著者
田中 英彦 丹野 久
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.282-287, 2016
被引用文献数
1

過酸化石灰剤被覆種子を用いた落水出芽法において,最適な入水日 (播種粒数の30%程度の出芽と種子根の土中への伸長が確認された日) を気温から推定する目的で,播種後入水当日までの期間で,日最高最低平均気温から基準温度を差し引いた値を積算する方法 (積算気温法) と,1日当たり発育速度 (DVR) を日平均気温 (T) の関数 (DVR=1/(1+exp(-A(T-Th)))/G) として算出した値を積算する方法(DVI法,入水日が1) を検討した.積算気温法では,基準温度を1~10℃の範囲で変化させた場合での積算気温の変動係数を比較したところ,基準温度が6℃で最も変動係数が小さく,この積算気温が85.9℃を超えた日が最適入水日と考えられた.DVI法では, A=0.1908,Th=16.06,G=4.118が最適値となった.落水日数の実測値に対する推定値の二乗平均平方根誤差は,積算気温法で1.4日,DVI法で1.2日であった.上述の知見に基づき,生産コストを低減する過酸化石灰剤無被覆での催芽籾播種 (催芽籾区) の最適入水日を検討したところ,過酸化石灰剤被覆区 (CAL区)の最適入水日 (標準区) では,CAL区の苗立ち率が70.9%であったのに対して,催芽籾区では52.2%と有意に低かった.しかし,標準区よりも約3日入水を遅くすると,催芽籾区の苗立ち率は60.9%に向上した.このことから,催芽籾播種における最適入水日は,積算気温法で105℃,DVI法で1.3を超える日と考えられた.
著者
高宮 智正 横山 泰廣 山下 周 白井 康大 鈴木 雅仁 前田 真吾 田中 泰章 佐々木 毅 笹野 哲郎 川端 美穂子 平尾 見三
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.S3_12-S3_16, 2013

症例は33歳, 女性. ほぼ終日持続する心房頻拍 (atrial tachycardia ; AT) に対してカテーテルアブレーションを施行した. 12誘導心電図のP波の形状から心房頻拍は右心耳または三尖弁輪起源と推定された. EnSite Multi-Electrode Array (MEA) カテーテルが三尖弁輪を跨ぐように右室心尖部に向けて留置してAT中に三尖弁輪部のNCMを行い, 自由壁側10時方向に心房頻拍の起源を同定してカテーテルアブレーションに成功した. ATの機序としては心臓電気生理学的検査 (electrophysiological study ; EPS) 所見より異常自動能と考えられた. 三尖弁輪部は中隔側, 自由壁側ともconventional mappingに苦労することがあり, non-contact mapping (NCM) が有用と考えられた.
著者
レイモンド 中村 田中 雅生
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF BENTHOLOGY
雑誌
日本ベントス学会誌 (ISSN:02894548)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.49, pp.29-37, 1995-08-31 (Released:2010-02-05)
参考文献数
21
被引用文献数
4 4

九州天草西岸において,潮間帯に棲息するカメノテ,Capitulum mitellaの集団内の個体を1年間にわたり追跡し,サイズと生存の有無を記録した. サイズの指標として峰板の先端と嘴板の先端の距離を測定した.成長曲線については,ロジスチック,ベルタランフィ,ゴンパーツ,指数の4つの曲線を使って適合度を検討したが,指数式が最も合いがよかった.指数式を使って検討を行ったが,成長は集団の内側の個体と外側の個体とで統計的な有意差はみられなかった.内外個体を込みにした指数式のパラメータの値a=1.2902,b=0.008843,t0=80.73であった.1年間の生存率をみると,内側と外側の個体で有意差はみられなかった.内外個体込みの生存率は0.804であった.
著者
工藤 晴美 田中 絵弓 蓬田 淳 梶原 絢子 中島 美和
出版者
一般社団法人 日本救急看護学会
雑誌
日本救急看護学会雑誌 (ISSN:13480928)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.40-48, 2017 (Released:2017-08-31)
参考文献数
12

本研究は、救急外来における酩酊状態にある患者の現状を把握し、看護実践の課題を明らかにすることを目的とした。救急外来看護師を対象に、無記名自由記述式質問紙調査を行い、質的帰納的に分析を行った。分析の結果、酩酊状態にある患者に対する看護実践の課題は、【飲酒による行動予測の困難さ】、【飲酒による判断力の低下に関連した対応困難事象】、【院内での迷惑行為】、【不測の事態への医療者の心理的負担】、【酩酊状態にある患者・付き添い者のケアにおける苦慮】に分類された。結果より、酩酊状態にある患者は、意思の疎通が図り難く、行動の予測が困難で、迷惑行為による医療者への危害の可能性がある中で、看護師は状況に応じて看護実践を行っていることが明らかとなった。さらに、酩酊状態にある患者の症状は一時的であるため、軽症と認識される傾向になる中で、その看護実践に焦点を当てた報告は少なく、対応に苦慮していた。救急外来という時間的制限がある中で患者や付添者を含めた再発予防への指導が必要であるため、飲酒行為の背景を情報収集しながら、状況に応じた危険予測、患者指導を含めたツールの作成が必要である。
著者
田中 睦子 河野 健治 花輪 剛久 鈴木 正彦 中島 新一郎
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.152-156, 2002-04-10 (Released:2011-03-04)
参考文献数
12

Di-2-ethylhexyl Phthalate (DEHP) was reported to dissolve from a polyvinyl chloride (PVC) administration tube during the infusion of an injection fluid containing a solvilizing agent, soybean oil or lecithin, etc. This paper describes the behavior of DEHP dissolution from PVC tubes during enteral tube feeding. The DEHP concentration was determined using HPLC. After the passage the ENSURE LIQUID® (EL) solution through the PVC tube, DEHP was dissolved in the EL solution. The EL solution is one type of enteral nutrition. This dissolution pattern was similar to that of injection fluid containing a solvilizing agent, in which the DEHP concentration in the EL solution increased linearly over time at first and thereafter reached a plateau. 170 μg of the DEHP was dissolved after 200mL of the EL solution had passed through the PVC administration set (the drip conditions were 25°C, 100mL/hr, tube length 115cm and inner diameter 0.3cm). The amount of DEHP which dissolved into the solution depended on the temperature (25-40°C), and no clear difference was observed between the PVC tubes (administration tube, feeding tube). In addition, the amount of DEHP that dissolved into the solution varied depending on the type of enteral nutrition.
著者
田中 道弘 Michihiro TANAKA
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 = Bulletin of Saitama Gakuen University. Faculty of Humanities (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.173-181, 2005-12-01

本研究では、大学生のインターネット利用と精神的健康との関連について検討した。従来の研究では、インターネットの利用時間による問題が重要視されてきたが、本研究では、インターネット上でのモラル(インターネット・モラル尺度)という新たな基準とを合わせて検討を行った。精神的健康の基準としては、病理的傾向に基づく自己愛(病理的自己愛)、時間的展望、自己肯定感の3つの尺度を用いた。 対象は、茨城県内の大学3校(国立大学2校、私立大学1校)と埼玉県内の大学1校(私立大学)の合計4校の学生、405名に調査協力を依頼し、有効回答397票を得た(男性240名、女性157名)。年齢範囲は18歳から28歳までであり、平均年齢は、20.1歳(男性20.3歳、女性19.9歳)であった。 本研究の結果、インターネットの利用時間が121分を超える大学生群では、他群と比べ"時間的展望"と"自己肯定感"の得点が概ね低いという結果が得られたものの、病理的自己愛について有意差は確認されなかった。一方、インターネット・モラルの低い大学生群は、高群よりも時間的展望、及び自己肯定感の各平均得点が低く、病理的自己愛の平均得点が高いことが示された。 これらのことから、大学生のインターネット利用と精神的健康との関連を検討する際に、インターネット・モラルは精神的健康と深く関わりがあるとともに、インターネット利用者の精神的健康に関する一つの基準となりうることが示唆された。
著者
/ 岩本 真承 青木 俊二 田中 直美 田嶋 清子 山原 條二 高石 喜久 吉田 雅昭 富松 利明 玉井 洋進 Yoshin TAMAI
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.397-399, 1991-02-25 (Released:2008-03-31)
参考文献数
9
被引用文献数
40 73

It has been reported that an acetone extract of ginger and its fractions have anti-5-HT (5-hydroxytryptamine; serotonin) effects. In the present study, guinea pig ileum, rat stomach fundus and rabbit aortic strips are used in order to determined the constituents of fraction 2 which are responsible for anti-5-HT effect and to examine their pharmacological properties.The analysis of fraction 2-3 indicated that galanolactone, a diterpenoid, is one of the active constituents. In guinea pig ileum, galanolactone inhibited contractile responses to 5-HT with a pIC50 value 4.93. pIC50 value of galanolactone against the response to 2-methyl-5-HT, a selective 5-HT3 agonist, in the presence of methysergide at 1×10-5M was 5.10. pIC50 values of ICS 205-930, a selective 5-HT3 antagonist, were 5.30 and 7.49, respectively. The concentration-response curve of 5-HT was shown as a biphasic curve and galanolactone caused a selective shift to the right of the second phase.In the same preparations, the pIC50 value of galanolactone and ICS 205-930 against the response to carbamylcholine (CCh) was 4.45 and 4.46.The inhibitory effect of galanolactone on the 5-HT response in the stomach fundus and aortic strips was less than that in the ileum.In addition, in the thoracic aorta precontracted with 50 mM K+, the relaxing effect of galanolactone was about 1/10 of that of papaverine.These results suggest that the anti-5-HT effect of galanolactone, a diterpenoid isolated from ginger, is related to antagonism of 5-HT3 receptors.
著者
田中 彰
出版者
東海大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

試魚として卵生種のヤモリザメ64個体、ニホンヤモリザメ47個体、卵黄依存型胎生種のラプカ90個体、ユメザメ31個体、ヘラツノザメ16個体、サガミザメ56個体、ヨロイザメ7個体を用いた。これらの標本は全て成熟しており、卵生種の2種は卵発達中、排卵直前、卵殻形成中、卵殻保持、卵殻産出後の各発達段階にあり、また胎生種の5種の卵発達中、排卵直前、排卵中、排卵終了、妊娠前期、妊娠後期、出産後の各段階をほぼ網羅した標本である。卵生種2種とラブカでは卵殻腺のアルブミン分泌域と卵殻分泌域の境界部分に精子が観察されたが、他の4種では同じ部位に精子は観察されなかった。また、これら4種の生殖輸管を詳細に調べ、精子の貯蔵部位を検査したが、精子は確認できなかった。卵生種2種における精子の発見率は排卵直前の段階で最も高く卵殻形成中の段階で最も低かった。これら2種はほぼ周年にわたり数週間に1回の割合で産卵を行っており、精子の貯蔵期間はある程度長いと考えられるが、その精子量の減少状態から自然界では2〜3ヶ月に1回ぐらいの割合で交尾を行っていると考えられる。卵黄依存型胎生種で唯一精子が確認できたラブカでは排卵直前と排卵中の段階の個体はすべて精子を持っており、精子量は排卵直前、卵発達中、排卵中の順で多かった。また、妊娠前期の個体の60%は精子を持っていたが、妊娠後期では35%の個体で精子を確認できた。ラプカの出生全長は約550mmであるが、全長356mmの胎仔を持つ個体でも精子が確認できたことから、精子の貯蔵期間はかなり長いと考えられた。電子顕微鏡での観察では精子と管状腺を形成する細胞との結び付きは見られなかった。繁殖様式が同じの卵黄依存型胎生種5種のうち、ツメザメ目に属する4種において排卵直前、排卵中の段階にある標本でさえ精子が確認できなかった。このことが精子を貯蔵しないことを意味しているのか今後解明する必要がある。
著者
末宗 洋 田中 正一 尾葉石 浩 酒井 浄
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.15-21, 1988-01-25 (Released:2008-03-31)
参考文献数
9
被引用文献数
9 18

Synthesis of prostaglandin A2 (PGA2) by means of a route involving enzymatic reactions is described. Enantioselective reduction and hydrolysis of trans-3, 4-bis(methoxycarbonyl)cyclopentanone (1) were examined using yeasts or enzymes, and it was found that (+)- and (-)-1 are easily obtained by an enzymatic procedure. Compound (+)-1 was converted to the Corey intermediate for PGA2 via the regioselective hydrolysis of the (+)-diacetate (8) with porcine pancreatic lipase. This synthesis based on the enzymatic approach was proved to be useful for the synthesis of both PGA and PGE from (-)-1.
著者
川野 潤 大澤 康太朗 豊福 高志 長井 裕季子 田中 淳也 永井 隆哉
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-05-17

To understand the formation or dissolution mechanism of crystal in aqueous solution, it should be important to analyze the local condition of solution just around dissolving or growing crystal. Recently, we have succeeded to visualize the distribution of pH and ionic concentration around carbonate minerals dissolving in inorganic environment, by using the fluorescent probe. In the present study, we have tried to apply this technique to the formation process of calcium carbonate.Calcium carbonate was synthesized by the counter diffusion method, in which calcium chloride and sodium carbonate solutions were counter-diffused through an agarose gel matrix containing the fluorescent probe like 8-hydroxypyrene-1,3,6-trisul-fonic acid (HPTS). We observed under a microscope that pH in the middle part of gel first increased gradually with time and turn downward after crystals formed. The counter diffusion method with gel media for the carbonate synthesis has attracted attention as a valid tool in the study of biomineralization because the calcification sites in some organisms were recently suggested to have the features of a highly viscous sol or gel matrix. Therefore, the detail observation of the local condition around forming calcium carbonate in gel matrix could provide new insights into the knowledge of biomineralization mechanisms.
著者
田中 直毅 齊藤 泰一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.524, pp.435-440, 2008-03-06
参考文献数
8

匿名P2Pネットワークにおける情報漏洩は,WinnyなどのP2Pファイル共有ソフトを使用するユーザのPCから発生しており,各個人の機密情報や個人情報をAntinnyと呼ばれる暴露ウィルスがP2Pネットワーク上に拡散するものである.特にP2Pファイル共有ソフトWinnyによる情報漏洩拡散の被害は急増しており,対策技術は社会的な必要性を増しつつある.しかし,法的な問題もあり現在の対策技術の有効性は疑わしいとされている.本研究では,既存の対策技術の有効性について検討した上で,それらを改良した新しい方式を提案する.本システムは,Winnyネットワーク上に存在するファイルの要約情報であるキーを偽造することによりWinnyネットワークの検索機能を撹乱させ検索性能を低下させることにより漏洩情報の拡散を防止することを目的としたものである.