著者
北 真人 銭 潮潮 此島 健男子 中安 正晃 辻本 哲郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.189-201, 2020
被引用文献数
1

<p> 令和元年東日本台風は東日本を中心に多量の降雨をもたらした.その中で,首都圏に位置する荒川下流域では氾濫危険水位付近にまで水位が上昇した.さらに大規模な降雨が発生した場合,下流での氾濫発生も懸念され,避難行動の基礎資料としてより雨量を増加させたデータが必要となる.本研究では,WRFを用いた海面水温操作による降水量の変化とその影響分析の結果と併せて,再現性の結果について報告する.その結果,ピーク時刻や雨量に差異があるものの全体的な降雨波形については再現していた.そして,海面水温の増減に対応して降水量も増減することを確認した.この理由として,気圧場の変化に伴う台風経路の変化や水蒸気フラックスの増減に加え,荒川流域上流域の地形効果が要因であることが分かった.</p>
著者
柴田 和也 越塚 誠一 酒井 幹夫 谷澤 克治 辻本 勝
出版者
公益社団法人 日本船舶海洋工学会
雑誌
日本船舶海洋工学会論文集 (ISSN:18803717)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.125-136, 2010 (Released:2011-01-28)
参考文献数
19
被引用文献数
1

A transparent boundary condition was developed for calculating water waves propagating to a distant area by using a particle method. In front of the boundary, the incident waves were analyzed by Fourier analysis, and the particles on the transparent boundary were forced to move to absorb the incident waves. The characteristics of this study are to introduce the technique of wave analysis used for the wave tanks to the particle simulation and to reduce the calculation cost by employing an inflow and outflow boundary. Water waves were calculated in two wave periods by the developed transparent boundary condition. As the results, it was shown that this transparent boundary transmitted the incident waves without the reflection waves. It was also shown that the calculation cost was smaller than that of the ordinary high viscosity boundary condition.
著者
辻政信著
出版者
原書房
巻号頁・発行日
1979
著者
辻井 直幸 大西 雅博
出版者
奈良学園大学
雑誌
奈良学園大学紀要 = Bulletin of Naragakuen University
巻号頁・発行日
no.11, pp.113-123, 2019-09-30

私が教師として務めさせて頂き、携わってきた音楽教育は、わが国の学校教育法の目標のもと学習指導要領が示され、その目標を達成すべく30有余年が過ぎた。その間に、私が体験した、学習指導要領の変更は大きく3回(平成4年の改訂も含めると4回)行われたことになる。まず平成10年に告示された、いわゆる「ゆとり教育」なるもので、平成14年から実施された。平成15年には一部改正が行われ指導が進められた。そして、平成17年に「教育課程の基準全体の見直し」等について文科大臣から要請があり、中央教育審議会が審議を開始した。2回目は平成18年に教育基本法の改正があり、平成19年に学校教育法の一部改正がおこなわれた。そして平成20年に「脱ゆとり教育」として「生きる力」を育む理念とともに答申が発表され、現行の指導に至っている。さらに、今回3回目にあたるのが、平成29年に中央教育審議会の答申を踏まえ、中学校学習指導要領の改訂が示され、平成30年から移行措置として先行実施されることになった。この改訂は令和3年を目指し完全実施される予定である。このように教育の土台となる学習指導要領は、約10年ごとに見直され、時代に合わせて編成し直されていることになる。実際、私が携わっている音楽教育においても、たとえば「鑑賞」の領域について見てみると、30年前は単に幅広く曲を聴かせて感想を書かせるようなものが多かった。それが「主体的・能動的」に鑑賞できる活動が提案され、「音楽文化の理解を深め、音楽を尊重する態度」の育成に努めるよう変わってきた。さらに、「曲想と音楽の構造の関わり」を理解し、その背景にある「文化」や「歴史」を知ることも含め「根拠」をもって他者に音楽の良さや美しさを伝え説明できる能力を培うことを義務付けられている。また、今回の改訂では、「生活や社会における音楽の意味や役割」「音楽表現の共通性や固有性」といったものについても考えるように示されている。ただ、この能力は、ほとんど専門家の領域に近く、学問としては音楽美学で扱うようなテーマだ。一般のしかも中学生が持てる能力としてはかなり高度なものと言える。現在、悪戦苦闘しながら日々、授業を行ってはいるが、なかなか文科省の狙う能力にはまだまだ遠い気がしてならない。しかし、その能力を伸ばすべく音楽教育が本当に楽しく有意義に展開されるなら、その活動の過程にこそ必ず「本物の音楽」に触れることができるものと信じている。そのことを期待して、この改訂をきっかけにさらに研究を深めていきたいと考えている。
著者
辻森 樹 仁科 克一 石渡 明 板谷 徹丸
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.106, no.9, pp.646-649, 2000-09-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
27
被引用文献数
21 23

The Fuko Pass metacumulate is a tectonic block (4.5×1.5 km in size) within the Oeyama peridotite body in the Inner Zone of southwestern Japan. It was metamorphosed under the high-pressure and moderate-temperature condition to form a mineral assemblage hornblende+clinozoisite+kyanite+paragonite+albite+rutile. K-Ar ages were determined on hornblende separates from four epidote amphibolite samples, yielding 443-403 Ma. This suggests a Siluro-Ordovician subduction-related metamorphic event for the Fuko Pass metacumulate, which is distinct from the Late Paleozoic high-P/T type metamorphic events of the Renge metamorphic belt in the Inner Zone of southwestern Japan. The Fuko Pass metacumulate is correlated, in age, with the Early Paleozoic high-P/T type schists (445-402 Ma) of the Kurosegawa klippe in the Outer Zone.
著者
山崎 大輔 辻野 典秀 芳野 極 米田 明
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は、深さ~1000 kmの粘性率異常の原因を解明することである。最近のジオイド研究から、下部マントルの深さ1000km付近で粘性率が1-2桁増加することが指摘されている。一方で、地震学的研究において、沈み込んで行くスラブの滞留が、660 kmの下部マントル境界のみならずおおくの場合で1000 kmにあることが見て取れる。すなわち、1000 kmにおける粘性率増加が、マントル対流へ与える影響は660 km不連続面と同程度かそれ以上であること示している。従って、全マントルの運動を理解する上で、この1000 kmの粘性増加が何に起因しているのかを物質学的に明らかにすることは非常に重要な課題である。下部マントルは主にブリッジマナイトとフェロペリクレースの2相混合岩石で構成されている。この2相では粘性率が数桁のオーダーで異なっており、複合岩石としての微細構造やそれぞれの相の量比が全岩の粘性率に影響を与える。すなわち、逆に、観測されている粘性率を与える量比を実験的に明らかにすれば、現在でも問題となっている下部マントルの組成(パイロライト的かコンドライト的か)については、新たな制約を与えることができる。そのため、下部マントル条件を実験的に再現し、ブリッジマナイトとフェロペリクレースの2相混合岩石の粘性率に関する実験を行ってきている。特に、30年度は、2相混合岩石に大変形剪断歪みを与える実験の技術的開発を行い、100%以上の実験に成功した。また、開発した手法を放射光その場観察実験に応用し、変形場での応力その場測定を実施した。
著者
辻 惟雄
雑誌
美術研究 = The bijutsu kenkiu : the journal of art studies
巻号頁・発行日
no.225, pp.31-39, 1963-10-30

Much is left unknown about the life and career of IWASA Matabei (1578—1650), the artist famous for the popular belief that he was the originator of Ukiyo-e. Information about his life at Fukui, more especially, where he spent more than twenty years, is almost entirely absent. In this respect the document discussed here, preserved at the Hōunji in Fukui Prefecture, is very inspiring. This manuscript is a duplicate of a written statement presented in 1633 from the Hōun-ji to MATSUDAIRA Tadamasa, ruler of the Fukui Fief, describing a dispute between the Hōun-ji and the Senshū-ji, a temple at Ishinden in Mie Prefecture with which it competed for position as the head temple of the Takata School of Shingon Buddhism. The sentence at the end proves that this statement was hand-written by Matabei on behalf of the temple authorities. Comparison of the calligraphic style of this manuscript with that of other existing examples of Matabei's calligraphy ―― the inscriptions on his portraits of Hitomaro and Tsurayuki, and a letter written by him in his late years, both being in the collection of the Atami Art Museum ―― reveals many distinctive characteristics in common between them. Another evidence of his calligraphic style is the Kaikoku Michi no Ki, an itinerary in Matabei's own handwriting describing his travel in 1639 from Fukui to Edo (Tokyo). Unfortunately this itinerary is now somewhere in America and its present location is unknown (according to one theory, it was formerly in the collection of Mr. Charles J. Morse), but comparison between a small photogravure reproduction of a part of it and the manuscript under discussion shows obvious identity of calligraphic style. These materials establish with fair accuracy that the newly discovered manuscript is by Matabei's hand. Though its contents do not have direct connection with Matabei's biography, this manuscript is a material evidence proving that he was staying at Fukui in about 1633 and that he had certain relation with the Fukui Fief. It is valuable as one of the few authentic specimens of his calligraphy, and is an interesting source of information proving that he was esteemed by local people not only as a mere artist but as an intelligent man from the metropolis, Kyoto.
著者
藤原 聡子 辻 大士 近藤 克則
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.828, 2020-11-15 (Released:2020-12-23)

第67巻第10号(2020年10月15日発行)「藤原聡子,他.ウォーキングによる健康ポイント事業が高齢者の歩行時間,運動機能,うつに及ぼす効果:傾向スコアを用いた逆確率重み付け法による検証」において,以下の箇所に誤りがありました。お詫びとともに下記のとおり訂正いたします。P744 Methods 7∼11行目 下線部が訂正箇所誤Changes in walking time, physical function, and depression were designated as independent variables, and participation status in the YWP was designated as the dependent variable in the multiple regression analysis with inverse probability of treatment weighting (IPTW), after adjusting for demographic variables, socioeconomic status, health status, and behavior.正Changes in walking time, physical function, and depression were designated as dependent variables, and participation status in the YWP was designated as the independent variable in the multiple regression analysis with inverse probability of treatment weighting (IPTW), after adjusting for demographic variables, socioeconomic status, health status, and behavior.
著者
金森 逸作 中村 宜文 似鳥 啓吾 辻 美和子 向井 優太 三吉 郁夫 松古 栄夫 石川 健一
雑誌
研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC) (ISSN:21888841)
巻号頁・発行日
vol.2020-HPC-177, no.22, pp.1-8, 2020-12-14

格子 QCD は,隣接通信を多用する典型的な HPC 計算であり,線形ソルバー内での縮約計算の頻度も高い.そのため,スーパーコンピュータ「富岳」開発において,ハードウェア・システムソフトウェア・アプリケーションソフトウェアが共同して開発にあたるコデザインの対象の一つになっている.本講演では,コデザインの成果を踏まえて実現した,富岳向けの格子 QCD 用疎行列線形ソルバーにおける通信の高速化について報告する.隣接通信には低レイテンシの uTofu インターフェースを用いており,MPI 持続通信を用いるよりも小さな通信オーバーヘッド,きめ細かな通信リソースの割り付けを実現している.また内積計算に必要な少数要素の縮約についても,Tofu バリアと呼ばる機能で高速化を実現している.
著者
岡崎 重史 辻野 亮
出版者
奈良教育大学教育学部自然環境教育センター
雑誌
奈良教育大学自然環境教育センター紀要 = Bulletin of Center for Natural Environment Education, Nara University of Education (ISSN:21887187)
巻号頁・発行日
no.18, pp.45-54, 2017-03

奈良市に位置する奈良公園では1,200頭を超えるニホンジカが草地や林、裸地などの植生に生息して、観光客が給餌する鹿せんべいやシバ(Zoysiajaponica)、落葉、どんぐりなどを採食している。本研究では、奈良公園におけるニホンジカの空間分布と行動の季節変化を明らかにするために、2016年3月から2017年2月にかけて毎月ニホンジカのいた地点と性年齢クラス、行動をセンサスした。合計24回の調査(延べ1,452ha)で15,491頭を観察し、センサス面積当たりの生息密度は1,089頭/km2であった。ニホンジカの空間分布と行動は季節的に大きな変化を示した。草地利用は5月と6月で大きな割合を占めていて(43.3%;年平均31.2%)、4月~9月に草の採食行動が多く観察され(14.4%;年平均8.2%)、シバ生産量の季節変動と対応していた。林冠下利用は5月~7月に利用が減少し(24.5%;年平均27.8%)、逆に10月~12月においては林冠下での落葉とドングリを主としたリターの採食行動が多く見られた(9.3%;年平均5.2%)。観光客などから給餌されやすい非生産土地の利用は年間を通して高かったが(24.3%)、草やリターの採食行動と比べると人由来の採食行動(年平均2.1%)は年間を通して低く、季節変動も少なかった。以上から、奈良公園に生息するニホンジカの日中の空間分布と行動は、シバや落葉、どんぐりなどの食物資源の季節変動に大きく依存していることが示された。
著者
畑下 博世 鈴木 ひとみ 辻本 哲士 金城 八津子 植村 直子 河田 志帆 藤井 広美 橋爪 聖子
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.43-51, 2013
参考文献数
15

A県断酒連盟会員143人に自記式質問紙調査を実施し,107人(有効回答率74.8%)から回答を得た。その結果,研究参加者は男性が9割以上で40〜70歳代が中心であった。人生で基も自殺を考えるようになった時期に半数以上が消えてしまいたいと考え,死にたいと考えた者は約4割,自殺の計画を立てたり行動を起こした者は全体の約2割強であった。自殺の年代,場所,方法などは警察庁の統計と同様であり,その当時の心身の状態および経済状態,家族や友人関係が悪化していたことが伺えた。これからの自殺対策には,家族を含む地域のネットワークが専門家と連携できる環境が作られ,自殺のサインに気づき,当事者から逃げずに国民1人1人が自身の問題として自殺予防に向き合うことが求められる。
著者
吉田 豊 門脇 良一 畑中 雅彦 坂口 威 西辻 昭
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
資源と素材 (ISSN:09161740)
巻号頁・発行日
vol.111, no.4, pp.219-224, 1995-04-25 (Released:2011-01-27)
参考文献数
23

In the past, many methods of measuring gas concentration were developed. However, limitations lixe; selectivity in the kind of gases the system can measure, range of gas quantity and pre-treatment requirements prevented the wider applications of these techniques.The objective of this research is to develop a method for measuring gas concentrations that is free from the above mentioned limitations. In this regard, the principle and the technique of measuring the sound generated by the spectral diffraction of a laser beam was investigated.This technique is fundamentally different from any other usual spectroscopic analysis: this is an indirect method which measures the acoustic pressure emitted from gas when the photo energy is supplied to it.First, miniaturized laser equipment was fabricated based on diagrams and gas flow type. Then the primary parameters in this system in terms of the sensitivity of this system are the following; the laser's power output, the chopping frequency and the acoustic cell shape. The influence of these factors on the sound generated by the beam were investigated.As an condition of this system, a CO2 laser with output power of under 5.0W, a radial cell and a chopping frequency of 20Hz were chosen. As a result of the experiments under this condition, we confirmed that acoustic signal is proportional to gas concentration of single and mixture gas.For high sensitivity analysis of measuring acoustic signal, the noise characterics in measuring system, which was occured by discharge tube of laser, microphone, acoustic cell and so on, were measured and were eliminated. The new discharge tube of laser without noise was fabricated. And we maked out for the about thirty kinds of diameter, axies lenngth and mass of acoustic cell. The chopping frequency was chosen outside for frequency of noise. It was found that the gas concentrations of Ethylene was measurable in the ranges of concentration 1ppm-10%.
著者
辻井 直幸 大西 雅博
出版者
奈良学園大学
雑誌
奈良学園大学紀要 = Bulletin of Nara Gakuen University (ISSN:2188918X)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.99-108, 2019-03

優れた技能を持っているにも関わらず、本番当日の緊張に耐え切れず、本来の実力を発揮できない生徒をよく見かける。それは、音楽に限ったことではなく、人前で「あがる」ことは、大なり小なり誰でも経験しているものではある。しかし、音楽を仕事としようと思っている者にとっては死活問題にもなりかねない大きな問題である。音楽を教える立場である筆者は、生徒の能力を伸ばし、発揮させるためにも、この問題に長年、頭を悩ませてきた。もし、多くの者が「あがり」を克服し、本来あるべきはずの力が出せるようになれば、将来の音楽、芸術、文化の普及発展に、大いに役立つだろうと考える。
著者
鶴岡 久 高辻 正基
出版者
一般社団法人 照明学会
雑誌
照明学会誌 (ISSN:00192341)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.591-594, 1985-11-01 (Released:2011-07-19)
参考文献数
12
著者
不破 泰 北辻 佳憲 酒井 清一郎 松永 彰 大河 亮介
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン (ISSN:21860661)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.200-209, 2020 (Released:2020-12-01)
参考文献数
10

山岳登山ブームの中,遭難者の増加が問題になっている.このことを背景に,我々は登山者見守りシステムを開発している.このシステムは,登山者の位置ログを作成し,このログから遭難の発生を自動的に判定し,安全・迅速に救助することを目的としている.そして,通信システムとして山全体をカバーするLPWA と,特定の遭難者の状況を高精細映像等で把握する5G を組み合わせて採用している.実際に中央アルプスにおいて,2018 年7 月からLPWA の実証実験を行い,更に2019 年10 月には5G 総合実証(評価実験)を行った.本稿では,主にこの5G の評価実験について述べ,5G の有用性とカバレージについて論じる.
著者
尾辻 健太 二村 昌樹 漢人 直之 林 啓一 伊藤 浩明
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.971-982, 2011-08-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
35
被引用文献数
2

【目的】即時型小麦アレルギーに対するω-5グリアジン特異的IgE抗体(以下,ω-5グリアジンIgE)検査の診断的価値を検討する.【方法】2008年1月〜10月に当科で小麦特異的IgE抗体(以下,小麦IgE)検査を施行した全症例でω-5グリアジンIgEを測定し,小麦経口負荷試験又は病歴に基づいた小麦アレルギーの診断との関連を検討した.解析対象者は233人(年齢中央値3.6歳),小麦アレルギー群59人,非小麦アレルギー群174人であった.【結果】小麦アレルギー群の割合は,ω-5グリアジンIgEクラス2(n=31)で68%,クラス3(n=15)で87%,クラス4以上の3人は100%であった.一方小麦アレルギー群でも陰性(<0.35U_A/ml)を示す患児が24%存在した.これらのデータを元に,ω-5グリアジンIgEのプロバビリティーカーブを作成した.【結語】ω-5グリアジンIgE抗体は,小麦アレルギーの診断に高い陽性的中率を示すが,診断感度の低さから,必ず小麦IgEと併せて評価すべきである.
著者
谷口 英喜 辻 智大 中田 恵津子
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.731-737, 2012 (Released:2012-05-10)
参考文献数
17

【目的】経口補水液の前投与が、経腸栄養剤の胃排出速度に与える影響を検討した。【対象および方法】健常成人ボランティア7名を対象としてクロスオーバー研究を実施した。何も投与しない群 (N群) とミネラルウォーターを投与した群 (MW群) および経口補水液を投与した群 (ORS群) における、胃排出速度を、13C呼気ガス診断を応用した胃排出能検査標準法により評価した。Primary end pointとして個々における前処置ごとに最高血中濃度到達時間 (Tmax) の変化 (⊿ Tmax) を比較した。【結果】N群のTmaxを基準にして⊿ Tmaxを比較した結果、MW群に比べORS群において経腸栄養剤の胃排出速度を促進する効果が大きかった[⊿ Tmax(MW) vs. ⊿ Tmax (ORS) :-5±15.0 min vs. -17.1 ±9.1 min ; P=0.03]。【結論】この結果から、経腸栄養剤投与前に経口補水液を投与することで、摂取された経腸栄養剤の胃排出速度が促進されると考えられた。