著者
田中 秀樹
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.345-351, 2011 (Released:2011-10-06)
参考文献数
42
被引用文献数
5 9
著者
田中 素香
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.2_1-2_14, 2020 (Released:2020-09-04)
参考文献数
23

EUの右派ポピュリズム政治を,①経済格差拡大トレンド,②事件(危機),③事件(危機)に対する「エリート」の処理能力,そして④権力を取ったポピュリズム政治の動向,の4次元を意識して考察した.ユーロ危機,リーマン危機とそれに対する「エリート」の対応不全が右派ポピュリズムを高揚させたが,地域・国により独自性がある.2019年から運動は干潮期に入ったが,パンデミック危機により見通しが困難化している.
著者
鈴木 創三 田中 治夫 浮田 美央 斉藤 政一 杉田 亮平 高橋 直史 古川 信雄 矢野 直樹 双胡爾 竹迫 紘 岡崎 正規 豊田 剛己 隅田 裕明 犬伏 和之
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.9-16, 2005-03-31
被引用文献数
1

千葉大学森林環境園芸(利根高冷地)農場内の森林土壌および果樹園土壌(地点名は各TNF-3およびTNO-5)の無機成分および粘土鉱物組成を分析した結果,以下のことが明らかとなった.1.両土壌ともに,現在の表層と下層の土壌の下に過去の表層と下層の土壌が埋没し,それぞれA/Bw/2A/2Bw層およびAp/2BC/3BC/4Bw/5AB/6A層の配列であった.2.両土壌ともに可給態リン酸含量は表層(A, Ap層)が下層よりも高く,とくにTNO-5のAp層はTNF-3のA層より8倍程度も高かった.逆にリン酸吸収係数はA, Ap層が下層より低く,リン酸吸収係数とアロフェン推定含量とは高い正の相関関係が認められた.3.陽イオン交換容量はTNF-3ではA層のほうがBw, 2A, 2Bw層より高かったが,TNO-5ではAp層より5AB, 6A層のほうが高かった.交換性のカルシウム,マグネシウム,カリウム含量および塩基飽和度はTNF-3よりTNO-5が大きかった.4.両土壌ともに,A, Ap層は下層よりも粗砂の割合が大きく,粘土,シルトおよび細砂の割合が小さかった.5.両土壌ともに,A, Ap層の酸化物(OX),非晶質粘土鉱物(AC)および結晶性粘土鉱物(CC)の割合は概ね30, 40および30%であった.しかし,TNF-3の2A層,TNO-5の4Bw, 5ABおよび6A層ではOX, AC, CCの割合は約10, 30および60%で,A, Ap層よりOX, ACの割合が小さく,CCの割合が大きかった.6.両土壌ともに,結晶性粘土鉱物組成はいずれの層もアルミニウム-バーミキュライト(Al-Vt)およびクロライト(Ch)を主体とし,これにアルミニウム-スメクタイト(Al-Sm),スメクタイト(Sm)およびバーミキュライト(Vt)が含まれる組成であった.
著者
田中 綾乃 TANAKA Ayano
出版者
三重大学人文学部文化学科
雑誌
人文論叢 = Bulletin of the Faculty of Humanities and Social Sciences,Department of Humanities (ISSN:02897253)
巻号頁・発行日
no.34, pp.49-57, 2017

「アートの公共性」とはどのようなことを意味するのであろうか。一般的にアートとは、アーティストが自由に表現した個人的な産物であり、それが公共性を持ちうるかどうかは無縁である、と考えることができる。いわゆる「芸術のための芸術(Artforart・ssake)」という考え方は、現代の私たちには根強く支持されている。しかし、現在、私たちが考える「芸術」という概念そのものは、18世紀半ばのヨーロッパの思想において確立した概念である。そして、それとともに、アーティストと呼ばれる「芸術家」も登場することになる。もっとも、近代以前から古今東西、様々な芸術作品が存在し、その作品の作者がいることは自明のことであるように思える。だが、もしかしたら、そのような見方は、近代ヨーロッパで確立された芸術観を私たちが過去に投げ入れているのかもしれない。芸術の自律性を説く「芸術のための芸術」とは、芸術が宗教のため、あるいは一部の貴族や権力のためだけにあるのではなく、まさに芸術の自己目的を主張するものである。そして、そのことによって、アートは誰にでも等しく開かれた存在となるのである。本稿では、この近代的な芸術観によってこそ、アートは公共性を持ちうることになるという点をヨーロッパの近代思想、特に18世紀のドイツの哲学者イマヌエル・カントの美学理論を概観しながら論じていく。また、「アートの公共性」について具体的に考えるために、20世紀後半に登場した「アートマネージメント」という概念に着目する。本稿では、現在、様々な芸術作品や表現方法がある中で、「アートマネージメント」の必要性を考え、さらにはこの「アートマネージメント」という概念がアートと社会とを媒介する機能を果たすことを論証しながら、「アートの公共性」について一考察を行うものである。
著者
田中 良
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.30, pp.45-57, 2002-03

『失われた時を求めて』には様々な「斜め」が登場する。ホテルの一室の角に立て掛けられた大きな鏡、シャンゼリゼ公園のトイレから出てきたときの祖母の帽子、教会のステンドグラスから射し込む光、ルーサンヴィルに降る雨、ティー・パーティでのジルベルトの座り方など、それらは全て斜めであった。そしてそれらの意味するところはそれぞれ、日常に対する非日常、健康に対する病気、現実に対する非現実、罪に対する罰、規律に対する違反であり、全体的にいえば一般的規範からの逸脱である。一方、そうした日常的な状況、出来事とは別に、坂道、斜面という地誌的な意味での斜めもまた、この小説の要所に見出される。ジルベルトと出会うことになるさんざしの小道であり、ヴァントゥユ嬢のサディスムを覗き見ることになるモンジューヴァンの斜面などである。それらは思わぬ出来事を引き寄せる磁場であった。 すなわち、プルーストにとって斜めとは、今あるもの、今まであったものの否定であり、その否定を通しての統合、発見である。それによって斜めは、プルーストを、そして私たち読者を新たな認識の世界へと導いて行く。ところで、この斜めは作家プルーストにとって、決して単なるメタフォ一ルではなかった。ベッドで斜めの状態になりながら大作を紡ぎだした作家にとって、斜めは逃れることのできない現実であった。病気によって強制されたその姿勢が、健康人とは違った、創造的な視点を与えたといえるかもしれない。
著者
田中 廣壽 吉川 賢忠 山崎 広貴 上原 昌晃 小田 彩
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.7, pp.1373-1384, 2018-07-10 (Released:2019-07-10)
参考文献数
24
被引用文献数
1

骨格筋は,運動や姿勢保持のみならず,全身のエネルギー代謝調節においても基幹的役割を担っている.近年,骨格筋によるエネルギー代謝調節は,栄養状態のみならず,筋が受ける機械的刺激(張力等),酸素濃度,性ホルモン,時計遺伝子産物等の多彩な因子によって精緻な調節を受けることが明らかになってきた.また,骨格筋由来の代謝産物やサイトカイン様物質が他臓器機能を異所性に制御することも注目されている.今回,筆者らは,ステロイドによって誘発される筋萎縮(ステロイド筋症)の克服に向けて,骨格筋量制御におけるステロイドとその受容体の役割とともに,骨格筋―肝臓―脂肪シグナル軸を発見し,骨格筋による遠隔臓器の代謝,特に脂肪組織制御の分子機構の一端を解明した.本研究は,骨格筋と個体レベルのエネルギー代謝との連関―メカノ―メタボ カップリング―を医療に応用・展開する新しいパラダイムの構築に貢献するのみならず,多数の臓器システムの連関から生体を理解することの重要性を示している.
著者
窪田 瞬 平田 順一 小島 麻里 國井 美紗子 冨田 敦子 釘本 千春 土井 宏 上田 直久 田中 章景
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.370-373, 2014 (Released:2014-09-25)
参考文献数
10

要旨:症例は79 歳男性.糖尿病で内服加療を行っていたが,突然発症の右不全片麻痺を来し当院に救急搬送された.頭部MRI 拡散強調画像で左内包後脚に高信号を認めた.血糖が30 mg/dl と著明に低下しており50%グルコースを静注したところ症状は速やかに消失し,片麻痺の原因は低血糖によるものと考えられた.患者は過去にも低血糖による内包後脚のMRI 異常信号を呈し,右不全片麻痺を発症していた.低血糖発作による脳卒中様の片麻痺は過去にも報告がみられるが,同一部位に繰り返しMRI 異常信号を認めた例はこれまでにない.内包後脚が低血糖への脆弱性が高い脳組織の一つであることが示された.
著者
高木 寛之 大津 雅之 田中 謙 高木 寛之 大津 雅之 田中 謙 TAKAGI Hiroyuki OTSU Masayuki TANAKA Ken タカギ ヒロユキ Takagi Hiroyuki オオツ マサユキ Otsu Masayuki タナカ ケン Tanaka Ken
出版者
山梨県立大学
雑誌
山梨県立大学人間福祉学部紀要 (ISSN:21874344)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.125-137, 2017-03-16

本研究では、ソーシャルワーク実践現場として地域包括支援センターで活躍する社会福祉士と保健師に着目し、養成過程における地域アセスメントの視点の相違について明らかにし、今後の専門職養成への示唆を得ることを目的とした。その結果、地域アセスメントについて、両専門職養成課程において、語られる文脈に違いはあるものの、その項目については共通項を見出すことができ、地域の人々の状況や取り巻く地域資源だけでなく、文化やシステムの状況といった理解の必要性も重視していることがわかった。一方で、社会福祉士養成過程は、地域アセスメン項目やポイントを羅列するだけに留まり、保健師(看護師)養成過程では、地域をコアとサブシステムという構造的に把握し、データの例示と視点と判断・解釈の例示というそれらをより具体的に理解するための思考の枠組みと方向性を示している点に大きな違いがあった。
著者
石川 圭介 江口 祐輔 植竹 勝治 田中 智夫
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.J594-J604, 2001-10-25
被引用文献数
1

本研究では,イノシシへの嫌悪刺激としてイヌを利用することが有効か否かを検証するため,イヌとイノシシの対面テストを行った.供試犬には1頭の警察犬と4頭の家庭犬を用い,供試猪には10ヵ月間飼育管理された約16カ月齢の個体6頭を用いた.対面は供試犬および供試猪を実験施設に馴致した後,1日3回,8:00~9:00,12:00~13:00,16:00~17:00の時間帯に行い,各供試犬を2日間で6頭すべての供試猪に対面させた,供試犬は供試猪との対面が始まると,対面前と比較して有意に供試猪の方に視線を向け(P<0.01),供試猪に向かって吠えて(P<0.05),警戒を示した.また,吠えの頻度には個体によって差がみられた(P<0.01).供試犬の供試猪に対する注視と吠えは,供試猪が走って逃げる直前の3秒に有意に多くみられ(それぞれ,P<0.05,P<0.01),この二つの行動が供試猪にとって嫌悪刺激となっていることが示唆された.本研究の結果,イノシシに対して回避反応を引き起こさせるイヌの行動は,視線を対象に向ける,対象に向かって発声するなどであったが,これらの行動はイヌによって個体差が大きかった.このことから,イヌをイノシシに対する嫌悪刺激として効果的に用いるためには,それに適したイヌの行動を見極め,行動に基づいて個体を選択する必要があると考えられた.
著者
石井 学 阪本 亘 東郷 香苗 中澤 徹 島﨑 聡立 田中 真衣 大手 辰哉 松澤 寛
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.27-41, 2021 (Released:2021-01-31)
参考文献数
59

医薬品開発におけるリアルワールドデータ (RWD) およびリアルワールドエビデンス (RWE) の活用は, 開発の効率化, 患者の新薬へのアクセス向上, 二次利用データの活用による医療機関側のデータ収集の負担軽減など, さまざまな立場でのメリットが期待される. 一方で, RWD/RWEの承認申請での受け入れ可能性は日米を含むいずれの国においても不明確な点が多い. そこで, 日米の規制当局におけるRWD/RWEに関する規制と基盤整備プロジェクトおよび承認申請でのRWE活用事例について調査した. 規制や基盤整備プロジェクトは, 日本では未承認薬や適応外使用に関するもの, 市販後の安全対策を目的としたものおよびレジストリデータ活用に関連する取り組みがみられた. 一方, 米国では, FDAから承認申請へのRWD/RWE活用を評価するための枠組みが示されていた. また, FDAは製薬や医療データベース分野の民間企業やアカデミアと協業して, RWD/RWEの活用の可能性や懸念点を検討するプロジェクトを実行していた. FDAへの承認申請でRWEがエビデンスとして採用・不採用となった事例からは, エビデンスとしての適切性や信頼性が問われる点が明らかになった. また, 米国ではレジストリデータ, もしくは電子健康記録 (EHR) データにもとづく事例が認められたが, 日本ではレジストリデータが主に活用されていた. わが国において承認申請へのRWD/RWE活用を促進するためには, 多様なデータソースを利用できる環境整備や, 信頼性のあり方の共通目線をもつことが重要である.
著者
田中 柚美子
出版者
国学院大学出版部
雑誌
国学院雑誌 (ISSN:02882051)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.p23-37, 1975-03
著者
田中 裕
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.117-122, 1989-12-25 (Released:2009-07-23)
参考文献数
9

1964年に発表されたベルの不等式の実験的検証は1970年代から複数の科学者グループによって遂行されたが, 1982年にフランスの物理学者アラン・アスペによって行なわれた光子対の偏極相関の範囲を測定する実験は, 実験の精度の高さと遅延選択の採用による非局所的相関の確認によって, 量子物理学の解釈をめぐる原理的諸問題の考察に新しい局面を拓いたといえる(1)。嘗ては思考実験にすぎなかったものが技術の進歩によって現実の実験となることによって, 1930年代にボーアとアインシュタインの間でなされた量子力学の完全性をめぐる哲学的論争が新しい姿で甦ることとなった。この論文は二部に分かれる。第一部ではEPRの議論に要約されるアインシュタインの量子力学批判を適切な形で再定式化することによって, ベルの定理との論理的な関係を明らかにすることを目的とする。ベルの不等式の実験的反証によって明らかとなった「分離不可能性」の事実を確認したあとで, 第二部ではEPR相関と相対性理論の基本思想との関係を主題とする。
著者
田中 敏郎
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.433-442, 2015 (Released:2016-04-27)
参考文献数
64
被引用文献数
2 4

インターロイキン6(IL-6)は,多彩な作用を有するサイトカインで,病生物の排除や創傷治癒に役割を果たす.しかし,その過剰なまた持続的な産生は,炎症性疾患の発症や進展に関与することが示され,ヒト化IL-6受容体抗体トシリズマブが開発された.臨床試験での有効性,安全性評価を踏まえ,現在,トシリズマブは慢性炎症性疾患である関節リウマチ,若年性特発性関節炎,キャッスルマン病に対する治療薬として使用されている.また,世界で進められている臨床研究や試験により,IL-6阻害療法は,他の慢性炎症性疾患のみならずサイトカインストームを呈する急性全身性炎症性疾患に対しても有効な治療法となる可能性がある.
著者
名取 通夫 土佐 寛順 田中 伸明 川俣 博嗣
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.419-424, 1996-11-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
7

「朮」は大きく白朮と蒼朮に分類され, 白朮は利水・補剤として, 蒼朮は発汗・除湿剤として用いられてきた。しかし, 実際に白朮と蒼朮を入れ換えることにより, 自覚症状がいかに変化するかは検討されていない。今回我々は, 漢方方剤中の白朮と蒼朮を4週間ごとに入れ換えて処方検討することにより, 以下のことを明らかにした。1) 関節痛がある症例では蒼朮を用いた方が有効率が高い。2) 有効例では「飲みやすい」と答えた人が60%で,「飲みにくい」と答えた人はわずかに9%であり, 味覚が効果判定の一つの指標になり得る。
著者
田中 大祐
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.77-90, 2017-03-31 (Released:2017-05-25)
参考文献数
37

医薬品は様々な疾病の治療やコントロールに重要な役割を果たしている.しかしながら,医薬品はこのようなベネフィットをもたらす一方で,有害反応を引き起こすこともある.医薬品は,そのリスクとベネフィットを正しく理解し,適正に使用されることにより,その価値を最大限に発揮することができる.そのためには,臨床使用における医薬品の安全性の評価とモニタリングが欠かせない.つまり,適切に機能するファーマコビジランスシステムが必要である.WHO は公衆衛生に関する国連の専門機関であり,世界の人々の健康を守るための広範な活動を行っている.この活動には,ファーマコビジランスも含まれており,国際医薬品モニタリング制度を実施している.WHO のファーマコビジランス活動は,WHO 本部にある必須医薬品部の医薬品安全グループが総括している.WHO はファーマコビジランスを⌈医薬品の有害な作用やその他の医薬品に関連する問題の検出,評価,理解及び予防に関する科学と活動⌋と定義している.⌈その他の医薬品に関連する問題⌋には,例えば,規格外医薬品,医療過誤,有効性の欠如,乱用・誤用,偽造医薬品などが含まれる.国連ミレニアム開発目標をはじめとした国際社会の努力を通じて,必須医薬品へのアクセスは世界的に改善されてきている一方で,ファーマコビジランスシステムの発展は,まだ十分とはいえない状況である.ファーマコビジランスシステムが十分ではない国にも新たな医薬品が導入され始めている現状は非常に懸念される.本稿では WHO のファーマコビジランス活動の中心となる WHO 国際医薬品モニタリング制度について,その経緯,概要および現状について取り上げるとともに,WHO におけるファーマコビジランス活動の中核を担っている医薬品安全グループが実施している活動,業務内容について記載する.
著者
田中 麗子 和田 康夫
出版者
協和企画
巻号頁・発行日
pp.482-487, 2019-05-01

伝染性膿痂疹は小児に好発する表在性細菌感染症である.夏季に多く虫刺されや外傷をきっかけに紅斑,水疱,びらんを生じる.水疱が飛び火するため,別名「とびひ」と呼ばれる.原因菌に黄色ブドウ球菌とA群β溶血性レンサ球菌があるが,近年メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)によるものが増加している.臨床像から水疱性膿痂疹と痂皮性膿痂疹に分類され,痂皮性膿痂疹は全身症状(発熱,所属リンパ節腫脹,咽頭発赤,咽頭痛など)を伴うことがある.従来,水疱性膿痂疹の場合は黄色ブドウ球菌,痂皮性膿痂疹の場合はA群β溶血性レンサ球菌がそれぞれ原因菌とされてきた.しかし,痂皮性膿痂疹では黄色ブドウ球菌とA群β溶血性レンサ球菌の両方が分離されることがあり,臨床像と原因菌は必ずしも一致しないとの報告もある1).また,原因菌がA群β溶血性レンサ球菌の場合は後日,糸球体腎炎を併発することがあるため尿検査が必要である.原因菌を特定することは治療や合併症を考えるうえで重要である. 伝染性膿痂疹はMRSAが原因となることがあり,治療に難渋することがある.起因菌がMRSAの際の抗菌薬選択には感受性試験結果が重要となるが,治療対象は小児である.小児には使用しづらい薬剤も多い.本稿では伝染性膿痂疹の治療として統計学的結果をもとに検討した.(「はじめに」より)