著者
川島 眞 黒川 一郎 林 伸和 渡辺 雅子 谷岡 未樹
出版者
日本臨床皮膚科医会
雑誌
日本臨床皮膚科医会雑誌 (ISSN:13497758)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.497-507, 2018 (Released:2018-06-27)
参考文献数
5

近年本邦の尋常性痤瘡治療薬,特に外用薬の選択肢が充実し,欧米の治療水準に到達した.それらを選択使用するための治療ガイドラインも策定されている.しかしながら,実地臨床の場では,個々の患者の多彩な症状に応じて薬剤選択を行うが,ガイドラインでの推奨度に応じて自動的に決定できるものではなく,様々な患者背景を考慮して試行錯誤を繰り返すこともある.そこで,日常診療上でしばしば遭遇する尋常性痤瘡の症例を写真で提示し,その患者の年齢,生活様式,経済状況なども考慮したうえで,いかなる治療薬を選択すべきかについて5名の痤瘡治療に精通した皮膚科医により案を作成し,それを27名の痤瘡治療に積極的に取り組む皮膚科医で討議し,コンセンサスを作り上げた.中高生,青年期,社会人の各年代層の顔面の尋常性痤瘡を6ケース,体幹部の尋常性痤瘡を2ケース,特殊な例として下顎部の痤瘡1ケース,アトピー性皮膚炎の合併2ケース,炎症後紅斑,炎症後色素沈着を各1ケース,全体として13ケースについて検討した結果をここに報告し,診療の参考としていただきたいと考える.
著者
小林 茂 山近 久美子 渡辺 理絵
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨 2008年 人文地理学会大会
巻号頁・発行日
pp.110, 2008 (Released:2008-12-25)

2008年3月、ワシントンのアメリカ議会図書館で外邦図の調査をおこなったところ、1880年代に中国大陸・朝鮮半島・台湾で、日本軍将校がおこなった簡易測量にによる手書き原図を発見した。まだ調査は完了していないが、彼らの調査旅行と測量、手書き原図を集成した地図作製、さらにその利用について一定の成果がえられたので報告する。この測量と地図作製は、日清戦争以後の臨時測図部による外邦図作製の前段階と位置付けられるが、記録がすくなく、手書き原図のさらなる調査は、その全貌の解明に大きな意義をもつと予想される。
著者
根岸 一美 渡辺 裕 武石 みどり 桑原 和美 井手口 彰典 坂本 秀子
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

1921年(大正10年)に宝塚少女歌劇において上演された新舞踊『春から秋へ』について、楳茂都陸平による舞踊譜の解読と原田潤による楽譜の演奏解釈を行い、この作品の復元上演を実現した。この活動を通じて、1)『春から秋へ』が舞踊的にも音楽的にも西洋の前衛性を備えた斬新な作品であったことを明らかにし、2)舞踊学、演劇学、音楽学、文化史学といった多様な視点からの宝塚歌劇研究の一つのモデルを提示することに成功した。
著者
小林 正美 秋山 満知子 木瀬 秀夫 高市 真一 嶋田 敬三 伊藤 繁 平石 明 渡辺 正 若尾 紀夫
出版者
日本鉱物科学会
雑誌
鉱物学雜誌 (ISSN:04541146)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.117-120, 1996-05-31 (Released:2009-08-11)
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

Except for metal-free chlorophylls (pheophytins) functioning as primary electron acceptors in purple bacteria and in photosystem II of higher plants, all the naturally occurring chlorophylls have been believed to be magnesium complexes. To clarify the reason for the choice of Mg as the central metal of chlorophylls, we have systematically studied the absorption, fluorescence and redox properties of metallo-substituted chlorophylls, and concluded that Zn-substituted chlorophylls may act as both antenna and primary electron donor of photosystems. Quite recently, we discovered novel photosynthesis using Zn-containing bacteriochlorophyll a in an acidophilic bacterium Acidiphilium rubrum. This finding indicates an unexpectedly wide variability of photosynthesis.
著者
庭野 ますみ 渡辺 はる香 古山 明子 板垣 史則 中村 純人 佐島 毅
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】障がいのある子どもをもつ親の研究はこれまで母親のショック反応,母親のもつ現実のストレスなどネガティブな側面に焦点をあてたものが多い。しかし日々の臨床現場で接する母親の中には家族や周囲からの理解と支援を得ながら子どもをたくましく育てている母親も存在する。ストレスフルな状況を体験してもそこから立ち直りを導く心理的特性をレジリエンスというが,本邦ではダウン症,発達障害の子どもをもつ母親の報告が存在するのみで,我が国の肢体不自由児の約半数を占める脳性麻痺の子どもをもつ母親のレジリエンスの報告はほとんどない。そこで,脳性麻痺の子どもをもつ母親のレジリエンスの実態を調査することを目的とした。【方法】対象は当院で理学療法を施行している脳性麻痺の子どもをもつ母親61名で,方法は無記名自記式質問紙法を施行した。調査項目は1.子どもの属性:年齢,性別,出生順位,粗大運動機能分類システム:Gross Motor Function Classification System(以下GMFCS),コミュニケーション能力,Barthel Index(以下BI),障害者手帳の等級 2.母親の属性:年齢,世帯構成,世帯収入,就労状況,告知のこと,育児中「力」になった・あるいは心の支えと感じた出会いやサポートの存在,家族のサポートに対する満足感 3:子育てレジリエンス尺度 4:育児負担感指標 5:精神的健康度日本版GHQ-12項目短縮版とした。レジリエンスに関連する要因を明らかにするために,統計解析として,記述統計の他,従属変数を子育レジリエンス尺度,説明変数を単変量解析にて関連性の見られた変数とした重回帰分析(強制投入法)を行った。有意水準は5%未満とした。【結果】子どもは3歳から46歳までの男性35名,女性24名でGMFCSがIVとVレベルの子どもが72%,BIが0点であるものが40%,身体障害者手帳1級を所持しているものが68%と重症の子どもが多い実態が明らかになった。母親の平均年齢は48.3±10.7歳(26~75歳)であった。母親の85%が夫婦と子どもの世帯であるが,そのほとんどが育児中に「力」になった出会いやサポートがあったと答えた。レジリエンスは母親の年齢,世帯収入,子どもの年齢,GMFCSとは関連がなかったが,重回帰分析の結果,家族のサポートに対する満足感(β値0.435)育児負担感指標(β値-0.507)精神的健康度日本版GHQ-12項目短縮版(β値0.627)が抽出された(調整済R二乗0.660)。【結論】脳性麻痺の子どもをもつ母親のレジリエンスは,家族のサポートに満足か否かという事と,育児負担感,精神的健康度と関連があった。レジリエンスは育児負担感の低減と精神的健康度の増進を促すことで高められる(尾野,2011)と示唆した先行研究と同様な結果が脳性麻痺の子どもをもつ母親においても認められた。
著者
土屋 葉 時岡 新 渡辺 克典
出版者
愛知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、「障害」と「女性」という異なるポジショナリティの上に置かれている、障害女性を取り囲む差別構造を明らかにすることである。平成29年度は、前年度にひきつづき、生活史法を用いて障害のある女性への聴きとり調査を行った。身体障害のある女性については、中部地区のみならず関西地区においてもネットワークを通じてアプローチした。また、発達障害および知的障害のある女性の支援者に対してパイロット調査を行うと同時に、調査方法について示唆を得た。平成29年度中期には研究会を開催した。まず「交差性(intersectionality)」概念について検討した。調査研究の課題についての認識を共有し、前年度および今年度前期に行った調査から得られた「生きづらさ」に関する具体的な事例から、知見の共有化を図った。とりわけ医療・介助場面、恋愛・結婚・生殖をめぐる問題、精神障害のある女性の経験について、これまで得られたインタビューデータから検討を加えた。具体的には、医療および介助場面において性別と障害、その他の要素がどのように「複合」しているのかを考察し、情報の不足、アクセシブルではない施設や機器、医師の偏見などがあることを明らかにした。また、恋愛・結婚・生殖の領域は必ずしも障害者差別解消法における合理的配慮の範疇にはおさまるものではないが、障害女性の生きづらさを解明する上では重要であることを指摘した。精神障害のある女性の経験については、身体症状からくる困難、女性役割に関する規範意識、雇用に結びつきづらい現状について述べた。これらに加え、障害をもった/発症した年齢や地域性、居住形態等の要素が、女性たちの生きづらさに影響を与えることを示唆した。以上について、2つの学会において報告を行った。
著者
宮崎 純一 中川 幸恵 藤井 文子 原 純也 渡辺 啓子 石川 祐一
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.327-335, 2017 (Released:2017-09-26)
参考文献数
5

医療・介護における栄養情報の連携は十分とは言えない一方、適切な食形態での食事提供は、栄養状態の改善につながるとの報告があり、栄養管理情報を積極的に発信することが患者のQOL向上に寄与すると考えられる。そこで、栄養情報提供書の作成および研修会による認識の統一を図り、平成29年2月から平成29年3月までに 「医療栄養情報提供書」 を使用した13人を対象に、業務負担軽減への影響と栄養状態の推移を調査し、医療栄養情報提供書の有用性を検証した。栄養情報提供書の作成は普及しているとは言えず、必要性・有用性を実感した回答が得られたものの研修会後の作成率の上昇は見られなかった。しかし、医療栄養情報提供書の活用により、栄養管理計画・栄養ケアプランの作成時間が有意に短縮し、業務負担の軽減が認められた。さらに、栄養状態が改善した患者が46%と、栄養状態の維持のみならず改善も認められ、管理栄養士の記載に特化した標準化した医療栄養情報提供書の有用性が示唆された。
著者
坊池 義浩 須山 絵里子 渡辺 嘉久 岩本 澄清 国分寺 晃 杉本 健 永井 朝子 藤盛 好啓 甲斐 俊朗 三木 均
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.700-707, 2017

<p>ハプトグロビン(Hp)抗体を保有するHp欠損患者に,血漿タンパク質成分を含有した血液製剤を輸血後,重篤なアナフィラキシーショックを起こすことがいくつか報告されている.我々は,<i>Hp<sup>del</sup></i>遺伝子ホモ接合体のHp欠損患者2人を経験した.これら2人の患者は,2回洗浄した赤血球の輸血により副作用を起こさなかった.そこで我々は,洗浄回数と血液製剤中に残ったHpの濃度を検討した.洗浄赤血球(WRC),解凍赤血球(FTRC),洗浄血小板(WPC)の各5製剤中のHp濃度を測定した.洗浄前の赤血球製剤(RBC)のHp濃度の平均値は98.800μg/m<i>l</i>,1回洗浄WRCの平均値は3.044μg/m<i>l</i>,2回洗浄WRCの平均値は0.233μg/m<i>l</i>,3回洗浄WRCの平均値は0.038μg/m<i>l</i>であった.1回,2回,3回洗浄後WRCの有意差は,それぞれ<i>p</i>=0.0089,<i>p</i>=0.0019,<i>p</i><0.0001であった.FTRCのHp濃度の平均値は5.116μg/m<i>l</i>であった.血小板製剤(PC)の血漿Hp濃度の平均値は656.600μg/m<i>l</i>,1回洗浄WPCの平均値が7.262μg/m<i>l</i>,2回洗浄WPCの平均値が0.463μg/m<i>l</i>であった.1回,2回洗浄後WPCの有意差は,それぞれ<i>p</i><0.0001,<i>p</i>=0.0016であった.これらの結果に基づき,我々はHp抗体を保有するHp欠損患者には,2回洗浄のWRCやWPCを輸血することが望ましいと考える.</p>

2 0 0 0 OA 外交通商史談

著者
渡辺修二郎 著
出版者
東陽堂
巻号頁・発行日
1897
著者
耒代 誠仁 高田 祐一 井上 幸 方 国花 馬場 基 渡辺 晃宏 井上 聡
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.351-359, 2018-02-15

古文書の研究者にとって,古文書デジタルアーカイブの活用を促すことは重要な課題である.本論文では,字形画像をキーとした横断検索技術による古文書Webデジタルアーカイブ活用への効果について述べる.字種は文書に対する現実的な検索キーの1つである.しかし,古文書において字形との対応は必ずしも確定しない.この課題を解決するために,私たちは字形画像をキーとした古文書Webデジタルアーカイブの横断検索を実装した.5カ月間の実験で入力されたキー数は合計で200,000件を超えた.これは字種による横断検索の件数と比較しても十分に大きい.また,私たちは古文書解読の専門家による評価実験を実施した.専門家は,使いなれた画像処理ソフトウェアを搭載したPCもしくは筆者らが作成した画像処理ソフトウェアを搭載したiPod Touch,またはその両方を使用した.「検索結果にキーと類似した画像が含まれるか」という旨の質問に対しては,すべての専門家が肯定的な回答を示した.検索精度と使い勝手の向上,および字形テンプレートの整備を通した活用のさらなる促進は今後の課題である.
著者
渡辺 篤 尾関 謙 齊藤 仁十 村上 雅紀 大澤 朋史 泉 直人
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>近年はMRI拡散テンソル画像(DTI)を用いて,神経線維を可視化したTractgraphyや拡散異方性を定量化したFractional anisotrophy(FA)が予後予測に用いられている。脳梗塞後の急性期理学療法において運動麻痺の予後予測は重要ではあるものの,理学療法士が行う運動麻痺の評価のみで予後予測を行う事は難しいのが現状である。本研究ではFA値とFugl-Meyer Assessmentの運動項目(FM-motor)を比較し,FA値を用いた早期における運動麻痺の予後予測の可能性について検討した。</p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は平成27年4月~平成28年6月に入院した脳梗塞患者であった。取り込み基準はテント上脳卒中であり,年齢が80歳未満,MRI画像上で梗塞巣の著明な増大を認めなかったものとした。退院時FM-motorスコアから重症度別に分類した後,対応のないt検定を実施した。なお,有意水準は5%未満とした。</p><p></p><p>DTI撮像にはPhilips社製Achieva 3.0T R2.6のMRI装置を用いて,Extended MR WorkSpace 2.6.3.5にて解析処理した。また,FA値の定量的評価は放射線技師1名で行った。関心領域(ROI)は,起点を橋レベルの中脳大脳脚とし,終点を頭頂部皮質レベルの中心前回から中心後回にかけて設定した。損傷側と非損傷側にROIを設定し錐体路線維のトラッキング解析した。その後,作成した左右のTractgraphyからFAを自動算出した。</p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>1.対象者について</p><p></p><p>14名の対象者のうち,発症から1週目以内と4週目にDTIの解析とFM-motorの測定が可能であった9名が対象となった。4週目FM-motorスコアから軽症群5名,重症群4名に分類した。年齢67.8±9.2歳,性別 男性4名/女性5名,麻痺側 右片麻痺4名/左片麻痺4名/麻痺なし1名であった。</p><p></p><p>2.FA値について</p><p></p><p>解析までの日数 初回2.3±1.2日/4週目21.5±9.0日,初回FA値は軽症群1.01±0.03/重症群 0.95±0.01(p<0.05)となり,軽症群の初回FA値が有意に高かった。4週目FA値は軽症群0.97±0.01/重症群0.84±0.02(p<0.01)となり重症群のFA値は低値だった。</p><p></p><p>3.運動麻痺について</p><p></p><p>初回FM-motorスコア 軽症群96.2±3.5/重症群13.6±2.8(p<0.01),4週目FM-motorスコア 軽症群99.5±1.0/重症群19.3±7.0(p<0.01)となり,評価期間中に両群間の移行はみられなかった。また,軽症群の運動麻痺はほぼ完全に回復した。</p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>DTI撮像の課題としてはROI設定で終点を中心前回にする必要があった。FA値の定値を求めるには症例数を増やしカットオフ値を算出する必要があると考えられる。今回の結果から発症から1週間以内のFA値が運動麻痺の重症群を予測できる可能性が示唆された。DTIによる情報は脳梗塞急性期に関わる理学療法士にとって積極的に活用すべきツールであり,今後は理学療法の有効性を検証するために有用になると考える。</p>