著者
末本 哲雄 田中 清裕 金井 俊輔 笠原 茂佳 石上 歩 池田 紘美
出版者
北海道大学高等教育機能開発総合センター
雑誌
高等教育ジャーナル : 高等教育と生涯学習 (ISSN:13419374)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.45-60, 2007-12

If a specialist, especially someone belonging to a university, visits a high school or a school of lower stage and gives lectures about his or her specialty, such lectures (or such an acitivity) are called delivery-lectures. Although a high school-college collaboration, especially the deliverylectures, is spreading rapidly in Japan, learning in such a collaboration tends to be one-way from college to high school. To make it supply effects in the opposite direction, we took up deliverylectures designed and performed not by professors but by graduate students. During the activities, the graduate students realized that they got some educational effects such as expanding of their horizons, getting teacher’s mind, understanding the diffi culty of teaching and behaving in a positive attitude. The high school students considered that the lectures were benefi cial and the graduate students had enough ability to teach. These results suggest that delivery-lectures by graduate students are available as two-way learning between high schools and colleges.
著者
田中 雅一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

女性兵士の問題は、男女平等社会を目指す立場--軍隊での機会均等の実現--と暴力--暴力装置としての軍隊--の容認という矛盾を意味し、ジェンダー研究の領域において重要なトピックとなっている。しかしながら、これまでの研究では理念が先行し、女性兵士の実態というものが十分見えてこなかった。とくに日本においては、軍隊そのものが現実味を欠いていたり、また軍隊について書くことがそのまま軍隊や戦争を支持すると誤解されやすい状況があった。こうした中で欧米の女性兵士をめぐる文献や論争の紹介がなされ、自衛隊で働く女性兵士たちの存在にも注目が集まるようになった。こうした状況で本研究ではアメリカと日本の女性兵士の歴史や実態の比較を行うことにした。方法は文献やインタビューによる。日本では男女雇用均等法の成立が女性への門戸開放への大きな転機となった。しかし、そこで大きな論争は生じなかった。これに対し、合衆国では1970年代末から女性兵士の問題が重視され、一部の女性団体は軍隊の門戸開放を強く主張してきた。その結果、一部の戦闘部門をのぞきほとんどの部隊が男女混成となった。また女性兵士とその夫、あるいは職場での関係から、女性兵士の直面する問題などを明らかにした。概して、米女性兵士は結婚後も軍務に従事し、ときに夫が除隊する場合がある。こうした事例は自衛隊の場合認められない。しかし、米兵と同じく同僚と結婚する率は高いと思われる。軍隊が一般社会とどのくらい特殊なのか、ということも本研究の中心課題である。一般化はむずかしいが、民間企業などに比べて男女の平等が自覚され、かつ制度化されている。こうした特質が一般社会に受けいられるかが重要な課題と思われる。
著者
濱野 保樹 小泉 真理子 田中 康之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

コンテンツ産業はコスト病の発症を先延ばしさせるため、複製技術で市場を拡大し、ウインドウと呼ばれる流通に関する技術革新で、新たな市場を作り出してきた。それらの市場が飽和すると、労働集約的であるため、再びコスト病に陥ってしまうが、アメリカは海外市場拡大で、また日本は制作費抑制で、コスト病発生を先伸ばしできた。しかし、日本のコンテンツ産業において生産性の向上ができないとすれば、制作費を抑制できなくなり、コスト病に陥る可能性が高い。
著者
田中 雄次 加藤 幹郎
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

1.本研究の目的:1919年-1933年におけるワイマール期のドイツ国民映画の変容と展開を、主要な作品の分析とともにハリウッドとの関係において検討することであった。2.実施した研究計画の概要(1)2006年および2007年の7月に研究代表者と研究分担者が、熊本大学においてそれぞれの年度の研究に関して事前調査の打ち合わせを行った。(2)研究代表者は、2006年度及び2007年度の8月下旬から9月上旬にかけてドイツのフランクフルト映画博物館及びベルリンの映画博物館において学芸員の協力を得て、主要な研究対象であるワイマール中期(1924-1927)の映画作品に関する資料収集を行った。研究分担者は、おもに東京国立近代美術館フィルムセンターとアテネフランセにおいて、フィルムセンター研究員の板倉史明氏の協力を得てワイマール後期(1928-1933)の映画研究を行った。(3)研究代表者は、2007年12月1日(土)に開催された第3回日本映画学会(於:京都大学)において、「ドイツ国民映画の典型としての『ニーベルンゲン』(1922-1924)」の講演を行った。3.研究の意義とその重要性:研究代表者は2008年3月に『ワイマール映画研究-ドイツ国民映画の展開と変容』(熊本出版文化会館)を出版した。本書は、日本におけるワイマール映画に関する本格的な研究であり、今後の研究の基本図書になりうると確信している。
著者
大久保 篤 市川 寿 田中 強 河野 智一 藤部 文昭
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.227-234, 2005-04-30

諏訪湖の沿岸では, 冬季夜間の著しい低温時に周期数十分, 変動幅数℃の大きな気温変動が観測されることがある.この現象を解明するため, 気象庁のルーチン観測資料を解析するとともに, 2003年1〜2月に諏訪湖周辺で野外強化観測を行った.気温変動は, 諏訪湖が全面結氷し積雪があり, 晴れて風が弱まった夜に発生していた.また, 気温変動はほぼ諏訪盆地内全域で発生しているが, 変動幅は湖岸に近い地点ほど大きく, 気温が急降下するタイミングは湖畔の方が早かった.気温変動に対応して風向も変動し, 湖からの風のときに前後の時間帯に比べて低温となる傾向があった.さらに, 気温変動の発生する時は, 地上から高度50m付近にかけて冷気層が存在し, 地上気温の変化と対応してその厚みが変動していた.これらは, 「諏訪湖上に現れる冷気層の崩壊・流出と再形成のサイクルが気温変動に関与している」可能性を示唆している.
著者
田中 彰吾
出版者
東海大学
雑誌
東海大学紀要. 開発工学部 (ISSN:09177612)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.7-14, 2006-03-31

この論文は,近代科学という知の形式の問題性について考察し,オルタナティヴな知のありかを展望しようとするものである.考察の手がかりとして,E・フッサール,中村雄二郎という二人の哲学者の科学批判を取り上げる.両者の議論とも,近代科学の問題点を的確に指摘したものとして比較的よく知られている.中村は,科学という知の営みの特徴を,「普遍性・論理性・客観性」という三つの特徴が結合したことに見出している.近代科学は,観察者の主観から自然を切り離し,自然のうちに内在する因果関係を記述することで,ローカルな場所に限定されない普遍的な知識の体系を築き上げてきたという理解である.フッサールは,近代自然科学の知の典型的な起源をG・ガリレイに見出している.ガリレイの試みには,純粋な幾何学図形を適用して自然現象を測定し,物体の運動をはじめとする現象を代数的に表記したという特徴がある.近代科学の視線は,自然を客観的に測定する試みに始まって,逆に測定された姿(理念として把握された姿)こそ真の自然であるとする自然観をもたらしたとフッサールは指摘する.中村やフッサールの議論から明らかになるのは,近代科学の世界観が,世界を直接に経験している主体の場所を排除したということである.これは,身体によって世界のうちに根づいてい,という私たちの素朴な生の事実が,学問から捨象されてきたことを意味するだろう.「身体で分かる」という知のあり方のなかに,学問の主題として発掘すべき知の領域が広がっているのである.
著者
郭 怡 内山 尚志 長谷川 明弘 史 学敏 中川 弥栄子 田中 政春 福本 一朗
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.330, pp.23-29, 2000-09-22
被引用文献数
1

痴呆脳に脳容積の萎縮、神経細胞の脱落、脳血流量の低下などの変化が観察されている。そこで、我々はこれらの病理変化から考え、電気刺激が神経活動を誘発できる事実に基づき、末梢神経に電気刺激を加えることによって、低下した神経活動を活性化させ、痴呆症状の改善さらに痴呆のリハビリを目指している。痴呆患者20人を被験者にし、脳神経により近い眉間(睛明穴)に微弱な電流を1回つき30分間、週3回、一ヵ月間行った。その結果、刺激群はコントロール群に比べ、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)及び短期記憶検査の得点が有意に上昇した。したがって、末梢神経への電気刺激が導入神経を通して記憶などの高次脳機能関する中枢神経に伝達され、その活動を賦活したと推測される。
著者
田中 耕司 斎藤 佐和
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.137-148, 2007-09-30
被引用文献数
1

聴覚障害児の書記表現力の指導の実態に関して現状を把握するため、全国の聾学校小学部・中学部を担当する教員127名を対象にアンケート調査を行った。アンケートは93名から回答があり、そのうち92名を有効回答として分析の対象とした。その結果、以下の5点が明らかになった。1)書記表現力の指導は、教科指導の一環として行われる「国語科」の時間内だけでなく、「自立活動」や「放課後・昼休み」など教科外でも指導の機会が頻繁に設けられていた。2)取り扱う教材に関しても、「日記」や「感想文」など児童生徒の書記表現力の基礎を形成するために効果的と考えられる教材が選択されていた。3)指導内容に関しては、評語による指導が中心となっており、対象者全体として児童生徒が書記表現力について抱える困難に即した指導が行われていた。4)指導に際しても、単に意欲の喚起にかかわる動機づけの側面だけでなく、語彙・文レベルの指導から文章レベルでの指導まで幅広く行われていた。5)評価方法としては、指導と合わせるかたちで評語による評価がおもに行われていた。以上の点から、聾学校においては、児童生徒の書記表現力の向上に向けた実質的な指導が展開されていることが示唆された。
著者
田中 正弘
出版者
弘前大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

イギリスの新しい授業料・奨学金制度の効果と問題点を整理し,その成果を基にした日本モデル構築の可能性について,学会発表および学術論文の形式で公表した。例えば,新しい制度に期待できる効果の一つとして,生活給付金の増加や生涯賃金が低い場合の残債務の消滅により,最貧層の学生が生涯にわたって最も経済的な利益を得る可能性が高いことを示し,大学卒業によって得られる実益が低い場合の社会保障になりうることを論じた。ただし問題点として,新しい制度は学生への巧みな増税といえること,および従来の方法より財政面で効率的なのか明らかでないことなども述べた。
著者
田中 宏幸
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.70-79, 2010-02-05
被引用文献数
1

省電力・分割可搬型宇宙線ミュオンテレスコープ(PEAM:Power Effective Assemblable Muon telescope)による火山体の観測が可能になったことにより,活動中の火山の火道内部の詳細を測定できるという新たな進展の機会が得られた.宇宙線ミュオンラジオグラフィー(CMRG)では地震波などを用いた従来の地球物理学的観測に比べて,かつて無い高い空間分解能で山体内部の密度測定が可能である.結果は,世界で初めて可能となったマグマの脱ガス過程の直接的観測の結果から,新たな未解決の問題が提起されている.ここではCMRGの原理,及び火道内でのマグマ対流・マグマ脱ガス現象の物理の基本と宇宙線ミュオンによる火山体内部測定の現状を紹介する.
著者
田中 將義
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス
巻号頁・発行日
vol.96, no.547, pp.35-42, 1997-02-28
被引用文献数
4

N-STARは,既存の静止衛星では,ほぼ最大級の大きさの通信衛星であり,CS-3の後継機として1995年8月に打ち上げられ,商用,実験等の運用に供されている.4つの周波数帯,5つのミッションの通信機器を搭載し,C-band, ka-band, ku-bandを用いた公衆網統合衛星システム, S-band移動体通信,ka-band高速広帯域等の新サービスを実現している.これらの実現に向けて,異周波数帯チャネル間接続,マルチポート増幅器を用いた移動通信用マルチビーム中継器,サテライトスイッチを有するKa帯マルチビーム中継器等の先端技術を開発した.本論文では,これらの新たに開発した通信機器の構成,機能,特徴,主要特性について述べた.