著者
水野 貴行 中根 理沙 貝塚 隆史 石川(高野) 祐子 立澤 文見 井上 栄一 岩科 司
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.237-245, 2020 (Released:2020-09-30)
参考文献数
35

赤ネギ品種 ‘ひたち紅っこ’(Allium fistulosum ‘Hitachi-benikko’)は地下部の葉鞘が鮮やかな赤色を呈する長ネギで,茨城県北 部城里町(旧桂村)圷(あくつ)地区で栽培される地方野菜から育成された.本研究では,赤ネギ品種 ‘ひたち紅っこ’ において,地下部のアントシアニンとフラボノールを同定するとともに,総ポリフェノール量と抗酸化能を測定し,抗酸化食品としての有用性を調査した.その結果として,赤ネギ品種 ‘ひたち紅っこ’ のアントシアニンとフラボノールについては,1種類の新規化合物(Cyanidin 3-O-(3″-O-acetyl-6″-O-malonyl)-glucoside)を含む4種類のアントシアニンと5種類のフラボノールを単離し,化学および分光分析により同定した.新規のアントシアニンは ‘ひたち紅っこ’ の地下部における主要アントシアニンであった.フラボノールについては,単離した4種類がいずれもQuercetinを基本骨格としていた.また,総ポリフェノール量と抗酸化能を測定した結果,赤色の地下部は,‘ひたち紅っこ’ の地上部や,白ネギ品種の地上部および地下部と比べて,高い総ポリフェノール量と抗酸化能(H-ORAC)の値を示した.これらの結果は赤ネギ品種 ‘ひたち紅っこ’ において,食品の機能性の面から付加価値を与えると考えられる.
著者
村田 昌則 小林 淳 青木 かおり 高橋 尚志 西澤 文勝 鈴木 毅彦
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.130, no.3, pp.379-402, 2021-06-25 (Released:2021-07-20)
参考文献数
41
被引用文献数
2

Kozushima is a volcanic island, located in the northern part of the Izu Islands, approximately 170 km SSW of central Tokyo. The volcanism of Kozushima Volcano started at 80-60 ka and formed monogenetic volcanoes. The latest eruption occurred in AD 838, and was associated with the formation of the lava dome and pyroclastic cone of Tenjo-san. In order to contribute to the long-term forecasting of volcanic eruptions on the Izu Islands off Tokyo, the tephrostratigraphy and eruption history of Kozushima Volcano during the last 30,000 years is reconstructed. According to the geological surveys, the widespread Kikai-Akahoya (K-Ah; 7.3 cal ka) and Aira-Tanzawa (AT; 30.0 cal ka) tephras from southern Kyushu, and Niijima-Mukaiyama (Nj-My; AD 886), Niijima-Shikinejima (Nj-Sk; 8 cal ka) and Niijima-Miyatsukayama (Nj-Mt; 12.8 cal ka) tephras from the Niijima Volcano 20 km NNE of Kozushima are recognized. Tephras that also erupted from Kozushima Volcano are Kozushima-Tenjosan (Kz-Tj; AD 838), Kozushima-Ananoyama (Kz-An; 7-9 c), Kozushima-Chichibuyama-A′ (Kz-CbA′; 14-12.8 cal ka), Kozushima-Chichibuyama-A (Kz-CbA; 30-22 cal ka), and Kozushima-Chichibuyama-B (Kz-CbB; ca. 30 ka). Kz-An is formed by the activity of the northern volcanic chains (Kobe-yama–Anano-yama–Hanatate) just before the Tenjo-san eruption. Kz-CbA′ is distributed in southern Kozushima. Source vent and distribution of Kz-CbA′ have not yet been identified. The eruption history of Kozushima volcano over the last 30,000 years is as follows. At ca. 30 ka, Kz-CbB erupted in the central Kozushima, and the Nachi-san dome and Takodo-yama dome formed. At 30-22 ka, the Kz-CbA eruption in the southern Kozushima and the formation of the southern volcanic chain occurred. After the eruption of Kz-CbA′, the formation of the northern volcanic chain was followed by the eruption of Tenjo-san volcano. In addition, the eruption rate of Kozushima volcano is estimated during the last 30,000 years to be approximately 0.06 km3/1000 y in DRE.
著者
馬場 章 藤井 敏嗣 千葉 達朗 吉本 充宏 西澤 文勝 渋谷 秀敏
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

将来起こりうる火山災害を軽減するためには,過去の噴火推移の詳細を明らかにすることが重要である.特に西暦1707年の宝永噴火については,富士火山では比較的例の少ない大規模爆発的噴火の例として,ハザードマップ作成でも重要視されている.宝永噴火は基本的にプリニー式噴火であったとみなされているが,火口近傍相の研究は多くない.また,宝永山については,脱ガスしたマグマの貫入による隆起モデルが提唱されており(Miyaji et al.,2011),さらにはマグマ貫入による山体崩壊未遂の可能性と,予知可能な山体崩壊の例として避難計画策定の必要性が指摘されている(小山,2018).本発表では,宝永噴火の火口近傍相の地質調査・全岩化学組成分析・古地磁気測定などから新たに得られた知見をもとに,宝永山の形成過程について考察する.富士火山南東麓に位置する宝永山は,宝永噴火の際に古富士火山の一部が隆起して形成されたと推定されてきた(Tsuya,1955 ; Miyaji et al.,2011).しかし,赤岩を含む宝永山には多種多様な類質岩片は認められるものの,主には緻密な暗灰色スコリア片、火山弾から構成され,斑れい岩岩片や斑れい岩を捕獲した火山弾も認められる.それらの鏡下観察・全岩化学組成分析・古地磁気測定から,赤岩を含む宝永山は,Ho-Ⅲでもステージ2(Miyaji et al.,2011)に対比され ,マグマ水蒸気爆発による火口近傍の降下堆積物ないしサージ堆積物と推定される.また,宝永第2・第3火口縁,御殿庭の侵食谷側壁は,宝永噴火の降下堆積物で構成されており,ステージ1のHo-Ⅰ~Ⅲ(Miyaji et al.,2011)に対比される.侵食谷の基底部に白色・縞状軽石層は現時点において確認できないものの,下位から上位にかけて安山岩質から玄武岩質に漸移的な組成変化(SiO2=62.8~52.2wt%)をしている.そして,宝永第1火口内の火砕丘,宝永山山頂付近,御殿庭の侵食谷から得た古地磁気方位は,古地磁気永年変化曲線(JRFM2K.1)の西暦1707頃の古地磁気方位と一致する.これらの新たな知見に加えて,宝永噴出物のアイソパック(Miyaji et al.,2011),マグマ供給系(藤井,2007 ; 安田ほか,2015)と史料と絵図(小山,2009)も考慮し,宝永噴火に伴う宝永山の形成過程を推定した.宝永山はわずか9日間で形成された宝永噴火の給源近傍相としての火砕丘である.1.玄武岩質マグマがデイサイト質マグマに接触・混合したことで白色・縞状軽石が第1火口付近から噴出し,偏西風により東方向に流された(12月16日10~17時頃,Miyaji et al.,(2011)のUnit A,Bに相当).2.火口拡大に伴って第1火口の山体側も削剥され,多量の類質岩片が本質物と共に東~南方向に放出し,宝永山を形成し始めた(12月17日未明,Miyaji et al.,(2011)のUnit C~Fに相当).3.第1火口縁の地すべりによる火口閉塞ないし火口域の拡大により,噴出中心は第2火口に移行した(12月17~19日、Miyaji et al.,(2011)のUnit G~Iに相当).4.火口閉塞した類質岩片が噴出されることにより,噴火中心は第1火口に遷移し,断続的なマグマ水蒸気爆発により宝永山(赤岩)が形成された(12月19~25日、Miyaji et al.,(2011)のUnit J~Mに相当).5.噴火口が第1火口に限定されることで類質岩片の流入が止み,玄武岩質マグマによるプリニー噴火が6日間継続したのち,噴火が終了した(12月25~30日,Miyaji et al.,(2011)のUnit N~Qに相当).
著者
福田 裕子 田中 裕貴子 森田 貴子 中永 あやこ 道下 佳子 中蔵 伊知郎 北澤 文章 辻川 正彦
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.264-271, 2021-05-10 (Released:2022-05-18)
参考文献数
19

We experienced two cases with mild to moderate renal dysfunction in which amantadine hydrochloride (amantadine) intoxication was followed by increases in its blood levels. Case 1 was a patient with mild to moderate renal dysfunction [estimated glomerular filtration rate (eGFRcreat): 48.9 mL/min/1.73m2; glomerular filtration rate (GFR) category: G3a] taking amantadine 300 mg daily. In Case 1, the blood level of amantadine at 13 hours and 30 mins after administration was 2,368 ng/mL, pyrexia, myoclonus, and psychological symptoms were observed. After discontinuing amantadine, the patient’s myoclonus improved, but he died of acute respiratory distress syndrome. Case 2 was a patient with mild to moderate renal dysfunction [eGFRcreat: 55.6 mL/min/1.73m2; GFR category: G3a] taking amantadine 100 mg daily. In the patient, pyrexia, myoclonus, and consciousness disorder were observed. The blood level of amantadine 88 hours after the last dose was 265 ng/mL, and the blood level that was collected 24 hours after the end of administration was estimated to be about 2,600 to 4,200 ng/mL. In all cases, the clinical features were consistent with the common symptoms of amantadine intoxication, and improved by discontinuing amantadine. Taken together, these findings suggest that the patients were intoxicated with amantadine. These results indicate that amantadine intoxication due to elevated blood levels also occurs in patients with mild to moderate renal dysfunction during the administration of the usual dose of amantadine. In addition, the measurement of amantadine blood levels may be useful in avoiding amantadine intoxication.
著者
境 有紀 田才 晃 隅澤 文俊 柏崎 隆志
出版者
東京大学
雑誌
東京大學地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.243-291, 1993
被引用文献数
1

1993年1月15日に,北海道釧路市の沖合深さ107kmを震源とし,マグニチュード7.8の「1993年釧路沖地震」が発生した.震源に近い釧路市では震度6(烈震)の強い揺れに襲われ,北海道から東北南部の太平洋岸にかけての広い地域で震度4(中震)以上を記録した.強震記録によると,釧路地方気象台の地動水平加速度の最大値は気象庁の強震計で922cm/s2,建設省建築研究所の強震計で711cm/s2と非常に大きな値を記録した.震源が深かったために津波は発生しなかったが,器物の落下などにより2名が亡くなり,数百名が重軽傷を負った.被害は北海道から東北の広い範囲にわたり,北海道釧路支庁が最も被害が大きく,十勝支庁,根室支庁,青森県などでも相当程度の被害が生じた.特に釧路市を中心に,港湾,道路,鉄道,橋梁など地盤に起因する土木関連の被害が大きく,ライフラインの被害も大きかった.筆者らは,この地震による被害の概要を把握するため1月19日から23日までの5日間,震央に近い釧路市から帯広市にかけての地域の主として鉄筋コンクリート造公共建物,特に学校建物を中心に被害調査を行なった.その結果,鉄筋コンクリート造建物の被害は,一部崩壊1,一部大破2,中破4,小破10で,ほとんどの建物は軽微な被害であり,1968年十勝沖地震,1978年宮城県沖地震等の過去の大きな被害地震に比べ鉄筋コンクリート造建物の被害は小さかった.非常に大きな地動最大加速度を記録したにもかかわらず,建物の被害が小さかった原因としては,いくつかのことが考えられるが,1つには,地震動の性質があげられる.即ち,釧路地方気象台および建設省建築研究所で記録された強震記録は,非常に短周期が卓越しており,一般に建物は短周期になるほどその保有耐力が大きいことを考えると,地動最大加速度の大きさの割には,建物に対する破壊力は小さかったといえる.このことは,地動最大加速度が必ずしも建物に対する地震動の破壊力指標として適していないことを意味している.The 1993 Kushiro-oki Earthquake which occurred on January 15 offshore Kushiro City with magnitude of 7.8 at the depth of 107 km brought about damage over a wide area from Hokkaido to Tohoku. Very strong shaking(6 on the JMA scale) was observed in Kushiro City near the source of the earthquake, and strong shaking(more than 4 on the JMA scale) was observed over a wide area from Hokkaido to the south of Tohoku which faces the Pacific Ocean.
著者
村上 雅英 田原 賢 藤田 宜紀 三澤 文子
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
vol.61, no.481, pp.71-80, 1996
被引用文献数
10 4

About 2000 wooden structures were surveyed through 81. 6 ha, the seismic intensity was over 7, in Higashi Nada ward in Kobe-city where had been seriously damaged by the Hyogo-ken-Nanbu earthquake on Jan. 17th '95. The problems of the traditional Japanese post and beam wooden structures houses of two stories or less are not only pointed out, but also the cause of mechanism of collapses were determined according to the close investigation of 185 units through the seismic destruction area. It is recognised that quite numbers of the small and narrow houses with dry-wall exterior finish collapsed among many other Japanese traditional wooden structures with mud-wall exterior finish. The primary cause of collapses of these houses was that the structural planning was ignored on their floor planning.
著者
白井 杏湖 河野 淳 齋藤 友介 冨澤 文子 野波 尚子 太田 陽子 池谷 淳 塚原 清彰
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.576-582, 2018-12-28 (Released:2019-01-17)
参考文献数
26
被引用文献数
1

要旨 : 人工内耳 (以下 CI) を装用する中学生40人を対象に, 相対式学力検査である教研式 NRT (国語) を実施し, 5段階評定値 (評定5が最良) を確認するとともに, CI 手術時年齢, CI 装用期間, 直近の CI 装用閾値および語音聴取能, WISC で評価した動作性知能 (以下 PIQ) ならびに言語性知能 (以下 VIQ), 在籍する学校種, との関連について検討した。国語学力の評定値は,「読み」「書き」ともに評定2が最も多かった。国語学力と, CI 手術時年齢, 装用期間, 装用閾値および聴取能においては, 有意な相関を認めなかった。他方, 国語学力と VIQ および PIQ, 学校種は有意に関連していた。「読み」では PIQ と r=0.4, VIQ と0.6,「書き」では PIQ と0.6, VIQ と0.7,「読み」と学校種は0.50で相関が示された (p<0.01)。しかしながら, 偏回帰分析により VIQ の影響を固定すると, 学校種と「書き」との関連は消失した。
著者
原 尚人 松尾 知平 高木 理央 星 葵 佐々木 啓太 橋本 幸枝 澤 文 周山 理紗 岡崎 舞 島 正太郎 田地 佳那 寺崎 梓 市岡 恵美香 斉藤 剛 井口 研子 都島 由希子 池田 達彦 坂東 裕子
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.205-209, 2016 (Released:2017-01-26)
参考文献数
10

2016年4月内視鏡甲状腺手術が良性疾患に対して念願の保険収載が認められた。しかし,質の担保などの課題は残る。今後の最大目標は今回見送られた悪性腫瘍に対する内視鏡甲状腺手術の保険適応である。しかし,難解な問題点と課題が山積みである。そして将来は日本独自のロボット支援手術機器の開発が望まれると考える。これら今後の展望における問題点と課題についての考えを述べる。
著者
渡邊 三津子 遠藤 仁 古澤 文 藤本 悠子 石山 俊 Melih Anas 縄田 浩志
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2020年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.265, 2020 (Released:2020-03-30)

1. はじめに 近年,大野盛雄(1925〜2001年),小堀巌(1924〜2010年),片倉もとこ(1937〜2013年)など,日本の戦後から現代にいたる地理学の一時代を担った研究者らが相次いで世を去った。彼らが遺した貴重な学術資料をどのようにして保存・活用するかが課題となっている。本発表では,故片倉もとこが遺したフィールド資料の概要を紹介するとともに,彼女がサウディ・アラビアで撮影した写真の撮影場所を同定する作業を通して,対象地域の景観変化を復元する試みについて紹介する。2. 片倉もとこフィールド資料の概要 片倉が遺した研究資料は,フィールド調査写真,論文・著作物執筆に際してのアイデアや構成などを記したカード類,フィールドで収集した民族衣服,民具類など多岐にわたる。中でも,写真資料に関しては,ネガ/ポジフィルム,ブローニー版,コンタクトプリントなど約61,306シーンが確認できている(2018年12月現在)。本研究では,片倉が住み込みで調査を実施した経緯から,写真資料が最も多く,かつ論文・著作物における詳細な記述が遺されているサウディ・アラビア王国マッカ州のワーディ・ファーティマ(以下,WF)地域を対象とする。3. 片倉フィールド調査写真の撮影地点同定作業 本研究では,以下の手順で撮影地点の同定をすすめた。1) 調査前の準備(写真の整理と撮影地域の絞り込み) まず,写真資料が収められた収納ケース(箱,封筒,ファイルなど)や,マウント,紙焼き写真の裏などに書かれたメモや,著作における記述を参考に,WF地域およびその周辺で撮影されたとみられる写真の絞り込みを行った。次いで,WF地域で撮影されたとみられる写真の中から,地形やモスクなどの特徴的な地物,農夫などが写り込んでいる写真を選定し,現地調査に携行した。2) 現地調査 2018年4〜5月,2018年12月~2019年1月,2019年9月の3回実施した現地調査では,携行した写真を見せながら,現地調査協力者や片倉が調査を行った当時のことを知る住民に,聞き取り調査を行った。 次に,撮影地点ではないかと指摘された場所を訪れ,背景の山地,モスクや学校などの特徴的な地形や地物を観察するとともに,周辺の住民にさらなる聞き取りを行った。 聞き取りや現地観察を通して撮影地点が特定できた場合には,できるだけ片倉フィールド調査写真と同じ方向,同じアングルになるように写真を撮影するとともにGPSを用いて緯度・経度を記録した。なお,新しい建築物ができるなどして同じアングルでの撮影が難しい場合には,可能な限り近い場所で撮影・記録を行った。3) 現地調査後 調査後は,調査で撮影地点が同定された写真を起点として,その前後に撮影されたとみられる写真を中心に,被写体の再精査を行い,現地調査で撮影地点が同定された写真と同じ人物,建物,地形などが写り込んでいる写真を選定し,撮影同定の可能性がある写真の再選定を行った。一連の作業を繰り返すことで,片倉フィールド調査写真の撮影地点の同定をすすめた。4. 写真の撮影地点の同定作業を通した景観復元の試み 撮影地点が同定された片倉のフィールド調査写真と、現在の状況との比較,および1960年代以降に撮影・観測された衛星画像との比較を通して,およそ半世紀の間におこった変化の実情把握を試みた。例えば衛星画像からは、半世紀前にはワーディに農地が広がっていたのに対して,現在では植生が減少していることなどを読み取ることができる。一方で,集落では住宅地が拡大し,道路が整備された。このような変化の中、地上で撮影された写真からは,以下のような変化を読み取ることができる。例えば,1960年代の集落には,日干しレンガの平屋が点々とあるだけであったが,現在は焼成レンガやコンクリートを使った2階建以上の建物が増えた。一方で,集落内のどこからでも見えた山はさえぎられて見えなくなった。また,次第に電線が張り巡らされ,1980年代以降電化が進んだ。また,1960年代当時は生活用水をくむために欠かせなかった井戸は,配水車と水道の普及により次第に使われなくなった。発表では,実際の写真を紹介しながら,フィールド写真を用いた景観変化復元の試みについて紹介する。 本研究はJSPS科研費16H05658「半世紀に及ぶアラビア半島とサハラ沙漠オアシスの社会的紐帯の変化に関する実証的研究」(研究代表者:縄田浩志),国立民族学博物館「地域研究画像デジタルライブラリ事業(DiPLAS)」,大学共同利用機関法人人間文化研究機構「現代中東地域研究」秋田大学拠点の研究成果の一部である。また,アラムコ・アジア・ジャパン株式会社と片倉もとこ記念沙漠文化財団との間で締結された協賛金事業の一環として事業の一環として行われたものである。
著者
瀬戸 花香 笹木 悟 本多 和茂 小森 貞男 立澤 文見
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.413-423, 2022 (Released:2022-12-31)
参考文献数
13

サルビア・スプレンデンス(S. splendens Sellow ex Schult.)とサルビア・コクシネア(S. coccinea Buc’hoz ex Etl.)の園芸品種の合計9品種の花色と花弁に含まれるアントシアニンを調査した.‘フラメンコレッド’ と ‘アカプルコ’ は,花色の値が近い赤色系であり,主要花色素がいずれもペラルゴニジン3-カフェオイルグルコシド-5-マロニルグルコシド,ペラルゴニジン3-カフェオイルグルコシド-5-ジマロニルグルコシド,ペラルゴニジン3-p-クマロイルグルコシド-5-マロニルグルコシドおよびペラルゴニジン3-p-クマロイルグルコシド-5-ジマロニルグルコシドであった.‘フラメンコレッド’,‘フラメンコローズ’ および ‘フラメンコサーモン’ におけるアントシアニンの化学構造を比較したところ,‘フラメンコローズ’ では ‘フラメンコレッド’ の主要アントシアニンのうちマロン酸2分子が結合したアシル化アントシアニン,‘フラメンコサーモン’ ではp-クマル酸が結合したアシル化アントシアニンが含まれておらず,また,含有アントシアニン濃度の低下も確認され,これらの要因が色調に影響している可能性が考えられた.‘フラメンコパープル’ と ‘フジプルコ’ では,花色の値はどちらも紫色系であったが,主要アントシアニンは異なっていた.‘フジプルコ’ の主要アントシアニンは,シアニジン3,5-ジグルコシド,ペラルゴニジン3,5-ジグルコシド,シアニジン3-グルコシド-5-マロニルグルコシドおよびペラルゴニジン3-グルコシド-5-マロニルグルコシドと同定され,これら4種のアントシアニンは,サルビア・コクシネアの園芸品種の花弁に含まれるアントシアニンでは新たな報告となった.
著者
濱口 純 阿部 厚憲 松澤 文彦 水上 達三 廣方 玄太郎 及能 健一
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.7, pp.1876-1881, 2013 (Released:2014-01-25)
参考文献数
15
被引用文献数
3 3

症例は47歳,女性.昆布を摂食した翌日より腹痛を訴え前医を受診した.イレウスの診断にて保存的加療を行うも改善せず当院転院後,手術を施行した.Treitz靱帯より180cmの空腸内に堅い内容物が詰まっており,イレウスの原因となっていた.空腸を切開し摘出すると摂食した昆布であった.内容物の摘出後,切開創を縫合し腸管を切除せず終了した.術後イレウスの再燃はなかった.食餌性イレウスは時々見られる疾患であるが,昆布が原因となっている症例は本邦に特有であり比較的まれである.今回われわれは昆布により発症した食餌性イレウスの1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
三澤 康彦 三澤 文子
出版者
日経BP社
雑誌
日経アーキテクチュア (ISSN:03850870)
巻号頁・発行日
no.974, pp.84-86, 2012-04-25

日本は国土のうち約6割を森林が占める。しかし、木材自給率はわずか2割程度。木造住宅も、その大半が外材でつくられている。国産材にこだわる三澤康彦・三澤文子夫妻に、価格や流通の実情を聞いた。─構法の話に入る前に、木材について教えてください。三澤さんたちは、木造住宅でも、特に国産材を使った木造を推奨されていますね。