著者
酒井 啓子
出版者
日本中東学会
雑誌
日本中東学会年報 (ISSN:09137858)
巻号頁・発行日
no.28, pp.145-172, 2013-01-05

2010〜11年、チュニジアに始まった、路上抗議運動の拡大から政権転覆に至る一連のアラブ諸国における政治変動は、個々の国の政治体制や社会経済的状況、対外関係などにおける固有の要因に基づいて、異なる経過と結果を生んだ。いかなる条件のもとでこうした大規模民衆運動が発生し、いかなる条件で政権交代に至るのかを分析するためには、個々の事例における体制内政治構造と社会運動、および国際関係を複合的に視野にいれることが肝要である。本論では体制政治エリート同盟のあり方と、路上抗議運動のあり方、および国外主体の役割に着目するが、それぞれが相互に影響を及ぼしあうことを前提とし、その影響度合いを「脆弱(敏感)性」と名付ける。その上で、体制エリート同盟と路上抗議運動との間の相互の脆弱(敏感)性、およびそれぞれの国外主体との間の脆弱(敏感)性に応じて、政変の経緯および政権交代後の体制再編のあり方が変化することを論ずる。チュニジア、エジプトの事例では体制エリート同盟および路上抗議運動ともに相互に脆弱であり、かついずれも国外主体(具体的には米政権および国際機関)の動向に敏感であったことで、暴力的衝突や政体の劇的な変質を伴うことなく政権転覆が実現した。そのため政権転覆後の支配的政治エリートにおいても、旧政権下でエリート同盟の辺境におかれた勢力が主流を占めることとなった。他方リビア、シリアの場合はそうした脆弱(敏感)性に基づく関係が体制エリート同盟と路上抗議運動の間に存在しなかったため、衝突は暴力的、長期的なものとなった。両者の事例で政変の成否を決定したのは路上抗議運動が強く脆弱性を持つ国外主体の対応であり、国内主体間に脆弱性が見られない場合には政変の展開に国外要因が重要な役割を果たすことがわかる。従来の政治学ではアラブ動乱を十分分析できたとは言い難く、体制論、社会運動論、国際関係論と細分化された諸分野を総合的に組み合わせて分析する枠組みの開発が必要である。本論はそのための一試論である
著者
安梅 勅江 田中 裕 酒井 初恵 宮崎 勝宣 小林 昭雄 天久 薫 枝本 信一郎 伊藤 澄雄 篠原 亮次 杉澤 悠圭 澤田 優子 童 連 田中 笑子 冨崎 悦子 望月 由妃子 渡辺 多恵子 恩田 陽子 徳竹 健太郎 平野 真紀 森田 健太郎 AMARSANAA Gan-Yadam 川島 悠里 難波 麻由美 呉 柏良 丸山 昭子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

経年的な子どもの発達、社会適応、健康状態、問題行動の発現への影響を踏まえ、科学的な根拠に基づく「気になる子ども支援プログラム」の開発を目的とした。全国の0~6歳児と保護者約36,000組の12年間パネルコホート調査を用い、子どもの特性別に発達の軌跡と関連要因について分析した。その結果、家庭環境要因、子ども特性要因、家族特性要因、地域サポート要因の子どもの発達への影響の大きさと軌跡を明らかにした。
著者
酒井 隆太郎 宗像 雅広 木村 英雄
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.311-329, 2009 (Released:2012-02-01)
参考文献数
27
被引用文献数
1

広域地下水流動に関する評価手法確立のための調査の一環として、千葉県養老川流域の小流域において、河川流量および観測点付近の河川水、湧水、井戸水の水質、水素・酸素同位体比等の分析を行った。水文学的検討により、地下水流動特性と地質・地質構造との関係を把握し、地化学的検討から、流出域の地下水の起源や流動経路を推定を試みた。この結果、高透水性を持つ砂岩優勢互層(大福山を含む高標高部)で涵養された地下水の大部分は、地層の走向の方向に流動した後、Ca-HCO3(SO4)型地下水として下流域において流出するが、一部は深部まで流動し、Na-HCO3型地下水と混合した後に、低透水性の砂泥互層の亀裂等を通じて下流域において流出する可能性が推定された。
著者
酒井 憲二
出版者
田園調布学園大学
雑誌
調布日本文化 (ISSN:09171169)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.六五-八三, 1999-03-25
著者
渡邉 時夫 酒井 英樹 浦野 研
出版者
全国英語教育学会
雑誌
全国英語教育学会紀要 (ISSN:13448560)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.101-110, 1996

The purpose of this paper is to investigate the relationship between the characteristics of teacher talk and the development of spontaneous production ability in the Japanese-speaking children learning English in a kindergarten immersion program. This was done by comparing the teacher talk of two different English-speaking teachers, L and R. These two classes were almost the same in terms of size, children's age, and curriculum. A comparison of the children's L2 development in the two classes revealed that the children in one class produced more creative English, whereas the children in the other used more set phrases. It was hypothesized that this difference may have been due to a difference in quality of L's and R's teacher talk. Analysis of their teacher talk confirmed this hypothesis.
著者
酒井 富夫
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、中国の飼料穀物(トウモロコシ)の米国からの輸入可能性について、EUと比較しつつ、農業生産・流通構造の視点から考察したものである。その結果、(1)EUでは、農場の規模拡大、農協の企業化により国際価格に対応していること、(2)中国でも、国際価格が低下すると輸入増大の可能性があり、それを回避するには流通コストだけでなく生産コスト削減が必要であること、(3)しかし、中国では規模拡大は困難であり、単収増加に期待をかけていること等が明らかになった。
著者
清住 沙代 雨宮 智美 大屋 朋子 多比良 祐子 高柳 奈見 奥井 沙織 馬場 里奈 藤平 弘子 相川 真澄 並木 修司 會田 貴久 酒井 克彦 山崎 喜範 蔵本 千夏 渡邊 裕 外木 守雄 武井 泉 山根 源之
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.382-386, 2011 (Released:2011-05-25)
参考文献数
18

東京歯科大学市川総合病院 (以下当院) では, 内科, 歯科·口腔外科 (以下当科), 眼科の3科が共同で, 糖尿病患者の状態把握を行う合同調査を開始した。その結果から, 65歳以上の糖尿病患者の口腔衛生状態を調査し, 歯科衛生士がどのように介入すべきか検討を行った。対象は, 平成19年11月から平成20年10月までの1年間に, 当院内科を受診し, 当科の受診に了承された糖尿病患者142名のうち, 65歳以上の有歯顎者43名 (男性20名, 女性23名, 平均年齢69.2歳) とした。診査内容は性別, 年齢, 糖尿病の罹患期間, 網膜症の有無, 糖尿病の治療方法, HbA1c, 歯槽骨吸収程度, 現在歯数, PCR, BOPの10項目である。網膜症は, 糖尿病合併症のうち, 早期に症状が現れるため, 眼科医と協力し診査内容に含めた。今回, これらの診査内容から, 年齢, PCR, BOP, 現在歯数, HbA1cの5項目に着目し検討を行った。年齢とPCR, BOP, 現在歯数の検討を行った結果, 年齢が高い程, PCRとBOPの値は高い傾向を示し, 相関性を認めた。また, 現在歯数は70~74歳で最も多く, 75歳以上では減少傾向を示した。HbA1cとPCR, BOP, 現在歯数の検討を行った結果, 相関性は認められなかった。年齢と口腔衛生状態には相関性が認められ, 糖尿病の病態と口腔衛生状態に相関性は認められなかったことから, 糖尿病罹患の有無にかかわらず, 高齢者の増齢に伴い歯科衛生士による口腔衛生指導が重要であると考えられた。
著者
笠原 康代 島崎 敢 石田 敏郎 平山 裕記 酒井 美絵子 川村 佐和子
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.62-70, 2013-04-15 (Released:2013-06-19)
参考文献数
31

本研究の目的は,内服与薬を遂行する看護師の確認行動と誤薬について検討することであった.63名の看護師に対して,ベッド16床を配置した看護実習室で実験を行い,ビデオカメラで行動を記録した.看護師は処方箋どおりの薬剤を模擬患者6名のベッドに配るよう教示された. 結果,32名(50.8%)が誤薬し,与薬量間違いがもっとも多かった.確認方法は,声出し確認と指差し確認の2つのタイプがある.これらを両方実施した群といずれかを実施した群,両方実施しなかった群の3群間で誤薬件数を比較するために分散分析を実施した.準備段階で主効果がみられ,声出し確認と指差し確認のいずれかまたは両方実施した群は,両方実施しなかった群よりも誤薬件数が有意に少なかった.また,与薬段階においても主効果がみられ,両方実施した群は,いずれかもしくは両方実施しなかった群よりも誤薬件数が有意に少なかった.
著者
才川 勇 桃井 海秀 酒井 広志 高下 寛 大橋 俊則 南 尚 山本 芳子 福岡 義和
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
薬学雑誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.99, no.12, pp.p1207-1218, 1979-12

The stability, degradation pattern and structure of degradation products of sodium 7-[D (-)-α-(4-ethyl-2,3-dioxo-1-piperazinecarboxamido)-α-(4-hydroxyphenyl) acetamido]-3-[(1-methyl-1H-tetrazol-5-yl) thiomethyl]-3-cephem-4-carboxylate (T-1551) in aqueous solution were investigated. T-1551 was kept in various solutions in pH and μ=0.5 at 35°, its degradation was followed by HPLC. T-1551 was stable at the range of pH 4.0-7.0,slightly unstable at acid and markedly unstable at alkaline. It was confirmed that in alkaline solution, 7-[D (-)-α-[3-[2-(N-ethyl-N-oxaloamino)-ethyl] ureido]-α-(4-hydroxyphenyl) acetamido]-3-(1-methyl-1H-tetrazol-5-yl) thiomethyl-3-cephem-4-carboxylic acid (T-1551A) was produced, and that in acidic solution, 7-[D (-)-α-(4-ethyl-2,3-dioxo-1-piperazinecarboxamido)-α-(4-hydroxyphenyl) acetamido]-3-hydroxy-methyl-3-cephem-4-carboxylic acid γ-lactone (T-1551B), 7-[D (-)-α-(4-ethyl-2,3-dioxo-1-piperazinecarboxamido)-α-(4-hydroxyphenyl) acetamido]-3-hydroxymethyl-3-cephem-4-carboxylic acid (T-1551C), 5-mercapto-1-methyl-1H-tetrazole (T-1551F), 2-[2-(4-ethyl-2,3-dioxo-1-piperazinecarboxamido)-2-(4-hydroxyphenyl) acetamido]-2-[1,2,5,7-tetrahydro-7-oxo-4H-furo [3,4-d] [1,3] thiazin-2-yl] acetic acid (T-1551G), 2-[α-(4-ethyl-2,3-dioxo-1-piperazinecarboxamido)-α-(4-hydroxyphenyl) acetamidomethyl]-2,3-dihydro-5-hydroxy-methyl-6H-thiazine-4-carboxylic acid γ-lactone (T-1551H) and N-formylmethyl-D-(-)-α-(4-ethyl-2,3-dioxo-1-piperazinecarboxamido)-α-(4-hydroxyphenyl) acetamide (T-1551D) were produced, respectively.