著者
進藤 宗洋 西間 三馨 田中 守 田中 宏暁
出版者
福岡大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

運動誘発性喘息(EIB)は、喘息児の身体活動を制限する大きな障害である。このため、喘息児のEIBを軽減してやることは、発育発達途上にある児の身体的・社会的な成熟を促すと思われる。この一連の研究では、喘息児を対象にし、いくつかの有酸素性運動の強度に対する生理的反応に基づいてEIBの重症度に関係する、危険因子と運動条件とを明確にし運動療法の至適運動強度を決定した。そして、持久的トレーニングがEIBに及ぼす影響を検討した。初年度には、EIBに及ぼす運動強度の影響について観察し、喘息児の運動療法における至適運動強度の検討を行った。その結果EIBの程度は運動強度に依存して増加することが確認され、乳酸闘値の125%に相当する強度は、有酸素性作業能の向上が期待でき、尚かつ、重症なEIBを起こすことなく安全に行える運動強度として上限であると考えられた。そこで次年度には、自転車エルゴメーターを用い、125%LT強度で1回30分、週6回、4週間のトレーニングを施行したところ、有酸素性作業能の向上、トレーニング前と同一強度でのEIBの改善が認められ、EIBの改善は有酸素性作業能の向上によるものであることが示唆された。また、トレーニング期間を延長し、2ケ月間行ったところ、同一強度だけでなく、相対強度においてもEIBが改善され、何らかの病理的変化が起こったと思われた。最終年度には、3週間の脱トレーニングが、有酸素性作業能とEIBや気道過敏性などの6週間のトレーニング効果に及ぼす影響を検討した。その結果、脱トレーニングによるトレーニング効果の消失は、EIBや気道過敏性における力が有酸素性作業能におけるより遅く、トレーニングは、EIBに及ぼす何等かの病理的改善にも関与することが示唆された。以上の結果から、持久的トレーニングは、喘息児の体力を向上させるだけでなく、EIB、気道過敏性を改善させ、臨床症状の改善にも十分期待できる治療法の一つであると考えられた。
著者
高木 亮 田中 宏二
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.165-174, 2003-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
23
被引用文献数
16 8

本研究は公立小・中学校教師の職業ストレッサーにはどのようなものがあり, どのようにストレス反応を規定するのかを検討することを目的とする。欧米の先行研究における職業ストレッサーの体系的な分類を参考に我が国の教師に見合った職業ストレッサーに関する質問項目群を設定した。これにストレス反応としてバーンアウト尺度を加えた調査を小中学校教師710名を対象に実施し検討を行った。その結果, 「職務自体のストレッサー」が直接バーンアウトを規定していることと, 「職場環境のストレッサー」は「職務自体のストレッサー」を通して間接的にバーンアウトを規定していることが明らかにされた。また, 「個人的ストレッサー」については相関分析で検討を行った。
著者
田中 健一郎
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

私は多くの疾患の原因が活性酸素による組織傷害であることに着目し、活性酸素を消去するストレスタンパク質、SODに注目した。私は、SODにリン脂質を結合させその組織親和性と血中安定性を向上させたDDS製剤・PC-SODを開発し、この薬が炎症性腸疾患、肺線維症、COPDの動物モデルで予防・治療効果を発揮することを見出した。
著者
塩崎 賢明 田中 正人 堀田 祐三子
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.71, no.605, pp.119-126, 2006
参考文献数
9
被引用文献数
5 7

This study will track the reconstruction process of the urban area devastated by the Great Hanshin-Awaji Earthquake and clarify how the change of characteristics of houses/urban districts has affected the "isolation" of residents. We made a questionnaire survey on the residents in the public housing at the Tsukiji district, Amagasaki City where the Residential District Improvement Project was enforced. Clarified points are as follows: 1. Family units that moved in to the public housing from a detached/row house showed a larger percentage of "isolation" than the ones from an apartment house. 2. The degree of "isolation" differed according to what floor the residents lived. Family units living in the 1st-2nd floor showed a smaller percentage of "isolation", but the ones living in the 3rd floor upper showed an extraordinary larger percentage of "isolation". 3. What can control "isolation" is to have a chance of a natural exchange with the vicinity residents. An intentional plot to urge an exchange will not function well for the already "isolated" residents. A space design, which secures an exchange with residents on a day-to-day visual/traffic line base, is required.
著者
村瀬 善彰 田中 和彦 村上 典央 平尾 純子 加藤 忠幸 青木 隆明 糸数 万正
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第23回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.O045, 2007 (Released:2007-11-02)

【はじめに】 線維筋痛症あるいは線維筋痛症候群(fibromyalgia syndrome:以下、FMS)は、長時間持続する全身の結合織の慢性疼痛やびまん性疼痛、こわばり、疲労感を主訴とし、他覚症状として特徴的な圧痛点を有する疾患である。その他、しびれ感、頭痛などの精神神経症状もかなりの頻度でみられる。このような関節リウマチ様の全身症状を呈するため多くの患者がリウマチ専門医を受診するが、器質的障害の存在を裏付ける明確な臨床所見を認めず、多彩な不定愁訴を呈するため、別名「心因性リウマチ」ともいわれている。FMSは日本ではなじみの薄い疾患であるが、欧米では比較的頻度の高い疾患であり、一般人口の2%にみられるとの報告もある。40~50歳前後の壮年期~更年期の女性に多く(約85~90%は女性)認められ、原因の詳細不明な疾患であるため効果的な治療法に乏しい。そのため、薬物療法以外にも様々な治療が試みられているのが現状である。 今回われわれは、このような疾患に対して理学療法を行い、痛みとQOLの評価を用いて理学療法アプローチの必要性について検討したので、文献的考察をふまえ報告する。 【方法】 当院整形外科外来患者のうちリウマチ専門医により、FMSと診断され経時的評価が可能であった女性7例(平均年齢49.4歳)を対象とし、身体ストレス緩和のためのリラクゼーションを目的とした環境作りの提案や生活指導及び拘縮予防や除痛を目的とした運動療法を行った。FMSは他覚的所見として全身の各部位に18ヶ所の圧痛点が存在するのが大きな特徴であるため、その圧痛点の変化とVAS(Visual Analogue Scale)を用いた痛みの評価を行った。QOL評価にはMedical Outcome Study Short-Form8Item Health Survey(以下、SF-8)を評価ツールとして使用し、理学療法施行前後及びその後の経過観察において各々評価を行った。 【結果】 全例において多彩な不定愁訴に加え、両側性筋痛症状が認められ、疼痛の評価から何らかの改善が得られたのは7例中6例であった。また、SF-8においては国民標準値を下回っている症例を認めたが、評価カテゴリーによって改善傾向を示す結果であった。 【考察】 今回の結果から、理学療法による一定の傾向を示すことは困難であったが、環境改善についての生活指導や運動療法の介入によって、身体及び精神環境の面において何らかの改善が得られることが示唆された。FMSは日本以外の先進国の常識であり、症状が多彩であるがゆえに必然的に、原因不明、経過観察という説明のもと、診断、治療を受けられずに医療機関を転々としながら長い経過をたどっていることが予測されることからも、今後さらなる調査を継続して行い、理学療法の立場から長期的に検討していくことが必要と思われた。
著者
田中 洋
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.7-20, 2020-01-11 (Released:2020-01-11)
参考文献数
34
被引用文献数
1

本稿は,ブランドと想像力について,想像力とは何かを問うとともに,ブランドと想像力について新たな研究パラダイムを構築するための消費者行動モデルを提案する理論的論文である。研究レビューから,想像力が重要な概念とされながらも,マーケティング論ではあまり扱われてこなかったこと,諸学での想像力についての考察で共通していることとして,想像力が人間の行為として重要であること,感情・思考・感覚・知覚・記憶などと関連しながら,同時にこれらを統合する力として働いていること,想像力が人間特有の遺伝形質であり,脳神経科学から再帰性という概念を用いることによって想像力の在り方がよりよく理解できることなどを明らかにした。そのうえで新たなブランドの定義を示したうえで,ブランドと想像力についての新たな研究パラダイムを提案して実証研究への道筋を示した。
著者
田中 宏幸
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.65, no.7, pp.305-317, 2016-07-15 (Released:2016-07-15)
参考文献数
28

宇宙線に起因する高エネルギーのミュオンは透過力が非常に強いため,地球内部の観測に応用することができる。これまでに,火山や断層,洞窟などを対象に,地球浅部構造の観測が行われてきた。中でも火山を対象にした観測では,マグマの形状や位置を視覚化することにより,噴火推移の予測に使える可能性があることがわかってきた。本報文では,ミュオンによる地球内部観測の原理と手法,そして最近の成果についてレビューする。
著者
田中 綾乃 TANAKA Ayano
出版者
三重大学人文学部文化学科
雑誌
人文論叢 : 三重大学人文学部文化学科研究紀要 = JINBUN RONSO : BULLETIN OF THE FACULTY OF HUMANITIES, LAW AND ECONOMICS (ISSN:02897253)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.49-57, 2017-03-31

「アートの公共性」とはどのようなことを意味するのであろうか。一般的にアートとは、アーティストが自由に表現した個人的な産物であり、それが公共性を持ちうるかどうかは無縁である、と考えることができる。いわゆる「芸術のための芸術(Artforart・ssake)」という考え方は、現代の私たちには根強く支持されている。しかし、現在、私たちが考える「芸術」という概念そのものは、18世紀半ばのヨーロッパの思想において確立した概念である。そして、それとともに、アーティストと呼ばれる「芸術家」も登場することになる。もっとも、近代以前から古今東西、様々な芸術作品が存在し、その作品の作者がいることは自明のことであるように思える。だが、もしかしたら、そのような見方は、近代ヨーロッパで確立された芸術観を私たちが過去に投げ入れているのかもしれない。芸術の自律性を説く「芸術のための芸術」とは、芸術が宗教のため、あるいは一部の貴族や権力のためだけにあるのではなく、まさに芸術の自己目的を主張するものである。そして、そのことによって、アートは誰にでも等しく開かれた存在となるのである。本稿では、この近代的な芸術観によってこそ、アートは公共性を持ちうることになるという点をヨーロッパの近代思想、特に18世紀のドイツの哲学者イマヌエル・カントの美学理論を概観しながら論じていく。また、「アートの公共性」について具体的に考えるために、20世紀後半に登場した「アートマネージメント」という概念に着目する。本稿では、現在、様々な芸術作品や表現方法がある中で、「アートマネージメント」の必要性を考え、さらにはこの「アートマネージメント」という概念がアートと社会とを媒介する機能を果たすことを論証しながら、「アートの公共性」について一考察を行うものである。
著者
松林 達史 清武 寛 幸島 匡宏 戸田 浩之 田中 悠介 六藤 雄一 塩原 寿子 宮本 勝 清水 仁 大塚 琢馬 岩田 具治 澤田 宏 納谷 太 上田 修功
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.wd-F_1-11, 2019-09-01 (Released:2019-09-01)
参考文献数
29

Forming security plans for crowd navigation is essential to ensure safety management at large-scale events. The Multi Agent Simulator (MAS) is widely used for preparing security plans that will guide responses to sudden and unexpected accidents at large events. For forming security plans, it is necessary that we simulate crowd behaviors which reflects the real world situations. However, the crowd behavior situations require the OD information (departure time, place of Origin, and Destination) of each agent. Moreover, from the viewpoint of protection of personal information, it is difficult to observe the whole trajectories of all pedestrians around the event area. Therefore, the OD information should be estimated from the several observed data which is counted the number of passed people at the fixed points.In this paper, we propose a new method for estimating the OD information which has following two features. Firstly, by using Bayesian optimization (BO) which is widely used to find optimal hyper parameters in the machine learning fields, the OD information are estimated efficiently. Secondly, by dividing the time window and considering the time delay due to observation points that are separated, we propose a more accurate objective function.We experiment the proposed method to the projection-mapping event (YOYOGI CANDLE 2020), and evaluate the reproduction of the people flow on MAS. We also show an example of the processing for making a guidance plan to reduce crowd congestion by using MAS.
著者
菊池 友和 山口 智 五十嵐 久佳 小俣 浩 鈴木 真理 田中 晃一 磯部 秀之 三村 俊英
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.51-58, 2011 (Released:2011-06-27)
参考文献数
19
被引用文献数
3

【はじめに】本邦でVDT作業者のQOLや作業能力を指標とした鍼治療に関する報告は極めて少ない。 そこで、 この前向き研究では鍼治療がVDT作業者のQOLと作業能力に及ぼす影響について検討した。 【方法】VDT作業者61例、 男性41例、 女性20例である。 鍼治療は1回/週、 個々の頸や肩の症状に応じて行った。 評価はSF-36とWAIを、 初診時と1ヵ月後の値を統計学的に検討した。 【結果】VDT作業者のSF-36は、 身体的健康度、 精神的健康度、 体の痛み、 日常役割機能 (身体) が上昇し、 活力も上昇する傾向が認められWAIも上昇した。 治療前のSF-36の各項目とWAI値、 さらに鍼治療後における体の痛みとWAI値の改善率に正の相関関係が認められた。 【結論】鍼治療によりVDT作業者の有する頸肩こりの症状が改善するとともに、 QOLと作業能力が向上した。 今後増加が予想されるVDT作業者のQOLや作業能力の向上に対し、 鍼治療の有用性が高いことが示唆された。
著者
鈴木 真理 山口 智 五十嵐 久佳 小俣 浩 菊池 友和 田中 晃一 磯部 秀之 大野 修嗣 三村 俊英 君嶋 眞理子
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.829-836, 2010 (Released:2011-05-25)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

【はじめに】近年、 情報化の発達により、 VDT作業者は急増している。 VDT作業者における心身の疲労は以前から問題視されているが、 多くのVDT作業者が有する頸肩こりや眼疲労に対する鍼治療効果についての報告は数少ない。 そこでこの前向き研究では、 VDT作業者の愁訴に対する鍼治療効果について検討した。 【方法】対象はVDT作業者61例 (男性41例、 女性20例) である。 鍼治療は、 週1回、 計4回、 個々の頸や肩の症状に応じて、 円皮鍼を用いて行った。 評価は、 頸こり・肩こりと眼疲労を自己記入式で行った。 VAS値の経時的変化、 また鍼治療前と4週後のVAS値より改善率を算出し、 眼疲労と頸こり・肩こりの関連について検討した。 【結果】鍼治療により頸こり、 肩こり、 眼疲労のVASの値はともに、 初診時より徐々に減少を示した。 また、 眼疲労と頸こり・肩こりの改善率には正の相関が認められた。 【結論】VDT作業者の頸や肩のこりに対し鍼治療を行い、 頸肩こりが軽減するとともに、 眼疲労も改善することが示された。 鍼治療は産業医学の分野で有用性の高いことが示唆された。
著者
田中 秀和
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.142, no.3, pp.112-115, 2013 (Released:2013-09-10)
参考文献数
28

脳を治療するための薬物は,従来神経伝達物質に関連するものが主であった.現在はそれらに加えて,神経変性疾患のメカニズム解明をもとにした治療法の開発や,喪失した細胞を補充することを目指した再生医学的アプローチも盛んになっている.今後はさらに,シナプス病といった概念の発展により,神経回路の構築そのものが,あらたな治療標的を探索する対象となっていくかもしれない.近年シナプス前後の細胞間認識に関わる接着分子や,その他のタイプのシナプス形成に関わる分子が,自閉症などの疾患に関連することが示されている.うつ病においても海馬が萎縮し,逆に治療により拡大することなどから,海馬神経回路の機能や構造が変化する可能性がある.海馬神経回路リモデリングを担う分子の一例として,プロトカドヘリン型の接着分子arcadlinが知られている.arcadlinは即効性に抗うつ効果を示す電気けいれんにより誘導されるばかりでなく,遅効性の抗うつ薬の慢性投与後にも誘導される.またうつ病患者の海馬において増加する脱リン酸化酵素MKP-1と,拮抗する関係にあるp38 MAPキナーゼがarcadlinによって活性化することからも,arcadlinとそのシグナル伝達系による海馬シナプスリモデリングのメカニズムは,うつ病の治療効果に関与する可能性が期待される.
著者
田中 大介
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.40-56, 2007-06-30

本論文は,日露戦争前後の電車内における身体技法の歴史的生成を検討することによって,都市交通における公共性の諸様態を明らかにすることを目的としている.電車は明治後期に頻発した群集騒乱の現場になっていたが,同時期,法律から慣習のレベルまで,電車内の振る舞いに対する多様な規制や抑圧が形成された.これらの規制や抑圧は,身体の五感にいたる微細な部分におよんでいる.たとえば,聴覚,触覚,嗅覚などを刺激する所作が抑圧されるが,逆に視覚を「適切に」分散させ・誘導するような「通勤読書」や「車内広告」が普及している.つまり車内空間は「まなざしの体制」とでもよべる状況にあった.この「まなざしの体制」において設定された「適切/逸脱」の境界線を,乗客たちは微妙な視線のやりとりで密かに逸脱する異性間交流の実践を開発する.それは,電車内という身体の超近接状況で不可避に孕まれる猥雑さを抑圧し,男性/女性の関係を非対称化することで公的空間として維持しつつも,そうした抑圧や規制を逆に遊戯として楽しもうとする技法であった.
著者
戎 利光 田中 麻結 松浦 麻衣 安居 曜平 山田 侑希 宮下 裕文
出版者
福井大学教育地域科学部附属教育実践総合センター
雑誌
福井大学教育実践研究 (ISSN:13427261)
巻号頁・発行日
no.39, pp.31-42, 2014

平成24年度の学校保健統計調査1)によると,裸眼視力1.0未満の児童生徒は年々増加傾向にある。視力 の低ドは日常生活に支障をきたすがそれだけではなく,その度合いが強くなると,将来,緑内障や近視 性網膜症,白内障などの重篤な疾患を続発する危険性が高くなる2)ことから,児童生徒の視力低ドに対す る予防対策が必要である。 ただ,児童生徒の視力への影響因子は広く報告されているにもかかわらず,詳細な調査によって広範 囲に検討された研究は少ない。従って本研究の目的は,視力低下を招く可能性のある屋外活動や姿勢を はじめ,勉強中の目の疲れ,教科書を見る様子,教室の明るさ,勉強時間,スポーツ実施時間,テレビ やゲームに費やす時間などを児童生徒にアンケート調査し,さらには,家族の視力,両親の近視の有無 メガネやコンタクトレンズの使用状況,子どもが勉強やゲームをしている状況,テレビゲームの使用制 限,子どもの習い事,子どもの朝食摂取や睡眠等の生活習慣などを,保護者にもアンケート調査するこ とによって,児童生徒の視力と各種環境因子や遺伝因子との関連を明らかにすることである。 福井県内の小学生726人(小学4,5年生),小学生の保護者722人,中学生795人(中学2,3年生), 中学生の保護者770人の合計3,013人に,巻末の資料1~資料3に記載したアンケート調査を行った。本 研究のアンケート回収率は,児童生徒が95.8%,保護者が98.7%であったが,3,013人の回答の中から,不 完全な回答のデータを除き,小学生695人,その保護者702人,中学生762人,その保護者770人の合計2,929 人のデータを分析した。 本研究より,次のような結果が明らかになった。(1)学校で勉強している時目の疲れをよく感じている 児童生徒は視力が比較的悪く,目の疲れをほとんど感じていない児童生徒は視力が比較的よい,(2)教科 書を見る時目を近づけないように気をつけている児童生徒の多くは,視力が比較的よい,(3)教室の明る さについて丁度よいと感じている生徒の多くは,視力が比較的よい,(4)学校で勉強している時目の疲れ をよく感じる児童生徒の多くは,教科書を見る時いつも目を近づけて見てしまう,(5)学校で勉強してい る時目の疲れをよく感じる児童の多くは,教室が「明るすぎる」,「暗すぎる」と感じている,(6)学校で 勉強している時目の疲れをよく感じる児童の多くは,先生の話を聞く時いつも姿勢が悪くなる,(7)教科 書を見る時目を近づけすぎないように気をつけている児童の多くは,教室の明るさが丁度よいと感じて いる,(8)教科書を見る時目を近づけすぎないように気をつけている児童の多くは,先生の話を聞く時い つも姿勢よく聞いている,(9)普段家の外で遊んだりスポーツをしたりしてよく身体を動かしている児童 の多くは,視力が比較的よい,(10)スポーツ少年団やスポーツクラブに入っている生徒の多くは,視力 が比較的よい,(11)視力の比較的よい母親は児童生徒も視力がよく,視力の比較的よい父親の生徒は視 力がよい。以上の研究結果が,児童生徒の視力低下に対する予防策の一端として活用されることを期待する。