著者
田中 翼
出版者
東京芸術大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本研究の目的は、音楽において個々の作品よりも一段抽象化されたレベルの音楽理論的構造をコンピュータや計算を用いて生成し、新しい音楽スタイルを作り出すことである。25年度の成果は大まかに3つの項目に分けられる。1つ目は、旋法の生成に関するものである。旋法は感情の差異を表現するのに役立つが、その種類は数学的に膨大なため、感情と旋法の良い対応づけを得るのは困難である。そこで私は、固定された実験サンプルを評価する通常の心理実験ではなく、強化学習のアルゴリズムによって実験サンプル自体を評価者に適応変化させていく手法を案出した。そして、4つのタイプの感情をターゲットとした実験において、それらの感情を表現する旋法を得ることができた。この手法は、感情の表現力をもつ音楽スタイルを生み出す研究のプロトタイプとして大きな意義があると考える。2つ目は、旋法の研究から派生的に見いだした「音程スケール」という新しい音楽概念の研究である。これは、使用しうる音程の集合として定義される概念である。旋法や音階と異なり、音高ではなく音程の集合を使用することで、音高の制限がなされない無調音楽において通常の音階のような差異を生み出せる可能性がある。私はどのような音程スケールを選ぶべきか、無調の音楽が生成できる条件は何かなどを数学的に解明した。また、この理論を応用してピアノ作品を制作・発表しその有用性を示した。3つ目は「サウンドファイルの対位法」という私の考案した音楽理論に関係するものである。「サウンドファイルの対位法」とは、録音音源の内容を音響分析し、その情報を元にサウンドファイル断片の適切な同時的、経時的な組み合わせを自動決定する枠組みである。この研究は、コンピュータの探索能力を活かすことで、従来の録音された音素材を耳で聞いて配置する電子音楽の作曲に対して、新たな作曲のあり方の提示を意図するものである。本年度は1年目に構築したシステムを発展させ、使用する音源と音響分析の多様化を行い、美術館で展示を行った。
著者
田中 東子
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.51-61, 2016-03-25 (Released:2017-03-24)
参考文献数
27

本論では、フェミニズムの理論とスポーツ文化はどのように関わり合っているのか、今日の女性アスリートの表象はどのような意味を示しているのか、1990年代に登場した第三波フェミニズムの諸理論を参照しながら考察している。まず、アメリカにおける女性スポーツ環境の変化に注目し、そのような変化を導いたのがフェミニズム運動の成果であったことを説明する。ところが、スポーツ文化への女性の参画が進むにつれて、徐々に女性アスリートやスポーツをする若い女性のイメージは、商品の購買を促すコマーシャルの「優れた」アイコンに成り下がってしまった。そこで、女性アスリートやスポーツをする若い女性が登場する広告を事例に、女性たちが現在ではコマーシャリズムと商品化の餌食となり、美と健康と消費への欲望を喚起させられていること、そして、今日の女性とスポーツ文化との関係が複雑なものになったことを示す。最後に、複雑な関係になったとはいえ、スポーツ文化は今日においても「密やかなフェミニズム(Stealth feminism)」の現れる重要な現場であるということを、ストリート・スポーツの例を紹介しながら説明する。
著者
田中 博子
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.109-120, 2008-03-31 (Released:2017-04-30)
被引用文献数
1

日本語の相互行為は「阿吽の呼吸」や「以心伝心」によるところが多いと言われてきたが,広い意味での暗示的談話のメカニズムに関する実証的研究はこれまで十分行われてきたとは言えない.ここでは,会話分析により,話し手が話す内容を「微妙」なものとしてマークしている相互行為環境に的を絞り,話し手が暗示的発話を文脈の中でどのような具体的手法で構築し,またそれを聞き手がどのように受け止めていくかを文法的および韻律的手法を含めて,考察する.話し手の暗示的な発話に対しては様々な対応が見られるが,場合によっては聞き手が同じく暗示的な応答をしたり,あるいは話し手の暗示的な働きかけを拒絶することもある.このような事例を通して「阿吽の呼吸」が生まれるには参与者相互が,いかに細やかに歩調を合わせているかについて論じる.
著者
田中 敦士 栃真賀 透 藤野 友紀
出版者
札幌学院大学総合研究所 = Research Institute of Sapporo Gakuin University
雑誌
札幌学院大学総合研究所紀要 = Proceedings of the Research institute of Sapporo Gakuin University (ISSN:21884897)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.5-9, 2021-03-20

東京大学先端科学技術研究センター人間発達工学分野の近藤武夫准教授の研究室を訪問し,聞き取り調査を行った.センターと共同で主催しているDO-IT Japan(ドゥーイットジャパン)の最新情報についてお聞きした.また,発達障害等の診断を受けていない大学生への就職支援においては,障害者雇用促進法上の障害者枠ではなく一般枠での競争となるため,事業所側にメリットがなく採用されるのは厳しい.そうした法定雇用率の対象にならない者の就労機会を拡げるため,川崎市などでは,週5-10時間程度の「超短時間雇用」という新たな働き方の実践をしており,自治体レベルで制度化されていることなどの最新情報を得た.これらから,札幌市や江別市などの自治体でも,超短時間雇用人材バンクの設立を将来的に視野に入れて,発達障害のある学生への就職支援のあり方を検討する必要があるのではないかと考えられた.
著者
田中 愼一
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.1-20, 2006-06-08

明治10年代に,東京府南葛飾郡在住のくみ取り人が本所区在住の地主を相手どって東京裁判所に訴えでた民事訴訟が起こっていた。この事件は第一審で原告側くみ取り人が勝訴したものの,その判決に不服な被告側地主が控訴した第二審では逆転敗訴となったため,さらに上告したが,第三審で敗訴が最終的に確定したのであった。訴訟の前提となる事実関係を再構築したうえで,裁判の進行過程を復元しつつ,訴訟当事者の利害状況を明らかにしようとした。くみ取り人は下掃除代を差配人に前払いしていた。その差配人が地主に罷免され,その地主的所有地には別のくみ取り人が来るようになり,元のくみ取り人は代金を取り戻せないまま,その地主的所有地から排除されたらしく,約束が違うと地主を訴えたのであった。下掃除代を交換価値とする肥料の交換が行われており,訴訟当事者には譲りがたい利害対立が醸成されていったのだった。こうしたことを追究しようとした。
著者
田中 美知太郎
出版者
日本西洋古典学会
雑誌
西洋古典學研究 (ISSN:04479114)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-19, 1962-03-31

The idea of ελευθερια as conceived by the ancient Greeks was primarily political As against external forces, it meant independence from any foreign rule, something to be defended at any cost in face of the terror of foreign encroachment and in the state itself, it meant not to be under the rule of a tyrant, something to be long commemorated when successfully achieved As they recognized such a state of being as established among themselves, and as they observed furthermore the fact that all the other peoples (βαρβαροι) were invariably under absolute despotism, they came to be strongly convinced that freedom was just the word for the Greeks only As a result, it did not strike the Greeks as being strange to treat the 'barbarians' as δουλοι, though theoretically they were not absolutely without doubt regarding the master-slave relation among themselves To them the situation appeared as natural as the racial difference between the two And, though what we call the idea of equality (ισηγορια, ισονομια) had been early cultivated among the Greeks, it was destined to be kept within that boundary, never crossing over the barrier between the Greeks and the barbarians It has been criticized that the Greek concept of ελευθερια was narrow and limited, not only from the view-point above stated, but also on the ground that the ελευθρια known to them was political only, and never had anything to do with individual and personal liberty However, could one be justified to acknowledge such a statement ? In Book VIII of the Republic Plato states that the supreme good sought for m democracy is the liberty, which is explained as 'the state of being able to do whatever one desires to do' (εξουσια ποιειν οτι τιζ βουλεται) And we find a similar concept of liberty employed by Aristotle, Politics V 1-2, in his definition of demociacy We might possibly say that m ancient Greece, at least in those democratic states, personal liberty was not unknown either Not only do we read this m those philosophical works just mentioned, but also in the historical writings of Thucydides E g to the mind of those men on the Scilian expedition, their mother country now far away was, first of all, a country of greatest ελευθερια, where every man was free to enjoy his daily life subject to no control (πατριδοζ τηζ ελευτερωτατηζ και τηζ εν αυτη ανεπιτακτου4 πασιν ειζ την διαιταν εξουσιαζ) And the Epitaphian Oration of Pericles might well be regarded as a decisive vote (ο κολοφων) for one in the position of defending the ελευθερια of the Greeks, for Pericles is here found ensuring personal liberty in everyday life as well as political freedom Such personal liberty, however, as is supposed to have been realized in a state such as Athens, was something which could only be secured and defended provided that the independence of the state and the political freedom were ensured, something too delicate to stand by itself And this is the very reason why Pericles had in addition to lay great emphasis on the necessity of observing the law written or unwritten as an essential condition in order that they might keep their mutual relationship untouched with any infringing on the interests of the others Maintenance of the balance, however, between the ordinance of law and personal liberty was left to the good sense of individuals, the harmony between the two being optimistically just expected, and, apart from this, there was hardly to be found any positive principle sufficient to guarantee that harmony Nor was this all, the increasing tendency towards making slight of the laws, which found its theorization in the so-called νομοζφυσιζ controversy, exposed this balance to the danger of being overthrown Such was the radical form of personal liberty which Plato perceived in the decadence of democracy, where law was utterly disregarded, σωφροσυνη lost and every επιθυμια liberated, resulting in anarchy, which in its turn was to give birth to tyranny We find the Gorgias introducing the claim that such personal liberty was realized in the person of Macedonian despots This, we should say, means to deny the traditional idea of freedom of the Greeks and to find the utmost of ελευθερια in barbarian despots, the exact opposite of the former When we think of the Greek history succeeding the period in question, we might well call it an ironical paradox
著者
田中 武夫
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.48-53, 1969-02-20 (Released:2013-04-26)
被引用文献数
6
著者
山家 雄介 中村 聡史 アダム ヤトフト 田中 克己
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.88-100, 2008-06-26
被引用文献数
2

ブログなどの普及により情報発信の裾野が広がるにつれて,Web 検索結果から有用なページを発見するのは困難になる一方である.最近ではユーザのブックマーク行動を集約することによって価値のあるページを抽出する,ソーシャルブックマークのような取り組みがさかんになりつつある.本稿では,ソーシャルブックマークにおけるページのブックマーク数などの情報を用いて,検索結果のページの内より有用なものを上位に提示する再ランキング手法を提案する.次に,提案手法を多数のクエリに対して適用し,検索結果に含まれるページの順位変動率や,ページの種類などを調査・分類し,どのような検索目的に本アプローチが有効なのかを明らかにした.With the rise of blogs and other web applications, it is getting easier and easier to publish information. At the same time, it is getting more difficult to discern informative pages from web search results. Recently social bookmarking systems, which discover valuable pages by aggregating the bookmarking activities of many users, are getting popular. In this paper, we introduce a re-ranking method for web search results that makes use of the number of bookmarks registered with a social bookmarking service. Then, we apply our method to a number of search queries, analyze and classify characteristics of the search results, and make it clear what kind of search can be performed effectively by the method.
著者
田中 大祐
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.43-53, 2015-12-31 (Released:2016-02-04)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

ワクチンは人類史上で最大の公衆衛生上の成功の一つとされている.現在,予防接種は全世界で毎年250万人の子供の死亡を防いでいる.予防接種は,人の健康に関する権利の重要な要素の一つであり,個人,コミュニティ,そして政府の責任であるとも考えられている.各国における予防接種プログラムに使用されるワクチンは,適正に使用すれば概して安全かつ有効であると考えられる.しかし,他の医薬品と同様にゼロリスクではなく,予防接種後に副作用が生じる場合がある.このため,予防接種プログラムを成功させるためには,ファーマコビジランス活動を通じて,ワクチンのリスクとベネフィットのバランスを継続的に監視し,適切な情報提供を行うことにより,一般からの信頼を得ることが重要である.ワクチンをはじめとする医薬品は,リスクとベネフィットを正しく理解し,適正に使用されることにより,その価値を最大限に発揮することができる.ファーマコビジランスは世界保健機関 (World Health Organization: WHO) により「医薬品の有害な作用または医薬品に関連する諸問題の検出,評価,理解及び予防に関する科学と活動」と定義され,医薬品のリスクとベネフィットのバランスを正しく評価するために欠かせない存在である.WHO では,世界におけるワクチン接種率のさらなる向上を目指していると同時に,デング熱やマラリアなど新たなワクチンの開発にも乗り出している.また,先進国,途上国間でのワクチン接種開始ラグが減少しているとともに,様々な技術協力等により様々なワクチンが途上国でも製造されている.このため,ワクチンの接種率が増加し,新規のワクチンも含め,多種多様なワクチンが世界的に投与されるようになってきた.ワクチンのファーマコビジランスの重要性はますます増加し,ワクチンの安全性を確保するための様々な国際協力も積極的に行われてきている.このような状況の下,ワクチンのファーマコビジランスに関して,WHO の動きを中心としてグローバルな動きについて記載する.
著者
田中,和夫
出版者
東京昆蟲學會
雑誌
昆蟲
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, 1956-05-05

Habits and life histories of 5 Japanese species (see p. 1) of Chlaenius observed in confinement are summarized as follows : (1) Adult beetles feed on various kinds of living small insects or fresh meat, and under full supply of such food reject vegetable substance. (2) The female beetle deposits its eggs in mud cells, which are generally oblong, rounded and rough in surface, and occur on pebbles, grass leaves (Pl. 1, f. 3) or stems (Pl. 1, f. 1), dead grass stems (Pl. 1, f. 6), slim pieces of wood or bamboo (Pl. 1, f. 2, 7&8), or on the wall of a china pot in which the beetles are confined. Each cell contains one egg and is placed singly, but in a limited place it happens that many are crowded in a cluster (Pl. 1, f. 1). (3) The mud cell of C. pallipes is most dexterously constructed ; it is somewhat quadrate and has a side opening which is closed with a thin lid in a complete cell. The lid is represented, before the deposition of the egg, by a flap projecting from the upper edge of the opening (Pl. 1, f. 4). The hatching larva makes its emergence by breaking open the lid. The inner form of the cell is ellipsoidal and smoothfaced ; the 8th and 9th abdominal segments of the female seem to take part in its construction. The female does not oviposit within the year of its emergence, but does, after hibernation, from May to July. (4) Mud cells of C. circumdatus xanthopleurus and C. pericallus are similar to those of C. pallipes, but inferior to in elaborateness. Cells of C. inops and C. sericimicans are very roughly made. (5) Eggs are generally white, oblong and smooth. They are characterized in their striking softness, so that it could be thought that the protection of the mud cell had vital importance for them. Egg periods are shown in table 1. (6) The larvae of all the 5 species moult thrice and, with the exception of the case of C. circumdatus xanthopleurus, more or less change their coloration with stages. (7) Food of larvae is restricted to small living insects or fresh meat. (8) The full-grown 3rd stage larvae enter the soil, making a round cell for pupation. Duration of larval and prepupal stages is given in table 2. (9) Pupa is generally white and smooth, emits a bad smell. Duration of pupal stage is given in table 3. (10) C. pallipes takes about a month from oviposition to emergence of adult. (Tab. 4).
著者
田中 結子
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.374-381, 2015-11-25 (Released:2019-02-20)
参考文献数
8

近年の柔軟剤や衣料用洗剤などのファブリックケア製品には,香りの品揃えが多く見られ,これらが生活者の購買意欲を高める一因になっている.ファブリックケア製品において香りは重要な役割を占めるようになり,製品のイメージやコンセプトを伝えること,様々な使用場面での使い心地のよさを与えることやターゲット層の高い嗜好性に応えること等,付加価値を向上させる手段として進化してきた.本稿では,日本の柔軟剤と衣料用洗剤にフォーカスし,その香りの変遷と香りに対する生活者意識の変化について紹介する.
著者
田中 耕一郎
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.82-94, 2009

本稿では,<重度知的障害者>を包摂する連帯規範の理論的探究に向かうため,(1)福祉国家の理論的基礎を支えてきたリベラリズムの規範理論において,<重度知的障害者>がなぜ,どのように,その理論的射程から放逐されてきたのかを,リベラリズムにおける市民概念の検討を通して考察し,(2)連帯規範の再検討における<重度知的障害者>という視座の意義について検討を加え,(3)<重度知的障害者>という視座における連帯規範の再検討によって,どのような理論的課題が浮上するのか,を検討した.リベラリズムがその理論的射程から放逐してきた<重度知的障害者>を連帯規範の再検討のための視座におくことには,それがリベラリズムの規範理論の限界点と課題を照射しつつ,連帯規範をめぐる新たな公共的討議の可能性を開示する,等の意義を見いだすことができる.また,この<重度知的障害者>という視座による連帯規範の問い直しの作業は,リベラリズムの市民資格の限定解除を求めつつ,現代の政治哲学における「ケアと正義」の接合,併存をめぐる理論的課題に逢着することになるだろう.
著者
千丈 雅徳 佐藤 友香 中島 公博 坂岡 ウメ子 林 裕 田中 稜一
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.44, no.10, pp.1061-1068, 2002-10-15

【抄録】 解離性同一性障害患者の主人格および交代人格に風景構成法とPCエゴグラムを施行し,人格の成長・変化を認めるとともに寛解に至った1例を報告した。失恋を契機にαが出現し,αが成長して全体をまとめるδとなった。また,陰性感情は持続していくつかの交代人格が所有したが,最終的には主人格も陰性感情を引き受けることでまとまるに至った。すなわち,交代人格には固定化した感情状態を持続する者と,そうでなく成長する者が存在することが示唆された。また,名を持たぬ不気味な存在に名を付与することで具体的な対応が可能となり治療的に大きな転機となった。風景構成法およびPCエゴグラムは人格特性を簡便に把握し,人格の推移を知る有効な手段であることが示された。
著者
田中 則章
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.39-44, 2008-02-15 (Released:2016-10-31)
参考文献数
12

可燃性粉じんの危険性,粉じん爆発の概要,爆発特性,影響因子,複合混合物,粉じん爆発の評価方法,安全対策の考え方について述べる.また,堆積粉じんの発火の特徴,発火・燃焼特性,粉じん火災の安全対策についても言及する.
著者
仙石 康雄 松岡 誠 杉木 真一郎 田中 成典 栗田 典之 関野 秀男
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
Journal of Computer Aided Chemistry (ISSN:13458647)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-8, 2004 (Released:2004-03-24)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

巨大分子の電子状態を計算する手法の1つとして、Fragment 分子軌道(FMO)法がある。FMO法は分子をフラグメントに分割して計算することにより、通常の分子軌道(MO)計算では計算不可能な巨大分子の電子状態を計算できる。FMO法の計算精度およびコストはフラグメントの分割方法に大きく依存する。我々は、密度汎関数法(DFT)に基づくFMO法を独自に開発し、これを用いてDNAの電子状態を塩基分割及び塩基対分割の二種類のフラグメント分割方法で計算した。これらの計算から得られた分子の全エネルギーとMO分布について通常のDFT法による結果と比較した結果、塩基ごとに分割したFMO計算は、塩基対ごとに分割したFMO計算と同程度の計算精度で、全エネルギーとMO特性を得ることができることが明らかになった。
著者
古谷 圭一 田中 勇武 竹本 和夫 坂本 和彦 江見 準 瀧島 任
出版者
東京理科大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1990

本研究の主眼は、1.吸入粒子の呼吸器内沈着挙動の理論的実験的研究、2.呼吸器内に取り込まれた吸入粒子の種類、部位、沈着量、溶解量の評価、3.吸入粒子のフェイトアナリシスと生体影響評価である。第1のテーマに関して、人体呼吸器を16部に区別、これへの吸入エアロゾル粒子吸着とクリアランスを計算できる簡易式を開発し、その有効性を確認した、(高橋幹)、肺胞領域での吸入空気と肺内残存粒子の混合沈着機構をシミュレートできる不均一伸縮場ガラスシェル肺胞モデルを作成し、その影響が0.1μm付近の粒子に大きいことを明かにした。(江見)、第2のテーマに関して、化学形態の異なるNi化合物粒子吸入膜露実験を行ない、クリアランス期をおいて各臓器でのNi滞留量を比較した。(田中)、吸入エアロゾルスペーサーの効果をエアロゾル粒子数、粒径分布を測定し、4μm以下の小粒子を吸入させるためには大スペーサーが効果的であると結論した。(瀧島)病理解剖例を用い、人肺組織、肺門リンパ腺中の金属元素分析を行い、呼吸器病変、生活歴との相関を調査した。(竹本)気道鋳型モデル、微細気管内挿管法、吸入実験、培養肺マクロファージ試験管内実験など新手法を用い、NiO,石炭フライアッシュ,放射性BaSO_4,放射性Fe(OH)_3等微粒子の沈着量,毒性,溶解性,除去作用を明かにした。(高橋テ)、第3のテーマに関して、硫化ニッケル石炭フライアッシュの各種培養液への溶解挙動を明らかにした。(古谷)、フラッシュ脱離・質量分析法を開発し、ラット肺中数ngのPHAの定量に成功した。(飯田)レーザー励起蛍光・ミセル動電クロマト法を開発し、fgのPHA定量を可能とした。(今坂)モデル肺液へのPHA溶解度を測定する装置を開発し、生体影響評価に役立つ結果を得た。(坂本)本研究は、10名の相互の協力により、共通試料の提供、専門知識、設備の利用により、きわめて新しい成果を得ることが出来た。