著者
金沢 孝文 梅垣 高士
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1972, no.2, pp.335-338, 1972-02-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10
被引用文献数
3

乾式合成したβ-リン酸カルシウム,フッ素アパタイト,β-ピロリン酸カルシウム,レナニットおよび湿式合成した水酸アパタイト,リン酸-水素カルシウム二水塩の計6種のリン酸カルシウム塩類を,塩酸,クエン酸液,中性クエン酸塩溶液に投入して溶解熱の測定を行った。β-リン酸カルシウムは同じ程度のpHの塩酸およびクエン酸液に対する溶解発熱量が等しく,水素イオン濃度と溶解熱とは密接な関係がある考えられる。しかし,カルシウム塩類のクエン酸液への溶解のさいには,溶触にいちじるしい特徴が認められず,クエン酸基とカルシウムとの錯形式を熱化学的に検知し論議することが困難であることがわかった。β-リン酸カルシウムの溶解量を変化させても,2%クエン酸液と10%クエン酸液でカルシウム塩溶解量が小さい場合とでは,モル溶解熱がほぼ一定で,発熱量はβ-リン酸カルシウムの溶解重量に比例するとみなせる。0.5%塩酸への溶解のさいの発熱量は,乾式合成試料では,β-リン酸カルシウムがもっとも大きく,ついでレナニット,フッ素アパタイト,β-ピロリン酸カルシウムの順となった。
著者
赤江 尚子 吉井 美穂 笹原 志央里 山口 容子 澤田 陽子 金森 昌彦 西谷 美幸
出版者
富山大学看護学会編集委員会
雑誌
富山大学看護学会誌 (ISSN:1882191X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.37-45, 2012-06

Hand roughness is a problem for medical practitioners who frequently wash their hands.It is currently recommended that hand care preparations are provided to medical practitioners, but the effect or influence when such preparations are used together with antiseptics has not been investigated. In this study, we investigated how drying hand care preparations affect the sterilizing effect of antiseptics.Staphylococcus epidermidis (S. epidermidis) and Staphylococcus aureus (S. aureus) were used as the test strains. The trial medications used were a skin protective agent.As a result, the sterilizing effect after the hand care preparation had dried for 30 minutes was better against S. aureus than S. epidermidis. The present results showed that hand care preparations do not affect bacterial proliferation, that when using hand care preparation and antiseptics together. Moreover, the hand care preparation needs to be dried sufficiently.In the future, comparisons with the present results and further research conducted with consideration of the conditions of the hand care preparation will be needed.
著者
松井 彩奈 西元 康世 公益財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院 千里金蘭大学 看護学部
巻号頁・発行日
vol.14, pp.163-170,

子どもの入院に家族が付き添う場合は多く,その家族に対する看護の必要性は,家族看護実践の課題のひとつである.子どもの入院に付き添う家族ついての研究は,親の思い,付き添い環境の実態について述べられているものは多数あるが,その負担を系統的に分類したものはみられない.本研究の目的は,子どもの入院に付き添う親はどのような負担を感じているかを整理し,現状を明らかにすることである.さらに得られた知見から,具体的な家族支援について検討する.医中誌Webのデータベースを用いた文献検索を実施した.「入院」「小児」「家族」「付き添い」「親」「負担」の用語を用いて論理積で検索を行った.結果,17本の文献が該当した.家族が実際感じている負担の内容を分析するために,対象者が家族ではないものなどを除外し,最終的に該当した論文13本を分析対象とした.対象文献をベレルソンの手法を用いて内容分析を実施した.対象文献より,子どもの入院に伴う負担に関する不安や苦痛,希望が表現された文脈を抽出してデータ化し,文脈単位とした.文献より,子どもの入院に付き添う親の負担について述べられた文脈を抽出した結果,163文脈単位が抽出された.それらをサブカテゴリ(記録単位)化し,それぞれ類似した内容ごとにまとめ,【子どもの療養環境への不満】【子どもが療養生活環境にいることに伴う親の身体的苦痛】【家庭,他の家族員に関する心配,苦痛】【看護職者への不満】【子どもが療養生活環境にいることに伴う親の精神的苦痛】【入院そのものに対する不安】【子どもの病気に対する不安】【看護職者以外の医療従事者に対する不満】【経済的な負担】【社会的活動に対する不安】という10のカテゴリが形成された.最も多かったのは【子どもの療養生活環境への不満】のカテゴリで全体の32%を占めた.次に多かったものが,【子どもが療養生活環境にいることに伴う身体的苦痛】のカテゴリで17%を占めていた.子どもの入院時,付き添う家族の基本的欲求が制限されており,看護職として積極的に看護介入していく必要性が考えられた.特に,負担として多く挙がっていた付き添い環境,付き添いに伴う家族の精神的負担,子どもの病気の受容などの負担に対して,看護職は親がこのような負担をもちながら付き添う現状を理解し,早急な改善を目指す必要があるだろう.また,治療に関する説明だけではなく話の傾聴や親の頑張りを認めるような関わりが必要であることが考えられた.
著者
金 相集
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.175-191, 2003-09-30
被引用文献数
1 1

本稿はここ数年の間に幅広く普及し, 日常的なメディアとして頻繁に利用されるようになったインターネットと, 従来のメディアのなかで最も大きな影響力を行使してきた新聞との関係性を考察する.そのような公共圏を構成しているメディアの再編成によって, 公共圏における活動の主体はどのように変容しているかを考察し, また, そのような人々のメディア利用の変容とインターネット公共圏をどう関連付けて議論すべきかを明確にする手がかりとしたい.本稿では, 2000年韓国で起こった落選運動を事例として用い, それに関する新聞の報道内容とインターネット上での議論について主に「新聞とインターネットの相互参照の関係」, 「間メディア性による言説の変化」, 「メディア公共圏の複合化」という3つの観点から分析を行った.その結果, 新聞はインターネット空間で交わされる議論の主な情報源として用いられており, また, インターネット上での議論及び話題も新聞に影響を及ぼしているという結論が得られた.また, このようなインターネットと新聞の発する言説の相互参照関係によって, 一部新聞の報道内容に変化が生じていることが確認された.
著者
佐藤 浩史 笠原 要 金杉 友子 天野 成昭
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.502-510, 2004 (Released:2004-09-03)
参考文献数
26
被引用文献数
1 3

This paper proposes a new method for selecting fundamental vocabulary. We are presently constructing the Fundamental Vocabulary Knowledge-base of Japanese that contains integrated information on syntax, semantics and pragmatics, for the purposes of advanced natural language processing. This database mainly consists of a lexicon and a treebank: Lexeed (a Japanese Semantic Lexicon) and the Hinoki Treebank. Fundamental vocabulary selection is the first step in the construction of Lexeed. The vocabulary should include sufficient words to describe general concepts for self-expandability, and should not be prohibitively large to construct and maintain. There are two conventional methods for selecting fundamental vocabulary. The first is intuition-based selection by experts. This is the traditional method for making dictionaries. A weak point of this method is that the selection strongly depends on personal intuition. The second is corpus-based selection. This method is superior in objectivity to intuition-based selection, however, it is difficult to compile a sufficiently balanced corpora. We propose a psychologically-motivated selection method that adopts word familiarity as the selection criterion. Word familiarity is a rating that represents the familiarity of a word as a real number ranging from 1 (least familiar) to 7 (most familiar). We determined the word familiarity ratings statistically based on psychological experiments over 32 subjects. We selected about 30,000 words as the fundamental vocabulary, based on a minimum word familiarity threshold of 5. We also evaluated the vocabulary by comparing its word coverage with conventional intuition-based and corpus-based selection over dictionary definition sentences and novels, and demonstrated the superior coverage of our lexicon. Based on this, we conclude that the proposed method is superior to conventional methods for fundamental vocabulary selection.
著者
藤井 照重 太田 淳一 蒋 安衆 木島 和夫 金加 貴史
出版者
日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.56, no.527, pp.p2093-2097, 1990-07

In a system constructed by combining a gas turbine with a generator and an unfired waste-heat-recovery boiler,the exhausted gas becomes the heat input to the boiler and thus,the characteristics of this heat input obviously differ from those of the heat input to a conventional boiler system. To clarify the dynamic characteristics of the unfired waste-heat-recovery boiler,a simple naturalcirculation loop tube was manufactured to simulate an actual boiler. The experiments on dynamic responses with step changes in heat input were carried out for the cold start of about 10℃ and the warm start of 50℃ or 90℃. Dynamic responses such as the drum pressure,the drum water level and the natural-circulation velocity were clarified experimentally.
著者
金 池潤 金 栽滸 加藤 孝明
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.829-835, 2019

<p>本研究は,韓国史上最大の被害規模を記録した浦項地震における応急仮設住宅の供給について振り返り,日本と韓国での事例を比較して,今後の改善の方向性を模索することを目的としている.浦項地震における応急仮設住宅の特徴は,被災者の所有地で設置する自己敷地仮設住宅・仮設店舗併用住宅・一戸当たり屋外空間の一定規模が確保できる団地型仮設住宅・団地内管理事務所の設置などがある.日本と韓国における応急仮設住宅の事例を供給思想・供給類型・提供までの期間,建設コストなどの観点から比較分析を行った.</p>
著者
金 尚均
出版者
龍谷大学法学会
雑誌
龍谷法学 (ISSN:02864258)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.19-60, 2015-10

1 0 0 0 部隊教練

著者
佐久間金吾著
出版者
軍事教育會
巻号頁・発行日
1900

1 0 0 0 IR 保健体育科

著者
廣瀬 尋理 金子 真鈴 横山 剛士
出版者
金沢大学附属中学校
雑誌
研究紀要 / 金沢大学附属中学校
巻号頁・発行日
no.60, pp.84-91, 2018-02-26

伝統文化教育を中心とした教科等横断的なカリキュラムの開発ーグロ ー バル社会に生きるために必要な資質 · 能力の育成を目指して―
著者
宗宮 基 金沢 一平 澄川 美穂 長戸 妙 米原 さなえ 猪俣 信子 加藤 讓
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.259-262, 2003

症例は34歳, 男性. 飲食業. 主訴は口渇, 多飲, 多尿. コンタクトレンズ装用時検査の際に眼底出血と高血糖を認めたため, 紹介入院となった. 幼少時より注射に対する極度の恐怖心をもち, 成人してからも注射時の針を全く見ることができない状態であった. インスリン導入を行ったが, インスリン注射に対して拒否的であり, 注射時間になると明らかな焦燥感を認めた, 原因は針恐怖症と考えられた. 針を自ら刺す行為は実施不可能であった. 針無圧力注射器 (ShimaJET<SUP>&reg;</SUP>) の導入を試みたところ, 開始当初から患者に自己注射が可能であった. インスリン注射後180分間の血中インスリン濃度の指標である曲線下面積 (AUC) はダイヤル式携帯用インスリン注入器 (ノボペンIII<SUP>&reg;</SUP>) が3727.5μU, 針無圧力注射器が3687.8μUと差を認めなかった.<BR>これらの成績から, 針恐怖症を有する糖尿病患者のインスリン注射導入において, 針無圧力注射器の使用は有用と結論される.
著者
鈴木 悠 三木 通保 大須賀 拓真 山中 冴 松村 直子 松原 慕慶 金本 巨万 藤原 潔 佐川 典正
出版者
公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所
雑誌
天理医学紀要 (ISSN:13441817)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.44-50, 2017-12-25 (Released:2017-07-01)
参考文献数
18

妊婦に対して腹腔鏡手術を行う機会は近年増加しており,開腹手術と比して妊娠予後に差がないことが示唆されている.報告の多くは妊娠12週から16週までの間に手術が行われており,16週以降では少ない.今回我々は妊娠16週から18週の4症例に対して腹腔鏡下卵巣腫瘍核出術を施行したので,文献的考察を加えて報告する.腫瘍径は7.5から9 cm 大で,3例は成熟嚢胞奇形腫,1例は漿液性嚢胞腺腫と成熟嚢胞奇形腫であった.手術時間は157分から232分であり,週数の進行とともに手術時間の延長を認めたが,術後の妊娠経過には異常を認めなかった.手術を行うに際しては,増大した妊娠子宮が障害にならないよう,トロッカーの位置は臍より頭側で,腫瘍患側におくことなどの工夫が必要であった.妊娠16週以降でも画像診断により術前に腫瘍の位置を確認し,トロッカーの配置などを工夫すれば,腹腔鏡下手術は安全に施行できると考えられた.
著者
小林 章 国分 貴徳 村木 貴洋 金村 尚彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0560, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】ピアニストは長時間の反復練習により,腕や手に特殊な障害を抱えやすい。近年overuseに加え,身体のmisuseも障害発生の要因と指摘されている。しかし,overuseが前提となっているため,運動療法が処方されることは少ない。強い打鍵や遠位の鍵盤を打鍵するために体幹も大いに用いる。これまで体幹運動は着目されてきたが,手指と全身を同時に計測する難しさから,ピアノ演奏を全身運動として解析されてこなかった。本研究の目的は,ピアノ演奏を全身運動と捉え,強い打鍵時の体幹および上肢の演奏メカニズムを調査し,新たな理学療法領域拡大の基礎データを示すことである。【方法】[対象者]ピアノ未経験者5名[仕様機器]3次元動作解析VICON,YAMAHA Clavinova(CVP-30),DTM制作ソフトGarageband(Apple社)[課題]全て同じ音量(mf)で打鍵した(課題1)。次に3回に1回,fまたはffの強さで打鍵した(課題2,3)。テンポは全て120bpmとした。計測前に十分な練習時間を設けた。[解析方法]体幹傾斜角,上肢関節角度,手指関節角度を計測した。解析区間は中指MCPマーカーが最も高くなった時点から鍵盤マーカーが最も沈み込んだ点。各角度が指先への変位量への寄与度を表すdegree of contribution(以下,DOC)と打鍵の運動力学的効率性を表すkeystroke efficiency(以下,η)を算出した。[統計処理]各関節のDOC,ηに対しFriedman検定を実施し,多重比較にはWilcoxonの符合順位検定を実施した。【結果】[DOC]体幹のDOCにはいずれの課題においても有意な差は認められなかった。同音量での打鍵動作の繰り返し(課題1)と比較して,強い打鍵が求められると(課題2・3),肩および肘関節のDOCは有意に低下したが(p<.01),その前後の打鍵では有意に増加した(p<.01)。一方で,手関節より遠位関節のDOCは有意に増加したが(p<.01),その前後の打鍵では有意に低下した(p<.01)。[η]課題1と比較して,課題2・3のηは有意に増加したが(p<.01),その前後の打鍵では有意に低下した(p<.01)。【結論】ピアノ未経験者は上肢を主体とした打鍵であり,体幹運動の寄与は少なかった。しかし,ピアノ未経験者は肩・肘関節による手の上下運動を手・手指関節伸展運動によって代償する戦略と手指と鍵盤接触角度を大きくつけた打鍵戦略の2つを使い分けて打鍵することが明らかになった。また,強い打鍵の前後では前者の戦略がより顕著になり,打鍵効率性が低下した。このことからピアノ未経験者は2つの打鍵戦略間の移行がスムーズでなかったことが示唆された。特に打鍵中のDIP関節の過剰な伸展はbreaking-in of the nail joinと呼ばれる。これは音量やテンポの制御に有害であるとされ,手指への機械的ストレスが増大した可能性がある。今後,ピアニストの演奏を全身動作として捉えた研究により演奏メカニズムが解明されていけば,音楽家の治療に応用でき,新たな理学療法分野を広げる可能性がある。
著者
金間 大介
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1_2, pp.62-72, 2012-09-20 (Released:2017-10-21)
参考文献数
23

若手研究者は国や組織の競争力を高める重要な資源であるため,今後の科学技術政策やイノベーション戦略を立案する上で,彼らの意欲を高めるような方策を検討することには大きな意味がある。そこで本研究では,直接若手研究者に対しインタビューを行い,研究を行う動機や,やる気を低下させる要因,その対処法などについて調査した。その結果,若手研究者には,彼らの持つモチベーション特性の違いから,課題解決型と課題発見型の2つのタイプが存在することが分かった。課題解決型の若手研究者は,自己の能力や技能を用いて課題解決に挑むことに研究の面白さを感じる一方で,対応不可能と思われる課題や暖昧な課題を与えられた時に意欲の低下が見られた。このような時彼らは,暖昧な作業の中から挑戦すべきテーマを見つけ出すなどして自らのモチベーションを保つよう対処していた。課題発見型の若手研究者は,自身が関与する研究分野を既知の領域と未知の領域に別けて考え,自らが先頭に立って未知の領域を開拓することを研究意欲の源泉としていた。また彼らは,外部からの強いコントロールを感じた時に意欲の低下を示した。このような時彼らは,何らかの外的な報酬に行動の原因を帰属させることでモチベーションを取り戻そうとしていた。
著者
林 知里 岡本 愛花 神林 優花 花田 佳奈 渡邊 えみ 中島 美繪子 Chisato Hayashi Okamoto Aika Kanbayashi Yuka Hanada Kana Watanabe Emi Nakashima Mieko 元千里金蘭大学 看護学部 現大阪大学大学院 医学系研究科附属ツインリサーチセンター 市立豊中病院 淀川キリスト病院 市立池田病院 三木市民病院 元千里金蘭大学 看護学部
出版者
千里金蘭大学
雑誌
千里金蘭大学紀要 (ISSN:13496859)
巻号頁・発行日
pp.67-75, 2012

近年、男女共同参画社会の実現、少子化問題、子どもの社会性の発達や父親自身の人格的成長、QOLやワーク・ライフ・バランスなどとの関連において、父親の育児参加が注目されている。多胎児の父親は単胎児の父親より積極的に育児参加するものが多いとの報告があるが、育児参加が父親に与える影響について多胎児と単胎児の父親を比較した調査はない。そこで、本研究では、多胎児と単胎児の父親の「子育て観・次世代育成観」「母性神話」「仕事観」「子ども観」を調査した。ツインマザースクラブの会員1016名に自己記入式アンケートを郵送、211名の父親から回答を得た(回収率20.8%)。また、比較群として、小中一貫校の児童・生徒および大学生の単胎児の父親300名にアンケート調査を実施し、101名から回答を得た(回収率33.7%)。結果、「子どもが3歳になるまで、母親は育児に専念するほうがよい」「子どもを出産した後は、母親は仕事をやめたほうがよい」といった、いわゆる「三歳児神話」や「母性神話」については、多胎児の父親は単胎児の父親と比較して反対側が有意に多かった。「子育ては自分の自由な時間を奪う」「仕事は自分の自由な時間を奪う」「子育て中は、勤務時間を自分で調整できる方がよい」は多胎児の父親で賛成側が有意に多く、「育児休暇をとると昇進にひびく」は、多胎児の父親で反対側が有意に多かった。ふたごの父親は、単胎児の父親と比較して積極的に育児参加している者が多く、育児の担い手として実質的に育児に関わる経験が母性神話に対する価値観や子育て観、仕事観に影響している可能性が示唆された。
著者
前田 雄司 小松 和人 岩佐 陽一 金谷 二郎 高 栄哲 並木 幹夫 三輪 聰太郎 布施 春樹 平野 章治 近藤 宣幸 古賀 実 竹山 政美 松宮 清美
出版者
日本泌尿器科学会 = Japanese Urological Association
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 = Japanese Journal of Urology (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.91, no.10-11, pp.673-678, 2000-01-01

(目的) 精巣微小石灰化 (testicular microlithiasis; TM) は, 精細管内に特徴的な石灰化を認める比較的稀な病態である. 日本人におけるTMの出現頻度や, その臨床的重要性についての報告はほとんどない. 今回, 精巣生検組織および精巣摘出標本をTMについて再評価し, 精巣病理組織標本が得られた集団中での出現頻度について検討した. (対象と方法) 1988年1月から2000年5月までに得られた200症例の精巣病理組織標本 (精巣摘出標本56例, 精巣生検144例) を検討した. (結果) 200例の病理組織中, 7例 (3F5%) にTMを認めた. TMの7例中, 4例は胚細胞腫瘍の症例で, 残りの3例は男性不妊症精査の症例であった. 胚細胞腫瘍41例中, TMは4例 (9.8%) であった. 不妊症精査の122例中3例 (25%) にTMを認めた. 胚細胞腫瘍症例の組織標本には, 胚細胞腫瘍以外の症例の組織標本よりも有意にTMが多かった (p<0.05). (結論) TMは比較的稀な病態であるが, 精巣腫瘍により高率に認められる. TMと精巣腫瘍との関連をさらに検討するためには, 偶発的に発見されたTMに対する経過観察を行い, 症例を蓄積していくことが必要と考えられた. (purpose) Testicular microlithiasis (TM) is a relatively rare condition characterized by calcific concretion within the seminiferous tubules. Little has been reported on the incidence or the clinical implication of TM among Japanese. To address the problem, we evaluated pathologic specimens from biopsies and orchiectomies, of testes with various conditions. (Materials and Methods) Pathologic specimens of the testes of 200 cases, 56 from orchiectomy and 144 from testicular biopsy, were investigated. (Results) The pathological diagnosis of TM was confirmed in seven (3.5%) cases, four of which were associated with germ cell tumors and the other three were obtained from testicular biopsies performed for examination of infertile men. Of the 41 patients with germ cell tumors, four (9.8%) were found to have TM, and another three (2.5%) were identified among 122 patients with infertility. The prevalence of TM is significantly higher in specimen with germ cell tumors than those without germ cell tumors (p<0.05). (Conclusions) Although TM is rarely encountered, this condition is relatively often accompanied by testicular malignancy. Further investigation would be fundamental to ascertain the relationship between TM and testicular malignancy.
著者
国里 愛彦 高垣 耕企 岡島 義 中島 俊 石川 信一 金井 嘉宏 岡本 泰昌 坂野 雄二 山脇 成人
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.21-31, 2011

本研究は、環境中の報酬知覚について測定する自己記入式尺度の EnvironmentalReward Observation Scale (EROS) 日本語版を作成し、信頼性と妥当性の検討を行うことを目的とした。大学生と専門 学校生を対象に調査を行い、414名(男性269名、女性145名;平均年齢18.89±0.93歳)を解析対象 とした。探索的・確認的因子分析の結果、日本語版EROSは1因子構造を示した。信頼性において、 日本語版EROSは十分な内的整合性と再検査信頼性を示した。項目反応理論による検討を行った結果、 広範囲な特性値において測定精度の高いことが示された。日本語版EROSは、抑うつ・不安症状や行 動抑制傾向との負の相関、行動賦活傾向と正の相関を示した。不安症状を統制した場合、日本語版 EROSはアンヘドニア症状との相関が最も強い値を示した。以上より、日本版EROSの構成概念妥当 性が確認された。
著者
金谷 信子
出版者
コミュニティ政策学会
雑誌
コミュニティ政策 (ISSN:1348608X)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.124-143, 2008 (Released:2013-03-28)
参考文献数
49
被引用文献数
1

ソーシャル・キャピタルの形成には、市民活動が大きな影響を持つことが知られている。ただ日本の市民社会論では、現代的で自律型の市民活動に関心が集中し、伝統的な地縁団体や行政系ボランティアがつくる地縁ネットワークの役割や意義についての研究はまだ少ない。このため本論では、ソーシャル・キャピタル論とその背景にある市民社会論の関係を再考した上で、地域の安全や福祉に取り組む地縁ネットワークの意義を再確認し、これが顔の見える関係の基盤を造り、ソーシャル・キャピタルの要素である信頼の源泉として機能する可能性について考察する。