著者
三鴨 廣繁 玉舎 輝彦 田中 香お里 渡邉 邦友
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.35-40, 2006-02-25 (Released:2013-05-17)
参考文献数
6
被引用文献数
2

近年では,性行動の多様化により,クラミジア・トラコマティスの咽頭感染を認める症例が増加していると言われている。しかし,クラミジア・トラコマティスは,咽頭に感染しても無症状のことも多く,感染が拡大する要因のひとつになっていると考えられる。今回,一般女性およびcommercial sex workers (CSWs) の性行動の実態およびクラミジア感染症 (子宮頸管および咽頭) の現状について調査した。その結果,一般女性においてもオーラルセックスは,性行為において,ごく普通の行為として定着していることが明らかになった。子宮頸管にクラミジア感染が認められた女性は,CSWsでは33.3%,一般女性では7.9%であり,咽頭にクラミジア感染が認められた女性は,CSWsでは22.5%,一般女性では5.2%であった。また,これらに対して,クラリスロマイシン,レボフロキサシン,アジスロマイシンによる治療成績を検討したところ,子宮頸管感染ではクラリスロマイシン400mgの7, 10, 14日間投与,レボフロキサシン300mgの7, 10, 14日間投与,アジスロマイシン1000mg単回投与のいずれにおいても除菌率は100%であった。しかし,咽頭感染では,クラリスロマイシン,レボフロキシンの10, 14日投与では,除菌率は100%であったが, 7日間投与では,それぞれ, 83.9%, 86.2%であり,またアジスロマイシンの単回投与では85.0%であった。これらの成績より,クラミジア咽頭感染ではクラリスロマイシンや,レボフロキサシンなどのフルオロキノロン系抗菌薬を10日間以上投与する必要があると考えられた。クラミジア咽頭感染の臨床的意義については議論の多いところであるが,今後は,耳鼻咽喉科および内科の医師とも協力しながら,培養法等などを用いた詳細な検討が必要であると考える。
著者
田中 卓也
出版者
静岡産業大学経営研究センター
雑誌
環境と経営 : 静岡産業大学論集 = Environment and management : Journal of Shizuoka Sangyo University (ISSN:13415174)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.31-43, 2020-06

戦後の「女学生」を対象とした二誌は、女子中学生・高校生ら「ジュニア」世代を誌面内容や附録などを工夫しながら、巧妙に読者に取り込んだ。誌面づくりのために、生き残りをかけて少女の心を引き留めることに苦心した。しかしながら両誌は、発刊および廃刊の時期は異なるものの、「女学生」としての教養の習得をめざすことは忘れておらず、クイズや懸賞形式を採用しながらも誌面に学習教材としてのものを掲載し続けた。しかしながら『女学生の友』はその後、ジュニア向けファッション誌『プチセブン』に、『女学生コース』は、『中1コース』、『高1コース』のように学習内容を残しながらも、ファッション、マンガなどの要素をとりいれたものへと変化を遂げることになり、「娯楽」や「流行」を求める少女雑誌の台頭を促すことになった。
著者
片岡 祐子 菅谷 明子 中川 敦子 田中 里実 問田 直美 福島 邦博 前田 幸英 假谷 伸
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.87-95, 2021-02-28 (Released:2021-03-20)
参考文献数
24

要旨: 先天性難聴の早期発見,早期療育, 人工内耳手術の低年齢化などに伴い, 難聴児の聴取能, 言語発達は向上し, 近年地域の学校でインクルーシブ教育を受ける者が増加しているが, それに伴う問題も挙げられている。我々は, 小学校5年生以上25歳未満のインクルーシブ教育を受けた経験のある両側難聴者89名に, 学校生活で抱える問題に関して質問紙での実態把握調査を実施した。 対象者の多くは, 授業中の支障に加え, グループ学習や雑音下, 距離が離れた場所からの聞き取りの支障を抱えており, また英語, 音楽, 体育をはじめとする教科学習での課題や, 友人関係での問題も挙げていた。難聴の程度が重いほど頻度が高い傾向がみられた。 個々の学校生活における状況と問題を正確に把握した上で, 視覚情報を用いたコミュニケーション, 支援員の配属, 学習面でのサポート, 専門家による心理的負担へのアプローチといった個々に対応した介入の必要性が示唆される。
著者
田中 健夫
出版者
山梨英和大学
雑誌
山梨英和大学紀要 (ISSN:1348575X)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.8-17, 2012

本稿の目的は,いじめの加害をめぐる一連の体験が,加害生徒の自己概念にどのような影響を及ぼすかについて,中学校養護教諭に対する半構造化面接を通して検討することである。養護教諭が関与した計7事例をKJ法により整理した。その結果,指導を受けとめた反応の一方で,加害生徒が納得できずに自分の感情を表現しないまま,被害者との心身の状態悪化の共振が起こったり,自己について無価値感を抱く過程が考察された。そこでは,加害にまつわる気持ちを他者との関係性のなかで表し,閉じた関係から離れて立ち直るような場がみいだされてやっと変化が可能となっていた。そして,外から押しつけられたと感じられている罪悪感を,自ら引き受けるものへと転換させる支援について検討をおこなった。
著者
多和田 雅師 田中 宗 松田 佳希 楊 天任
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.e15-e21, 2021-03-15

次世代アクセラレータと呼ばれる量子技術や古典技術を用いた新原理の計算機が期待されている.これら次世代アクセラレータは種類ごとに使用方法が異なり, 計算分野の得意不得意が存在する. 使用には専門知識が必要でありコストが高いため, 各アクセラレータ固有の使用法や性質を考慮し,プログラムの部分ごとに適切に割当するソフトウェアが要望されている. 本稿では,次世代アクセラレータの種類と活用事例,および適切にアクセラレータを使用するソフトウェアとその要素技術の研究動向を紹介する.
著者
田中 江里華
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングレビュー (ISSN:24350443)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.3-12, 2021-02-26 (Released:2021-02-26)
参考文献数
7

日本におけるスポーツビジネスの発展は重要な課題であり,野球単体で黒字化が難しいプロ野球業界では近年マーケティングの活用が進められてきた。一方で,広島東洋カープは12球団中唯一親会社を持たず45年間黒字を継続している。本研究は,その長期的競争優位の因果構造を,JCSIの枠組みを用いてロイヤルティ形成という視点から考察する。読売ジャイアンツ,横浜DeNAベイスターズを比較対象とし,因子分析と共分散構造分析で定量的に研究した。その結果,各ファンが評価する球場体験,球場サービスの便益の違いが浮き彫りになり,カープファンは観戦を通したファン同士の繋がりと自己実現を評価し,成績に左右されない顧客満足が実現できている事がわかった。さらに,三球団に共通して試合に関する要素が顧客満足やロイヤルティに強く影響する一方,試合と関連の低い球場体験は顧客満足に影響すると言いきれない事と,ロイヤルティが同化意向,協力的行動に影響している因果構造が明らかとなった。顧客の求める価値を理解し,主観的・客観的な便益を強化することが,企業と顧客の高次で長期的な関係性に寄与すると示唆された。
著者
長尾 充徳 釜鳴 宏枝 山本 裕己 高井 進 田中 正之
出版者
一般社団法人 日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
pp.30.017, (Released:2014-09-08)
参考文献数
14
被引用文献数
4 1

The purpose of this paper is to describe the early introduction protocols in a hand-reared Gorilla infant (Gorilla gorilla) that was introduced to biological parents at Kyoto City Zoo. The introduction process was initiated when the infant was one year old. In Dec. 21, 2011, an infant gorilla was born at Kyoto City Zoo. The infant is the first one who has captive-born parents, and the fourth generation of gorillas in Japan. The mother successfully held the infant, but could not give her milk enough to feed the infant. The baby showed dehydration and weakened. For the purpose of saving its life, we separated the infant from the mother and began to rear it. To avoid harmful influence of hand-rearing, we planned to reintroduce the hand-reared infant to its parents on the basis of successful cases in European and American zoos. We separated the processes of reintroduction into five steps, each of which had no time-limit, but totaled one, or one and half years. We started to show the infant to the parents when the infant was two months old. In the beginning, each of the parents showed a gentle attitude, and then started to directly contact with their infant. Habituation with the physical environment and the parents was going smoothly under careful observation. We returned the infant to its mother successfully at 10.5 months of age. Then, in its 11.5 months of age, we reintroduced the mother and the infant to the adult male (i.e., the father of the infant). Finally, the parents and the infant live together peacefully now. We thought of the processes of reintroduction and found one of the most important factors was that separation was attributed by not giving up nursing, but insufficiency of milk. Another factor may be that separation period was short enough to induce a sense of responsibility as a mother.
著者
田中 智哉 三木 貴弘 樋口 大輔
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.87-94, 2021 (Released:2021-02-19)
参考文献数
52

【目的】近年,筋骨格系疼痛のマネジメントにおいて,心理社会的要因に対する痛みの神経生理学的教育(以下,PNE)の有効性が示されている。今回,両側膝タナ障害と診断された対象者に対して,PNE を中心とした介入を行い,良好な経過が得られたため報告する。【方法】対象者は誘因なく両膝痛が出現した,ランニングを趣味とする20 代男性であった。生物心理社会モデルに沿った評価を行い,痛みの破局的思考,運動恐怖,身体知覚異常,疼痛に対する誤った信念の影響が示されたため,標準的理学療法に加えてPNE を行った。【結果】痛みの破局的思考,運動恐怖,身体知覚異常は軽減し,誤った信念は修正された。両膝痛は改善し,ランニングは満足いくまで実施可能となった。【結論】標準的理学療法に加えてPNE を行うことは,両側膝タナ障害と診断された膝痛に対して有効である可能性が示された。また,それらは身体知覚異常に対しても有効な可能性がある。
著者
田中 純子
出版者
日本公民館学会
雑誌
日本公民館学会年報 (ISSN:1880439X)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.22-27, 2020

<p>This is a report on how Kominkan in Okayama City have coped during the COVID-19 disaster as well as the issues that the pandemic poses for Kominkan activities in the future. Kominkan have continued to play a role as Kominkan by introducing the new idea of "Kominkan that can be apart and connected". These Kominkan efforts can be divided into three areas: (1) sharing energy and wisdom, (2) supporting and helping one other in daily life, (3) efforts that utilize TV and ICT. What can be seen from these efforts is that the underlying strengths of Kominkan and their activities and programs, the deepening of the relationship with students enrolled in club courses, and the potential for online activities and those that take place in real space were reconfirmed. It is important to consider how kominkan will contribute to the solution of the social problems that have been laid bare by COVID-19, solutions that include support programs for families in need.</p>
著者
川村 軍蔵 信時 一夫 安樂 和彦 田中 淑人 岡本 一
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.35-39, 2001-01-15 (Released:2008-02-01)
参考文献数
18
被引用文献数
2 4

感光色素を一種類しかもたないタコ類は色盲とされる。これを行動実験で検証するために, スナダコ5個体とマダコ7個体を用いて色覚を確かめる学習実験を行った。供試個体を負刺激球(白球あるいは灰色球)と同時呈示した青球(直径25mm, 反射スペクトルのλmax=460nm)に触れてから餌を摂るよう条件付けた後, 負刺激球を明度が段階的に異なる灰色球に換えて移調試験を行った。移調試験では, スナダコは灰色球の明度にかかわらず有意に高頻度で青球を選択し, 色覚をもつ可能性が示された。マダコは灰色球の明度によって選択球が変わり, 色盲であると結論された。
著者
山内 加奈子 田中 美紗 加藤 匡宏 大西 美智恵
出版者
香川大学
雑誌
香川大学看護学雑誌 (ISSN:13498673)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.65-75, 2008-03

とし子(仮名)は,早産(24週)で出生した超早産児である.とし子は,脳性麻痺や知的障害がないにも関わらず,2歳2ヶ月(修正月齢23ヶ月)になっても母親をふくめて誰に対しても発語がなく,主治医は彼女が言葉の遅れがある可能性を示唆した.主治医は,とし子に母親からばかりではなく社会からの言語刺激を与える必要があるとして,筆者らのプレイルームを紹介した.高等教育を受けた母親は,とし子をバイリンガル児に育てようとしていた.遊戯療法の第1期において,筆者らは,とし子が赤ちゃん人形でままごとをして遊んでいることを認めた.しかし,とし子は,運動技能を要求されるような,例えば跳びはねたりバランスを維持したりするトランポリンやラージセラピーボールの上ではねるなど体全体を使う遊具を嫌った.筆者らは,アニメーションキャラクターの声が聞こえるおもちゃの電話を用意した.そのころから,とし子はトランポリンや大きなセラピーボールの上で遊び始め,家庭では「パパ,ママ,じじ」とか「ブーブ」などの1音節の擬態単語を声に出せるようになった.遊戯療法の第II期において,とし子はトランポリンや大きなセラピーボールの上でのダイナミックな動きに伴って,1音ずつの単語が出てくるようになった.とし子は,家庭で両親など周りの人々が言った言葉やTVで聞いた言葉を真似するようになった.第III期に入ると,とし子は,買い物ごっこ遊びに興味があると言い始めた.第III期のおわりには,買い物ごっこ遊びを通じて,筆者らは,とし子と相互的な言語コミュニケーションが可能となった.つまり,筆者らは,遊戯療法において,色々な身体的刺激を与えることによってとし子の表出性言語障害を治療することに成功した.遊戯療法による日本語教育がとし子の表出性言語障害に治療的効果があったことから,日本人の両親が幼児期において子どもをバイリンガル児に育てるという試みは,子どもの言語発達に害を与える可能性があることを示唆する.
著者
大類 真嗣 田中 英三郎 前田 正治 八木 淳子 近藤 克則 野村 恭子 伊藤 弘人 大平 哲也 井上 彰臣 堤 明純
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.101-110, 2020-02-15 (Released:2020-02-22)
参考文献数
27

大震災の支援に当たった専門家による研究成果と経験に基づき,災害時のメンタルヘルスと自殺予防に資する留意点についてまとめた。支援の対象と支援方法の重点は,被災からの時期・段階によって変化する。とくに被災による避難時と避難指示解除時はともに留意が必要である。対象のセグメンテーションを行い,必要な支援を必要なタイミングで届ける必要がある。真に支援が必要な対象やテーマは表出されない場合があることに留意する。震災後に生まれた子どもや母親の被害,高齢者の認知症リスクも増えることが観察されている。被災者だけではなく,その支援を行う自治体職員や保健医療福祉職員のメンタルヘルスにも配慮する必要がある。避難地区だけでなく避難指示解除地区においても自殺率が高いという知見も得られている。教育や就労支援,社会的役割やサポートまで,総合的・長期的な支援が必要で,保健医療関係者だけではない分野横断的なネットワークの構築が平時から必要である。危機的な状況であるほど,なじんだ手段しか使えない。平時からの教育・訓練・ネットワーク化で被害の緩和を図っていく必要がある。