著者
五嶋 研二 府川 和彦 須山 聡 鈴木 博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CS, 通信方式 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.455, pp.31-36, 2009-02-23

本報告では,移動通信における中継システムとして,i)雑音が加わったアナログ信号を再送するAF(Amplify-and-Forward)と,ii)復号して再送するDF(Decode-and-Forward)を切替える方式を検討する.中継局において,CRC復号による判定誤りが検出された場合はAFを行い,誤りが検出されない場合にはDFを行う.さらに送信側とは異なる符号化を行いHARQ(Hybrid ARQ)と同様の高信頼化を図る.また,受信側で直接受信と中継局経由の受信信号の合成メトリックを求め,復号に必要なビット対数尤度比(LLR)を算出するために,まずプリアンブル信号を用いてチャネル推定とレプリカ誤差の平均電力推定を行い,合成メトリックの重み係数をレプリカ誤差の平均電力値から求める方法を提案する.マルチパスフェージング条件下でOFDM伝送の計算機シミュレーションを行い,i)切替方式はAFとDFよりも優れたパケット誤り率(PER)特性が得られ,ii)中継局での受信レベルが高く高符号化率の場合に異符号を用いる方式が効果があること,iii)準静的伝搬環境ではチャネル推定の精度による劣化が小さいことを明らかにする.
著者
和田 義人 茂木 幹義 小田 力 森 章夫 鈴木 博 林 薫 宮城 一郎
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 Tropical medicine (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.187-199, 1976-02-28

奄美大島において1972-1975年に蚊の調査を行なった.成虫は畜舎にかけたライトトラップ及び野外でのドライアイストラップにより,幼虫はその発生場所において,1年を通じて採集を行なった.その結果31種の蚊が得られた.上記の方法による採集の記録と,野外で採集した幼虫の飼育の記録とから,各々の種の,特に冬季における,生態について記載した.また,奄美大島での日本脳炎ウイルスの越冬について,伝搬蚊コガタアカイエカの生態の面から考察を加え,ウイルスの越冬が可能なのは,冬の気温が高く,蚊-豚の感染サイクルが持続する場合においてのみであると結論した.Mosquitoes were investigated on Amami-Oshima Island in 1972-1975. Adults were collected by light traps at animal shelters and by dry ice traps in the field, and larvae at their breeding sites in the whole year. In total, 31 species of mosquitoes were found. From the mosquito catches by the above methods together with the rearing records of some larvae collected in the field, the biology of each mosquito particularly in the winter time was reported. Also, the possibility of the overwintering of Japanese encephalitis virus on Amami-Oshima was discussed on the basis of the biology of the vector mosquito, Culex tritaeniorhynchus. It was considered that the successful overwintering of the virus is attained only by the succession of the pig-mosquito cycle maintained by the continuous feeding activity of the vector mosquitoes in warm winter.
著者
鈴木 博人 高橋 日出男
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.161-173, 2008-08-31
被引用文献数
1

Detection of the spatial scale of heavy precipitation is important for the prevention of disasters. This study analyzed the spatial scale of heavy precipitation based on observed data at the railway observational stations and the meteorological stations in Kanto Plain. The results can be summarized as follows: The simultaneous occurrence area of precipitation becomes smaller when the criterion of precipitation and/or the distance increases. Heavy precipitation exceeding 30mm (130mm) during 1-hour (24-hour) occurs simultaneously within the distance of about 4km (>30km) at the probability of 0.5. The spatial scale of heavy precipitation is larger in case of typhoon rather than front, low, and thunderstorm. The simultaneous occurrence area of precipitation seems to have southwest-northeast oriented long axis. Moreover, the spatial scale of heavy precipitation is larger in southeastern part rather than in northwestern part of Kanto Plain.
著者
鈴木 博人
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.805-816, 2004-11-30
参考文献数
12
被引用文献数
2

日本における大雨の出現頻度の経年変化を明らかにすることを目的に,日本全国の気象官署18箇所を対象に1950年から2003年の54年間におけるひと雨の1,3,6,12,24時間降水量及び総降水量の再現期間が2,5,10年以上の大雨の出現頻度の経年変化を分析した.暖候季(5月から10月)における大雨の出現頻度には,大雨の時間スケールや基準によらず,全般的に1950年代から1960年代前半にかけて高く,1960年代後半から1980年代にかけて低く,1990年代以降が最も高いという変動傾向がみられる.ただし,3,6時間降水量の再現期間が2年以上の大雨の出現頻度は1990年代以降だけが高い傾向にあり,特に1990年代後半に高い傾向にある.また,1950年から2003年の期間後半の大雨の出現頻度の増加傾向はほとんどの場合に有意な期間があるが,期間前半の減少傾向に有意な期間がみられるのは一部の場合のみである.梅雨季(5月から7月)及び台風季(8月から10月)における再現期間が2年以上の大雨の出現頻度は,大雨の時間スケールによって変動傾向に違いがみられるが,いずれの季節も1990年代以降は高い傾向にある.
著者
長野 泰彦 菊澤 律子 西尾 哲夫 武内 紹人 高橋 慶治 立川 武蔵 白井 聡子 池田 巧 武内 紹人 池田 巧 高橋 慶治 立川 武蔵 白井 聡子 本田 伊早夫 桐生 和幸 R. LaPolla M. Prins 戴 慶厦 G. Jacques 才譲 太 S. Karmay M. Turin 鈴木 博之 津曲 真一
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2004

チベット・ビルマ語族は、中国・青海省からパキスタン東北部にわたる広い地域に分布する。この語族の歴史はその大枠がようやく明らかになってきたものの、未解読文献言語や記述のない言語が多数残っている。本計画は(1)未記述言語の調査、(2)未解読古文献(シャンシュン語)の解読、(3)チベット語圏の言語基層動態解明、を目標として研究を行い、幾つかの知られていなかった言語を発見して記述、新シャンシュン語(14 世紀)語彙集集成、古シャンシュン語の文法的特徴の抽出、に成功しただけでなく、歴史言語学方法論に接触・基層という視点を導入することの意義に関して提言を行うことができた。
著者
張 立 須山 聡 鈴木 博 府川 和彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.518, pp.359-364, 2008-02-27

移動通信において周波数利用効率の向上が期待されるインターリーブ多元接続方式(IDMA)に対して,チャネル推定を含むターボ信号検出を適用し,その伝送特性を明らかにする.IDMAとしては,周波数帯域を有効に利用できるOFDMを用いたMC-IDMA,別名OFDM-IDMAを検討する.送信側の誤り訂正符号は,畳み込み符号と繰り返し符号を結合して低符号化率にしたものを用いる.受信側はターボ信号検出を行い,繰り返し処理におけるチャネル推定にはソフト判定指向形チャネル推定(SDCE)を適用する.初回は符号化されたビットの対数尤度比(LLR)が分からないので,パイロット・シンボルを用いてRLSアルゴリズムによりチャネル推定を行う.データ区間ではそのチャネル・インパルス応答の推定値を用いて単純な軟判定を行い,さらにMAP復号器で誤り訂正符号の復号を行う.繰り返し処理では,MAP復号器からのLLRを用いてレプリカを生成し,受信信号との平均2乗誤差が最小になるようにチャネル・インパルス応答をLMSアルゴリズムを用いて推定する.計算機シミュレーションにより,提案したチャネル推定法を備えるMC-IDMAが良好な特性を実現できることを示す.また,MC-CDMAとの比較を行い,時間拡散および周波数拡散のMC-CDMAよりもビット誤り率(BER)が優れているが,チップインターリーブを行う周波数拡散MC-CDMAとBER特性が同等となることを示す.
著者
横山 泉 竹本 忠良 羽生 富士夫 遠藤 光夫 鈴木 博孝 鈴木 茂 山内 大三 井手 博子 山下 克子 宮坂 節子
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.407-407, 1968-05-25

東京女子医科大学学会第148回例会抄録 昭和43年2月23日(金) 東京女子医科大学本部講堂
著者
野口 友義 榊原 宣 鈴木 博孝 木下 祐宏 川田 彰得 小川 健治 三上 直文 矢川 裕一 菊池 友允 恩田 光憲 橋本 忠美 大谷 洋一 朝戸 末男
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.390-390, 1977-03-25

東京女子医科大学学会第208回例会 昭和51年11月26日 東京女子医科大学本部講堂
著者
皇 甫俸 鈴木 博之
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.67, no.562, pp.277-283, 2002
被引用文献数
1

ベルリンに建つフィルハーモニー・コンサートホール(1956〜63)の設計者として有名なドイツの建築家、ハンス・シャロウン(1893〜1972)はフーゴー・へーリング(1882〜1958)、エリック・メンデルゾン(1887〜1953)、ブルーノ・タウト(1880〜1938)とともに一般に表現主義の建築家として知られている。彼らが表現主義の建築家と呼ばれるようになったのは、一般的な建築表現法を脱皮し未来の理想的な空間を絵画的な方法で表現したからである。しかしブルーノ・タウトのグラスチェーン(Glaserne Kette)書簡などに見られるシャロウンの表現主義的性向は、実際に建築物を建てるためではなく、新しい建築の可能性を模索するための幻想的な実験であった。本論文はシャロウンの建築を単に表現主義として記述している近代建築史編纂の不合理性を指摘するものである。1920年代にシャロウンが設計した二つの作品は、近代建築の概念を構成する主な要素である機能性と合理性を満足させる優秀な建物として、彼の建築を有機的な近代建築として把握するための、実証的な根拠を提供している。また、本論文は近代建築史編纂においてゲシュタルト理論がシャロウンをはじめとする有機主義の近代建築家たちを疎外させることにいかなる影響を及ぼしたかに関しても考察する。近代建築史編纂に絶大な影響を与えたゲシュタルト理論はカント美学に基づき、初期にはR.フィッシャー(1847〜1933)の象徴主義とC.フィードラー(1841〜1895)の形式美学により互いに対立する様相を呈していた。しかし、フィードラーの形式主義がH.ヴェルフリン(1864〜1945)とS.ギーディオン(1888〜1968)に継承されて以来、近代建築史は形式美学を基幹として記述されるようになる。特に新即物主義(Neue Sachlichkeit)概念の登場は1920〜30年代の主流である機械美学と組み合わされることによって、近代建築の概念を形式美学的に歪小化し、それに基づく史料編纂をするようになる。シャロウンをはじめとする有機主義者たちの非定型的な建築は形式美学的なゲシュタルト理論の下で客観性が欠如したものと受け止められ、近代建築としての価値の少ないものと理解された。したがって、ギーディオンやペヴスナーといった影響力のある近代建築史家たちは、有機主義の近代建築家たちが実は機能性に根拠を置いているという深遠な実験精神をまともに受け止めることができず、結局シャロウンは表現主義建築家としてのみ記述されるという結果をもたらした。シャロウンの建築は形式美学に基づいた近代建築の失敗以後、ポストモダニズムと脱構築主義など多くの試みのなかでもはっきりとした突破口を見つけることができずにいる現代建築が有効的に省み、応用できる優秀な建築物であると考えることができる。一方、シャロウンがフーゴー・ヘーリングの有機的建築(organisches Bauen)の影響を受けたことは周知の事実である。シャロウンの建築を単に表現主義として分類し、理解することは、シャロウンという建築家個人の建築観を誤って理解することであり、近代建築形成の一つの軸を形成している有機的な近代建築全般を誤解する結果を生む危険がある。
著者
鈴木 博之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

ジョサイア・コンドルは明治期最大の貢献をした御雇外国人建築家である。彼の活動は明治洋風建築の確立に極めて大きな役割を果たした。コンドルの作品は明治洋風建築史上、重要なものばかりである。この研究ではじめて明らかにされた彼の書簡群は、コンドルの多面的な活動を明らかにするものであった。書簡は三菱系のひとびととのあいだに交わされたもので、静嘉堂文庫の原徳三氏の収集によるものである。この書簡群は大きく3つの発動分野にまたがっている。ひとつは岩崎家との関係で繰り広げられる建築家としての活動である。岩崎彌之助と岩崎久彌の邸宅関係の書簡が多く発見された。彼の実務的側面が明らかになったことは大きな成果であった。建築設計のあり方を示す指示や相談が数多く示されている。つぎに明らかにされたのは、建築設計にともなう絵画の収集や配置に関する活動と助言である。後に首相になる加藤高明が、岩崎家の女婿としてロンドンで絵画の買い付けを行なっている様子は、極めて興味深い。同時にこれは、当時の建築家が建築のみならず、建築の使い方、生活様式まで準備する存在であったことを教えてくれる。さらに第三点は、コンドルの趣味である演劇活動の側面である。当時の外国人社会の有り様もまたここに窺われる。明治期の建築・社会・文化の状況を明らかにすることができた研究であった。この成果は2006年にジョサイア・コンドルの本格的評伝としてまとめる予定である。
著者
太田 重久 鈴木 博孝 鈴木 茂 福島 靖彦 喜多村 陽一 勝呂 衛 山下 由起子
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.1103-1104, 1987-09-25

東京女子医科大学学会第271回例会 昭和62年6月11日 弥生記念講堂
著者
Vercammen-Grandjean P.H. 熊田 信夫 NEWELL I. M. ROBAUX P. 鈴木 博
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.245-249, 1974
被引用文献数
3

ケダニ上科のケダニ科・ジョンストンダニ科などに属するダニ類の大部分は節足動物寄生性であるが, 同上科のツツガムシ科のダニ類に似た形態的特徴を持つために, しばしば混同されることがある。本稿では, さきに著者のひとりVercammen-Grandjeanによってツツガムシ科のアポロン亜科からジョンストンダニ科に移籍されたNothotrombicula, Grossiaの2属に, その他の既記載属6属とここに記載する新属Ralphaudynaを含めて, 合計9属が互いに近縁であり, 少なくともTrombellinae亜科の従来の定義を拡大して, そのChyzeriini族としてこれら9属を取り扱うべきこと, さらに独立科の新設の必要性などについて予報を行ない, 新種R. amamiensisを命名記載した。本種は奄美大島湯湾岳中腹において恙虫類の調査中, 著者のひとり鈴木により土壌中から採集されたものである。また新属名Ralphaudynaは, 永年にわたる恙虫病および恙虫に関する研究によって, 衛生動物学の発展に多大の貢献をされたJack Ralph Audy博士の死を悼み, 同博士を追慕する思いを込めて捧げられた。
著者
鈴木 博 府川 和彦 須山 聡
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

将来のマルチメディア通信に向けて,高速・高信頼移動パケット無線の研究を理論と実験の両面から行った.MIMO-OFDM伝送システムを中心に検討した.送受信側で複数アンテナを用いるMIMO技術と,広い帯域幅を直交分割するOFDM技術により通信路容量の最大化を図る.統計的ディジタル信号処理の導入による高性能化,位相雑音等による劣化の低減化,広帯域ミリ波帯の開拓を行った.当初の研究目標はほぼ達成された.
著者
松村 武 稲見 俊哉 道村 真司 松岡 英一 椎名 亮輔 谷田 博司 世良 正文 伊賀 文俊 鈴木 博之 大坪 亨
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

強相関電子系物質におけるスピン・軌道の複合自由度が低温で示す様々な新奇秩序現象を研究する上で極めて強力な実験手法である共鳴X線回折実験を,最低温度0. 6 K,磁場8Tの環境で行うことができるシステムをSpring-8の日本原子力機構ビームラインBL22XUに構築した.典型3物質Ce0. 7La0. 3B6, PrPd3S4, DyPd3S4について実験を行い,いずれもf電子の多極子自由度が密接に関与した秩序を形成していることを観測した.