著者
長野 高志 中村 文彦 田中 伸治 有吉 亮 三浦 詩乃
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_1101-I_1109, 2018 (Released:2019-01-10)
参考文献数
15

近年の東京都市圏全体の鉄道輸送人員は増加しているが,個別に乗降客数を確認すると,地域の主要駅においても乗降客数が減少している鉄道駅を確認することが出来る.本研究においては乗降客数の減少した鉄道駅に着目し,その経緯と実態を明らかにする.その上で,乗降客数の減少した鉄道駅における今後の課題を明らかにすることを目的とする.結果として,乗降客数の減少している鉄道駅は他の鉄道駅に乗降客が利用転換することで減少し,周辺の商業施設の減少による生活水準の低下が課題になることが明らかになった.また,鉄道駅周辺と地域全体での商業施設集積量を比べることにより鉄道駅周辺において望ましい商業施設の集積量を示すことが出来た.ここから,今後の東京都市圏郊外における鉄道網整備の際に考慮すべき点について提案を行った.
著者
田中 治和
出版者
東北福祉大学仏教文化研究所
雑誌
東北福祉大学仏教文化研究所紀要
巻号頁・発行日
no.1, pp.43-60, 2019-12-31

本稿の目的は、シャカイフクシの人間観を仏教の人間観・世界観を援用しての批判的考察である。本稿は、仏教社会福祉学の立場ではないが、社会福祉原理論研究から、社会福祉の人間観の再考には、仏教の人間観から学ぶべき重要な観点が示唆されているとの仮説に立つ。検討結果は、次の通り。①仏教の慈悲、キリスト教の隣人愛の具現化、信仰の発露として、日本における救済形態の中心、また底流となり、現在の社会福祉に至っている。②社会福祉の特性は、個別的な方法で特殊的なリスクに対応する対人サービス及び施策にある。③仏教の人間観等からすれば、社会福祉の人間観は皮相であり、その人間観は浅薄である。④人間の根源的な課題である人の生きる意味を問うには、現状の社会福祉では難しく、仏教の人間観等に基づく回答が望まれる。 The purpose of this study is to criticize the understanding of human in social welfare by referring to the understanding of human in Buddhism. But the aim of this study is not to support Buddhism totally. So we concentrate only on the understanding of human in Buddhism. The following points have been cleared. Ⅰ. There is a similarity between the charity of Buddhism and that of Christianity. In Japan, this shapes today's social welfare. Ⅱ. The character of social welfare is services and policies which treat each cases individually. Ⅲ. Comparing Buddhism with social welfare, social welfare doesn't enough philosophy about human and life. Ⅳ. Social welfare should learn from Buddhism to clear the meaning of life.
著者
遠藤 恭生 田中 悠也 早川 庫輔 鷲澤 秀俊
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Cb1154, 2012

【目的】 当院において,10代におけるスポーツ障害患者の約4割は小学生である.その中でも,野球におけるスポーツ障害受診率は小学生全体の約3割と高く,その多くは野球肩,野球肘の診断を受けているのが現状である.一般的に野球肩・野球肘の発生頻度は投手と捕手に多いと言われている.今回われわれは,当院近隣にある少年野球チームに対し,メディカルチェック(以下MC)を実施した.少年野球選手をピッチャーまたはキャッチャー群とその他ポジション群の2群に分け比較検討し,ポジション別の身体特性を知ることを目的とした.【方法】 対象は,軟式少年野球3チーム58名の各選手に対し,事前アンケートとして学年・身長・体重・既往歴・現病歴・睡眠時間・食事内容・ポジション・投球側・打撃側・野球歴・その他のスポーツ歴を記入してもらい,MC当日は,理学療法評価として立位アライメントのほか,圧痛は肩関節・肘関節・膝関節・踵部に行い,関節可動域(以下ROM)の測定として,肩関節・前腕・手関節・股関節・膝関節・体幹に対し,投球側および非投球側の両側に実施した.スクリーニングテストにおいては,握力,母趾・小趾筋力,片脚バランス,立位四股テスト,しゃがみ込みテスト,体幹機能テスト,ブリッジテストを実施した.事前アンケートでポジションの記載があった51名のうち,ピッチャーまたはキャッチャーの選手19名をPC群,その他ポジションの選手32名(内野手15名、外野手17名)をO群の2群に分類し比較した.統計処理として,対応のないt検定またはMann-WhitneyのU検定を用い,有意水準を5%未満とした.【説明と同意】 対象者および保護者・チーム関係者には,十分な説明を行い,同意の上で測定を行った.【結果】 ROMにおいて,投球側肩関節HFTではPC群109.2±12.0度,O群118.9±15.0度であり,投球側前腕回外ではPC群95.3±7.4度,O群100.8±10.5度,投球側股関節外旋ではPC群48.4±8.3度,O群55.8±10.7度といずれもPC群がO群より有意に低値を示した(p<0.05).スクリーニングテストにおいては,投球側握力ではPC群20.0±5.8kg,O群15.8±6.2kgとPC群がO群より有意に高値を示した(p<0.05).体幹機能テストではPC群がO群より有意に高い傾向を示し,投球側軸足の片脚バランスにおいても,PC群がO群より片脚バランス時の動揺が有意に少ない傾向を示した(p<0.01).また他の項目に関しては、有意差は認められなかった.【考察】 少年野球選手において,野球肩・野球肘の発生頻度は投手と捕手に多いと言われている.今回,われわれのMCの結果から,ピッチャーまたはキャッチャー選手の身体特性として,ROMにおいて,いずれも投球側肩関節HFT・前腕回外・股関節外旋が有意に低値を示した.スクリーニングテストでは,握力が有意に高値を示したほか,体幹機能テストでは有意に点数が高く,投球側軸足の片脚バランスにおいても有意に動揺が少ない傾向を示した.これは,ピッチャーまたはキャッチャーというポジションが,チームの柱になるポジションであるため,筋力・スキルが高い選手に任させることが多いためと思われる.しかし,投球側上下肢のROM制限を認めることから,身体的負担が大きく,これらが野球肩・野球肘の発生に関与する一要因になるのではないかと考える.今後は,MCを定期的に継続し,障害発生の予防に努め,選手のみならず保護者や監督・コーチへのセルフケアの指導や全力投球数の制限などの啓蒙をしていく必要がある.【理学療法学研究としての意義】 ピッチャーまたはキャッチャー選手と,その他ポジション選手におけるポジション別の身体特性を知ることで,野球肩・野球肘の障害発生予防の1つの要因になることが示唆された.
著者
森 信人 田中 遼 中條 壮大 安田 誠宏 間瀬 肇
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.I_146-I_150, 2011

Since ship captured accidents have been frequently occurred around Japan, it is sometimes regarded as freak wave as a cause of these accidents. Generally effects of swell are not well considered for wind wave modeling and their contributions to wave height statistics are unknown. A series of the wind-wave experiments was carried out using a wind-wave tunnel and numerical experiments using spectral wave model were also conducted. The energy growth of pure windsea and swell-windsea fields are analyzed in detail. The swell effects on the wave statistics, such as kurtosis and skewness are investigated. The effects of swell enhace the extreme waves if the windsea energy is close to the swell.
著者
酒井 類 田中 博章 財田 由紀 小田原 健一 伊吹 憲治
出版者
愛知教育大学附属高等学校
雑誌
研究紀要 (ISSN:09132155)
巻号頁・発行日
no.44, pp.1-12, 2017-03-31

科目「現代社会」では、経済の項目において雇用・労働問題を取り扱うことになっている。しかし、高校生の多くは労働者としての経験がなく、そのためリアリティをもった授業を行うのが難しい現状にある。当該項目において教科書には多くの用語がゴシック体で並ぶが、授業展開はそれを追いかけることに汲々としていたのではないか、そんな問題意識があった。たしかに「労働基準法」という用語を知ることは大切だが、それだけで充分とは言えないであろう。今回の研究授業では、題材としてブラックバイト取り上げた。近い将来多くの生徒が関わるであろうアルバイトゆえ、興味・関心も高いと判断したからである。一方で知識のない学生は、問題に直面した際に、自分の経験で対処しているのが現状である。この状況を鑑みるに、高等学校で労働教育を行う意義は充分にあると考えた。もちろん、いずれ直面する就職の際にも、ここで学んだことは何らかの形で手がかりとなるであろう。本校における労働教育についての現状を報告したい。
著者
山本浩詞 田中陽介 脇山英丘 安宅啓二
雑誌
第55回日本脈管学会総会
巻号頁・発行日
2014-10-17

症例は60台男性。2007年に神鋼加古川病院にてAAAに対するY-graft置換術を施行されている。その後の経過観察中に右内腸骨動脈瘤が徐々に増大,塞栓目的で2013年6月当院に紹介された。CTでは瘤は34mm大,造影早期相では低吸収値を示していたが,後期相で内部が造影され,type2エンドリークが疑われた。Y-graft右脚はCFAに吻合されていたが,EIAの一部は開存し下腹壁動脈が造影されていたが,ここから外陰部動脈が造影され,内腸骨動脈に連続するような画像を確認できた。CFAは吻合部であるため同部を慎重に18Gサーフロー針で穿刺し,外筒をシース代わりにマイクロカテーテルを挿入して施行した。外陰部動脈から内陰部動脈を介し内腸骨動脈本幹が描出された。マイクロカテを瘤内まで進め塞栓を施行した。このルートから陰茎背動脈も分岐しており,性機能温存の為液体塞栓物質(NBCA等)は使用せず,瘤内から本幹にかて18トルネードコイル18本で塞栓施行。術後瘤内の血流は消失し,良好に経過している。AAA治療後のtype2による内腸骨動脈瘤の血管内治療は困難な事が多い。当院では深大腿動脈からの側副路を塞栓した症例・CTガイドにより上殿動脈を穿刺ここからマイクロカテーテルを挿入し塞栓した症例を経験し,良好な結果を得ている。今回のケースを含め,側副血行が発達していることが多く,術前の詳細なCT診断にて,適切なアプローチルートを選択する事でマイクロカテーテルを進めての血管内治療は有効な治療法であると考える。
著者
大平 弘正 田中 篤
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.653-654, 2018

<p>Azathioprine, a drug used in the treatment of autoimmune hepatitis (AIH), is now covered by health insurance in Japan. It has long been used in combination with steroids as a standard therapy for AIH in other countries, and its use is expected to increase in Japan. Side effects of azathioprine include cholestatic hepatitis, pancreatitis, and opportunistic infections. Periodic observation is important to ensure timely treatment of adverse effects. Recently, the <i>NUDT15</i> gene polymorphism, associated with severe leukopenia, has been reported as an adverse effect of azathioprine. Although it is covered by insurance, azathioprine is still not used frequently to treat AIH in Japan, and it is necessary to clarify the indications for and problems associated with azathioprine treatment in Japan.</p>
著者
田中 和明 小菅 昭一 神波 裕嗣
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.44, pp.229-230, 1992-02-24

ISO IRDS Service Interfaceは、情報溌源管理のための辞書システムに関する規格案である。現在、DISの郵便投票中であり、来年5月のオタワ会議後にIS化が予定されている。
著者
秋永 孝義 山城 嵩陛 田中 宗浩
出版者
日本食品保蔵科学会
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.199-206, 2013 (Released:2014-03-06)

近赤外およびFTIR分光分析法を用いて,沖縄県産泡盛の基本成分の非破壊品質評価モデルの開発を検討した。また,中赤外分光法を用いて泡盛の産地分級の可能性を調べた。泡盛の物性と化学成分測定の結果から,密度と粘度の供試材料間の差は確認されなかった。フーゼル油量,アルデヒド量,メチルアルコール量は微量しか検出されなかった。しかし,酸度は八重山地区の請福,宮之鶴,泡波が他の地区の試料より高かった。請福,宮之鶴,泡波を除いた試料では,酸度とpHの間にr=-0.82の相関が得られた。酸度とアルデヒド量の間にはr=0.52の相関が得られた。フーゼル油量,メチルアルコール量は北部から南部,離島の順に高い値を検出した。近赤外吸光度スペクトルを用いた各成分のPLS回帰分析の結果,すべての項目においてR=0.95以上の測定精度となった。FTIRの結果,フーゼル油量,アルデヒド量,メチルアルコール量,酸度,pHは,それぞれR=0.91,0.74,0.78,0.98,0.80の精度で予測可能であった。また,近赤外吸光度スペクトルを用いたクラスター分析により,泡盛の生産地域が分類可能であることが確認された。
著者
田中 秀明 井舟 正秀 諏訪 勝志 藤井 亮嗣 川北 慎一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.B4P2120, 2010

【はじめに】神経痛性筋萎縮症は急性の激痛で発症,痛みの消失とともに出現する(肩周囲の)弛緩性運動麻痺,多くが自然回復,の3つの特徴がある.本症はウイルス性の腕神経叢炎と言われているが現在の所,明確な病理学的裏づけがないのが現状である.臨床症状と他疾患の除外によって診断される「症候群」と考えるべきと言われている.今回,本症を経験する機会を得たので報告する.<BR>【症例紹介】50歳代男性,職業は事務職.左利き.<BR>【説明と同意】本人に説明を行い,本報告の同意を得た.<BR>【経過】1ヶ月前より発熱があり内科を受診.その2日後,左肩から上腕の疼痛あり,翌日には両前腕に疼痛が広がり,神経内科を受診。採血では炎症所見が認められ,RA疑いで整形外科へ紹介.整形外科ではRAは否定され,多発性筋痛症の疑いでリハビリテーション科へ紹介.両三角筋、棘上筋、棘下筋、左前腕筋などに著明な萎縮がみられ肩周囲の筋力はMMTで右3-レベル,左4レベル,握力は右18kg,左19kg,両肩に夜間痛,両上腕・前腕外側、母指・示指背側の感覚異常を認めた.関節可動域に関しては特に制限は認めなかった.車の運転やデスクワーク,更衣動作などに障害があった.針筋電図検査施行され右肩周囲と左前腕・手指筋にPSW,fbを認め神経原性筋萎縮症と診断された.以後,週1回来院し関節可動域運動,筋力維持・増強運動の自主練習内容の確認と評価を実施した.運動療法開始当初の目標は拘縮予防と筋力維持・増強とし,肩関節以外の上肢筋力運動,腱板の収縮が可能となり次第,セラバンドでの筋力強化を代償動作が入らない程度の回数で実施してもらった.また抗重力が不可能な時期は仰臥位、腹臥位で上肢の重力を除いた状態での三角筋を最大限に動かす運動を実施した.例としてテーブル上をバスタオル等で抵抗をなくしすべらせる方法での運動について指導した.2ヵ月後,握力は右25kg,左26kgに増加したが肩周囲に関しては症状の変化はほとんどなかった.6ヵ月後,握力は右27kg、左27kgと増加したが肩周囲の筋力に変化はなかった.感覚異常も左前腕は初期に比べ中等度まで,その他は軽度まで改善した.肩周囲の関節可動域に関しては若干制限を認めるも自己練習にて維持は出来ていた.10ヵ月後,左肩周囲の筋力は5レベルに改善,右も4レベルと抗重力運動が可能となり握力は左右30kg,感覚異常も左前腕は軽度まで軽減,その他はほぼ正常に改善した.筋力増強運動に関してはセラバンドの種類を変更し負荷を強めていった.1年後,握力は右37kg,左35kgと改善.感覚異常も左前腕に若干の違和感を残しその他は改善した.1年5ヵ月後,左41kgと改善,針筋電図施行され右肩周囲と左前腕・手指筋のPSW・fbの減少,polyNMU・NMUの出現を認め改善傾向と説明をうけた.左前腕の感覚異常は消失した.以後,経過観察必要なため定期的に来院している.<BR>【考察】神経痛性筋萎縮症の予後として90%以上が回復良好とされ1年以内36%,2年以内75%,3年以内89%と報告がある.少なくとも2年以上の長期観察が必要であるとされている.不全麻痺例や,完全麻痺であっても3ヶ月程度で正常にまで回復するものがあり,非変性型の神経障害も起こりうると推測される.一方,予後不良因子としては,痛みが長く持続・再燃するもの,障害範囲が広く腕神経叢全体と考えられるもの,下位神経根領域が主体のもの,3カ月以内に回復の徴候がないもの,などがあげられている.上位型の麻痺に比べて下位型の麻痺の回復が不良な理由について,障害部位から麻痺筋までの再生距離が長いことによって説明しようとする考えがある.発症後1-4週の早期に回復傾向が現れるものでは,予後は良いとされている.本症例においてはリハビリテーション科受診までに改善した部分はあったとのことで傾向は見られていた.その後,下位においては徐々に改善してきたが、上位は改善の傾向が見られるまでに1年近く時間を要した.理学療法としてはごく一般的な内容で自動運動が不可能な時期においては拘縮予防を中心に自己にて可能な上肢関節の他動運動,自動介助運動の指導を行い、自動運動が出現してくれば筋力増強運動を実施した.通院頻度は職業もあり頻回には来院できない為,的確な自己運動方法を指導することや,経過が長期にわたるため医師からのインフォームドコンセントや精神面でのフォロー,合併症予防につとめることが重要な要素であると考えられた.<BR>【理学療法学研究としての意義】希少な症例の症候や治療内容を提示することで,疾患に対する理解やよりよい治療方法を確立することに意義があると思われた.今回の症例は,報告数の少ない症例で理学療法の介入点について更なる検討が必要と思われた.
著者
モンスリムアンディ ブーンティダ 大原 直也 田中 美菜子 山本 福壽 Boontida Moungsrimuangdee Naoya O-hara Minako Tanaka Fukuju Yamamoto 鳥取大学大学院連合農学研究科 鳥取大学農学部 鳥取大学農学部 鳥取大学農学部 The United Graduate School of Agricultural Sciences Tottori University Faculty of Agriculture Tottori University Faculty of Agriculture Tottori University Faculty of Agriculture Tottori University
出版者
樹木医学会
雑誌
樹木医学研究 = Journal of tree health (ISSN:13440268)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.89-96, 2011-07-31
参考文献数
25
被引用文献数
1

カシノナガキクイムシ(Platypus quercivorus)の加害を受けたコナラ(Quercus serrata)成木,および健全な個体の木部におけるエチレン生成と道管内のチロース形成を比較した.カシノナガキクイムシの加害にはナラ菌(Raffaelea quercivora)の感染がともなっていた.加害を受けた後も生存していた個体では,当年生の木部からの多量のエチレン放出が確認された.これに対し健全な個体,および加害後に枯死した個体からのエチレン生成量は少なかった.昆虫の加害は,多くが樹幹の基部に集中していた.加害後に生存していた個体の道管の多くはチロースによって閉塞されていた.エチレン生成は当年生の木部で顕著であったが,内部の辺材部位,あるいは心材外周の移行材の部位では少なかった.エチレン生成の多かった生存個体では,道管内にナラ菌の菌糸の蔓延も確認した.当年生木部における活発なエチレンの生成は,コナラのナラ菌感染に対する防御反応に関係しているものと予想された.
著者
田中 健一 古田 壮宏
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.145-150, 2010-10-25
参考文献数
12
被引用文献数
2

Hodgsonによって提案された捕捉フロー最大化問題は、移動経路上で施設を利用可能な需要を最大化するように定められた個数の施設を配置する問題である。本稿では鉄道利用者に着目し、意思決定者が需要獲得力と設置コストの異なる二種類の施設を配置可能な状況を仮定し、総資金制約のもとで各施設の組み合わせとその配置を同時に決定する問題を提案する。鉄道利用者にとって、起点駅と終点駅にある施設はアクセルが容易であるが、途中通過駅にある施設を利用するためには途中下車が必要であるため大きなコストが発生する。これを抽象的に捉え、小施設は配置された駅を起点駅または終点駅とするフローのみを捕捉可能であり、大施設は配置された駅を移動経路に含むフローを捕捉可能であると仮定する。提案モデルを現実の山手線上の流動データに適用し、最適配置結果を詳しく分析する。また山手線上のOD表を用いて捕捉フローを可視化し解の特徴を分析する。さらに両者を組み合わせて配置可能な場合には、同一資金で一方のみを最適に配置する場合よりも多くのフローを捕捉可能なケースを示す。
著者
星 郁雄 天野 洋 橋本 大志 田中 大智 下馬場 朋禄 角江 崇 伊藤 智義
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J103-D, no.11, pp.808-816, 2020-11-01

近年,深層学習についての研究が盛んに行われている.その中でも,再帰型ニューラルネットワークはネットワーク内に再帰構造をもつ深層学習の一種で,時系列データの扱いに優れていることから音声認識や自然言語処理の分野で高い成績を残している.再帰型ニューラルネットワークに限らず深層学習では,高い性能の反面,計算コストが多い.そのため,クラウドコンピューティングやGraphics Processing Unitを用いて計算する研究が進められている.しかし近年では,応答性の観点から,この計算をクラウドコンピューティングのように別の場所に送信し計算するのではなく,エッジ側での処理が求められるようになってきている.そこで本論文では,回路を自由に書き換えることができるField Programmable Gate ArrayにRNNの推論器と学習器を実装し,回路の評価と,実際に音声識別を行った結果を評価した.
著者
田中 裕美子
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.216-221, 2003-07-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
20
被引用文献数
2 1

英語圏の特異的言語発達障害 (SLI) は文法形態素獲得の遅れを主症状とする文法障害である.5歳での発現率は7.4%で, 言語障害は青年期まで長期化する.SLI研究法は, 理論をデータから検証するトップダウン方式が中心であり, 異言語間比較が理論追求に寄与するところが大きい.本研究では, 幼稚園でのスクリーニングにより同定したSLI群, 健常群, 知的障害児群とで, 語順や名詞数という言語学的要因を変化させた文理解成績を比較した.その結果, SLI群では健常の言語年齢比較群や知的障害群とは異なる反応パタンが見られ, 言語情報処理能力の欠陥説を支持した.さらに, 臨床家にSLIと診断された3症例に文理解や音韻記憶課題を実施した結果, SLIの評価・診断法としての有用性が示唆された.言語発達の遅れを「ことばを話すか」という現象のみで捉えるのでなく, 「何をどのように話すか」といった言語学的視点などを含め多面的で掘り下げ的な評価法の確立が今後期待される.
著者
田中 宏衞 光野 正孝 山村 光弘 良本 政章 福井 伸哉 辻家 紀子 梶山 哲也 宮本 裕治
出版者
特定非営利活動法人 日本血管外科学会
雑誌
日本血管外科学会雑誌 (ISSN:09186778)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.77-84, 2013-04-19 (Released:2013-04-25)
参考文献数
29

要 旨:遠位弓部大動脈瘤において遠位側吻合部が深い場合,および急性解離(AAD)に対する全弓部置換手術(TAR)の際には,elephant trunk(ET)を用いてきた.今回,その手術成績と対麻痺の発生,およびET周囲の血栓化からその有用性を検討した.【方法】2004~2012年に行ったTAR 122例のうち,ETを併用した40例.原因疾患は遠位弓部大動脈瘤27例,AAD 13例.2007年以降遠位弓部大動脈瘤全例(n=15)で術前CTにてAdamkiewicz動脈(AKA)を同定.【結果】全体の手術死亡1例(2.5%).ET長は平均11.4(7–22)cm.ET長と対麻痺の関連を検討したところ,15 cm以上の15例中4例(27%)に対麻痺を認め,12 cm以下の25例では対麻痺はなかった(p<0.01).AKAを同定温存した14例で対麻痺はなかった.遠位弓部大動脈瘤でET周囲の血栓化により一期的根治を期待した21例中16例(76.2%)で瘤は血栓化し縮小.AADではET長は7–10 cmで対麻痺はなく,13例中2例で完全に解離腔が消失,8例で平均T8まで血栓化.【結論】TAR+ETの手術成績は良好であった.遠位弓部大動脈瘤ではETにより瘤の血栓化が得られるが,その長さが15 cm以上で対麻痺の危険が高く,ET長の決定には充分な注意が必要である.よって,現在ではETによる瘤の血栓化を期待するのではなく計画的二期手術(hybrid手術)を基本方針としている.またAADではET長が7–10 cmで良好な血栓化が得られ,対麻痺もなかったことから妥当な長さであると考える.