著者
金山 彰宏 小曽根 惠子
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.81-85, 2002-09-30 (Released:2019-07-11)
参考文献数
6
被引用文献数
1

越冬から目覚めたコガタスズメバチの女王を用いて,古い巣盤への産卵誘引とコロニー形成に向けての室内飼育を行った.その結果,女王蜂による古い巣盤への産卵が確認された.約2ヶ月の室内飼育後,屋外に移設した巣は,その後,自然環境の巣と変わらぬコロニーを形成した.屋外に移設後,ビデオカメラを用いて,働き蜂の日周活動を観察した.帰巣働き蜂による餌の持ち帰り状況から,一コロニーにおける捕獲昆虫類の個体数を計算すると,年間約20,000個体と推計された.
著者
竹田 伸也 井上 雅彦 金子 周平 南前 恵子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.63-72, 2016-01-31 (Released:2019-04-27)

本研究の目的は、子どもに応じたアセスメントから対応まで実施できる認知行動療法プログラムを作成し、養護教諭のストレス反応や自己効力感に与える影響について検討することであった。19名の介入群と27名の統制群からなる46名の養護教諭を対象とした。介入群の養護教諭に対して、認知行動療法を応用した子どもの抱える問題のアセスメントと対応についての2時間からなるワークショップと90分からなるフォローアップ研修を実施した。その結果、本プログラムは子どもへの対応についての自己効力感を改善させることが示唆された。一方、無気力と一般性自己効力感は介入群と統制群双方で向上し、無気力以外のストレス反応は介入群と統制群双方で変化を認めなかった。
著者
近松 啓明 金光 高正 橋本 安弘
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.3, pp.351-357, 1987-03-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
30
被引用文献数
1

プロキラル中心をもつ対称ジケトンに含まれる二つのエナンチオトピックなカルボニル基のうち,その一方のみを選択的に還元できれば基質の全量を一つの光学活性体に変えることが理論的に可能である。このような観点に基づいて,微生物の立体選択性を生かして8a-メチル-cis-2,7-デカリンジオン[4]の不斉変換を試みた。Rhodotorula rubra によって[4]は容易に還元され,ジアステレオマーである2種のケトール(生成比4:1)となる。これらはアセタート[6],[8]として分離精製したのち,加水分解して(+)-ケトール[5](収率54%,光学純度88%)と(-)-ケトール[7](収率13%,光学純度93%)を得た。(-)-ケトール[7]は(+)-(1R,3R,6S,8R)-6-メチル-4-ツイスタノン[10]に導くことによって(4aR,7S,8aS)-7β-ヒドロキジ-8aβ-メチル-cis-2-デカロンと決めた。一方,(+)-ケトール[5]は,そのヒドロキシル基の反転反応によって(+)-[7]を与えるので(4aS,7S,8aR)-7α-ヒドキシ-8aβ-メチル-cis-2-デカロンである。ロよって,R.rubraによる[4]の還元では基質中の二つのエナンチオトピックなカルボニル基のうちpro-S側が優先的に還元されることがわかる。また,ケトン[10]のWolff-Kishner還元により(+)-1-メチルツイスタン[11]が得られた。かご型炭化水素[11]の光学活性体が[4]から簡単な経路によって合成できることを示した。
著者
藤田 野々香 金尾 邦夫 進藤 健 斎藤 豊 田熊 清継
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.743-746, 2021-10-31 (Released:2021-10-31)
参考文献数
8

症例は69歳,男性。2型糖尿病に対してメトホルミン内服中であり,1日焼酎3合程度の飲酒習慣があった。来院前日より腰痛,食思不振が出現し来院した。血液ガス所見でpH6.788,乳酸20mmol/L測定感度以上と重度の乳酸アシドーシスを認めた。尿中ケトン体陽性であり,メトホルミン関連乳酸アシドーシスとアルコール性ケトアシドーシスと判断した。 来院後に循環不全となり高用量の昇圧薬を使用したが,アシドーシスがさらに悪化したため,アシドーシスの改善およびメトホルミン除去目的に血液浄化療法を施行した。開始12時間後にはアシドーシスは改善し,血液浄化療法は終了した。本症例ではアルコールがメトホルミン関連乳酸アシドーシスを助長したと考えられる。迅速な診断および,重症例では血液浄化療法を考慮することが重要と考えられる。
著者
忽那 史也 山下 魁理 金本 正 黒濱 大和 立石 洋平 辻野 彰
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.671-675, 2021 (Released:2021-10-28)
参考文献数
25
被引用文献数
1

症例は右片麻痺,失語を主訴に搬送された86歳男性.拡散強調画像で左島皮質から前頭葉に高信号域があり,MRAで左中大脳動脈が閉塞していた.血栓回収療法を行ったが再開通は得られなかった.血液培養検査でEnterococcus faecalisが検出され,大動脈弁に可動性の疣腫を認めたことから感染性心内膜炎と診断した.その後多臓器不全で死亡し,病理解剖を施行した.脳塞栓部には細菌塊を伴う血栓があり,炎症細胞が血管壁内に浸潤し,内弾性板は一部破綻していた.血栓と血管壁は癒着していた.感染性心内膜炎による脳塞栓症では,血栓と血管壁の癒着が血栓回収療法による再開通を得られにくくする要因の一つかもしれない.
著者
吉田 金彦
出版者
訓点語学会
雑誌
訓点語と訓点資料
巻号頁・発行日
no.60, pp.1-6, 1977
著者
脇本 仁奈 吉成 伸夫 小笠原 正 薦田 智 河瀬 瑞穂 河瀬 聡一朗 大木 絵美 伊能 利之 金銅 英二 岡田 芳幸
出版者
一般社団法人 日本障害者歯科学会
雑誌
日本障害者歯科学会雑誌 (ISSN:09131663)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.84-90, 2021

<p>歯肉肥大を誘発する薬物の服用や遺伝的素因はないが,水平性歯肉肥大を認める重症心身障害児・者を散見する.重症心身障害児・者病棟入院中の患者で,歯肉肥大を誘発する薬物の服用や遺伝的素因がなく,3.5mm以上の水平性歯肉肥大がある者の比率,臨床的特徴を検討した.</p><p>対象者は,重症心身障害児・者病棟入院中の患者73名であった.入院記録から年齢,性別,疾患,ADL,常用薬,栄養摂食状況を調査用紙に転記した.口腔内診査は,プロービング検査,咬合状態,Plaque Index,3.5mm以上の水平性歯肉肥大の有無を評価した.水平性歯肉肥大は,歯肉肥大を誘発する薬物の服用はなく,WHOプローブにて水平的に3.5mm以上の肥大を1カ所でも認めたものとした.水平性歯肉肥大を認めた者は,入院記録からフェニトインなどの服用経験を調査し,保護者へ家族で遺伝性歯肉線維腫症を認めた者の有無を聴取するとともに水平性歯肉肥大の臨床的特徴を検討した.</p><p>特発性水平性歯肉肥大の発現率は,重症心身障害児・者で73名中4名(5.5%),胃瘻のみでは18名中4名(22.2%)であった.特発性水平性歯肉肥大を認めた者は,そうでない者と比較して平均年齢が低く,経管栄養と開咬の者の割合が有意に多かった.特発性水平性歯肉肥大の特徴は,上顎前歯部と上下顎臼歯部の口蓋側・舌側への水平性の肥大で,薬物性歯肉肥大症や遺伝性歯肉線維腫症とは歯肉肥大の形態特徴が明らかに異なっていた.4例とも経口摂取の既往を認めなかった.</p>
著者
金子淳一著
出版者
新潮社
巻号頁・発行日
2009
著者
林 倫子 森 彩乃 大窪 健之 金 度源
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D1(景観・デザイン) (ISSN:21856524)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.99-109, 2021 (Released:2021-10-20)
参考文献数
20

水システムは地域の社会基盤として不可欠のものであり,その地域の生活や生業,そして景観を特徴づけるものである.本研究では,ヒアリング調査をもとに,現役の古式水道である交野市倉治の「取り水」の歴史と現在の利用実態を明らかにした.その際には,高島市勝野をはじめとする他地域の古式水道と比較しつつ,システムの特徴を地域横断的視点でも記述した.主な成果として,歴史に関しては,竹管や松材を利用した初期の取り水施設とその維持管理に関する地域知,施設と運営組織の近代化過程が確認された.現在の利用実態に関しては,住居内利用の場合,水質に対する意識に応じて利用用途に差が見られたこと,供給量の少なさと不安定さを克服するために貯水設備や上水道のバックアップ設備を住宅に備えていることが明らかとなった.
著者
金子 雄太 山村 千絵
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.131-139, 2012-08-31 (Released:2020-06-07)
参考文献数
19

呼吸機能や咳嗽力は,姿勢の影響を受けやすいことが報告されている.一般的に,摂食・嚥下リハビリテーションにおいて経口摂取を行わせる際には,頭頸部と体幹の複合的な姿勢調整を行い,嚥下がしやすく誤嚥が起こりにくいとされている姿勢をとらせる.しかし,適切な姿勢に調整された場合でも,誤嚥やむせが起こることがある.その時に素早く効果的に誤嚥物を排出できる姿勢,あるいは,食事中に楽に安定して呼吸が行える姿勢等を見いだしておくことは重要であると考える.本研究では,摂食・嚥下リハビリテーション時を想定した頭頸部と体幹の複合的な姿勢変化により,呼吸機能や咳嗽力がどの程度変化するかを,呼吸機能に問題のない健常成人を用いて調査することで,上記の問題を解決するための基礎データを得ることとした.測定姿勢は,車椅子に座った状態で,① リクライニング90 度頭頸部0 度(R90HN0),② リクライニング90 度頭頸部屈曲30 度(R90HN30),③ リクライニング30 度頭頸部0 度(R30HN0),④ リクライニング30 度頭頸部屈曲30 度(R30HN30)の4 通りを,ランダムにとらせた.呼吸機能や咳嗽力に関する測定項目は,1 回換気量(TV),予備吸気量(IRV),予備呼気量(ERV),最大吸気量(IC),肺活量(VC),咳嗽時最大呼気流量(PCF),最大呼吸流量(PEF)とした.その結果,安静時呼吸に関わる測定項目であるTV は,姿勢変化の影響を受けず,努力性呼吸に関わる測定項目であるIRV, ERV, IC, VC, PCF, PEF は,姿勢変化による影響を受けた.呼吸機能検査では,呼気に関する測定値(ERV)は,体幹の姿勢に関してR90 のほうがR30 より有意に大きく,頭頸部の姿勢に関してHN0 のほうがHN30 より有意に大きかった.咳嗽力検査では,PCF は体幹の姿勢に関して,R90 のほうがR30 より有意に大きかった.測定値と問診の結果を総合すると,体幹と頭頸部の姿勢の組み合わせでは,R90HN0 が最も呼吸を行いやすく,誤嚥物を排出する際など,強い呼出を行うのに有効な姿勢であることが示唆された.
著者
長倉 淳子 三浦 覚 齊藤 哲 田中 憲蔵 大橋 伸太 金指 努 大前 芳美
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>きのこ原木栽培に用いる広葉樹について、原木利用部位の放射性セシウム濃度を当年枝のセシウム濃度から推定する方法の確立を目指している。本研究は、当年枝のセシウム濃度が同一個体内の採取位置によって異なるかどうかを明らかにすることを目的とした。原発事故後に萌芽更新したコナラ林3サイトの各3個体から8~11本の当年枝(主軸の梢端から下部に向けて5本、および主軸以外の萌芽枝)を採取し、放射性セシウムおよび安定同位体セシウムの濃度を測定した。当年枝の放射性セシウム濃度は、個体によっては採取位置によって2倍以上異なるものもあったが、梢端で高い、下部で高い、主軸で高い、といった採取位置による決まった傾向はみられなかった。放射性セシウム濃度の変動係数は枝間では0.22、個体間では0.29、サイト間では0.51であり、個体内変動よりもサイトによる違いが大きかった。コナラ当年枝の放射性セシウム濃度は枝間や個体間でばらつきはあるが、サイトの指標値として利用できる可能性が示された。</p>
著者
馬籠 純 竹内 邦良 金丸 茂男 石平 博
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
水工学論文集 (ISSN:09167374)
巻号頁・発行日
no.46, pp.295-300, 2002

The purpose of this study is to understand the potential impact of reservoir induced water storage on the basin scale water cycle. In this study, the increase of the basin scale residence time of river water is used as the index of the effect of reservoir on water cycle, and its spatial and temporal distribution in Japan are demonstrated. The results of analysis show that the potential increase of residence time by dam reservoirs in Japan has gradually increased from 1960's and reached to 14.5 days in 1995. The actual residence time increase is also estimated in the Tone river basin where operation and seasonal variation of river discharge are taken into account. It is shown that the estimated actual residence time is much smaller than the potential, in the case of the Tone river basin, 45%.
著者
佐藤 時幸 佐藤 伸明 山崎 誠 小川 由梨子 金子 光好
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.2, pp.62-73, 2012
被引用文献数
1 8

新しく定義された新第三紀/第四紀境界を,石灰質ナンノ化石層序に基づいて秋田地域の大菅生沢および男鹿半島に詳細に追跡した.その結果,ピアセンジアン階/ジェラシアン階境界は大菅生沢ルートの笹岡層下部に,ジェラシアン階/カラブリアン階境界は,男鹿半島北浦層下部に位置することを明らかにした.石灰質ナンノ化石対比基準面に基づいて,日本海側地域の金沢,新潟,秋田地域の鮮新統-更新統を対比した上で,日本海側地域の代表的貝化石群の"大桑・万願寺動物群"産出層準の問題点を述べ,"Climate Crash"と呼ばれる2.75 Maに発生した北極域の大規模な寒冷化の日本海側地域への影響について整理した.さらに,地下断面に微化石年代層序を適用させ,北由利衝上断層群の活動が3.85 Maから1.71 Ma間であること,および秋田平野部の浅海化が北由利衝上断層群の活動と2.75 Maでの汎地球的な寒冷化(Climate Crash)の影響を強く受けていることを明らかにした.
著者
上田 秀明 田村 義輝 杉山 隆朗 野木森 宣嗣 加藤 昭生 若宮 卓也 小野 晋 金 基成 柳 貞光
雑誌
第55回日本小児循環器学会総会・学術集会
巻号頁・発行日
2019-04-26

【背景】フォンタン術後の蛋白漏出性胃腸症PLEは、治療抵抗性で予後不良とされている。PLEを発症して4年以上のフォンタン術後PLEの治療および中・長期予後を検討した。【対象】当院で経過観察中のPLE発症4年以上のフォンタン術語PLE10例(男6、女4)。年齢は中央値14(8-24)歳。主心室は左室1、右室6、無脾症3例であった。【結果】フォンタン術式は APC1、心内導管型TCPC1、心外導管型TCPC8例。TCPC時にフェネストレーション作成を行ったのは6例。導管直径は16mm 4例、18mm 3例、20mm 2例。PLEの診断は、血中蛋白濃度、消化管蛋白漏出シンチグラムや便中α 1 アンチトリプシン・ クリアランス値より行なった。【治療】内科的治療として、ステロイド療法3例で1例ブデゾニド使用例。全例入院加療中に持続ヘパリン療法を行なった。カルベジロール6例、肺高血圧治療薬5例に導入した。皮下注用免疫グロブリン製剤ハイゼントラ使用継続中3例。高タンパク食などの栄養療法4例。側副血管コイル塞栓術1例、末梢性肺動脈狭窄に対するステント留置術1例を行った。外科的介入例なし。【結果】 死亡例は初期のAPC1例で、9例生存、現在NYHA心不全分類でI度 3、II度 6例。ステロイド療法3例とも継続中で、低蛋白血症が消失しているのは、ハイゼントラ使用例を含む4例。中心静脈圧、肺血管抵抗、心係数はそれぞれ中央値13(10-15)mmHg、中央値1.3(0.7-2.3)units・m2、中央値3.6(2.3-4.1)L/min/m2。造影上の主心室の駆出率は中央値46(38-56)%。【結語】遺残病変の修復、病初期からヘパリン療法、利尿薬の増量に加え、抗心不全療法、皮下注用免疫グロブリン製剤の導入により、予後は改善してきているものの、運動耐容能の低下から日常生活上制限を受けていることが多い。今後、注意深い経過観察や新たな抗心不全療法が求められる。