著者
功刀 浩 太田 深秀 若林 千里 秀瀬 真輔 小澤 隼人 大久保 勉
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.177-181, 2016

近年,緑茶の飲用頻度が高いとうつ病など精神疾患のリスクが低いことが指摘されている。緑茶特有の成分であるテアニン(L-theanine:N-ethyl-L-glutamine)は,グルタミン酸に類似したアミノ酸で,リラックス効果があることが知られていた。筆者らは動物実験により,テアニンはprepulse inhibition[PPI]で評価した感覚運動ゲイティング障害を改善する効果があるほか,持続的投与では強制水泳テストの無動時間を減少させ,海馬での脳由来神経因子の発現を高めるなど抗うつ様効果も認める結果を得た。健常者を対象にテアニン(200mgまたは400mg)を単回投与するとPPIが上昇することを見いだした。慢性統合失調症患者に8週間投与したところ,陽性症状や睡眠を改善する効果がみられた。大うつ病患者に対する8週間のオープン試験では,うつ症状,不安症状,睡眠症状に加えて認知機能の改善が観察された。以上から,テアニンは多彩な向精神作用をもち,統合失調症やうつ病といった精神疾患に対して有用である可能性が示唆された。
著者
若生 茂雄 石田 俊正
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.42, no.12, pp.1251-1256, 1973-12-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
13
著者
渡邉 隆太 渡辺 一郎 奥村 恭男 永嶋 孝一 高橋 啓子 新井 将 若松 雄治 黒川 早矢香 大久保 公恵 中井 俊子 平山 篤志 磯 一貴 國本 聡 園田 和正 園田 和正 戸坂 俊雅
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.33-39, 2019-02-01 (Released:2019-03-30)
参考文献数
30

背景:心房細動 (AF) に対する高周波 (RF), cryoballoon (CB), hotballoon (HB) による肺静脈隔離 (PVI) が心臓自律神経活動に及ぼす効果を検討した. 対象及び方法:AF に対する RF (n = 18),CB (n = 31), HB (n = 16) による PVI 症例で PVI 前後に左房 (LA) 自律 神経叢 (GP) を刺激を施行し,迷走神経反射 (VR) の有無 を検討し,さらに,心拍数および心拍数変動を比較検討 した. 結果:RF-PVI 群,CB-PVI 群,HB-PVI 群で GP 刺激 による VR が 72%,73%,78%で消失した.術後の心 拍数は CB-PVI,HB-PVI 群で有意に増加したが,RFPVI 群では差を認めなかった.心拍数変動の高周波成分 (HF),低周波成分 (LF)/HF には各群とも PVI 前後で差を 認めなかった. 結語:PVI 後早期の心拍数変動は RF, CB, HB の3群 間で同等であったが,心拍数は CB, HB 群において有意 に増加した.PVI 後早期の心臓自律神経活動評価におい て,心拍数増加がバルーンを使用したアブレーションと カテーテルアブレーションとの違いであった.
著者
若菜 真実 山﨑 裕子 岩佐 太一朗 白井 智美 部谷 祐紀 武藤 美紀子 本間 和宏 田中 越郎 榎本 眞理 若菜 宣明
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.423-428, 2019 (Released:2019-07-26)
参考文献数
10

近年、食物アレルギーへの対応は重要な課題である。その対応法の1つに代替食がある。複数の代替食を考案した際、その中から最適な代替食を選び出す客観的な評価方法はまだ確立されていない。そこで最適な代替食を選び出す方法を検討した。16種類の食物アレルギー代替食品を作成し、「味」、「食感」、「風味」、「外観」の4項目を5点満点で採点した。この点数をもとに、総和値、和積値、総積値を算出し、和積値はレーダーチャートも作成した。総和値は、算出が簡便であったが、候補間の差が小さかった。和積値に関しては、レーダーチャートを用いることで候補間の評価が可視化でき、傾向を素早くつかめた。総積値は、候補間の差が最も大きく評価しやすかった。簡便さを求める際は総和値を、各候補食品の特徴を一目で判断する際は和積値とレーダーチャートの組み合わせを、候補食品間の差を大きく出す際は総積値を用いることが有用であると考えられた。
著者
若松 謙一 東 孝行 神門 達也
出版者
鹿児島県農業試験場
雑誌
鹿児島県農業試験場研究報告 (ISSN:03888215)
巻号頁・発行日
no.34, pp.1-14, 2006-03

水稲新品種「彩南月」は,普通期栽培用晩生の低アミロース米品種として鹿児島県農業試験場において育成し,2004年11月に鹿児島県の適品種に採用された.「彩南月」は1997年,晩生,多収,低アミロースを目標に,低アミロースの「彩」を母,晩生で良食味の「KG36(南海52号/コシヒカリ)」を父として交配を行った組合せに由来し,2005年1月に品種登録を申請した.「彩南月」は,「はなさつま」と比較して出穂期で1日,成熟期で2日遅い"晩生の晩"に属する.稈長は「はなさつま」と同程度で,穂長はやや短いが,穂数はやや多く,収量性は「はなさつま」と同程度で高い.草型は"偏穂数型"で,耐倒伏性は「柔小町」より強く「はなさつま」並の"強"である.登熟温度が高くなると低アミロース品種特有の白濁を生じるが,「柔小町」に比べてアミロース含有率はやや高く,玄米の白濁は少ない傾向にある.食味は,「彩南月」単独では粘りが強すぎることともち臭により総合評価は劣るが,「彩南月」をブレンドすることによってベース品種(ブレンドされる品種)の外観・粘りが向上する.
著者
若松 寛
出版者
東洋史研究會
雑誌
東洋史研究 (ISSN:03869059)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.596-603, 1980-12-31
著者
若宮 建昭
出版者
近畿大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

血液脳関門(Blood blain barrier;BBB)透過性を有するダイノルフィン様ペプチド(DLAP)および副腎皮質刺激ホルモン類縁体のエビラタイドの構造をもとに約20種のペプチドを合成したところ、両者の下線部分の構造を合わせ持つペプチドH-MeTyr-Arg-MeArg-D-Leu-NH(CH_2)_8NH_2(001-C8)が極めて高い透過性を示した。この001-C8を蛍光標識したペプチド001-C8-NBDの調製を行ない、まだ推測の域をでないAMT機構解明研究に用いた。その結果、従来の放射性標識では不可能であったペプチドの経時的な透過過程の追跡が可能となり、正電荷を持つペプチドが脳毛細血管細胞脂質膜上の負電荷部分に吸着したあと、徐々に膜を通過して脳実質へ移行する。AMT機構を視覚的に確認することができた。しかしながら、脂質膜上の負電荷部分の詳細に関してはまだ全く未知であり、今後明らかにされねばならない重要な課題である。001-C8を用いた種々の実験から、これを薬物の運搬役として利用するにはまだ血液中のペプチド分解酵素に対する安定性および脂溶性が、必ずしも十分高くはないことが明らかとなった。そこで、H-D-Tyr-D-Arg-D-Arg-D-Leu-NH(CH_2)_8NH_2,H-MeTyr-Arg-MeArg-D-Leu-NH(CH_2)_8NHCH(CH_3)_2,H-MeTyr-Arg-MeArg-D-Leu-NH(CH_2)_8NHCH_2CH(CH_3)_2などのペプチドを新たに合成し、それらの酵素安定性と透過性の試験を行っているが、その結果をもとに運搬役として理想的なペプチドの創製を目指す予定である。以上のように、本研究課題はまだ緒についたばかりであるが、これまでの研究により基礎的な問題は解決したので、今後の飛躍的な展開を期待して研究を続けて行きたい。
著者
鷹嘴 亜里 飯嶋 一侑樹 森谷 祐介 鈴木 南帆 倉橋 慎太郎 山川 信子 高橋 若生
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.30-34, 2019 (Released:2019-07-10)
参考文献数
9

身体疾患で入院した認知症患者に対する認知症ケアサポートチーム(以下ケアチーム)の役割について検討を行った.対象は,ケアチームが介入した65歳以上で,かつ認知症生活自立度III以上の130例(平均年齢86±6歳)とした.入院の原因は肺炎,骨折が多く,行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia:BPSD)が67%の症例で認められた.ケアチームによる介入は入院後平均9.1日で開始され,介入期間は平均34.0日間であり,その内訳は看護ケア単独57%,看護ケア+薬剤調整40%,前者+家族指導3%であった.介入終了時,BPSDは改善64%,不変35%,悪化1%の割合であった.自宅から入院した症例のうち,退院後自宅へ戻ったのは46%で,54%は転院もしくは施設に入所した.BPSDを伴う認知症の入院患者に対しては,認知症の専門知識を持った多職種からなるケアチームのサポートが有用と思われる.
著者
若林 陵一 Wakabayashi Ryoichi
出版者
金沢大学大学院人間社会環境研究科
雑誌
人間社会環境研究 = Human and socio-environmental studies (ISSN:18815545)
巻号頁・発行日
no.36, pp.109-118, 2018-09-28

本稿では, 中世(主に14 ~ 15世紀中頃)の加賀国得橋郷(現石川県能美市・小松市内)を事例に取り上げた。 この得橋郷はおよそ北部が能美市牛島町・佐野町付近, 東部が小松市上八里 町・下八里町, 南部が小松市佐々木町・荒木田町のあたりであり, その中には加賀国の国府・周辺区域も含まれた。 そして, 本稿ではその郷内のうちいくつかの「村」や区域の様相, 動きに注目した。まずーでは, 郷内でも最も多く史料に登楊する牛島村と佐野村について考察した。 得橋郷に関係する史料ば多くが南禅寺関係の文害であり ここではそのうち郷内の「佐羅別宮御供田」にか かわる相論や, 牛島村・佐野村等の南禅寺領としての成立やその経過などに言及した。 そして, これまではその両村の情報がそのまま得橋郷のイメ ー ジとなっていたことをおさえ, 次の二へと進んだ。二では·, 得橋郷におけるその他の村々について考察した。 関係史料からは両村の他. 佐羅村や今村, 「三名」などの郷内集落に着目した。 中でも得南・益延•長恒「三名」に対する国術の「濫妨」や, 今村と在地寺院涌泉寺の相論, 白山社の進出・「押領」などが注目された。 そして, 得 橋郷では一でみた牛島村•佐野村に加えてその他の「村」や集落も存在し, 同じく南禅寺以外の 領主もかかわって, それぞれの世界ができていたことを指摘した。最後に , 得橋郷では14世紀頃に複数の勢力がかかわり , 同じく複数の集落が登場したが, 現在 の研究ではそれらを含めた複数の世界, 得橋郷社会の全てが明らかになっていないことを指摘し た。 なお, 本稿ではこの頃の村落, 削禅寺領荘園をみる上で全国各地ー加賀国軽海郷・倉月荘, 備中国上原郷•新見荘(現岡山県総社市・新見市) , 摂津国勝尾寺(現大阪府箕面市) , 紀伊国相 賀荘(現和歌山県橋本市) , 近江国奥嶋荘・津田荘(現滋賀県近江八幡市)など一の事例や視点 も努めて参照した。
著者
宮坂 宗男 谷野 隆三郎 長田 光博 若木 守明
出版者
日レ医誌
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.117-127, 1991
被引用文献数
2

色素沈着性皮膚疾患に対するレーザー治療で重要なことは, レーザー光線の波長, エネルギー密度, 照射時間 (パルス幅), 治療間隔, 治療方法 (例えばレーザー照射後直ちに2回自の照射を行うような方法) 等についてそれぞれの最適条件, 治療方法の決定である。われわれは, 色素レーザー (585nm), ルビーレーザー (694.3nm), アレキサンドライトレーザー (750nm), Nd-ガラスレーザー (1060nm) を用いて有色モルモット皮膚および臨床的応用を目的とした照射を行い, 異なる波長のパルスレーザーによる影響の違いを調べた。その結果メラニン沈着性皮膚疾患に対してはルビーレーザー, アレキサンドライトレーザーが有効であり, 刺青に対しては, Nd-ガラスレーザーが有効であった。パルス幅に関する検討は, ルビーレーザーにてパルス幅0.15~2msec. までを鋤較検討した。その結果パルス幅が短くなるほど表皮基底層のメラニン顆粒沈着部の選択的破壊が見られた。エネルギー密度に関する検討において, ある閾値以上になると組織の非選択的破壊が起こり本来のレーザーの目指す選択的効果が減少することを認めた。また過去10年間にルビーレーザー治療を行い治療後6ヶ月以上経過観察できた645症例について検討した。その結果, 有効率は先天性扁平母斑45%, 後天性扁平母斑 (Becker) 94%, 母斑細胞母斑50%, 表皮母斑80%老人性色素斑59%, 脂漏性角化症69%, カフェ・オレ斑22%, 太田母斑38%, であった。母斑細胞母斑では眼瞼周囲, 手掌, 足底, 口唇部においては84%と非常に高い有効率であった。パルス幅450μsec., 15J/cm<SUP>2</SUP>では表在性色素病変に対する治療効果はパスル幅の長い従来のルビーレーザー装置に比べその治療効果は低かった。以上のことより表在性色素沈着性皮膚疾患に対するレーザー治療は, パルス幅が短く波長の短い可視領域のレーザーが適していると考えられる。深在性のメラニン沈着性皮膚疾患に対しては, パルス幅の短いルビーレーザーか, アレキサンドライトレーザーが良いと考えられる。日本人の刺青には, パルス幅の短いNd-ガラスレーザーが適していると思われる。
著者
若杉 晃介 藤森 新作
出版者
農業・食品産業技術総合研究機構農村工学研究所
雑誌
農村工学研究所技報 (ISSN:18823289)
巻号頁・発行日
no.208, pp.67-74, 2008-03

平成19年(2007年)3月25日9:42頃に石川県能登半島沖を震源としたM6.9の地震により、輪島市、七尾市、穴水町では震度6強を観測し大きな被害が出た。農地については不陸や亀裂の発生、畦畔の崩壊、用水路では砂の流入、目地外れ等が発生した。本地域は農業が基幹産業であることから、早急な補修工事を必要とした。本報告では、輪島市および穴水町における、水田の被災状況と復旧状況、及び調査地区の自然的条件や水田の整備水準、区画形状等と不陸や亀裂の発生状況の関係を考察した。なお、本調査は農林水産省農村振興局防災課からの派遣要請により平成19年4月17〜19日に実施し、水稲の作付け時期を迎えた平成19年5月16〜19日に追加調査を行った。
著者
阿部 紫織 中村 要介 若月 泰孝 佐山 敬洋
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2017

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)において,IPCC第5次評価報告書が公表されており,人為的な気候変動の理論はもはや疑う余地がない.この気候変動が河川の流況や人間活動に及ぼす影響については,全球レベルでの研究は多数報告されているが,流域スケールでの影響評価事例はまだ十分ではない.一方,気候変動との因果関係は定かではないが,全国各地で浸水被害が発生しており,2015(平成27)年9月関東・東北豪雨による鬼怒川の堤防決壊や2016(平成28)年8月末の小本川の外水氾濫は記憶に新しい.現在気候下での外水氾濫のリスクを評価するだけでなく,将来気候下での浸水被害を定量的に評価することは,気候変動への適応策としても水防災意識社会の再構築の観点からも重要である.本研究では,利根川水系鬼怒川・小貝川を対象とし,気候変動が河川の流況やその氾濫原に及ぼす影響を定量的に評価することを目的とした.<br />本研究では,CMIP-3,SRES-A1Bシナリオに基づいた21世紀末の気候場について,領域気象モデル(WRF)で予測を行った結果を用い,将来の気候場の予測を領域気候モデル実験で推定した.同様のモデルを用いて現在気候の再現計算を行い,現在気候と将来気候の比較を行った.気候変動を評価する水文モデルにはRRIモデルを用いた.シミュレーション期間は2007年~2009年の3年間とし,それぞれ2ヶ月のスピンナップ期間を除いた前年の11月1日~当該年の10月31日とした.<br />河川への気候変動の影響を評価するため,①基準水位の超過頻度,②豊平低渇流量,③氾濫による浸水域について集計を行った結果,以下の推察が得られた.<br />氾濫危険水位の超過が最大で2倍増加し,浸水リスクが増加傾向にあると予測された.また,平水~渇水流量は減少傾向にあり,渇水リスクが増加傾向にあることが示唆された.浸水リスク増加に伴い浸水域が10~40%程度増加し,地域の水害リスクが高まることが確認された.<br />なお,気候変化影響評価には3年間の集計では不十分であり,今後30年分の計算結果を適用する予定である.また,本気候実験の降水量は過大であり,バイアス補正についても別途検討している.
著者
菊谷 文子 伊東 一章 若狭 正彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに】</p><p></p><p>急性期病院において早期に病棟ADLを獲得することは廃用症候群の予防,今後の転帰先を考慮する上でも重要である。病棟内ADLの自立判定基準としてバランス能力の評価であるBerg Balance Scale(以下BBS)がよく用いられている。BBSには天井効果があり,また静的なバランス能力しか評価できないためADLにつながるような包括的なバランス能力を評価する指標としては不十分である。日本語版Mini-Balance Evaluation Systems Test(以下Mini-BESTest)は,予測的姿勢制御,反応的姿勢制御,感覚機能,動的歩行の4つのセクションから構成されており,高い信頼性,妥当性,治療反応性が報告されている。さらには天井効果がなく,歩行完全自立か否かの判別能に関してもMini-BESTestのほうが優れている傾向を示している。BBSとMini-BESTestには高い相関があると言われているが,急性期脳血管疾患において報告は少ない。今回BBSとMini-BESTestを比較したので以下に報告する。</p><p></p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は2016年6月1日から同年9月まで当院に脳血管疾患で入院した患者17名(男性10名,女性7名)。脳血管疾患の既往がある者,整形疾患を有する者,検査内容が理解できない者を除外した。平均年齢は68±15歳,対象者の内訳は脳梗塞7名,脳出血5名,その他(くも膜下出血,慢性硬膜下血腫など)5名で,身体的特徴はNational Institute of Health Stroke Scale 0~6点が12名,7~14点が4名,15点以上が1名で測定日は平均11±6日だった。評価尺度はBBSおよびMini-BESTestを採用した。BBS,Mini-BESTestともに平均値,項目ごとの難易度(減点のある対象者の割合)を求め,さらにMini-BESTestは各セクションの得点率を求めた。BBSとMini-BESTestの合計点からPearsonの積率相関係数を求めた。</p><p></p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>BBSの平均値は32.5±19.8点(1~50点),難易度60%以上は両手前方,80%以上は360°方向転換,踏み台昇降,片脚立ち,タンデム立位。Mini-BESTestの平均値は10.8±8.4点(0~22点),難易度50%未満が静止立位(開眼,固い地面),座位から立位,斜面台,各セクションの得点率は,予測的姿勢制御48.0±35.8%,反応的姿勢制御22.5±27.0%,感覚機能54.9±39.4%,動的歩行31.8±28.3%,Mini-BESTestはBBS(r=0.91)と強い相関を認めた。</p><p></p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>急性期脳血管疾患患者においてBBSとMini-BESTestは慢性期脳卒中患者と同様に高い相関関係を示した。またBBSでは満点者はなく,Mini-BESTestでは無得点者がいたことやBBSにはない要素である反応的姿勢制御と動的歩行の得点率が低い傾向を示した。したがって,急性期においてBBSとMini-BESTest両者を計測することは有用であると思われるが,測定時期を考慮することや症例数を増やし運動機能別比較や疾患別の特徴をみる必要もあると考えられた。</p>

1 0 0 0 OA 国際法新論

著者
大野若三郎 編
出版者
有斐閣
巻号頁・発行日
1903
著者
若月 温美 中山 節子 冨田 道子 藤田 昌子 中野 葉子 松岡 依里子 坪内 恭子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.53, pp.17, 2010

[目的]<BR>本研究は、社会環境の激変の中で進行する格差社会において、どのように生活経営を考え、暮らしをつくりかえていけばよいのか生活経営領域を中心としたカリキュラムを検討することを目的とするものである。本報告では、セーフティネットをどう構築していけばよいのかを探求する授業実践分析を中心に報告を行う。最後に、授業実践分析結果を踏まえながら、本研究の授業設計やカリキュラムの構築の課題を明かにする。<BR>[方法]<BR>対象校は、千葉県の私立高校(B校)と東京都の私立高校(C校)の2校である。対象学年は、B校1年生、C校2年生である。授業実践時期は、2010年1月~2月である。両校ともに4時間の授業計画で、導入で『ホームレス中学生』<SUP>1</SUP>を教材として用い、そこから住まいに住むために必要なこと(B校)や生きていくために必要なこと(C校)を考察させた。次に、派遣社員やネットカフェ難民の実態をVTRで視聴させ、格差や貧困の問題を身近な課題であることを理解させた。B校の対象者は格差や貧困の問題が自分の生活課題として捉えることが難しいことが予想されたため、VTR視聴後に自分自身の生活設計を考えさせた。両校ともに、最後に社会的排除を生み出す社会構造について解説し、ホームレスやネットカフェ難民、派遣社員などの厳しい生活実態から抜け出すためには何が生活資源として必要なのか、また資源を得るためには何が課題となるのかを考察させた。これらを踏まえて、自分自身の生活資源について考えさせ授業のまとめとした。<BR>[結果]<BR>導入の『ホームレス中学生』を取り上げた授業後の記述内容から、「住むこと」や「生きること」に必要なこととして、B校では、基本的な最低限度の生活を維持するのに必要な「物的資源」に関する内容やお金や仕事など「経済的資源」に関する内容が最も多く記述された。次に人や関係性に関する「人的資源」の内容が多く、具体的な記述としては「家族」よりも「近所の人」や「友達」などの記述が多くみられた。また、「個人の努力や能力、運、夢」など個人の資源や能力の問題として捉える記述も見受けられた。C校では信頼関係、頼れる人、家族、友人、つながりなど「人的資源」が最も多く記述され、続いて知恵、知識、資格などの「能力的資源」、「経済的資源」が続いている。その他、生きる希望、プラス思考などの「精神的資源」など、より多くの種類の資源があげられた。派遣社員やネットカフェ難民の実態については、両校ともに「初めて知った」や「大変だと思った」など驚きの反応が観察され、授業後の感想からは、これらの実態から漠然とした不安を抱きながらも自分の将来についてや仕事を得ることの重要性を客観的に見つめようとする様子が伺えた。社会的排除を生み出す社会構造の把握については、生徒の発達段階やこれまでの記述内容などを考慮し、それぞれ独自に工夫した教材を用いたことが効果的であった。自分自身の生活資源を考えることは、労働や福祉の諸課題、転落しやすい社会をどう変えていけばよいのかなど幅広い議論に発展することが明らかとなった。雇用労働環境が厳しさを増し、高校生の就職や進路も益々深刻な問題となっている中、自分がどうすればよいのかわからず悲観的あるいは消極的な状況に留まり続ける生徒の支援が今後の課題である。<BR>[課題]<BR>カリキュラム全体の課題としては、時間数の確保である。これまでカリキュラムの内容を厳選し、6~8時間計画のカリキュラム試案を提示した。<SUP>2</SUP> 試案を部分的に複数の学校で実施したが、時間数に関わる具体的な課題が見え、カリキュラムのコアを定めることがさらなる課題として明らかになった。<BR><BR>1 田村裕(2007)『ホームレス中学生』ワニブックス、田村 裕(2008)『コミックホームレス中学生』ワニブックス<BR>2 日本家庭科教育学会2009年度例会 分科会5配布資料
著者
藤田 昌子 松岡 依里子 若月 温美 中山 節子 中野 葉子 冨田 道子 坪内 恭子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.63, pp.4, 2011

【目的】構造改革による貧困と格差の拡大、2008年の金融破綻による経済危機は、高校生の修学・進学・就職にも深刻な影響を与えている。近年、若年者の労働や生活の実態は徐々に明らかにされているが、高校生に焦点をあてた調査は少なく、彼らの自立支援のための基礎資料は十分でない。本研究では、労働(アルバイト)、生活時間、生活不安に着目し、高校生の生活と労働の実態を明らかにすることを目的とする。<BR>【方法】山形・東京・千葉・神奈川・兵庫の公立・私立高等学校5校1~3年生622名を対象に、生活と労働に関する質問紙調査を実施した。調査時期は2010年7~10月である。<BR>【結果】4割の高校生がアルバイトを行い(アルバイト禁止校を除く)、その理由は「小遣い」「貯金」「家計補助」「学費」等であった。就労状況は、平日は週3~4日、4時間以上が最も多く、深夜時間帯や休日の8時間以上の就労といった労働基準法に抵触しているケースも少なくなかった。厳しい家庭の経済状況のもと、生活費や学費を稼ぐために長時間働かざるを得ない実態や高校生の雇用環境が明らかになった。こうした実態は、睡眠時間・学校以外での勉強時間に影響を及ぼし、「ストレス」「体調不良」「勉強時間がとれない」といった心身と学業面の問題を引き起こしていた。また、高校生は将来の生活に対して、進学や就職、就職後の経済生活、結婚や子育て、介護に至るまで不安を感じていた。このように貧困・格差は、学費や家計費を補うためにアルバイトを余儀なくされている高校生を生み出し、ワーク・ライフ・バランスに問題を生じさせるだけでなく、彼らの進学・就職、その後の将来に対する不安も助長していた。