に比し有意に延長していた. 正常者群とPD非痴呆群との間にはERP, VEPともに有意な差は認めなかった. またPD痴呆群でERPのN200潜時とVEPのP100潜時の間に有意な相関関係が認められた. P300潜時とVEPのP100潜時との間にもその傾向が見られた. 以上の結果より, PD患者においてはERPのP300潜時のみでなくN200潜時も認知機能障害の指標となりうることが示唆された. またVEPのP100潜時の延長は, 網膜レベルよりも中枢の視覚伝導路での障害を示唆するものと考えられた. さらにPD痴呆群では視覚刺激に対する大脳反応性の低下は認知機能や情報処理機能の低下とある程度並行して起こっていくことが示唆された.
著者
武田 正倫
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.141-144, 1985
被引用文献数
1

東京大学海洋研究所所属の調査船「淡青丸」によって(TK75-6次航海), 富山湾と付近海域から採集された甲殻類資料中に, ホンヤドカリ科カイガラカツギ属 Porcellanopagurus のヤドカリ1個体が見出された。採集地点は能登半島東側の飯田湾, 水深36m である。この属には従来5種(ニュージーランド南方海域に分布する P. edwardsi FILHOL, オーストラリア東南部産の P. tridentatus WHITELEGGE, チリー沖ファンフェルナンデス諸島産の P. platei LENZ, 相模湾から東支那海にかけて分布するカイガラカツギ P. japonicus BALSS, 小笠原諸島産のチビカイガラカツギ P. truncatifrons TAKEDA)が知られている。これらはヤドカリとはいえ, その和名が示すように, 巻貝を利用することはなく, 二枚貝の半片や破片を背負うという特異な習性をもっている。腹部は短小で, 尾節および尾肢は左右相称である。 飯田湾産の標本はいわゆるカイガラカツギよりもチビカイガラカツギに近い。しかし, 額が発達し(チビカイガラカツギでは完全に切断された状態), 眼窩上縁が深くくぼみ, 額の幅と等長(ごく浅く, 額の幅より明らかに広い), 側縁が後方に開くため甲の輪郭は五角形に近い(後縁がほぼまっすぐであるため輪郭は横長の四角形)。甲の側縁最後歯は横に著しく突出しているのに対し, チビカイガラカツギではほとんど突出していないが, これが種の特徴といえるかどうか現在は断定できない。結果として, 飯田湾の個体はチビカイガラカツギに近縁の別種と考えられ, P. nihonkaiensis という学名を与えた。
著者
阿部 渉 武田 正倫
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.165-177, 2000
著者
東 達軌 武田 正之
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.3, no.5, pp.30-30, 2010-12-10

近年では,計算の対象としてあげられる問題は多様化しており,様々な問題領域の構文や意味論を任意に設定可能であるようなプログラミング環境が望まれている.本研究では,そのような汎用のメタプログラミング環境の構築を目的としている.本発表ではそのような環境で用いる計算モデルの1つとして,リフレクティブなグラフ書換え言語REGRELを提案する.REGRELは頂点と接続の両方にラベルを持つ有向グラフを書換え対象とするグラフ書換え系である.プログラムの構造やその値をグラフで表現し,計算の意味を書換え規則で表現する.書換え規則自体もまたグラフで表現されているため,高階書換えを行うことが可能である.そして,高階書換えによってリフレクションを表現することができる.REGRELの動作は並行動作,非決定性動作を基本としている.逐次動作,決定性動作はその特別な場合として扱う.また,分類と呼ばれる機構を持ち,書換え規則の適用範囲を制限することができる.本発表ではREGRELの定義を示し,その応用としてアクターモデルなどいくつかの計算モデルの表現方法を示す.また,評価戦略の決定や計算順序の制御など基本的な言語機能の表現を,REGRELの基本機能によって表現できることを示す.最後に,他のグラフ書換え系との比較について論じる.Domains for computational application become diverse and programming environment that can use various syntax and semantics for such domains is required. We propose reflective graph rewriting language REGREL to implement such multipurpose meta programming environment. REGREL is graph rewriting system, which rewrite digraphs that have labeled nodes and arcs. Program structures and values are represented by graph, and semantics is represented by rewriting rules. Rewriting rules are also expressed by graphs. Thus, higher-order rewriting rules are able to realize reflection. The REGREL's behaviors are based on concurrent and nondeterministic operations, and sequential/deterministic behaviors are special cases for them. And, REGREL has a classification mechanism, which limit the scope of rules. In this presentation, we show definitions of REGREL at first, and describe to express other computational models such as the actor model by REGREL. It is shown that REGREL can controll computational sequences and customize the evaluation strategies using basic functions. At last, we discuss comparisons between REGREL and other graph rewriting systems.
著者
石田 克久 北原 鉄朗 武田 正之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.1548-1559, 2005-07-15
被引用文献数
2

本論文では,即興演奏未習得者のための演奏支援について述べる.我々の最終目標は,即興演奏未習得者が通常の楽器を用いて即興演奏を行えるようになることである.この目標を達成するために,我々は「即時的旋律創作能力の補助」と「即興演奏の練習環境の提供」の2つのアプローチで,即興演奏の未習得者をサポートする.「即時的旋律創作能力の補助」に対しては,旋律中の不適切な音を自動的に補正する演奏支援システムismを開発した.これは,演奏された旋律中の不自然な個所をリアルタイムに検出し,適切な音に変換することで,即時的な旋律創作を容易にするためのものである.「即興演奏の練習環境の提供」に対しては振動により不適切な音を指摘する学習支援システムismvを構築した.このような支援システムを実現するうえでの中心となる課題は,どのように不適切な音を検出するかである.これに対し我々は,N-gramで旋律をモデル化し,その確率値が小さなもののみを不適切と判定する手法を提案する.実験の結果,提案手法により旋律中の不適切な個所の検出精度を向上させることができ,ism/ismvが即興未習得者の演奏支援に有効であることが示された.In this paper, we describe improvisation support for players who do not have sufficient experience in improvisation. The goal of our study is that such players learn the skill for improvisation and enjoy it. In order to reach this goal, we consider two approaches: assisting their skill for real-time melody creation and providing them with a self-education environment for improvisation. For the former approach, we developed a system that automatically corrects musically inappropriate notes in the melodies of their improvisation; for the latter approach, we developed a system that indicates musically inappropriate notes with vibrating corresponding keys. The main issue in developing these systems is how to detect musically inappropriate notes. We propose a method for detecting them based on the N-gram model. This method first calculates N-gram probabilities of played notes, and then judges notes with low probabilities to be inappropriate. Experimental results show that this N-gram-based method improves the acc racy of detecting musically inappropriate notes and our systems are effective in supporting unskilled players' improvisation.
著者
本間 義治 牛木 辰男 武田 正衛 中村 幸弘
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus : journal of the Malacological Society of Japan (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.345-353, 2007-02-28

浮遊遠洋性の珍蛸アミダコ(♀)が, 2004年11月から2005年2月下旬にかけて,上・中越地方を中心に新潟県沿岸へ漂着したり捕獲されたりして,34個体が記録された.これらの中で,2月15日に掬われ,上越水族博物館へ収容され,18日に死亡した全長53cmの個体を10%フォルマリンで,次いでブアン氏液で固定し,卵巣・卵管の組織標本を作成して,観察した.卵巣重量は40g,抱卵数は60,000個以上であった.卵巣は中央に卵巣腔があり,多数の包嚢からなり,嚢内には様々の発育段階の卵巣卵(非同時発生型)が存在していた.若い卵母細胞は,それぞれ結合組織性の薄膜(層板)に付着していた.初期の卵母細胞には,円形の核(生殖胞)が明瞭であるが,発育が進むと卵は長楕円形となり,卵胞上皮が随所から陥入し始め,複雑に入り組み,卵黄形成が盛んとなる.さらに成熟が遊むと,卵母細胞は大きく球状化して,最大径1.2 mmに達する.卵膜には放射線帯,卵胞膜,莢膜の分化が明瞭となり,卵黄は板状化する.近位卵管内壁の粘膜は高く,複雑にひだ打っているが,遠位卵管壁は厚い結合組織と筋肉層で覆われ,内壁の粘膜は低く,ひだ打ちの程度は小さかった.浮遊遠洋性アミダコ卵母細胞の成熟過程は,沿岸性のマダコや深海性のメンダコ類などと変わらず,多回産卵を行うと推定された.
著者
武田 正則
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.28, pp.206-209, 2012-08-25

近年,ユビキタス情報社会の推進により協働的な学びの環境が整いつつある.そのような中で,教育の情報化ビジョンに対処した授業実践をすすめるには個別・協働・一斉学習などの様態(形態・能力)を弾力的に転移させながら,学習目標の達成に向けた展開が求められる.本研究では,国際援助計画手法であるPCM(project cycle management)手法を参考に,3つの参画領域から協働学習のモデル化をめざした.具体的には,プログラム評価の視点による単元学習指導案(teaching plan),タキソノミー的視点による学習促進案(facilitation plan)の開発および実践をおこなった.
著者
武田 正倫 三宅 貞祥
出版者
一般社団法人 日本甲殻類学会
雑誌
甲殻類の研究
巻号頁・発行日
vol.4, pp.157-163, 1971

ヤワラガニ科の多くの種は河口の汽水域にみられるが,現在まで純淡水産の4種が知られている。それらはニュージーランドおよびオーストラリア産のHalicarcinus lacustris(Chilton),フィリッピン産のH.wolterecki Balss,中国中部産のNeorhynchoplax introversus(Kemp)およびイラク産のN.kempi(Chopra et Das)である。ここに報告する種も淡水産で,パラオ諸島,バベルダオブ島のガルドック湖付近の川で採集されたものである。本極は第3顎脚が口部を不完全に閉ざしていること,および雄の腹部が4節からなっていることによりNeorhynchoplax Sakai,1938に含まれる。この属のカニでは額角は通常3歯よりなるが,N.rostrata(Haswell),N.nasalis(Kemp)および本種においては1歯である。本種では額角が短い三角形の突起にすぎないが,他の2種では顕著である。他の特徴も著しく異なっているため上記既知種から容易に区別される。本種の模式標本は九州大学農学部動物学教室に保管されている。種の特徴の概略は下記のとおりである。Neorhynchoplax inermis sp. nov. 完模式標本においては,甲幅3.6mm,側壁を除いた背面の最大幅3.0mmである。甲は丸みのある三角形で,背面はほとんど平滑である。各域を分割する明瞭な溝が発達し,また背面の周縁にわずかな縁どりが認められる。前側縁はわん曲するが,側縁は互いにほぼ平行である。側線に近く側壁が突出し,甲の最大幅を形成する。眼窩外歯は認められず,また前側縁,側壁も歯ないし棘を欠く。額角はきわめて短い三角形の突起で,短毛で縁どられている。鋏脚の長節下縁に1小突起が認められるが,他の節は歯または棘を有しない。不動指および可動指は先端近くで内側にわん曲し,それぞれ3ないし4個の互いにかみ合う歯を備える。歩脚の長節の前縁末端は突出せず,また指節後縁も辣を有しない。指節は前節とほぼ等長である。追記-最近オランダのホルサイス博士により淡水産ヤワラガニに関する論文が公表され,ニューギニア,パプァ区産の1種Halicarcinus angelicusが追加された。ホルサイス博士はニューカレドニア産のH.pilosus(A. Milne Edwards)も加えて合計6種を数えている。H.pilosusは汽水域にもみられるので"淡水産"としてはやや疑問があるが,同属の淡水産3種と共通の特徴をもつ。したがって,H.pilosusおよびここに報告したNeorhynchoplax inermisを含めると,ヤワラガニ科の淡水産の種は2属7種となる。
著者
田中 正明 武田 正倫 永野 真理子
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.419-439, 2006

The micro-organisms in 35 samples obtained from inside moats of the Imperial Palace of Japan in Tokyo during the years 2000-2004 were studied, and only the additional species unrecorded in the previous survey during the years 1996-1999 are enumerated. They are 49 species of 35 genera, viz. 10 species of 8 genera in the Protozoa (8 species of Rhizopoda, and 2 species of Chiliatea), 22 species (including variety and forma) of 12 genera in the Rotatoria, 1 species of the Gastrotricha, 1 species of the Nematoda, 15 species of 13 genera in the Arthropoda (13 species of Crustacea, and 2 species of Insecta). In 20 samples obtained in the previous survey, 81 species of 40 genera were recorded (Tanaka & Takeda, 2000), although the nematod worms and insect larvae were not examined. As a result, at present, the micro-organisms are known by a total of 130 species of 63 genera from four inside moats, Kami-dokan-bori, Naka-dokan-bori, Shimo-dokan-bori and Hasuike-bori, and from a small pond, Hisago-ike. Comparing the limnological fauna of the inside moats of the Imperial Palace of Japan with that of some ponds in the Akasaka Imperial Gardens in Tokyo recorded by Tanaka et al. (2005), it is definitely said that the inside moats of the Imperial Palace of Japan are still kept in good condition due to its large scale, though the Imperial Palace of Japan is surrounded by artificial buildings in Metropolitan Tokyo.
著者
武田 正義
出版者
日本建築学会
雑誌
建築雑誌 (ISSN:00038555)
巻号頁・発行日
no.1366, 1994-12-20
著者
加藤 一郎 平賀 紘一 西条 寿夫 近藤 健男 武田 正利
出版者
富山医科薬科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は中枢神経系を含む全身で非ケトーシス型高グリシン血症・脳症の原因蛋白質であるH蛋白質を欠損するマウスを作製し、高グリシン血症・脳症の成因や病態を明らかにすることにある。平成16年度の研究は以下の通りに順調に進行した。1.マウスのグリシン開裂酵素系H蛋白質遺伝子のエキソン1周囲に2か所のloxP部位を導入したキメラマウスを5匹得た。うち2匹が変異遺伝子のgerm-line transmissionを示した。2.上記マウスとCre Recombinase遺伝子導入マウスを交配して、loxP間のエキソン1を含むゲノムDNA領域を欠損したH蛋白質遺伝子ヘテロ欠損マウスを得た。3.抗H蛋白質ポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロット解析では、ヘテロ欠損体でH蛋白質が50%に減少していることが確認された。4.次にホモ欠損マウスを得るためにH蛋白質遺伝子ヘテロ欠損マウス同士を交配し、その子孫のgenotypeをPCR法およびサザンプロット法で解析した。ホモ欠損マウスは全く得られなかった。ヘテロ欠損体では出生直後に体内出血・体幹異常を示す異常個体が散見された。5.さらに胎生14日目までさかのぼって胎児を遺伝子解析すると、野生型26:ヘテロ欠損33:ホモ欠損0であった。ヘテロ欠損体はメンデル則で予想される数より少ない傾向が見られた。本研究の結果、H蛋白質遺伝子ホモ欠損マウスは全く発生できないか、極めて早期に胎生致死となっていることが示唆され、本蛋白質がマウスの正常発生に必須であることが、はじめて明らかになった。今後H蛋白質が50%に減少しているヘテロ欠損マウスを用いて、H蛋白質がさまざまな臓器ストレスに対する耐性獲得に果たす役割の検討が可能になった。さらに薬剤誘導可能な、あるいは臓器特異的なCre Recombinase遺伝子発現マウスとの組み合わせにより、条件特異的なH蛋白質欠損マウスを作製し肝臓や脳、心臓などの主要臓器におけるH蛋白質の生体内機能を深く探求することができる。