著者
藤井 勝紀 田中 望
出版者
日本生理人類学会
雑誌
日本生理人類学会誌 (ISSN:13423215)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.113-121, 2014-08-25 (Released:2017-07-28)

In this study, to determine delayed menarche in individual female athletes, the age at maximum peak velocity of BMI and the interval with age at menarche were analyzed. An attempt was made to verify the frequency with which physical stress gives rise to delayed menarche. The subjects were 95 female athletes and 232 girls in their final year of high school. Information including age, age at menarche, and athletic practice was obtained from a questionnaire given to the athletes and control group. Data were also obtained on the girls' longitudinal growth in height and weight from the first year of elementary school (6 years old) to the final year of high school. BMI was calculated from this data, and the wavelet interpolation method was applied for changes in height and BMI with age from 6 to 17 years old. It was found that among female athletes judged to have had delayed menarche the physical stress type of delayed menarche was much more common than fat-related delayed menarche. Therefore, it is speculated that physical stress acts a large role in delayed menarche in athletes.
著者
髙間 晴之 太田 明雄 布施 純郎 久保田 章 小花 光夫 関口 信哉 田中 逸
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.753-758, 2013-10-30 (Released:2013-11-07)
参考文献数
19

HMG-Co A還元酵素阻害薬が糖代謝に及ぼす影響を検討する目的で,非肥満の高LDLコレステロール血症を合併する2型糖尿病患者を対象に,ロスバスタチン2.5 mgとアトルバスタチン10 mgのクロスオーバー試験を行った.薬剤開始前および両剤開始3カ月後に,75 g-OGTTを施行して糖代謝の指標を比較した.その結果,FPGとHbA1cは開始前と各薬剤投与後の変化はなかったが,グリコアルブミンはアトルバスタチン服用後で有意に上昇した.75 g-OGTTから得られる血糖とインスリンの変動曲線下面積,HOMA-Rとwhole body insulin sensitivity index,およびinsulinogenic indexは各薬剤投与前後や両剤間での有意差はなかった.さらに膵β細胞機能を示すdisposition indexも投与前後や両剤間での有意差を認めなかった.以上から少なくとも低用量ロスバスタチン(2.5 mg)は非肥満2型糖尿病の短期間の血糖コントロールに影響しない可能性が示唆された.
著者
林 京子 田中 昭弘
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.6, pp.401-412, 2013 (Released:2018-01-12)
参考文献数
14
被引用文献数
2

収穫直前のマイタケを冷蔵保存した後に凍結乾燥し,アミラーゼによる分解を防ぐために,80℃以上の高温で熱水抽出したαーグルカン(YM-6A)が生体防御機能を介したマウスへのインフルエンザさらにタミフル耐性株に対しても治療効果があることを見出したので,解説いただいた。
著者
小林 敏生 影山 隆之 金子 信也 田中 正敏
出版者
山口県立大学
雑誌
山口県立大学看護学部紀要 (ISSN:13430904)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.21-27, 2002-03
被引用文献数
3

夜勤を含む複数の交代制勤務形態を有する電子部品製造業における技術系男性職員の不眠症の有症率および抑うつ状況について調べるために,日勤,2交代勤務,固定夜勤に従事する男性従業員を対象にして横断的な質問紙調査を行い,256名の回答について検討した。不眠症の定義は「入眠困難」,「中途覚醒」,「早期覚醒」,「熟眠困難」のうち1つ以上の不眠症状が最近1カ月以上持続して週1日以上あるために,二次的に生活上の支障を生じて困っている者とした。また抑うつ度の判定にはCES-D日本語版を用い,16点以上の者を「抑うつ傾向あり」と判定した。不眠症の有症率は日勤群10.4%,2交代勤務群34.5%,夜勤群15.9%と2交代勤務群で最高値,日勤群で最低値を示した。CES-D得点は2交代勤務群で最高値,夜勤群で最低値を示し,日勤群ではその中間値を示した。また抑うつ傾向の有症率は日勤群31.2%,2交代勤務群48.3%,夜勤群29.5%で,2交代勤務群で日勤群,夜勤群と比べて有意に高率となったが,日勤群と夜勤群の間には有意差を認めなかった。またすべての勤務形態において「不眠症有り」の者のCES-D得点平均は「不眠症無し」の者のCES-D得点平均より有意に高かつた。以上の結果より,本職場においては睡眠および精神衛生状況は2交代勤務群で最も悪化していることが示唆され,今後の本職場における交代勤務体制のあり方を検討するうえで重要な知見であると考えられた。
著者
藤田 あゆみ 荒武 憲司 皆川 雄郷 西田 武司 田中 仁 友尻 茂樹 原 健二
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.9, pp.811-816, 2010-09-15 (Released:2010-11-09)
参考文献数
11

近年精神科領域では,定型抗精神病薬に代わって錐体外路系副作用の少ない非定型抗精神病薬の使用が目立つようになってきた。これに伴い自殺企図目的で非定型抗精神病薬を含む薬物の過剰摂取により救急搬送される症例が増加してきている。我々は非定型抗精神病薬であるQuetiapineによる急性医薬品中毒を経験した。症例は精神科通院中の40代の女性で,来院時,循環動態不安定で全身性強直性痙攣を伴う意識障害を呈していた。持参された薬剤の空シートからQuetiapine 8,700mgを大量摂取していた可能性が示唆された。Quetiapine単独服用と考えられ,各種の中毒症状を呈していた。服用量は中毒量を超えるものと推測され,初療にて胃洗浄および活性炭投与を行った。輸液療法を施行するとともに集中治療室にて呼吸・循環管理を行い,第3病日に意識レベルおよび全身状態の改善を認めたため退院となった。我々は,来院時の血清,尿などの生体試料を凍結保存し,レトロスペクティブに分析を行うことができた。一般病院の臨床の現場では,通常簡易な尿中薬物スクリーニング検査キットおよび服用歴から急性中毒を疑うが,Quetiapineは簡易キットでは検出不可能である。Quetiapineは2001年に発売された新規薬剤であり,国内外で死亡例の報告も散見されるようになってきている。分析にてQuetiapine同定を行うことで確定診断に至ることができ,また迅速な確定診断が治療方針の決定に有用であることが示唆された。
著者
田中 牧郎 山元 啓史
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.16-31, 2014-01-01

『今昔物語集』と『宇治拾遺物語』の同文説話6話に対して、形態素解析を施し、パラレルコーパスを作成して、『今昔物語集』から『宇治拾遺物語』、『宇治拾遺物語』から『今昔物語集』の双方向で語の対応付けを行った。相互に対応付けられたデータから、異なる語が対応する比率の高い語彙を抽出することで、硬い文体的価値を持つ語彙と、軟らかい文体的価値を持つ語彙とが特定された。抽出された双方の語彙について、同文説話全体(83話)の語の対応状況を分析したところ、同語が対応するか異語が対応するかの違いが、語の意味・用法によって決まる傾向があることや、その傾向が、文体的価値の硬軟の段階差に応じて層をなすように変わっていくことが解明できた。また、異語対応の場合に、他方の説話集で対応する語が特定の語に定まる場合があり、これは文体的な対立関係にある類義語と考えられた。
著者
根本 裕太 倉岡 正高 野中 久美子 田中 元基 村山 幸子 松永 博子 安永 正史 小林 江里香 村山 洋史 渡辺 修一郎 稲葉 陽二 藤原 佳典
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.12, pp.719-729, 2018-12-15 (Released:2018-12-27)
参考文献数
35

目的 本研究では,若年層(25-49歳)と高年層(65-84歳)における世代内/世代間交流ならびにそれらの組み合わせと精神的健康との関連について検討することを目的とした。方法 2016年に地域住民を対象とした質問紙調査を実施した。有効回答を得た若年層3,334人(回収率24.6%)および高年層3,116人(回収率46.0%)を本研究の解析対象者とした。精神的健康については,WHO-5を用いて,合計点数が13点未満もしくはいずれかの設問に対し1点以下の回答をした者を「不良な健康状態」と判定した。世代内/世代間交流については,親族や仕事関係の人を除いた者との交流頻度を調査した。若年層においては「20-40代」,高年層においては「70代以上」との交流を「世代内交流」,若年層における「70代以上」,高年層における「20-40代」との交流を「世代間交流」とした。また,これらの組み合わせとして両世代との交流がある者は「両世代交流あり」,両世代とも交流がない者を「交流なし」とした。統計解析においては,精神的健康を目的変数,世代内/世代間交流を説明変数,性別,年齢,最終学歴,婚姻状態,同居者,主観的経済状況,地域活動への参加,就労,健康度自己評価,手段的日常生活動作能力を調整変数としたロジスティック回帰分析を行った。結果 若年層3,334人のうち,精神的健康が良好な者が61.5%,「世代内交流あり」は51.3%,「世代間交流あり」は21.9%,「両世代交流あり」が16.5%,「交流なし」が42.7%であった。一方,高年層3,116人のうち,精神的健康が良好な者は65.8%,「世代内交流あり」は67.9%,「世代間交流あり」は34.3%,「両世代交流あり」は29.9%,「交流なし」は21.1%であった。ロジスティック回帰分析の結果,いずれの世代においても「世代内交流あり」,「世代間交流あり」は交流していない者と比較して精神的健康状態が良好であった。世代内/世代間交流の組み合わせと精神的健康との関連では,両世代において,「世代内交流のみ」と比較して「交流なし」は精神的健康が有意に劣り,「両世代交流あり」は良好であることが示された。結論 若年層と高年層において世代内交流ならびに世代間交流が良好な精神的健康と関連し,両世代と交流している者はさらに精神的健康が良好であることが示唆された。
著者
清水 雅子 田中 益司 野村 正剛 宮田 妙子 今中 宣依
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.511-514, 2014 (Released:2014-11-07)
参考文献数
12

64歳,女性.右肩関節骨折に対して保存的に加療された.画像上頸椎や肩関節に異常はないが,頸部,肩部,前胸部,背部など全身の広範囲に痛みが遷延し,非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs) やプレガバリンは無効で当科を紹介受診した.血液検査の各種自己抗体は陰性で,アメリカリウマチ学会線維筋痛症分類基準を満たした.アミトリプチリンとコデインの内服で頸部から肩の痛みは軽減したが,前胸部と背部に中等度の痛みが持続した.同部位の痛みは肩の受傷以前から存在したことがわかり,右胸鎖関節部の軽度肥厚を確認した.X線,CT,MRIの骨肥厚像,骨シンチグラフィーのbull's head signからSAPHO症候群を診断した.アレンドロネートの内服を開始すると痛みは著明に低下し,線維筋痛症分類基準を満たさなくなった.初診4カ月後に足部に皮診が出現し,皮膚科で掌蹠膿疱症を診断された.本症例は初診時に皮膚症状がなく,痛みは広範で肩受傷との関連を疑われたが,詳細な診察と画像検査を行うことでSAPHO症候群を診断するに至り,薬物療法で症状の寛解を得た.
著者
田中 光太郎 高橋 けんし 戸野倉 賢一
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集B編 (ISSN:18848346)
巻号頁・発行日
vol.78, no.789, pp.1003-1007, 2012 (Released:2012-05-25)
参考文献数
7

A near-IR laser based spectrometer for continuous measurement of stable carbon isotopes in CO2 has been developed. 12CO2 and 13CO2 are detected with wavelength modulation spectroscopy and a Herriott-type multi-pass cell with a optical path length of 29.9 m using a distributed feedback laser diode in the 2-μm wavelength region. To measure the isotope ratio precisely, the influence of pressure and temperature variation in δ13C was evaluated. The limit of detection for 12CO2 in our system was 16 ± 1 ppbv. The precision in the determination of δ13C was 0.1‰ for 120 seconds signal integration time at ambient concentration levels. We demonstrate that our system enables automated continuous measurements of δ13C of CO2 in ambient air without any complex operation by users.
著者
伊藤 詩乃 田中 佑岳 狩野 芳伸 榊原 康文
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.AI30-G_1-9, 2016-11-01 (Released:2016-11-22)
参考文献数
22

In recent years, the digitization of medical and health data including clinical data, health diagnostic data, medication log data have been made rapidly. One potential application using electronic medical and health information is to develop a system to make a medical diagnosis according to the contents recorded in the electronic medical data and the appropriate patient information. The task of understanding the condition of the patient and making precisely the diagnosis is hard to be automated and requires the high degree of expertise. Toward a final goal to construct a medical diagnostic support system, as its pilot study, we attempt to build a question-answering program that automatically answers the medical licensing examination. The national medical licensing examination is the form of multiple-choice test and contains a wide variety of problems. There is a type of problems to answer the appropriate disease name among multiple choices given the patient information and test results as a problem statement. We aimed to develop the program to answer this type of questions. By the development of such question-answering program that automatically answers the medical licensing examination, we revealed the fundamental issues and essential difficulties in the information processing of the medical data, and finally constructed the foundation for conducting disease diagnosis support with patient information. In this paper, we developed a question-answering program and actually performed the answering for some problems in 107th and 108th out of national medical licensing examination. We carefully examined and analyzed the results and problems that could be answered correctly and problems that were given incorrect answers, and proposed the improvements to build a more accurate program.
著者
余野 聡子 西上 智彦 壬生 彰 田中 克宜 安達 友紀 松谷 綾子 田辺 暁人 片岡 豊
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0311, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】中枢性感作(Central Sensitization:CS)とは中枢神経系の過度な興奮によって,疼痛,疲労,集中困難及び睡眠障害などの症状を引き起こす神経生理学的徴候である。CSは線維筋痛症,複合性局所疼痛症候群及び慢性腰痛などの病態に関与していることが明らかになっていることから,慢性痛に対して,CSの概念を考慮した評価及び治療介入が必要である。近年,CSの評価として,自記式質問紙であるCentral Sensitization Inventory(CSI)がスクリーニングツールとして開発され,臨床的有用性が報告されているが,CSIの日本語版は作成されていない。そこでCSIの原版を日本語に翻訳し,その言語的妥当性を検討した。【方法】日本語版CSIの開発に先立って,原著者から許可を得た。その後,言語的に妥当な翻訳版を作成する際に標準的に用いられる手順(順翻訳→逆翻訳→パイロットテスト)に従って開発を進めた。順翻訳,逆翻訳を行い原著者とともに翻訳案の検討を行い,原版との内容的な整合性を担保した日本語暫定版を作成した。日本語暫定版の文章表現の適切性,内容的妥当性,実施可能性を検討するため,日本語を母国語とし,当院に来院する外来患者6名(男性:3名,女性:3名,平均年齢51.8歳)を対象に個別面談方式によるパイロットテストを実施した。回答終了後,質問紙に関するアンケートを行い,「はい」「いいえ」「どちらでもない」の3択で参加者に回答を求めた。【結果】原著者に逆翻訳版にて確認を行ったところ,Q11は“I feel discomfort in my bladder and/or burning when I urinate”を“.排尿時に,膀胱に不快感や灼熱感を感じる”としたが,灼熱感は膀胱ではなく性器に生じるとの指摘を受け,“膀胱の不快感と排尿時の灼熱感の両方,またはいずれか一方を感じる”と表現を変更し,了承を得た。Q17は原文では“low energy”となっているが逆翻訳では“no energy”となっているとの指摘を受けたが,同義語であることを説明し了承を得た。また“and/or”と“and”の違いを明確に区別するべきとの指摘を受け,“両方またはいずれか”との表現へ変更した。パイロットテストでの質問票の平均回答時間は219.5秒(範囲:158~314,中央値:207)であった。回答後アンケートでは回答に要する時間,質問数が適当であるかという問いに対して5名が「はい」,1名が「どちらでもない」と回答した。全体的にわかりやすかったかとの問いに対して1名が 「いいえ」と回答し,理由として5つの選択肢の差別化が図りにくいとの意見が得られた。そこで選択肢を差別化しやすい表現に変更し,日本語版CSIを完成させた。【結論】本研究において翻訳版開発の標準的な手続きを経て日本語版を作成し,さらにパイロットテストを実施することで内容の妥当性や表現の適切性が確認され,実施可能性のある日本語版CSIが完成した。今後,臨床的に使用するために信頼性と妥当性の検討を行う必要がある。
著者
田中 魁 炭山 大輔 金澤 朋子 佐藤 雪太 村田 浩一
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.65-71, 2019-07-11 (Released:2019-09-15)
参考文献数
32
被引用文献数
4

近年,血液原虫研究分野では,形態学に加えて分子生物学的手法を用いた種分類や系統解析がなされており,特に国外におけるハト目鳥類(Columbiformes)の血液原虫研究においては,形態学的特徴を基に分類された種数をはるかに超える分子系統の存在が明らかになりつつある。しかし,国内のハト目鳥類における血液原虫の感染状況や分子系統に関する研究は未だ極めて少ない。そこで本研究では,日本国産(関東圏,沖縄,小笠原の3地域)のハト目鳥類における血液原虫の感染実態と分子系統を明らかにすることを目的とした。対象地域のハト目鳥類(4属5種3亜種173個体)における血液原虫感染率は,50.9%(88/173)であった。分子系統解析の結果,少なくとも2属2亜属5種の鳥マラリア原虫(Plasmodium spp. / Haemoproteus spp.)と,4種のLeucocytozoon属原虫が感染している可能性を示した。ハト科のLeucocytozoon属原虫は,これまで形態学的に1種のみが同定され,他の原虫属と比較しても種特異性が高いことが報告されているが,本研究において分子系統的に宿主鳥類の目間を越える原虫の伝播が生じている可能性が示唆された。本研究から得られた感染実態と分子系統解析結果は,血液原虫の分類を見直す必要性を提示し,今後も同様の継続的な監視・調査を行うことが,国内に生息する希少ハト目鳥類の保全に貢献すると考えた。
著者
高安 肇 田中 潔 武田 憲子 渡辺 栄一郎 渡邊 昌彦
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.66-70, 2014

女児鼠径ヘルニアにおいて卵管滑脱,卵巣脱出に加えて子宮も脱出しているヘルニア(本症)はまれである.本症3 例を経験したので報告する.症例1:日齢40 に左鼠径部に還納不可能な大小二つの腫瘤を触れた.超音波検査より本症が考えられ,手術所見で確認された.Woolley 法にて手術した.症例2:新生児期に左鼠径部に小腫瘤を二つ触れた.子宮がヘルニア囊後壁を構成していたため,高位結紮できず筋層と横筋筋膜を用いて内鼠径輪を閉鎖した.症例3:7 か月の女児.超音波検査にて左の卵巣と卵管の脱出が疑われた.手術時に子宮も滑脱していることが確認されWoolley 法にて手術した.文献報告17 例と併せて検討したところ本症は生後3 か月以内に発症した例,左側ヘルニア例が多かった.特に3 か月未満の女児において左鼠径部に複数の腫瘤を触れた場合,本症が疑われる.超音波検査にて診断を得,嵌頓の兆候がなければ待機的に手術をすることが可能である場合が多い.
著者
田中 康夫 細井 志郎 清水 亮子 桐ヶ谷 忠司 笹尾 忠由 水野 惇雄 河村 太郎 中澤 裕之
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.323-328_1, 1997-10-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

薬品臭トマトの原因物質を究明するたあにトマト及びその栽培土壌を採取してGC-FPD及びGC/MSにより検討した. いずれの試料からもトルクロホスメチル (以下: TLCM) 及びTLCMの分解生成物の2,6-ジクロロ-p-クレゾール (以下: 2,6-DCPC) を検出した. その値は, 土壌でTLCMが0.02~2.2μg/g, 2,6-DCPCが0.03~0.15μg/g, トマトでTLCMが0.01~0.02μg/g, 2,6-DCPCが0.01~0.02μg/gであった. この2,6-DCPCは2,4-ジクロロフェノールと同様のフェノール臭を呈し, トマトの薬品臭の原因物質は2,6-DCPCであると推測された.
著者
古川 福実 船坂 陽子 師井 洋一 山本 有紀 米井 希 松永 佳世子 秋田 浩孝 上田 説子 薄木 晶子 菊地 克子 幸野 健 田中 俊宏 林 伸和
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.118, no.3, pp.347-356, 2008

Chemical peeling is one of dermatological treatments for certain cutaneous diseases or conditions or aesthetic improvement, which consists of the application of one or more chemical agents to the skin. Chemical peeling has been very popular in medical fields as well as aesthetic fields. Since scientific background and adequate approach is not completely understood or established, medical and social problems have been reported. This prompted us to establish and distribute standard guideline of care for chemical peeling. Previous guidelines such as 2001 version and 2004 version included the minimums for the indications, the chemicals used, their applications, associated precautions, and postpeeling care and findings. The principles were as follows :1) chemical peeling should be performed under the control and the responsibility of the physician. 2) the physician should have knowledge of the skin and subcutaneous tissue and understand the mechanism of wound-healing. 3) the physician should be board-certified in an appropriate specialty such as dermatology. 4) the ultimate judgment regarding the appropriateness of any specific chemical peeling procedure must be made by the physician in light of all standard therapeutic ways, which are presented by each individual patient. Keeping these concepts, this new version of guidelines includes more scientific and detailed approaches from the evidence-based medicine.