著者
金 瑛
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.3-14, 2012-05-26 (Released:2017-09-22)

本稿の目的は、アルヴァックスの集合的記憶概念を再考することにある。そこでまず行なったのが、アルヴァックスによる記憶(mémoire)と想い出(souvenir)の区別、集合的記憶と歴史の区別を検討することで、集合的記憶を定義し直すことである。集合的記憶は、時間的な連続性の流れとして定義され、言語活動・時間・空間という「枠組み」によって構成される。本稿では、従来あまり注目されてこなかった「環境(milieu)」という概念に着目することで、時間の「枠組み」を支える空間性について論じた。そしてそこでは、ノラの「記憶の場」という概念やモースの贈与論を参照軸に、「環境」と「場」の関係、「場」の変化による忘却の問題を論じた。また「環境」という観点から、個人的記憶と集合的記憶の関係、集合的記憶における忘却と想起についても論じた。本稿の論点は、「環境」が集合的記憶に対してもつ意義を説くことである。
著者
山本 哲 荒木 あゆみ 算用子 裕美 小澤 敏史 金井 ひろみ 池田 久實 高本 滋
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.105-111, 2017-04-20 (Released:2017-05-11)
参考文献数
15

採血副作用における血管迷走神経反応(VVR)は,その低減化に向けて様々な防止策が講じられている.VVRの発症機転はよく解明されていないが,不安や痛み等の精神的な要因,循環血液量の減少による生理学的要因などが推定されている.今回我々は循環血液量の減少を伴わない採血前検査で発生するVVRに焦点をあて,精神的な要因により発症するVVRの特徴について検討した.本採血前のVVRを2群(検査前群と検査後群)に分類し,本採血以降のVVRと比較検討した.その結果,本採血前のVVRでは,体格が小柄で比較的やせ気味の10代の若年男性が多く含まれ,女性では3人に1人は体重50kg未満という特徴が見られた.これらのVVRでは重症例も多くあり軽視すべきではなく,採血基準を体重50kg以上に制限することで女性のVVRは減少すると推定される.
著者
黒岩 豊秋 岩永 正明 小張 一峰 東恩納 厚 金城 福則 斉藤 厚
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.1425-1432, 1990-11-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
25
被引用文献数
7 9

抗菌剤投与による糞便内菌叢の変動とそれに対する生菌性整腸剤併用の影響を検討した. 消化管に特記すべき疾患を持たずに, 抗菌剤療法を受けた成人入院患者を対象とした.抗菌剤投与前の患者69名の糞便内菌叢は, 各菌属の検出率・検出菌数とも光岡らの報告した健康成人のものとほぼ同一であり, 正常菌叢を反映しているものと思われた.抗菌剤投与後, Enterococcus, Yeastsを除く全ての菌属で検出率の減少が観察され, 検出された菌属ででも多くの場合, その菌数は減少する傾向がみられた. このような糞便内菌叢の変動は, 生菌性整腸剤 (ミヤBM: Clostridium butyricum M588) を併用した群においても同様に観察された. また, ミヤBM投与群において, 抗菌剤投与にもかかわらずC.butyricum M588株は, 70%の患者糞便中から分離された. そのうち約半数は, 芽胞形より非芽胞形の菌数が多く, 投与された生菌が消化管内において発芽していることを示していた.糞便中C.difficileまたはToxin Aの検出率は, 抗菌剤投与後著しく増加したが, その増加はミヤBMの併用により著明に抑制された.

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著者
金井直三 画作
出版者
金井直三
巻号頁・発行日
1931
著者
金 蘭九
出版者
九州看護福祉大学
雑誌
九州看護福祉大学紀要 = The Journal of Kyushu University of Nursing and Social Welfare (ISSN:13447505)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.13-21, 2020-03

戦後における障害者政策の成立を明らかにし、以降の政策展開を見出していくには、占領初期の障害者政策、具体的に福祉・雇用法政策の動向に関する考察が重要である。ただ、終戦直後、主に1946年から1947年までの障害者政策の時期的動向に特化したアプローチは皆無に等しい。 このような問題意識に基づき、本稿の目的は、戦後、1946年と1947年における障害者政策、とくに福祉・雇用法政策の動向を考察することである。本稿の意義は、当時における障害者福祉・雇用法政策動向の解明に一助となることである。また、本稿の研究内容は、傷痍者対策の出発点、傷痍者保護対策、傷痍者保護対策へ向けた動き、職業安定法の制定と身体障害者職業安定要綱、障害者運動と盲人の針灸存続運動、考察などである。 To clarify the establishment of the postwar disability policy and determine the subsequent policy development, it is important to consider the policy in the early occupation, specifically law policies trends in welfare and employment. However, immediately after the war ended, no approaches primarily focused on the temporal trends of disability policies from 1946 to 1947. Based on this awareness of the problem, this paper aims to consider trends in postwar disability policies, especially law policies about welfare and employment in 1946 and 1947. The significance of this paper is to help elucidate the law policy trends of the welfare and employment for the disabled during that time. Additionally, the research content herein includes the starting point for measures against the injured person, measures for protecting the injured person, movement to protect the injured person, establishment of the employment stabilization law and employment stability summary for the physically disabled, a practitioner in acupuncture, and moxibustion persistence and disability movements, among others.
著者
辰村 正紀 芋生 祥之 金岡 恒治
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.771-777, 2019-10-18 (Released:2019-12-02)
参考文献数
14
被引用文献数
1

発育期腰椎分離症に対する保存療法は運動休止を要するため,身体機能の低下,モチベーションの低下が懸念事項となる.本研究では,腰椎分離症の保存療法中の運動制御の評価法としてSahrmann Core Stability Testを用いた.理学療法介入前に比べ,介入後は有意にSahrmann Core Stability TestのLevelは向上した.Sahrmann Core Stability Testによる評価は治療初期の運動制御能力の評価,段階的に強度を増す腰椎分離症の訓練の進達度の評価,競技復帰後の運動制御能力の状態の評価,選手のモチベーションの維持など多様な可能性を秘めている.
著者
金目 哲郎
出版者
弘前大学大学院地域社会研究科
雑誌
弘前大学大学院地域社会研究科年報 (ISSN:13498282)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.45-56, 2021-03-24

本稿の課題は、新型コロナウイルス感染症がもたらす日本経済および地域経済へのダメージに対して、地方自治体がどのように対応していくのかを検討し、ポスト・コロナ時代における地方自治体の政策課題を提示することにある。本稿の構成は次のとおりである。第1節では、新型コロナウイルス感染拡大がもたらしている日本経済や地域経済の悪化の現状を、いくつかの指標で捉える。第2節では、近年に経験した経済的危機と、新型コロナウイルス感染症とでは、危機の性質が異なり、ゆえに地域経済の活性化に向けた、地方自治体の対応のしかたも異なることを指摘する。そのうえで、コロナ禍にあって、まずは地域経済の崩壊を防ぐための初期対応として緊急的に打ち出された地方自治体の政策の事例を紹介する。第3節では、現在のコロナ禍で、人びとや企業が大都市圏に集中する「東京一極集中」に変化の兆しがあることに言及する。ポスト・コロナ時代では、人びとや企業が地方圏に分散する、「地方分散型社会」に向かっていく可能性を指摘し、これを後押しするための地域経済活性化政策のあり方や、国と地方自治体との財政関係をめぐる課題を展望する。
著者
田渕 優希子 安田 哲行 北村 哲宏 大月 道夫 金藤 秀明 井上 隆弥 中江 文 松田 陽一 植松 弘進 真下 節 下村 伊一郎 柴田 政彦
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.17-23, 2013 (Released:2013-03-22)
参考文献数
38

近年,非がん性慢性痛に対するオピオイド処方の選択肢が広がったことにより,オピオイドによる内分泌機能異常発症に留意する必要性がある.内分泌機能異常としては性腺機能低下症が最も多いが,副腎機能低下症や成人GH(成長ホルモン)分泌不全症の報告例も散見される.これらの内分泌機能異常は単に患者のQOLを低下させるのみならず,さまざまな代謝異常,臓器障害を呈し,時に生命の危機にかかわる病態へと進展することもある.現時点で,これらの内分泌機能異常がどのような患者に惹起されやすいかは明らかではなく,また内分泌異常の診断も必ずしも容易ではない.しかし,これらの内分泌機能異常はオピオイドの減量,中止,あるいは非オピオイド系鎮痛薬への変更,ホルモン補充療法により改善可能な病態であることから,オピオイド投与中の患者において決して見逃してはならない副作用の一つと考えられる.オピオイドによる内分泌機能異常について基礎医学的および臨床医学的見地から解説する.
著者
金子 知適
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.2525-2532, 2012-11-15

コンピュータ将棋の強さは,プロ棋士の強さに達しつつあると評価されている.そこで,本稿ではこのコンピュータ将棋の強さを活かして,プロ棋士の将棋の対局における現在の局面の形勢等を,自動でリアルタイムに解説するシステムを提案する.オープンソースプログラムのGPS将棋と,twitter.com等の情報基盤を利用したシステムを構築・公開し,実際にユーザから好評を得た.本稿で分析した27の対局について,プロ棋士の指手の過半数を正しく予測し,また形勢判断もおおむね対局の流れを表していた.統計と具体的な局面の分析の両方の側面から,十分に観戦の参考になる形勢判断と読み筋を,現在のコンピュータ将棋によって提供することが可能であることが示された.It is widely recognized that the strength of state-of-the-art computer Shogi programs is approaching to that of professional players. This paper presents a real-time commentary system of Shogi games, based on the analyses by computer programs. The presented system was implemented by using an opensource shogi program and twitter.com, and have been received favorable comments by users. In the experimental results, statistical and detailed analyses on 27 game records are discussed. It has been observed that the presented system correctly predicted more than fifty percents of the moves selected by experts, and that the evaluation of positions were almost compatible with comments given by professional players.
著者
遠藤 金次
出版者
マテリアルライフ学会
雑誌
マテリアルライフ (ISSN:09153594)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.190-195, 1998-10-30 (Released:2011-04-19)
参考文献数
16
著者
金子 真理子
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.69-89, 1999-10-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
23
被引用文献数
1

This paper analyzes the processes in the classroom, in which the teacher's evaluation affects pupils' involvement in various activities at school. In this paper, I aim to understand social meanings of evaluation in the classroom. In so doing, I hope to shed new light on the sociology of school.Based on ethnographic research conducted at an elementary school, I found the following:1) Among pupils, their recognition of teacher's evaluation is differentiated, because evaluation in the classroom is getting multifarious and the criteria of report cards are not open to pupils.2) Patterns of pupils' reaction to the teacher's evaluation are differentiated based on both “pupils' recognition” and “grades on test”. Differentiation of pupils' reaction to evaluation is a result of pupils' strategies, based on their own recognition, for making difference and getting a respectable position in the classroom. For example, lowly-graded pupils recognize their teacher's evaluation in everyday life positively and react to it accordingly. Through such strategies in dealing with teacher's evaluation, pupils make their own positions in the classroom as a social space.3) Pupils' involvement in school activities is differentiated, depending on patterns of their reaction to the teacher's evaluation.As is discussed above, the process of evaluation in the classroom is a social interaction process. Lastly, I suggest that this process makes various patterns of pupils' adjustment to school, and on the other hand it can cause a part of “self-selection”.
著者
金 龍洙
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.10-17, 1979-02-15

古代ギリシャでは,マテネでアドニス祝祭が女性により壮厳に行なわれた。それが,いまもギリシャの所々でアドニス・ガーデンの風習として生き続け,とくにセェレェー村では復活祭にこの行事が盛んである。 本研究は,アドニス庭の形成と推移を歴史的に考察し,現代のギリシャ庭園に及ぼした影響を検討したものである。 文献によればアドニス祝祭は紀元前5世紀に遡る。美男アドニス神の若い逝去を悼んで,若い女性らが,こわれたエムプラ (ギリシャの壷) を逆にして,なかに土を埋め草花を栽培した。草花の枯死はアドニス神の死と復活を象徴するもので,植物の再生と成長を促進する呪術的な行為とされた。とくに注目すべきことは,こわれたエムプラの残りを逆さにして,それを鉢として使用した点である。 この風習はギリシャ人の生活に深くしみ込み,形こそ変わったが,いまでもいたるところでアドニス・ガーデンがみられるし,ポット・ガーデンのオリジンとみることもできる。 なおアドニス・ガーデンは豪華な造園ではなく,庶民の情緒的な小庭園であるところに,大きな意味があると思われる。
著者
金城 克哉 Kinjo Katsuya
出版者
琉球大学法文学部国際言語文化学科(欧米系)
雑誌
琉球大学欧米文化論集 (ISSN:13410482)
巻号頁・発行日
no.57, pp.23-42, 2013-03

This paper tries to statistically analyze a Japanese singer and songwriter Noriyuki Makihara's original lyrics appeared in his seventeen albums from two view points. The first is to clarify the categorical ratio of the whole vocabulary. And the second point is to apply two cluster analyses (the hierarchical clustering and the centroid-based clustering) to see if these albums could form some clusters. The results show that,(i) the number of verbs outnumbers nouns in both types and tokens,and (ii) the centroid-based clustering shows that the albums before 2000 and after 2000 are divided except one album,and (iii) the hierarchical clustering shows that the first two albums forms one cluster,which could be supported by Makihara' s own words. Moreover,it is shown that the third cluster in the hierarchical clustering contains such words as ikiru (to live) and kokoro (heart) which displays Makihara' s ways of creating his lyrics after 2000.この論文は査読により、「研究論文集-教育系・文系の九州地区国立大学間連携論文集-」第1巻第1号(通巻第12号)に採択されたものである。
著者
吉田 梨乃 守谷 賢二 江南 健志 小野 淳 Rino Yoshida Kenji Moriya Kenji Enami Atsushi Ono 東京学芸大学大学院 連合学校教育学研究科 淑徳大学 教育学部 こども教育学科 千里金蘭大学 生活科学部 児童教育学科 千里金蘭大学 生活科学部 児童教育学科
巻号頁・発行日
vol.13, pp.21-30,

第三世代のボディワークであるロシアのマーシャルアーツであるシステマが注目されている(吉田ら,2015).システマは,「破壊の否定」を根本におく優れたボディワークである.本研究では,システマの創始者であるミカエル・リャブコ(Mikhail Ryabko)に半構造化面接を試み,システマの定義とその展開について検討した.その結果,斎藤ら(2014)の定義は承認された.「コネクト」の概念において意味を拡大することが指摘された.さらにシステマの日本における展開として,身体性を重視した開発的カウンセリングへの応用が論じられた.