著者
細馬 宏通 坊農 真弓 石黒 浩 平田 オリザ
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.60-68, 2014-01-05 (Released:2014-01-07)
参考文献数
15
被引用文献数
2

When the presence and the action of an android reach to those of human, andoroid can derive multi-modal action from human. How can human parties act with the android to organize the interaction and find the android as the social actor? We observed the development process of the play ``Three Sisters, Android Version'', and analyzed the multi-modal interaction between the android and human players in the process. As the result, the actors express the assessment of human likeness of the android with their utterances and body movements, and the border between human and machine was expressed with each modality in different way. Moreover, these expressions are not one-way product by the writer and director, but the product of repeated interactions between the actors and the android through the practice and rehearsals. Finally we discuss the possibility of ``media equation'' study using the direct observations of man-machine interaction.
著者
細馬 宏通
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.190, pp.83-86, 2011-08-19
参考文献数
4

漫才、コントにおけるボケとツッコミはどのようにマルチモーダルな相互作用を達成させているのだろうか。この問いを考えるために、ボケ発語中、もしくは直後とツッコミ行為との間に発生する「身体ノリ」の出現頻度と様式のバラエティを調べた。その結果、「身体ノリ」は観客の有無にかかわらず行われる一方で、観客のいる方が発生しやすく、また、同じネタでも観客の有無によってその表現は異なることがわかった。これらから考えると、「身体ノリ」は、あらかじめ決まった動作というよりは、その場でそのつど産み出される身体動作である可能性がある。さらに、「身体ノリ」の事例についてマイクロ分析を行ったところ、「身体ノリ」とツッコミ行為との間の切断点を強調すべく、最小単位の発語や動作の断片が挿入されることがあることが判った。また、観客の笑いは、ボケに含まれる笑いの認知点の直後に起こるとは限らず、ツッコミ役の行う「身体ノリ」とツッコミ行為によって段階的に起こりうることが判った。
著者
細馬 宏通 村岡 春視
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.230-237, 2022-09-30 (Released:2022-10-19)
参考文献数
9

遠隔コミュニケーションの相互行為分析においては,レイテンシ(遅延)をどのように扱うかが重要となる.本論では,参加者全員を機器なしに同時に俯瞰する絶対時系列と,各参加者から見た相対時系列とを区別し,レイテンシが各参加者にどのような影響を与えるかを,単発のできごとのずれ,同期のずれ,参加者間で認知される発話間沈黙の相違,複数の聞き手が次の話し手として同時に発話を開始する場合のオーバーラップ,聞き手による次の話し手選択と話し手による継続とのオーバーラップの場合に分けて図式化した.また,レイテンシを伴うコミュニケーションの収録方法,および,既成の動画データを分析する際に相対時系列を再現する方法について述べ,その具体的な手続きを簡単な事例分析で例示した.
著者
細馬 宏通
出版者
Japanese Cognitive Science Society
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.113-124, 2014

Recent studies of interaction research have revealed that mind in the interaction is<br> embodied in gesture in the material world as the interaction resource. In this study,<br>we research interaction of turning pages each other when they decide the order of the<br> restaurant. Using a virtual menu with 6 pages, 2 participants in the experiment decided<br> to take one dish for each one for each page. Focusing on when and how the partici-<br>pants turn each page, we found that both participants touch or follow the page when<br> it was turned in 64/135 cases. The timing of the turning is organized not only by their<br> utterance of announcing their order but also the body movement of page manipulation.<br> They used the spatio-temporal pattern of page manipulation such as moving their hand<br> from the center to the edge of the page or lifting the edge of the page slightly. These<br> pre-sequences of turning pages, which were step by step process of sequential move-<br>ments with pauses and were embodied with material world of the page structure, seem<br> to project the next movement of page manipulation to prepare the simultaneous page<br> turning by the participants.
著者
細馬 宏通
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.113-124, 2014

Recent studies of interaction research have revealed that mind in the interaction is<br> embodied in gesture in the material world as the interaction resource. In this study,<br>we research interaction of turning pages each other when they decide the order of the<br> restaurant. Using a virtual menu with 6 pages, 2 participants in the experiment decided<br> to take one dish for each one for each page. Focusing on when and how the partici-<br>pants turn each page, we found that both participants touch or follow the page when<br> it was turned in 64/135 cases. The timing of the turning is organized not only by their<br> utterance of announcing their order but also the body movement of page manipulation.<br> They used the spatio-temporal pattern of page manipulation such as moving their hand<br> from the center to the edge of the page or lifting the edge of the page slightly. These<br> pre-sequences of turning pages, which were step by step process of sequential move-<br>ments with pauses and were embodied with material world of the page structure, seem<br> to project the next movement of page manipulation to prepare the simultaneous page<br> turning by the participants.
著者
細馬 宏通
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.55-69, 2022-09-30 (Released:2022-10-19)
参考文献数
25
被引用文献数
1

コロナ禍によって,仕事のツールとして在宅勤務でのオンライン・ミーティングが導入されることが増えてきた.こうしたミーティングでは,仕事中に子どもが参入する事態が起こりうる.仕事と子育てが葛藤を起こすこのような状況で,子どもはどのように大人が自明としている世界に参与することができるだろうか.本研究では,BBCニュースのインタビューでインタビュイーの子どもが入り込んだ事例を発話,視線変化,身体動作に注目して詳細に分析し,この問題を検討した.事後の報道では子どもの発話と行動の一部が切り取られ,子どもはあたかも大人のルールに「侵入」したかのように扱われていた.しかし,分析の結果,子どもは単に仕事中の母親とのコミュニケーションを一方的に求めるのではなく,母親と司会者の行動をもとに,その場で為しうる行動は何かを読み解き,発話・視線・動作のタイミングを調整していることがわかった.また,子どもは司会者による名前を用いた呼びかけの形式を資源として用い,その形式に沿った発話連鎖を組織化することで,コミュニケーションを維持していた.子どもは,報道とは異なり,限られた手がかりをもとに相互行為に主体的に参与し,大人が自明視しているルールを明らかにする存在であることが明らかになった.
著者
飯田 仁 岡本 雅史 大庭 真人 石本 祐一 阪田 真己子 細馬 宏通 榎本 美香
出版者
東京工科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

計2回の漫才収録を通じ,漫才師および観客のデータを収集した.ツッコミ役が聞き手は,ツッコミ・同意のどちらを行うのかにより,ボケ役への顔を向ける潜時に違いがあることが分かった.また,モーションキャプチャによりツッコミを行う際に顔の向きとともに,近づくということが確認された.最後に,「身体ノリ」は観客の有無にかかわらず行われる一方で,観客のいる方が発生しやすく,また,同じネタでも観客の有無によってその表現は異なることがわかった.
著者
細馬 宏通
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
JSAI大会論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.3J4OS20c3, 2013

<p>ババ抜きは子供から大人まで遊べるポピュラーなゲームだが、実際に観察すると、ゲームの開始場面と、誰か一人が手札をすべて場に捨てて勝ち抜けする場面でプレイが頻繁に停滞することがわかる。本発表ではこれらのトラブル場面を観察し、それが「起点」「順番ルール」「役割ルール」の問題であり、「自己」の視点に関わることを示す。その上でババ抜きにおける「自己」の視点問題が身体相互行為によって安定する過程を記述する。</p>
著者
菅原 和孝 藤田 隆則 細馬 宏通
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.182-205, 2005-09-30

民俗芸能の伝承を身体資源の配分過程として捉え、静岡県水窪町の西浦田楽における世襲制の変容を解明する。また、次世代への継承を実現する場としての練習に注目し、そのやりとりの特質を分析する。西浦田楽の核となるのは毎年旧暦1月18日に挙行される「観音様のお祭り」である。ここで奉納される舞は地能33演目、はね能11演目(うるう年は12演目)である。地能は能衆と呼ばれる24戸の家に固定した役として割りあてられ、父から長男へ世襲によって継承されてきた。200年以上の歴史をもつこの制度は、昭和40年代初頭から農村の過疎化により崩壊の危機に直面した。14戸に減少した能衆組織内で役の大幅な再配分が行われたが、とくに本来は役を持たなかったにもかかわらず技能に秀でた成員に、多くの役が負わされた。演者の固定しないはね能において身体技法の功拙が競われてきたことが、こうした再配分を可能にした。近年、はね能に関与している家のすべては、父と長男の二世代が田楽に参加しており、継承が急速に進行している。練習場面では、太鼓および練習場の物理的構造という資源を最大限活用する教示と習得の工夫が発達している。初心者(「若い衆」)の所作・身振り・動作を継年的に観察すると、困惑や依存から納得への明瞭な推移がみられる反面、年長者によって開示される知識が断片的で不透明であることからくる混乱も顕著であった。祭り前の集中的な練習によってある地能の舞いかたが若い衆に促成で植えつけられたことは、継承を急激に進めようとする年長者たちの決意を示すものであった。これらの分析結果に基づき、正統的周辺参加理論、および民俗芸能において「身体技法的側面」が突出するプロセスに関する福島真人の理論の適用可能性を検討するとともに、練習場面にみられる「楽しさ」を分析する展望を探る。
著者
城 綾実 細馬 宏通
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.103-119, 2009 (Released:2010-06-11)
参考文献数
23
被引用文献数
9

How do participants in multi-party conversations project and coordinate the timing and content of their gestures when such gestures are exchanged simultaneously? This paper considers examples of the Simultaneous Gestural Matching (SGM) of spontaneous gestures to examine gestural coordination during conversation. Detailed analyses show that (1) the first utterance of an adjacent pair projects the timing and content of the subsequent gesture; (2) the first recipient initiates a gesture unit or a phrase to respond to the first part of the pair; (3) the other recipients provide gestures that synchronize with the gesture of the first recipient; (4) the parties focus their eye movements on monitoring the gestures made by other participants; (5) the parties control the micro-timing of the gesture phases in the gesture unit or the phrase; and (6) the entire SGM process enables differences in gestures to reveal differences among the parties in terms of their knowledge about the topic. We constructed a simple model of SGM for purposes of further discussion.
著者
榎本 美香 寺岡 丈博 坊農 真弓 傳 康晴 細馬 宏通 高梨 克也 高梨 克也
出版者
東京工科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

祭りの支度を通じて以下に示す共同体固有の〈心体知〉を後継者世代が仲間内や現役世代と多対多の相互作用から集団学習するメカニズムを解明した。 (1) 心: 成員たちがもつ価値観や見識、信頼感といったエートス (e.g. 他者への気配り, 自己犠牲の精神) (2) 体: 成員間で力や身体位置の配分が必要な協働活動技法 (e.g. 唄のリズムと木や縄の操作との同調) (3) 知: 祭具の名称や用法、祭りのしきたりといった共有知識 (e.g. 社各部位の木材や縄結びの呼称)共同体〈心体知〉を学習する成員たち自身のやり方を相互行為分析から炙り出し、その学習のメカニズムを解明した。
著者
細馬 宏通
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 = The Japanese journal of language in society (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.102-119, 2012-09

高齢者用グループホームで行われるカンファレンスでは,介護者が報告中に過去の介護行為や入居者の行為をジェスチャーを用いて説明する場面が多発する.こうした場面では,成員どうしは単に言語だけではなく,身体動作も含む活動をお互いにやりとりすることで現実を構成していると予測される.かつてGarfinkelは,社会成員が言語的資料を手がかりに現実を構成する方法(「ドキュメント的解釈法」)を分析した.では,介護者は他の介護者の身体動作を手がかりに,いかに現実を構成し,身体的資料によるドキュメント的解釈法(「身体的解釈法」)を実践しているのだろうか.この問題を考えるために,介護者どうしが発話とジェスチャーを用いて議論する行為連鎖を選び,マイクロ分析を行った.その結果,ジェスチャーの構造の一部が介護者間で繰り返される「相互行為的キャッチメント」が観察された.また,相互行為的キャッチメントには,入居者の身体に対する観察結果や具体的な介護方法に関する,発語には含まれない知識が埋め込まれていた.さらに,個人間でジェスチャーが繰り返される過程で,先行するジェスチャーにはない新たな要素が付け加わり,知識が次々と更新されていく過程があることも明らかになった.ジェスチャーの微細な構造は個人間に開かれており,介護者は先行する別の介護者のジェスチャーを発語とともに関連づけ,身体的解釈法を実践していることがわかった.
著者
菅原 和孝 木村 大治 舟橋 美保 細馬 宏通 大村 敬一 岩谷 洋史 亀井 伸孝 岩谷 彩子 坊農 真弓 古山 宣洋
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、身ぶりと手話を微視的に分析し、対面相互行為の構造を身体性の基盤から照射した。また、通文化的な視野から、映像人類学、コミュニケーション科学、生態心理学の思考を交叉させ、マルティ-モーダルな民族誌記述の土台を作った。とくに、アフリカ狩猟採集民サン、カナダ・イヌイト、インドの憑依儀礼と舞踊、日本の伝統的な祭礼、日本酒の醸造、ろう者コミュニティ、数学者の討議といった多様な文脈における発話と動作の連関を解明し、記憶の身体化を明らかにした。さらに、過去の出来事が語られるプロセスを、表情をおびた身ぶりとして了解することにより、表象と知覚の二項対立を乗り超える理論枠を提示した。
著者
細馬 宏通
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.102-119, 2012-09-30

高齢者用グループホームで行われるカンファレンスでは,介護者が報告中に過去の介護行為や入居者の行為をジェスチャーを用いて説明する場面が多発する.こうした場面では,成員どうしは単に言語だけではなく,身体動作も含む活動をお互いにやりとりすることで現実を構成していると予測される.かつてGarfinkelは,社会成員が言語的資料を手がかりに現実を構成する方法(「ドキュメント的解釈法」)を分析した.では,介護者は他の介護者の身体動作を手がかりに,いかに現実を構成し,身体的資料によるドキュメント的解釈法(「身体的解釈法」)を実践しているのだろうか.この問題を考えるために,介護者どうしが発話とジェスチャーを用いて議論する行為連鎖を選び,マイクロ分析を行った.その結果,ジェスチャーの構造の一部が介護者間で繰り返される「相互行為的キャッチメント」が観察された.また,相互行為的キャッチメントには,入居者の身体に対する観察結果や具体的な介護方法に関する,発語には含まれない知識が埋め込まれていた.さらに,個人間でジェスチャーが繰り返される過程で,先行するジェスチャーにはない新たな要素が付け加わり,知識が次々と更新されていく過程があることも明らかになった.ジェスチャーの微細な構造は個人間に開かれており,介護者は先行する別の介護者のジェスチャーを発語とともに関連づけ,身体的解釈法を実践していることがわかった.
著者
劉 礫岩 細馬 宏通
出版者
日本質的心理学会
雑誌
質的心理学研究 (ISSN:24357065)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.46-62, 2017 (Released:2020-07-10)

スポーツのテレビ実況中継において,アナウンサーと解説者は絶えず変化する映像に現れる変化や出来事をことばで迅速に指し示す必要に迫られる。本研究はカーレースのテレビ実況中継をデータに,アナウンサーと解説者はどのようにことばによる指し示しを行い,映像と発話を結び付けるかについて分析を行った。その結果,アナウンサーと解説者は,「あっ」や「ほら」などの間投詞と,「こ」系指示表現を用いて,映像内の変化や出来事を異なる仕方で指し示すことがわかった。発話冒頭に置かれる指示表現「これ」は,現在映像内の状況にほかの参加者の注意を惹きつけるだけでなく,現在の状況について,話者はすでになんらかの仕方で把握していることを指標する。一方間投詞「ほら」は,映像に現れた話者がすでに述べた意見や予想と適合する出来事を指し示すために用いられる。これらのことばによる指し示しは,単に発話と映像を結び付けるだけでなく,実況におけるアナウンサーと解説者の職業的なアイデンティティの実現とも結びついていることがわかった。