著者
三木 千栄 小野部 純 鈴木 誠 武田 涼子 横塚 美恵子 小林 武 藤澤 宏幸 吉田 忠義 梁川 和也 村上 賢一 鈴木 博人 高橋 純平 西山 徹 高橋 一揮 佐藤 洋一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ed0824, 2012

【はじめに、目的】 本学理学療法学専攻の数名の理学療法士と地域包括支援センター(以下、包括センター)と協力して、包括センターの担当地域での一般高齢者への介護予防事業を2008年度から実施し、2011年度からその事業を当専攻で取り組むことした。2010年度から介護予防教室を開催後、参加した高齢者をグループ化し、自主的に活動を行えるよう支援することを始めた。この取り組みは、この地域の社会資源としての当専攻が、高齢者の介護予防にためのシステムを形成していくことであり、これを活動の目的としている。【方法】 包括センターの担当地域は、1つの中学校区で、その中に3つの小学校区がある。包括センターが予防教室を年20回の開催を予定しているため、10回を1クールとする予防教室を小学校区単位での開催を考え、2010年度には2か所、2011年度に残り1か所を予定し、残り10回を小地域単位で開催を計画した。予防教室の目的を転倒予防とし、隔週に1回(2時間)を計10回、そのうち1回目と9回目は体力測定とした。教室の内容は、ストレッチ体操、筋力トレーニング、サイドスッテプ、ラダーエクササイズである。自主活動しやすいようにストレッチ体操と筋力トレーニングのビデオテープ・DVDディスクを当専攻で作製した。グループが自主活動する場合に、ビデオテープあるいはDVDディスク、ラダーを進呈することとした。2010年度はAとBの小学校区でそれぞれ6月と10月から開催した。また、地域で自主グループの転倒予防のための活動ができるように、2011年3月に介護予防サポーター養成講座(以下、養成講座)を、1回2時間計5回の講座を大学内で開催を計画した。2011年度には、C小学校区で教室を、B小学校区で再度、隔週に1回、計4回(うち1回は体力測定)の教室を6月から開催した。当大学の学園祭時に当専攻の催しで「測るんです」という体力測定を毎年実施しており、各教室に参加した高齢者等にそれをチラシビラで周知し、高齢者等が年1回体力を測定する機会として勧めた。A小学校区内のD町内会で老人クラブ加入者のみ参加できる小地域で、体力測定と1回の運動の計2回を、また、別の小地域で3回の運動のみの教室を計画している。また養成講座を企画する予定である。【倫理的配慮、説明と同意】 予防教室と養成講座では、町内会に開催目的・対象者を記載したチラシビラを回覧し、参加者は自らの希望で申し込み、予防教室・養成講座の開催時に参加者に対して目的等を説明し、同意のうえで参加とした。【結果】 A小学校区での転倒予防教室には平均26名の参加者があり、2010年11月から自主グループとして月2回の活動を開始し、現在も継続している。B小学校区では毎回20名程度の参加者があったが、リーダーとなる人材がいなかったため自主活動はできなかった。2011年度に4回コースで再度教室を実施し、平均36名の参加者があった。教室開始前から複数名の参加者に包括センターが声掛けし、自主活動に向けてリーダーとなることを要請し承諾を得て、2011年8月から月2回の活動を始めた。A・B小学校区ともにビデオあるいはDVDを使用して、運動を実施している。C小学校区では2011年6月から教室を開始し、平均14名の参加者であった。教室の最初の3回までは約18名の参加であったが、その後7名から14名の参加で、毎回参加したのは3名だけで自主活動には至らなかった。2010年度3月に予定していた養成講座は、東日本大震災により開催できなかったが、25名の参加希望者があった。A小学校区内の小地域での1回目の予防教室の参加者は16名であった。大学の学園祭での「測るんです」の体力測定には139名の参加者があり、そのうち数名であるが教室の参加者も来場された。【考察】 事例より、予防教室後に参加者が自主活動するには、活動できる人数の参加者がいること、リーダーとなる人材がいること、自主活動の運営に大きな負担がないことなどの要因があった。自主グループの活動やそれを継続には、2011年3月の地震後、高齢者の体力維持・増進が重要という意識の高まりも影響を及ぼしている。C小学校区の事例で、自主活動できなかった要因を考えるうえで、A・B小学校区と異なる地域特性、地域診断を詳細にする必要性があると考える。リーダーを養成することでC小学校区での高齢者が自主活動できるか検討する必要もある。高齢者の身体状況に合わせて、自主活動できる場所を小学校区単位、小地域単位で検討する必要がある。【理学療法学研究としての意義】 介護予防事業を包括センター、予防事業所などだけが取り組む事業ではなく、理学療法士が地域の社会資源としてそのことに取り組み、さらに介護予防、健康増進、障害、介護に関することなどの地域社会にある課題を住民とともに解決するための地域システムを構築していくことは、現在の社会のなかでは必要であると考える。
著者
鈴木 博之
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.101, no.4, pp.557-578,656-65, 1992

This paper is a case study describing the local lineages of the Jiang 江 village, She 歙 xian during the Ming and Qing periods. The points are following below. The Jiang lineages gained the advantage in this district socially and economically, and the people believed that the lineage's destiny was under the influence of geomancy, feng-shui 風水. From this point of view, the Jiang lineages and others tried to conserve the environment of the mountainous region against the move by the foreign settlers to develop minerals and commercial agriculture, on a backdrop of opposition arising due to continuing stratification among the lineage members. The festival organization called she-hui 社会, shen-hui 神会, si-nui 祀会, etc. was founded on a sublineage basis, including slaves, zhong-po 庄僕, in the Jiang village and Qing-yuan 慶源 village Wu-yuan 〓源. But the sublineages were not equal one another and the qualification to participate in the festival was limited according to social and economical differences. It's well known that the areas were the hometowns of Hui-Chou (Hsin-an) merchants. Segments of the Jiang lineages extended their business activities to the cities in Jiangnan, especially Yang-zhou 揚州, which was famous as a salt merchant center. But local lineages were not formed in Yang-zhou, rather the merchant segments based their relationships on the original lineages. This presented a precarious position for outside merchants. The connection with the hometown was a sort of insurance against the natural features of the region which would protect them and their descendants.
著者
村上 平 榊原 宣 堤 京子 田中 三千雄 丸山 正隆 鈴木 茂 橋本 忠美 金山 和子 長谷川 利弘 吉田 操 山田 明義 鈴木 博孝 遠藤 光夫
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.20, no.7, pp.623-629_1, 1978

Early-stage cancer located on the upper part of the stomach, especially near the esophagogastric junction, is still difficult to diagnose, and frequently undiscoverd until it is too late. Minute cancers so far discovered, in particular, are few in number, and much remains obscure about their morphology, , including such problems as strophic and metaplastic changes in the mucous membrane over the said area. We looked into diagnosis and morphology of minute cancers of the said region in patients encountered by us. Subjects consisted of 12 patients with early-stage gastric cancer the size of 2 cm or less in maximum diameter, a margin of which was within distance of 2 cm from the junction. Total 13 such lesions were found in them. Our findings were as follows : (1) Straight-view fibescope is more useful in observation snd biopsy of small lesions adjacent to the junction, while lateral-view fiberscope has slight advantages with small lesions off the junction, (2) of small, early-stage gastric cancers near the junction, those adjacent to the junction are frequently protuberant, and those off the junction tend to be concave, (3) the majority of small, early-stage gastric cancers near the junction are histologically highly differentiated.
著者
真船 奨 島村 誠 鈴木 博人 外狩 麻子 木下 芳郎 山田 武志 疋田 篤史
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
鉄道技術連合シンポジウム(J-Rail)講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, no.19, pp.487-488, 2012-12-04

Than doing the actual experiment, in order to evaluate the safety of passenger flow and passenger evaluation station, the consideration by the simulation model is realistic. System for safety evaluation of the station in the event of failure by utilizing simulation technology, in this study, we have examined the specifications of sub-models that are required there. In addition, conduct a case study that assumes a situation where using a part of the sub-model for the models studied, underground station is flooded due to the tsunami and heavy rain guerrilla, we have confirmed the effectiveness of the system.
著者
黒木 雅大 岡田 真行 鈴木 博人 川前 金幸
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.127-133, 2021

<p>超緊急帝王切開では母体の安全を確保しつつ,迅速な児娩出を目指す.そのために当院では超緊急帝王切開に対し多職種共通のプロトコールを作成し,手術決定から児娩出まで(Decision-to-Delivery Interval:DDI)の短縮を目指した.今回,この共通プロトコール運用の前後において,DDIとその内訳を検討した.共通プロトコールの運用後でDDIは有意に短縮し,特に手術室入室から気管挿管までが有意に短縮された.超緊急帝王切開において共通プロトコールの運用はDDIの短縮に有用であり,それには麻酔科医の行動が大きく関与している可能性が示唆された.</p>
著者
矢浦 一磨 渡辺 源也 中村 貴彬 突田 健一 鈴木 博義 鈴木 靖士
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001373, (Released:2020-02-26)
参考文献数
15
被引用文献数
1

症例は53歳女性,左上肢の間代性痙攣を認め入院した.頭部MRIで大脳に複数のFLAIR高信号,磁化率強調画像(susceptibility-weighted imaging; SWI)で多発する微小な低信号病変が見られ,抗痙攣薬の内服を開始した.しかし痙攣発作が再発し,頭部MRIで大脳にさらにSWI低信号の病変が新規に出現したため,脳生検し,出血を伴った血管内大細胞型B細胞リンパ腫(intravascular large B-cell lymphoma; IVLBCL)と診断した.IVLBCLは典型的な多発梗塞性病変だけでなく出血性病変でもIVLBCLを鑑別疾患の一つとして列挙する必要がある.
著者
鈴木 博人
出版者
法学新報編集委員会
雑誌
法学新報 (ISSN:00096296)
巻号頁・発行日
vol.121, no.7, pp.163-212, 2014-12

日本法でもドイツ法でも法的な母子関係は、分娩によって発生する。父子関係と異なり、母子関係は分娩時に確定する。しかし、望まない妊娠等の事情により、母子関係の存在あるいは妊娠の事実が知られると困る場合、子が出生直後に遺棄されたり、時には殺害されることがある。この事情は、ドイツでも日本でも同じである。このような事態に対応するとして、ドイツでは一九九一年にベビークラッペが設置され、また匿名出産が事実上行われている。少数であるが、子の匿名での引受けを行う事例も存在する。ドイツでは二〇〇九年に倫理評議会が、ベビークラッペは廃止すべきであり、それに代わり一定の要件の下で限定的に母の匿名性を認めるべきという提言がなされた。それを受けた実態調査を踏まえて、妊娠葛藤法のなかに秘密出産制度が導入されて、二〇一四年五月一日から施行されるに至った。本稿では、第一に、秘密出産制度が制定されるに至った背景と新しい制度の内容を紹介、分析する。第二に、秘密出産制度で母の利益と子の利益が比較考量されて、望まない妊娠に典型的にあらわれる母と子それぞれの利益対立が、どのように調整されたのかを検証する。第三に、社会問題としては類似の問題を抱える日本で、仮に母の匿名性を例外的にであれ認めることによって、母子双方の福祉・権利の調整を図るとしたら、どのような問題を乗り越えなければならないかを指摘する。
著者
林 薫 三舟 求真人 七条 明久 鈴木 博 松尾 幸子 牧野 芳大 明石 光伸 和田 義人 小田 力 茂木 幹義 森 章夫
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.p129-142, 1975-12

1973年2月3日から18日の間,新生成虫が検出されない時期に野外で捕集した冬期のコガタアカイエカ1083個体,8プールから4株のウイルスを分離し,日本脳炎(日脳)ウイルスと同定された.この事実は,越年蚊体内でウイルスが持ち越されたものと考えられる.そして1973年には年間を通じて,蚊一豚の感染環が証明され,奄美大島,瀬戸内地域における日脳ウイルスの特異な撒布状況が観察された.この所見は我国で初めてのことである.しかしながら,1974年では,コガタアカイエカから7月上旬にはじめてウイルスが分離されると共に,これと平行して豚の新感染も同時に証明された.この事は蚊一豚の感染環,特に蚊によるウイルスの越年が中絶したことを意味すると共に,奄美大島の調査地域へのウイルスの持込みがあったに違いないことを物語るものであろう.換言すれば,奄美大島の調査地域では環境条件さえよければウイルスの土着が可能であるが,条件が悪いと蚊によるウイルスの越年は中絶し,流行期に再びウイルスの持込みが行われるであろうことを推定してよいと思われる.1973年7月24日夜半から25日未明にかけて奄美大島名瀬港及び鹿児島港の中間の海上で,船のマスト上にとりつけられたライトトラップ採集でコガタアカイエカ数個体を捕集した.この事実はコガタアカイエカが洋上を移動していることを意味しているものと考えられる.1975年7月下旬,奄美大島から鹿児島(九州南域)に向け,標色コガタアカイエカの分散実験を試みたが,遇然に実験地域を通過した台風2号で阻止され不成功に終った.しかし,分散実験日の約10日前にフイリッピンからの迷蝶が鹿児島南端に到達していることから気流によるコガタアカイエカの移動は決して否定出来ない.
著者
鈴木 誠 鈴木 博人 阿部 玄治 平山 和哉 長井 真弓 釼明 佳代子 小野部 純
出版者
東北文化学園大学医療福祉学部リハビリテーション学科
雑誌
東北文化学園大学医療福祉学部リハビリテーション学科紀要 : リハビリテーション科学 = Rehabilitation science : memoirs of the Tohoku Bunka Gakuen University Faculty of Medical Science & Welfare, Department of Rehabilitation (ISSN:13497197)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.13-18, 2021-03-31

2017年,本学は地域連携事業の推進を目的に,宮城県東松島市と包括連携協定を結び双方の資源を活用した地域振興・教育・研究の各分野における実践的取り組みを開始した.そこで本論では,本学理学療法学専攻と中学校とで行ってきた中学生の体力向上と運動器障害予防の取り組みについて紹介をするとともに,今後の展開について方向性を明らかにすることを目的とする.主な取り組みは,1)運動能力テストの実施,2)講話・ストレッチ講習会の開催,3)体力向上・運動器障害予防に向けた啓蒙活動,4)保健体育授業・部活動の支援,であった.今回の取り組みのように,中学生に支援が行えたことは体力向上や運動器障害予防の観点からは大変有効であったと考えられる.また,取り組みに携わった学生の成長も大きな成果であったと言える.今後も中学校との協力体制を深めて行きながら,更なる充実した取り組みを企画し,発展させていきたいと考えている.
著者
福田 守 樋口 朝美 冨澤 義志 鈴木 博人 川上 真吾 鈴木 誠 藤澤 宏幸
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.46-54, 2016-08-30 (Released:2016-09-07)
参考文献数
6
被引用文献数
2

【目的】端坐位での振り向き動作における眼球運動,頭頸部,胸腰椎および骨盤の回旋の運動協調性について,目標物までの距離,角度,方向による差異を明らかすることとした。【対象】健常若年者20名を対象とした。【方法】目標物はLED光とし正面を0°として同心円上に30°刻みに150°までの計5箇所に設置した。また,目標物の距離は1mおよび2mとし,動作の方向は左右とした。これらの条件を変えた際の振り向き動作を行い,3次元動作解析装置を用いて,頭頸部,胸腰椎,骨盤の回旋角度を算出した。【結果】全ての体節の回旋到達角度において,目標物までの角度の主効果が有意であった。目標物30°の場合は眼球運動と頭頸部回旋角度に相関を認め,60°~150°では頭頸部と胸腰椎に相関を認めた。また,どの体節も動作開始直後から動きがみられ,頭頸部,胸腰椎,骨盤の順で動きが大きくなっていた。【結語】目標物30°では眼球運動と頭頸部回旋が,目標物60°~150°では頭頸部と胸腰椎回旋が相補し合うことが明らかとなった。
著者
リップ フォルカー 鈴木 博人
出版者
日本比較法研究所
雑誌
比較法雑誌 (ISSN:00104116)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.83-108, 2018-09-30

本稿は,2017年11月13日に法学部・家族法の講義の一環として行われたドイツ家族法の基本的原理を解説した講義の内容を邦訳したものである。 講義は,序論でドイツ家族法改正史とドイツ家族法が基本法(憲法)の準則(とりわけ男女平等条項と家族保護条項)に則って規整されていることが示されている。さらに,ヨーロッパ人権条約の強い影響を受け,いわば家族法の憲法化とも称される状況があることが示される。 序論を受けて,ドイツ家族法の最新の動向が,婚姻・離婚法,親子法,成年者の保護(日本法上の成年後見)法の3領域について示されている。 婚姻・離婚法分野では,法的な形式を与えられた生活共同体として古典的な婚姻とならんで登録された生活パートナー関係,さらには2017年10月1日からの同性婚の制度化後の対応が論じられている。 親子法分野では,血統法から親の配慮(日本法の親権)法,面会交流,子の扶養という広範な領域が概観されている。 成年者保護の分野では,自己決定能力が制限され,自らの事務に関して自分で処理できない成年者の保護が,後見から現代的な成年者保護の流れのなかで示されている。 各分野それぞれについて,喫緊の課題とその課題への取組が示されており,ドイツ家族法の現状理解を助ける,非常に明解な講義となっている。
著者
矢野 隆 魚里 博 鈴木 博子 嶺井 利沙子 根本 徹 清水 公也
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.95-102, 2002-08-25 (Released:2009-10-29)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

眼軸長測定には散瞳下・無散瞳下(自然瞳孔)のどちらの条件が適しているか。また新しい光学式の眼軸長測定装置ZEISS社製IOLMaster™(以下IOLMaster)を従来の超音波Aモード装置NIDEK社製US-800™(以下Aモード)と比較し、その有用性について検討したので報告する。対象は正常有志10名20眼(年齢22歳~28歳)。散瞳前後の眼軸長及び前房深度をAモードとIOLMasterで測定比較した。眼軸長及び前房深度の各測定において無散瞳下のAモードに対する3群(散瞳下のIOLMaster・無散瞳下のIOLMaster・散瞳下のAモード)の間で有意差を認めた。また前房深度測定においてIOLMasterは散瞳前後でも有意差を認めた。眼軸長及び前房深度の各測定の標準偏差値はIOLMasterは散瞳前後では小さく、無散瞳下のAモードでは一番大きかった。瞳孔径別の眼軸長及び前房深度測定の標準偏差値はIOLMasterでは、ほぼ一定であった。Aモードでは瞳孔径が小さいと標準偏差値は大きく、瞳孔径が大きくなるほど標準偏差値は小さくなった。Aモードでは散瞳下での測定、IOLMasterでは散瞳下・無散瞳下のどちらの条件でも測定に適していると考えられた。新しい光学式の眼軸長測定装置IOLMasterは、臨床においても極めて有用な装置であると考えられる。
著者
鈴木 博志 宮崎 幸恵
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.53-62, 1995

以上の結果は, 次のように要約される.<BR>(1) 単身世帯の男女とも, 年齢層が高くなると住宅水準の高い [マンション] や [鉄賃アパート] への住み替えが進むが, その一方で [木賃アパート] の「沈殿層」が一定程度析出されている.この「沈殿層」は, 「50歳以上」の女性に多いとみられる.若年層から高年層まで, 女性は男性より水準の高い [マンション], [鉄賃アパート] の居住が多い.いずれの住宅型でも女性の平均収入は男性より低いが, 逆に畳数水準は高く, 女性の住宅への関心の高さが伺われる.また, 長期居住による住居費の低廉化は, 高年層の女性に多く寄与している.<BR>(2) 単身世帯の現住宅に対する不満度は, 総合評価で44%と高い.各評価項目別の不満度についても同様に高いが, とくに住宅の居住空間より設備・性能に関する項目の不満度が高い.全体に女性の不満度は男性より低いが, これは現住宅の居住水準が高いことの反映でもある.住宅の評価を具体的な客観的指標 (規模, 日照, 設備水準) と照合してみると, 住宅水準が低下すると不満度が高くなる傾向が読み取れる.他方, 単身世帯の住環境に対する不満度は, 総合評価で27%と低い.各評価項目別では, 中央線沿線の立地, イメージの良さから男女とも立地の利便性や地域イメージに関する項目の不満度は低い. しかし, 居住地の安全性やアメニティに関する項目の評価では, 不満度が高く表れている.<BR>(3) 単身世帯の現住宅選択理由は, 「通勤・通学の利便性」が圧倒的に多い.二義的選択理由として, 男性は「価格・家賃が適当」の経済重視が多いが, 女性は「買物などに便利」とする日常生活の利便性を重視する傾向に分かれる.今後の住宅選択の重視項目では, 全体に「通勤・通学の便利さ」の利便性以上に, 「家賃・価格の安さ」の経済性を重視する傾向にある. [~29歳], [30歳代] では, 男女とも「通勤・通学の利便性」, 「家賃・価格の安さ」が重視されるが, [40歳代] では, 「日常生活の便利さ」, 「住宅の広さ」の比重が高くなる.高年層になると, 男性は「家賃・価格の安さ」の経済性が依然として多いが, 女性は「日常生活の便利さ」, 「住宅の設備・性能」など日常生活のしやすさを重視する傾向が強くなる.<BR>(4) 単身世帯の定住希望は, 全体で61%を占める.性別では女性の方が高い.定住希望の高い年齢層は, 男性では若年層だけであるが, 女性では若年層と高年層の両極で高い.<BR>(5) 単身世帯の住宅関連設備の要求では, 男女とも「専用の風呂」や「専用のトイレ」と最も基本的な要求であり, 「独立のキッチン」や「エアコン (冷暖房用) 」は, それにつぐ高い要求とされる。女性は, とくに住宅の安全性や生活の便利さに配慮した要求内容が多い.また, 男女とも年齢が高い層に「エレベーター装置」, 「住棟内トランクルーム」, 「衣類乾燥機付浴室」の要求がやや多い.単身世帯の住宅関連サービスの要求については, 「ゴミ処理サービス」や「セクレタリーサービス」が最も多い.「セキュリティサービス」など住宅の安全性は, 女性では若年層から高年層まで共通して多い.男女とも「ケアサービス」は, その必要性の認識が高くなる高年層に多い.
著者
鈴木 博人 加藤 亘 島村 誠 畑村 真一 野村 真奈美 日置江 桂
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.353-365, 2009-05-31
被引用文献数
1

本研究では,列車運転規制に利用することを目的に,日本海沿岸部における冬期(11月から3月)の寒冷前線に伴う突風に対して,レーダーエコーデータを用いた突風警戒基準を開発した.突風を発生させる可能性のある親雲の検出基準は,1km格子のレーダーエコーデータにおいて,80mm/h以上のエコー強度が10格子以上存在し,なおかつそれらの格子における最大のエコー頂高度が6km以上の場合とした.この基準を用いることで,2005年冬期から2008年冬期までの4冬期において,日本海及びオホーツク海の沿岸部で発生した人的被害を伴う全突風3事例を検出できる.また,人的被害のなかった事例を含めた全突風7事例のうち,4事例を検出できる.本研究で定めた突風検出基準を用いて,次のような列車運転規制方法を考案した.突風検出基準を超過するレーダーエコーが現れた場合には,その地点の北から南東までの方角において約38km以内の範囲を突風の警戒範囲とする.鉄道の線路がその警戒範囲内に含まれる場合には,その区間における列車の運行を停止する列車運転規制を実施することにした.この方法を羽越本線新津・酒田間及び白新線新潟・新発田間に適用したところ,これらの路線が突風の警戒範囲に含まれる時間及び回数は,4冬期の平均で1年あたり150分及び4.0回であることが分かった.この検証結果に基づき,上記区間において本研究で開発した列車運転規制の試行を2008年1月28日から開始した.