著者
酒井 徹也 笹田 真滋 徐 千恵子 杉原 快 石岡 宏太 高橋 左枝子 中村 守男
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.417-422, 2018-09-25 (Released:2018-10-13)
参考文献数
13

背景.気管支鏡検査は被験者の苦痛の強い検査であり,苦痛軽減のため鎮静薬などが考慮されるべきである.当院では気管支鏡検査時の苦痛軽減を目的とし,ミダゾラムと塩酸ペチジンの2剤併用による鎮静をルーチンに行っているが,本使用法は過鎮静のリスクがあり,我が国においては未だ議論の余地がある.今回我々は気管支鏡検査における本鎮静法の苦痛レベルおよび安全における忍容性を評価した.方法.2016年8~12月までの気管支鏡検査実施例で前方視的に患者苦痛度アンケートおよび術中バイタルサインのデータ収集を行った.気管支鏡挿入前に塩酸ペチジン17.5 mgと2~3 mgのミダゾラムを静脈内投与し,鎮静の深度に応じてミダゾラム1~2 mgの追加投与を行った.結果.本研究に61例が参加された.ミダゾラムの初回投与量,追加投与量の平均値はそれぞれ2.8±0.1 mg,1.8±0.3 mgであった.術中の記憶があると回答した割合は11.5%であり,気管支鏡の再検を容認した割合は82.0%であった.重篤な低酸素血症や低血圧により拮抗剤や昇圧剤を使用した症例はいなかった.結語.本研究では,気管支鏡検査におけるミダゾラムと塩酸ペチジン併用は検査中の患者苦痛が軽減され安全における忍容性も高かった.本鎮静レジメンの導入は,再生検も含めた気管支鏡検査の患者同意を得るのに有利である.
著者
郡司 博史 石井 秀樹 斉藤 亜矢 酒井 敏
出版者
社団法人 日本流体力学会
雑誌
日本流体力学会誌「ながれ」 (ISSN:02863154)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.499-500, 2003

If liquid drop collides with a thin fluid layer, crown-like structure (milk crown) will be formed. In such phenomenon, surface tension is dominant, and a time scale is very short. To catch a continuous image of such phenomena, expensive equipment, such as a high-speed camera, would be required. Therefore, systematic researches which change parameters, such as collision speed of liquid, were not done. Then, we considered how to record with a cheap commercial digital video camera, conducted the systematic experiment by this method, and analyzed the obtained picture. Consequently, we found that the diameter of a crown was proportional to the 1/4th power of the lapsed time after liquid drop collides. That of the trace after a crown disappears was proportional to the 1/2nd power of the lapsed time. The domain where the diameter of a crown is proportional to the 1/2nd power of lapsed time has only been found in the trace after a crown disappeared. We think that the crown turns into the capillary wave during its collapse. We found that the time that the crown grows up is longer than the crown falls down. Considering a simplified model concerning of mass change and surface tension of the crown upper part, we could reproduce the asymmetry.
著者
酒井 弘憲
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.978-979, 2015 (Released:2018-08-26)
参考文献数
2

今年もまた,秋の風が感じられる季節がやってきた.冬生まれの筆者は夏の暑さが何よりも苦手であり,暑さから逃れられる秋から冬にかけては大好きな季節でもある.しかし,あの暑苦しい夏が大好きという方も大勢いらっしゃるようで,夏をテーマにした音楽や,夏を取り上げた文学の名作も数多い.我が国では,清少納言の枕草子に有名な「夏は夜.月のころはさらなり.やみもなほ,蛍の多く飛びちがひたる.また,ただ一つ二つなど,ほのかにうち光りて行くもをかし.雨など降るもをかし.」のくだりがあるし,英国では,もちろんウィリアム・シェークスピアのそのものずばり「真夏の夜の夢」がある.全5幕からなり,アテネ近郊の森に足を踏み入れた貴族や職人,森に住む妖精たちが登場する.人間の男女は結婚に関する問題を抱えており,妖精の王と女王は養子を巡りけんかをしている.しかし,妖精の王の画策や妖精の一人であるパックの活躍によって最終的には円満な結末を迎えるというよく知られた戯曲である.実在について賛否の議論もあるシェークスピアだが,写楽と同じように,別人説もかまびすしい.有名なところでは,フランシス・ベーコン同一人説などがある.数百年前の人物についてそんなことを調べるなど至難の業であると思っていると,その人の書いた文章の書き癖から統計学を使って同一人であるかどうかを調べてみようという興味深い研究手法があるのだ.これを「計量文献学」と呼ぶ.
著者
酒井 昭
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.294-301, 1983
被引用文献数
1

ツツジ属植物の約75種の原種と栽培品種を用いて, これらの冬の耐寒性を調べ, ツツジ属植物の耐寒性の特性を明らかにした.<br>1. 耐寒性の低いツツジ属植物では, 葉, 花芽, 栄養芽, 靱皮組織, 木部の間の耐寒性の差は少なかったが, 耐寒性の高いツツジ属植物では, これらの間に著しい差が認められた. 葉, 栄養芽, 茎の靱皮組織の耐寒性は花芽や木部より著しく高く, -60&deg;Cの凍結にも耐えるものがあった. しかし花芽の小花は-35&deg;C以下の温度に耐えるものはなかった.<br>2. シャクナゲのなかで耐寒性が特に高かったのは, 日本のハクサンシャクナゲ, エゾムラサキツツジ, 合衆国の<i>R. catawbiense</i> で, それらの花芽は-30&deg;Cの温度に耐えた. 花芽が-25&deg;Cまたはそれ以下の凍結に耐えるシャクナゲの大部分はポンティクム系に属する. また, 耐寒性の高い栽培種の大部分は<i>R. catawbiense</i>か<i>R. carolinianum</i> のいずれかを片親とする交雑種である. アザレア系では, 北米の東部に自生する<i>R. viscosum</i>, <i>R. arborescens</i> や中国東北区から朝鮮半島に分布するクロフネツツジの耐寒性が特に高かった. 日本に自生するツツジ類の多くは-20~-25&deg;Cの低温に耐えた.<br>3. ツツジ属植物の氷点下の温度に対する適応戦略は, 組織, 器官によって異なり, 葉, 栄養芽, 茎の靱皮組織など細胞外凍結, 花芽の小花はおもに器官外凍結,木部の放射組織は過冷却で氷点下の温度を耐える.<br>4. ツツジ属植物の耐寒性は, 年温度差が大きく, しかも冬の寒さが厳しいところに自生しているものほど耐寒性が高い. それに対して年温度差が少なく, 冬の寒さが厳しくない, 東ヒマラヤ, 雲南西北高地のシャクナゲの耐寒性は低い.
著者
加藤 茂 酒井 裕司 小島 紀徳
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.305-317, 2013 (Released:2014-09-17)
参考文献数
70

Vegetated coastal habitats - mangrove forests, salt-marshes and seagrass meadows - for blue carbon sink purposes are very important ecosystems. They provide valuable ecosystem functions, including a large carbon sink capacity and very rich biodiversity for human sustenance. Mangrove forests are considered bio indicators among marine-river estuary ecosystems in sub-tropical and tropical regions of the world. It is a unique habitat for several fresh and salt water species. The present research is aimed at studying the carbon accumulation and food cycle system in a rehabilitated mangrove site in southern Thailand. The rehabilitation of mangroves at abandoned shrimp ponds in Nakhon Si Thammarat, southern Thailand, has been taking place since 1998. Almost seven million mangrove trees have been planted over 1200 ha of abandoned shrimp ponds and new mud flats. It is observed that the mangrove plantation increases the population of species like crab, shellfish, shrimp and fish at the rehabilitated mangrove site. The food cycle system of the rehabilitated mangrove site and its surrounding mangrove forests is being studied. Stable isotopes such as δ15N and δ13C are monitored as a primary parameter to study the food cycle system in the mangrove forests and the coast around the mangrove forests. It has been found that the δ15N content in living organisms gradually accumulates from small phytoplankton to large fish in the food cycle system. The δ13C content in living organisms also gradually accumulates from phytoplankton to large fish in the food cycle system. The analysis data reveals that carnivorous fish enter the 12 to 13th stage of the food cycle system, which is triggered by the fall of mangrove leaves in the rehabilitated mangrove forest. Carbon portion of the soil also increased at the rehabilitated mangrove planting site. The rehabilitated mangrove forest will act as a sink source for atmospheric carbon and develop rich biodiversity of a marine-river estuary ecosystem.
著者
酒井 健児
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.C0607, 2008

【目的】今日までに投球動作分析に関する報告は数多くあるが,それらは,高価な動作解析機器を使用したもの,実際の投球動作の一場面を抜き取った分節的な評価・分析しているものが少なくない.そこで今回,投球動作という連続した運動を,寝返りという一連の動作で容易に評価できる『投球寝返りテスト』を考案した.このテストを当院に来院した投球障害症例に応用し,動作特性と実際の投球フォームの関連性について検討したので報告する.<BR>【方法】対象は,投球障害症例2名(症例1:10歳・右野球肘,症例2:10歳・右投球障害肩)である.投球寝返りテストの方法は,背臥位で,グローブ腕は肩外転90 °,肘屈曲90°,前腕回外90°とし,投球腕は手掌を耳に向けた"いわゆるゼロポジション"で,両股関節外転位を開始肢位とした.そして,検者は口答で「足から上に順番に捻っていき,最終的に右肘を左手のひらにつけて下さい(右投げの場合)」と指示した.主な観察ポイントは,足部から体幹にかけての上行性の回旋可動性とタイミング,上部体幹の伸展を伴った回旋可動性,投球側肩甲骨の内転機能,投球腕の肩甲骨面保持能力である.また,実際の投球フォームをビデオカメラで撮影した.<BR>【結果】症例1:投球寝返りテストでは,右股関節内旋・体幹左回旋が少ないため,右下肢からの波及運動が体幹につながらず,右肩甲帯の過剰な前方突出により右上腕が肩甲骨面から逸脱していた.投球フォームでも,early cockingからacceleration phaseにかけて右股関節の可動性が低下し,右肩甲帯の過剰な代償運動が観察できた.症例2:投球寝返りテストでは,足部から骨盤にかけて波及運動がみられるが,上部体幹の伸展を伴った回旋運動が少なかった.投球フォームでも,late cockingからfollow-throughにかけて上部体幹の回旋運動が少なく,ボールリリースで投球側肩内旋の増大が観察できた.<BR>【考察】投球動作における投球腕の使い方として,後方に引いてから前方に出すのではなく,重心移動によって残された投球腕が,重心移動の完了と共にその間で伸ばされたバネを戻すように前方に出て来る.したがって投球腕は,体幹から波及運動として,「動かされる」という要素が大きいと考える.症例1は,下肢から体幹への波及運動がなく,体幹回旋を右肩甲帯による過大な代償動作を利用して補っている.そのためボールリリースでの肘下がり,右上腕の肩甲骨面保持困難を助長し,肘外反ストレスを増大させることが考えられる.症例2は,上部体幹の回旋運動が少ない.そのため,ボールリリースがいわゆる内旋投げになり,肩内旋ストレスを増大させていることが考えられる.<BR>【まとめ】投球寝返りテストを考案し,投球障害症例の動作特性と実際の投球フォームの関連性について検討した.投球寝返りテストは,主に投球動作における回旋運動を評価する一助になることが示唆された.
著者
酒井 真次 長沢 次男 橋本 綱二
出版者
[農林省東北農業試験場]
雑誌
東北農業試験場研究報告 (ISSN:04957318)
巻号頁・発行日
no.81, pp.p41-49, 1990-03

ダイズシストセンチュウに対する高度抵抗性品種の早期作出を目標として,寒冷地の大豆育種ではこれまでほとんど試みられなかった年3回の世代促進育種方法を開発するとともに,世代促進中における抵抗性検定の実施,実用品種の戻し交配等を組合せることによって抵抗性育種の効率化を図った。1)世代促進育種試験に利用した温室は自動短日処理装置とオイルヒーターを備えただけの簡易な施設である。2)世代促進育種法は面積が限られた施設内で多数個体を供試して実施するために,密植条件(1m2当り417個体)で行った。3)1年を第1期(2月~5月),第2期(6~9月),第3期(9~12月)の3生育期間に区分し,1世代の生育日数を90日に制御することによって,1年に3世代を生育させることを試みた。4)成熟期群が極早~極晩の7品種を供試して生育初期に短日処理した場合の生育日数に及ぼす影響を調査した。この結果,生育日数を目標の90日以内にとどめるためには,日長が最大となる第2期の短日処理が重要であること,中生~中生の晩の育成材料では2週間以上,晩生の育成材料では4週間以上の短日処理が必要であることが明らかになった。5)短日処理区における供試品種平均の個体当り採種粒数は,第2期で4.6粒,第3期でも3.1粒であり,無処理区との間に差異が認められなかったことから,等量採種法を採用することによって育種材料の偏りを避けて育種を行うことが可能であることを実証した。6)ダイズシストセンチュウに対する抵抗性検定は,従来夏季に行っていたが,冬季にも世代促進を行いつつ検定できることが実証できた。また,抵抗性検定は密植栽培でも可能なことから,ペーパーポットに栽植したF2又はF3の集団にも適用でき,抵抗性個体の早期選抜が可能となった。7)確立した世代促進法を用いて選抜した高度抵抗性系統に実用品種を戻し交配し,更に世代促進法を繰り返して,成熟期,主茎長及び収量性等の実用形質が東北地方の基幹品種並みの系統を,短期間に育成することができた。