著者
上茶谷 若 井上 嘉則 齊藤 満 山本 敦
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.613-619, 2012-07-05
参考文献数
24
被引用文献数
2

親水性基材樹脂にジアリルアミン─アクリルアミド共重合体を導入した後にアセチル化をした親水性固定相(Ac-DAA樹脂)を調製した.ジアリルアミン─マレイン酸共重合体を導入した固定相(DAM樹脂)を比較対象として,水溶性化合物の保持特性及び静電相互作用の発現度合いについて調べた.Ac-DAA樹脂では,DAM樹脂よりも約2.5倍共重合体が導入されたが,保水量及び含水量には差は見られなかった.両固定相とも核酸塩基,ヌクレオシド及び配糖体を親水性相互作用により明確に保持可能であったが,Ac-DAA樹脂では核酸塩基に対して特異的な親和性が観察された.Ac-DAA樹脂は,DAM樹脂よりも強い静電相互作用を発現したが,移動相の溶液pHを8以上にすることで静電相互作用の抑制が可能であった.Ac-DAA樹脂は,移動相の溶液pHを適切に調節することにより,イオン性化合物を含む水溶性化合物の分離に有効であることが分かった.
著者
小林 泰之 上茶谷 若 井上 嘉則 山本 敦
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.635-639, 2011-08-05
参考文献数
17

リンゴ果汁中のカビ毒であるパツリンを分析するための前処理法に,両性イオン性高分子を固定した親水性相互作用型固相抽出剤(DAM吸着剤)を適用した.リンゴ抽出物を1% エタノール-ヘキサン溶液に溶解後,DAM吸着剤50 mgを充填した固相抽出カートリッジに負荷することで,パツリンは定量的に吸着された.吸着されたパツリンはアセトニトリル2 mLによって定量的に溶出された.アセトニトリル溶出液を0.01% 酢酸水溶液1 mLに転溶後,HPLCに供した.パツリンのピーク近傍には定量の妨害となる夾雑ピークは検出されなかった.本前処理法全工程でのパツリンの回収率は77.0~82.1% で,RSDは0.9~2.6% であった.また,パツリンの検出限界は1 &mu;g kg<sup>-1</sup>であった.本法を市販リンゴ果汁及びリンゴ果実中のパツリン分析に応用したところ,土壌中で腐らせたリンゴ果実中のパツリンが精度よく定量された.
著者
中島 康夫 山崎 真樹子 鈴木 清一 井上 嘉則 上茶谷 若 山本 敦
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.349-354, 2013-04-05
参考文献数
30
被引用文献数
1

イオン性化合物分析における金属酸化物系吸着剤の選択的抽出剤としての適用性を調べるため,グリホサート[<i>N</i>-(phosphonomethyl)glycine, GLYP]を測定対象としてジルコニア及びチタニアの抽出・溶出特性を調べた.ジルコニア及びチタニアともリン酸化合物に対して高い親和性を示すとされているが,本検討で用いたチタニアからはGLYPの漏出が観察された.一方,ジルコニアはGLYPを明確に保持し,試料溶液を250 mL負荷しても良好に捕捉することができた.ジルコニアに捕集されたGLYPは0.4 M水酸化ナトリウム2 mLで定量的に溶出できた.この溶出液を,サプレッサモジュールを用いて中和させることで,電気伝導度検出─イオンクロマトグラフィーでGLYPを高感度検出することが可能であった.本法を都市型河川水に適用したところ,1 &mu;g L<sup>-1</sup>程度のGLYPを定量することができた.
著者
中澤 章 唐 寧 井上 嘉則 上茶谷 若 加藤 敏文 齊藤 満 小原 健嗣 鳥羽 陽 早川 和一
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
産業医大誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.69-74, 2017

<p>著者らが開発した繊維状吸着材(DAM不織布)は,両性イオン型高分子であるジアリルアミン‐マレイン酸共重合体(diallylamine-maleic acid copolymer: DAM)を含有し,繊維表面に水和層を形成する.本研究では,悪臭物質の一つである半揮発性有機酸(C1-C5)を対象に水溶液だけでなくガス状でもDAM不織布の吸着特性評価を行った.まず,水溶液中のギ酸はDAM不織布の水和層へ溶解した後,DAMのイミノ基との静電相互作用で吸着することがわかった.一方ガス状では,ギ酸,プロピオン酸,酪酸,吉草酸,イソ吉草酸について高い吸着能を有し,吸着量は曝露時間に依存して増加する傾向があった.ガス状有機酸に対する吸着も水溶液と同様の機序で生じていると考えられるが,さらに酢酸を除く有機酸の吸着速度定数と空気 / 水分配係数(log <i>K<sub>aw</sub></i>)が良好な相関性を有したことから,DAM不織布は大気中から不織布表面に形成される水和層へ移行性が高い親水性化合物に対するほど高い選択性をもつことが示された.</p>
著者
井上 嘉則 上茶谷 若 山本 敦
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.79-92, 2014
被引用文献数
5

親水性基材に両性イオン型化合物であるスルホベタイン及びジアリルアミン─マレイン酸共重合体(DAM)を導入した新規な保水性分離剤を調製し,水溶性化合物に対する抽出・分離特性を調べた.これらの保水性分離剤はイオン交換樹脂と同等の保水能力を示し,アセトニトリル中から水溶性化合物を効率よく抽出可能であった.特に,DAM導入分離剤はグルコースや配糖体も定量的に固相抽出可能であった.高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によりDAM導入分離剤の保持特性を調べたところ,水溶性化合物の保持(Log <i>k</i>)はLog <i>P</i><sub>o/w</sub>と良好な相関を示し,水和層への分配を主相互作用とすることを明らかとした.イオン性化合物は静電相互作用が加味されて保持されるが,溶離条件により静電相互作用の発現度合いを調節可能であった.さらに,DAMを混合した繊維状吸着剤も調製し,固相抽出剤としてだけでなく,大気中水溶性臭気成分の吸着剤としても有用であることを実証した.
著者
上茶谷 若 齊藤 満 井上 嘉則 加藤 敏文 塚本 友康 多田 隼也 亀田 貴之 早川 和一
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.371-376, 2011
被引用文献数
1

両性イオン型高分子をレーヨンに混合紡糸した臭気物質のための新規な繊維状吸着材を試作し,水溶性臭気物質に対する吸着・除去特性を調べた.アンモニアに対する吸着特性を調べたところ,本繊維状吸着材は,繊維母材であるレーヨンと比較して明らかに大きい吸着量と吸着速度を示した.また,消臭加工繊維製品認証試験に従った減少率評価試験を行ったところ,本繊維状吸着材は酸やアミンに対して高い減少率を示したが,アルデヒドや硫化水素に対しては低い値であった.これらの結果から,本繊維状吸着材の吸着機構は,吸着材表面に形成される水和層への分配と両性イオン型官能基への静電的相互作用であることが示唆された.さらに,本繊維状吸着材の再利用の可能性について調べたところ,酢酸に対しては水洗浄により再生可能であることが判った.本検討の結果,本繊維状吸着材は水溶性でかつイオン性を有する臭気物質の吸着・除去に適用可能であると考えられた.
著者
塚本 友康 清水 愛 山本 敦 小玉 修嗣 上茶谷 若 井上 嘉則
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.58-64, 2010
被引用文献数
1

夾雑成分の多い試料から親水性農薬を簡便かつ迅速に測定するために,陰イオン交換基と長鎖疎水基を併せ持つ新規逆相陰イオン交換型(RP-SAX) 固相抽出剤を合成した.RP-SAX固相抽出剤は,グリシジルメタクリレート,グリセリンジメタクリレート,ステアリルメタクリレートを懸濁重合によって合成し,陰イオン交換基としてジメチルエチルアミンを導入した.合成したRP-SAXをシリンジ型カートリッジに充填し,野菜抽出液中からのアセフェートの固相抽出により,その機能を評価した.野菜抽出液中のアセフェートは定量的にRP-SAXに吸着し,50% (v/v) メタノールで調製した 30 mmol/L リン酸三ナトリウム溶液 3 mL で溶出された.その溶出液をHPLC分析した.アセフェートの検出は紫外可視光検出器で行った.アセフェートは 5 mg/L となるように野菜抽出液に添加した.測定の結果,野菜抽出液中からのアセフェート回収率は77~100% であった.
著者
梶原 健寛 前馬 恵美子 加賀谷 重浩 井上 嘉則 上茶谷 若 梁井 英之 齊藤 満 遠田 浩司
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.629-634, 2011-08-05
参考文献数
22
被引用文献数
1 5

カルボキシメチル化ペンタエチレンヘキサミン(CM-PEHA)を導入したキレート樹脂を用いてAsを分離濃縮することを目的とし,Fe(III)を担持させたCM-PEHA型樹脂を用い,Asの吸着・溶出に関する基礎検討を行った.Fe(III)担持CM-PEHA型樹脂は,As(V)をpH 4 - 6で最大に吸着した.As(III)はほとんど捕集されなかったが,次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いてAs(III)をAs(V)に酸化することにより吸着可能であった.吸着したAs(V)は水酸化ナトリウム溶液を用いることで容易に溶出でき,ICP発光分光分析にて定量可能であった.これらにより,試料水中のAs(V)量,As(III)とAs(V)との合量をそれぞれ求めることが可能であり,これらの差からAs(III)量を求めることでAs(III)とAs(V)とを分別定量できる可能性が示された.本法は,地下水認証標準物質(ES-H-1)に含まれるAsの定量に適用可能であった.
著者
若林 祐次 奥平 雅士
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会研究会講演予稿
巻号頁・発行日
vol.6, pp.17-18, 2007

データグローブを操作デバイスとしていわゆる"デコピン"の動きを検出し、指を弾く動作により球体を次々と生成してそれらの運動が相互に干渉しあうインタラクティブCG を制作した。体感的な操作から連想される結果に対し、CG ならではの、現実ではありえない動きを加えることで見た目にも面白みのある表現を実現した。
著者
鈴木 幸久 清澤 源弘 若倉 雅登 石井 賢二
出版者
日本神経眼科学会
雑誌
神経眼科 (ISSN:02897024)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.405-410, 2017-12-25 (Released:2018-01-29)
参考文献数
14

眼瞼痙攣は,眼輪筋の間欠性または持続性の不随意な過度の収縮により開瞼困難をきたす疾患である.局所性ジストニアの一型であり,病因についてはまだ解明されていないが,脳の機能的異常が原因と考えられている.眼瞼痙攣患者の自覚症状の訴えは,「まぶしい」,「眼を開けていられない」など多様で,特に初期では眼輪筋の異常収縮がみられないことも多い.眼瞼痙攣と鑑別を要する疾患として,ドライアイ,眼瞼ミオキミア,片側顔面痙攣,開瞼失行症などが挙げられるが,これらの疾患は眼瞼痙攣に合併することもある.診断は,問診,視診,既往歴などから総合的に判断するが,特に明らかな眼輪筋の異常収縮がみられない症例に対しては,速瞬,軽瞬,強瞬などの誘発試験を用いると有用である.また,薬剤性眼瞼痙攣も存在するためベンゾジアゼピン系薬などの服薬歴の聴取も必要である.ポジトロン断層法と18F-フルオロデオキシグルコースを用いて本態性眼瞼痙攣患者21例,薬剤(ベンゾジアゼピン系)性眼瞼痙攣患者21例,ベンゾジアゼピン系薬を使用している健常人24例の脳糖代謝を測定した.本態性および薬剤性眼瞼痙攣群では,健常群63例と比較して両側視床の糖代謝亢進がみられ,薬剤使用健常人においても視床の糖代謝亢進がみられた.眼瞼痙攣では,基底核-視床-大脳皮質回路の賦活化によって視床の糖代謝亢進がおこっており,それが病因の一つになっていると推測した.
著者
若山 滋 藤原 隆
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文報告集 (ISSN:09108017)
巻号頁・発行日
vol.405, pp.141-147, 1989
被引用文献数
6 1

We find out the Japanese emotion in mediaeval times with one's architectural space, as the result of analizing and considering the architectural terms in KOKINSYU and SHINKOKINSYU. In KOKINSHU,in the terms represent house, YADO is superior to other terms. And it find out the pessimism is related life from poet that include SUMAU. In SHINKOKINSHU, YADO is ordinary used, and IHO is appeared. These mean that the aesthetic of temporary and WABI residence are developed in emotion of this age. And we find out that emotion of architectural space grew variety from the terms represent part increased.
著者
楳田 高士 栗林 恒一 笠原 由紀 若山 育郎
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.137-140, 2002-05-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
10

B型肝炎キャリアの被験者に鍼刺入を行い、抜鍼後の鍼体にB型肝炎ウイルス (HBV) が付着しているのかをPolymerase Chain Reaction (PCR) 法を用いて検討した。その結果、鍼体からHBVのDNAを検出した。治療後の鍼の取り扱いに注意が必要である。
著者
田中 秀和 三上 明子 藤澤 哲也 若林 進
出版者
Japanese Society of Drug Informatics
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.111-120, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
10

Objective: There are prescription medicines with design-like (misunderstanding) bisection lines although these are not admitted as bisection lines according to dosage instructions.  We often find differences in identifying bisection lines among medical facilities in case of same tablets.  We conducted a survey about identifying bisection line-like design on tablets by pharmacists and investigated the reason for the discrepancy in identification among information service facilities.Methods: We conducted an online survey for pharmacists at hospitals, clinics, and pharmacies.  We selected the discrepancies in identification among the facilities involved in drug information services.Results: In this survey, 65.2% of pharmacists were aware of design-like bisection lines that are not permitted as bisection lines.  Further, 30.3% could not confirm if these were real bisection lines or design-like bisection lines by judging only from their surfaces.  The examination of two online media and a book offering drug information service showed different definitions depending on medicines.  These entities say they have obtained information by their own ways of source from pharmaceutical manufactures and sellers.Conclusion: Even for pharmacists, it is difficult to distinguish actual bisection lines from design-like bisection lines.  The differences in identification among facilities dealing with medical information services are undesirable issues.  Regulations by GMP or other legal methods are required for appropriate information control by pharmaceutical manufacturers and sellers.
著者
若宮 悠希 砂山 渡 畑中 裕司 小郷原 一智
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, pp.3F1OS12a03, 2018

<p>近年,SNSが広く普及したことにより,ネットワークを通じて様々な人間と気軽に交流を行えるようになった. 円滑な交流を行うためには,相手の性格を理解し,受け入れる必要がある. しかし,SNS上では文章のみのやり取りになるため,十分に理解することは容易ではない. そのため,文章の特徴から著者の性格を推定することができれば,その結果を元にして交流相手を理解することがより簡単となる. そこで本研究では,代表的なSNSのひとつである,Twitterユーザを対象として,ユーザがSNS上に投稿した文章集合から,ユーザの性格を深層学習を用いて推定した結果を利用者に提示するシステムを構築することを目的とする. 人間の性格を複数の構成要素から成るものとして,それぞれの要素について深層学習により分類ネットワークを構築し,推定システムを開発した. 各要素の推定結果に対して,複数人の協力により作成した正解データを元に評価を行った結果,高い適合率,再現率を示し,十分な妥当性を確認することができた.</p>