著者
鈴木 博之
出版者
日本生理心理学会
雑誌
生理心理学と精神生理学 (ISSN:02892405)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.17-34, 2007-04-30 (Released:2012-11-27)
参考文献数
53

近年の研究は睡眠中にも覚醒時と同様に情報処理が行われていることを示している。本論文は睡眠中の情報処理を1) 入力 : 睡眠中の外部刺激への反応, 2) 処理 : 睡眠中に起こる学習した記憶の固定と向上, 3) 出力 : 夢出現の時間的特性と夢内容の特徴, の観点から概観する。睡眠中は外部の刺激への反応が減少するが, 注意や動機づけといった心理的機能は維持されている。ある種の手続き記憶と宣言的記憶の向上には練習後の睡眠が必要である。夢は朝方に頻繁に起こり, 変化した意味記憶の連合が独特な夢の内容と関連している。睡眠中の情報処理に関する研究の発展は人間の認知機能と心的活動のさらなる理解を提供するであろう。
著者
鈴木 博人 宮腰 寛之 山本 俊六 是永 将宏 鈴木 亘 青井 真
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.40, no.S08, pp.191-206, 2021 (Released:2022-03-30)
参考文献数
22

高速鉄道では,地震発生時に速やかに列車を減速・停車させることが重要である。新幹線では,線路沿線や線路から離れたより震源に近い地点に設置された地震計で観測される地震情報を利用して,線路に主要動が到達する前に列車を減速・停止させる早期地震検知システムが構築されている。近年,太平洋沖に海底地震計の観測網が整備された。海底地震計を早期地震検知システムに利用することができれば,東北地方太平洋沖地震などの沈み込み帯で発生する地震をより早く検知できると期待される。そこで,新幹線の早期地震検知システムに海底地震計を利用する方法を開発し,海底地震計のしきい値の設定方法や誤警報の防止方法を提案した。さらに,海底地震計を早期地震検知システムに利用することの効果を検証した。JR 東日本では,房総沖のエリアの海底地震計を2017年11月1日に,茨城・福島沖から青森・釧路沖のエリアを2019年1月25日に利用開始した。
著者
贄田 秀世 大井 晴男 鈴木 博人
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.227-231, 1999-05-01 (Released:2010-06-15)
参考文献数
5

明治期の鉄道橋として主に採用された鉄桁の形式は、力学的に構造が単純で製作が容易なプレートガーダー (鈑桁) である。なかでも、御雇い英国人技術者C.Aポーナルにより設計された一連のプレートガーダーは、官鉄や日本鉄道等で大量に製作架設されたため、今尚、全国各地に残存しているものが多数ある。その後、鉄路の伸展とともに機関車も大型化され、耐荷力不足となったため、下級線区や道路橋として改造転用されている。本稿では、ポーナル桁を転用改造し鉄道こ線道路橋としたなかで、コンクリートで被覆された特異な形態について調査したものである。
著者
加藤 隆 鈴木 博
出版者
横浜国立大学教育学部附属理科教育実習施設
雑誌
横浜国立大学教育学部理科教育実習施設研究報告
巻号頁・発行日
vol.8, pp.77-97, 1992-03-27

According to MIYAKE (1978, 1982), there have been three species of the mole crabs, Hippa adactyla FABRICIUS, H. truncatifrons (MIERS) and H. pacifica (DANA) (Hippidae, Anomura, Decapoda, Crustacea) in the Japanese waters. Only one species, H. adactyla have been known from Sagami Bay. In the course of this study, the latter species, H. truncatifrons and H. pacifica were newly found from Sagami Bay, and H. truncatifrons predominates among the three species throughout the studied areas. In this study, the authors described and illustrated their distribution, variation of the body, colourations, growth rate, and feeding and mating habits. The authors also studies complete larval development of H. truncatifron. The larvae are reared in the laboratory and passed through five zoeal and one glaucothoe stages and reached to the first crab stage. All the larval and the first crab stages are described and illustrated herein, and some brief comparision and discussion with other related species are also given.
著者
内山 真 鈴木 博之
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.155-161, 2011-06-01 (Released:2012-03-28)
参考文献数
32

Origin of night dream has been an enigma through whole history of human race. Descriptions in the Bible have shown that the ancients regarded dream experiences as a consequence of the supernatural power outside. Since the early twentieth century, progresses of psychology have proposed that night dream comes from the unconscious mind inside. Finally in 1953, Aserinsky and Kleiteman discovered human REM sleep and demonstrated that dream reports were obtained most frequently when subjects were awakened from REM sleep. Thereafter, many scientists conducted studies on dream and REM sleep, and found a robust association between electrophysiologic phenomena and subjective experiences during REM sleep. Here we reviewed articles on psychophysiological aspects of dream and REM sleep. To document mnemonic functions of REM sleep was of our particular interest. The authors expect that studying dream and REM sleep gives clues to an understanding on the mind-body relationship.
著者
鈴木 博之
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.199-204, 2005 (Released:2007-10-23)
参考文献数
26

夢が睡眠中のいつ起こっているかという疑問に対し,REM睡眠中に起こるという解答が既に得られていると一般的には考えられている.しかし,NREM睡眠時の夢の存在を主張する研究者も多く,夢発生のメカニズムに関しては未だ議論が続いている.従来の夢研究には,報告された夢が目覚める以前のいつ起こった体験か確認することが出来ないという方法論的問題点があった.そのため,夢とREM・NREM睡眠の明確な対応関係は検討されてこなかった.この問題点を解決するために,我々は20分間の睡眠区間を40分間の間隔をおいて78時間連続して繰り返し,各睡眠区間後に得られた夢と20分間の睡眠状態の関係を検討した.その結果得られたREM・NREM睡眠時それぞれの夢の特徴と,今回初めて明らかになった夢発生の概日変動について解説する.
著者
鈴木 博
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.249-263, 2019-11-01 (Released:2020-02-13)
参考文献数
64

遺伝性不整脈は,心筋活動電位を形成するイオンチャネルとこれに関連する蛋白などをコードする遺伝子変異によって発症する疾患の総称である.1957年にQT延長症候群が初めて報告され,現在ではカテコラミン誘発多形性心室頻拍,Brugada症候群,QT短縮症候群,早期再分極症候群,進行性心臓伝導障害も遺伝性不整脈とみなされている.若年突然死の主要な原因であるが,早期発見と介入により予防しうる.遺伝子解析の進歩により,原因不明であった失神,突然死に遺伝性不整脈の診断がつき,個々により適した管理,治療が行われるようになってきている.近年,日本循環器学会のガイドラインも改訂された.これも踏まえて本稿では,QT延長症候群,QT短縮症候群,カテコラミン誘発多形性心室頻拍,Brugada症候群について述べる.
著者
岡 暁子 高橋 日出男 中島 虹 鈴木 博人
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.233-245, 2019 (Released:2019-07-03)
参考文献数
30
被引用文献数
1 1

本研究では,東京都と埼玉県を主な対象とし,15年間の夏季(6~9月)における,稠密な降水量観測網(290地点)の時間降水量データを用いて,降水域(≧5 mm/h)の局地性と広域性に着目して強雨(≧20 mm/h)発現の地域的な特性を解析した.その結果,関東山地東麓と都区部西部や北部で局地的強雨の頻度が高く,それによる降水量も多い.全強雨に占める局地的強雨の頻度割合は,都区部北部から埼玉県東部で大きく,総降水量への寄与も大きい.一方,関東山地や埼玉県西部,多摩地域では広域的な降水に伴う強雨の頻度や降水量が多い.また,南風時に都心の数十km風下側の埼玉県東部で夏季を通して局地的強雨の頻度割合が大きいことに関し,強雨発現と風系との関係を調べた.局地的強雨には基本的に風の収束が関与しており,いわゆるE-S型風系だけでなく,関東平野内陸からの北風に伴う収束や,相模湾からの南風と東京湾からの南東風との収束も重要と考えられた.
著者
鈴木 博雄
出版者
横浜国立大学
雑誌
横浜国立大学教育紀要 (ISSN:05135656)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-34, 1962-03-30

This thesis tried to inquire the social background of the private schools in the feudal age from a historical stand of view. In middle age of Japan, there were few higher schools because of a internal war continued through the middle age. After the war, in the begininng of Tokugawa era, some private schools were appeared as a center of the movement for cultural and educational enlightenment. The typical schools in these private schools were Matunaga Sekigo's school which was established in 1637, Yamazaki Ansai's school which was established in 1655, Nakae Toju's school which was established in 1635 and Kinoshita Junan's school which was established in 1645. These typical school were founded in or near Kyoto which is a center of culture in the feudal age. In these school, Chinese Confucianism were taught as a moral teachings for not only warrior class but merchant and peasantry. In the middle of Tokugawa era, Ito Jinsai's school and Ogiu Sorai's school were most famous private schools. The former were established in Kyoto (1662) chiefly for merchant and peasantry. The latter were established in Tokyo (1709) chiefly for warrior class. They had a critical thought against Chu, Hsi (1130-1200)'s moral teachings which was most popular educational thought at that time. They improved educational methods, for example, Kaidoku-group reading methods-were used by both school at first. Teaching methods for the pronunciation of Chinese also improved by Ogiu Sorai's school.
著者
鈴木 博之 四郎翁姆
出版者
言語記述研究会
雑誌
言語記述論集 = JOURNAL OF KIJUTSUKEN(Descriptive Linguistics Study Group) (ISSN:2432244X)
巻号頁・発行日
no.9, pp.23-42, 2017-04-30

This article presents a story named Origin of highland barley’s seeds narrated in the Lhagang dialect of Minyag Rabgang Khams Tibetan with linguistic glossing, translation, and annotation. This story is not transmitted in the speech community of Lhagang Tibetan, but well known as one of the Tibetan traditional oral stories in Chinese, circulated as a part of books as well as online articles. The present version is artificially composed: after memorising several Chinese versions, the second author, native speaker of Lhagang Tibetan, narrated without referring to the Chinese text. Therefore, it is of an experimental nature as a linguistic material and we will examine how the narrative style has been influenced by the translation process other than a general analysis of a narrative.The analysis shows that:● this narrative version lacks a hearsay marker, probably because it is not orally transmitted;● aorist is a default TAM marker in the narrative; and,● irregular use of the ergative marker is attested.
著者
鈴木 博之
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 = Journal of the Society of Biomechanisms (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.199-204, 2005-11-01
参考文献数
26
被引用文献数
2

夢が睡眠中のいつ起こっているかという疑問に対し,REM睡眠中に起こるという解答が既に得られていると一般的には考えられている.しかし,NREM睡眠時の夢の存在を主張する研究者も多く,夢発生のメカニズムに関しては未だ議論が続いている.従来の夢研究には,報告された夢が目覚める以前のいつ起こった体験か確認することが出来ないという方法論的問題点があった.そのため,夢とREM・NREM睡眠の明確な対応関係は検討されてこなかった.この問題点を解決するために,我々は20分間の睡眠区間を40分間の間隔をおいて78時間連続して繰り返し,各睡眠区間後に得られた夢と20分間の睡眠状態の関係を検討した.その結果得られたREM・NREM睡眠時それぞれの夢の特徴と,今回初めて明らかになった夢発生の概日変動について解説する.
著者
加藤 一夫 鈴木 博
出版者
横浜国立大学教育学部附属理科教育実習施設
雑誌
横浜国立大学教育学部理科教育実習施設研究報告
巻号頁・発行日
no.2, pp.1-8, 1985-03-25

ヒライソガニにおける胸脚除去に伴う脱皮間期の短縮は,脚除去の数の増加にしたがって顕著となる。これはアカテガニにおける研究結果と類似する。多くの脚除去は第1回目の脱皮に続く第2回目の脱皮間期の短縮も誘発する傾向が認められる。脱皮による体長の増加率は,対象では17.5%であったが,脚除去数に伴ってその値は減少し,すべての胸脚を除去した状態ではその値は1%であった。
著者
鈴木 博章
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究では蚊を模倣した超低侵襲微小血糖値分析システムの実現を目的とした。このシステムは、血糖値(グルコース)測定用マイクログルコースセンサ、サンプリング機構、微小針から構成される。本研究ではサンプリング機構につき重点的に検討を行い、特に夜間などに長時間かけて徐々に吸引できるものをめざした。上記のサンプリング機構を実現するために、poly(N-isopropylacrylamide)/acrylic acid共重合ゲルに酵素(グルコースオキシダーゼ)を包括したものを作製した。酵素反応に伴うpH変化をゲルの体積変化の駆動力とした。ゲルの体積変化はシリコーンゴムダイヤフラムを介し、微小流路内の圧力変化に変換され、サンプル溶液が吸引・排出される。センサ作用極上には、妨害物質の影響を低減し、測定可能な濃度範囲を拡張するため、Nafion膜およびpolyHEMA膜を形成した。サンプリング機構は約10時間にわたり、ほぼ一定の流量で外部液を吸引することができた。Nafion膜被覆グルコースセンサの選択性を調べたところ、グルコース比で、アスコルビン酸に対し約1%、尿酸に対し約1%、アセトアミノフェンに対し約33%の応答が認められ、Nafion膜により妨害物質の影響を低減できることが示された。また、polyHEMA膜を拡散制限膜として形成することにより、微小流路中で測定した場合の検量線の直線範囲が30mM付近まで拡張された。微小針を緩衝液を充填したチューブに刺して緩衝液を吸引させ、その後さまざまなグルコース溶液の充填したチューブにシステムを刺し変え、これに対する応答を連続的に調べた。グルコース濃度の変化に対する明瞭な電流値の変化が認められ、このシステムが実際に機能していることが確認できた。
著者
鈴木 博人
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.805-816, 2004-11-30
参考文献数
12
被引用文献数
2

日本における大雨の出現頻度の経年変化を明らかにすることを目的に,日本全国の気象官署18箇所を対象に1950年から2003年の54年間におけるひと雨の1,3,6,12,24時間降水量及び総降水量の再現期間が2,5,10年以上の大雨の出現頻度の経年変化を分析した.暖候季(5月から10月)における大雨の出現頻度には,大雨の時間スケールや基準によらず,全般的に1950年代から1960年代前半にかけて高く,1960年代後半から1980年代にかけて低く,1990年代以降が最も高いという変動傾向がみられる.ただし,3,6時間降水量の再現期間が2年以上の大雨の出現頻度は1990年代以降だけが高い傾向にあり,特に1990年代後半に高い傾向にある.また,1950年から2003年の期間後半の大雨の出現頻度の増加傾向はほとんどの場合に有意な期間があるが,期間前半の減少傾向に有意な期間がみられるのは一部の場合のみである.梅雨季(5月から7月)及び台風季(8月から10月)における再現期間が2年以上の大雨の出現頻度は,大雨の時間スケールによって変動傾向に違いがみられるが,いずれの季節も1990年代以降は高い傾向にある.