著者
長谷川 雅哉 鍋島 俊隆
出版者
日本毒性学会
雑誌
Journal of toxicological sciences (ISSN:03881350)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.11-16, 2002-12-25

ダイエット商品には根強い需要がある。中国の健康茶をイメージさせるダイエット食品に対して,日本の消費者は無防備である。個人輸入やインターネット販売によって,法の網をかいくぐり,危険な健康食品ややせ薬が,消費者の手元に簡単に届くことが,大きな社会問題となっている。中国製ダイエット食品による健康被害が報告された。これらのダイエット食品に含まれており,問題となっているのが食欲抑制剤「フェンフルラミン」である。これは,食欲抑制効果を期待して人為的に添加されたものと推察されている。フェンフルラミンは,中枢性セロトニン(5-HT)作動性食欲抑制薬であり,肥満症の治療に使用される。フェンフルラミンの5-HT神経系を介した精神神経学的副作用について,数多くの報告があり,不安を惹起し,認知機能,睡眠,人格などに影響を与えるのではないかと考えられている。フェンフルラミンの投与により,持続的な脳内5-HTレベルの低下を伴う,うつ状態が誘導される。原因として5-HT神経繊維の脱落および5-HT再取り込み部位の減少が報告されている。フェンフルラミンの濫用はまれであるが,薬物濫用歴のある者がフェンフルラミンを濫用したケースがあり,多幸症,知覚変化,非現実感のような症状が発現している。動物実験では依存性獲得は認められていない。フェンフルラミンの過量投与により,精神障害,振せん(震え),眠気,錯乱,紅潮,発熱,発汗,腹痛,過呼吸,散瞳,廻旋眼振,反射亢進・抑制,頻拍,痙攣,昏睡,心室性期外収縮,心室細動,心停止が起こる可能性が有る。米国では,フェンフルラミンを含む食欲抑制剤によって,心臓弁への副作用が発見され,1997年に販売を禁止,回収を指示している。
著者
長谷川 真里
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.345-355, 2014

本研究は,信念の多様性についての子どもの理解を探るために,相対主義の理解,異論への寛容性,心の理論の3つの関連を調べた。研究1では,幼児,小1生,小2生,小3生,合計253名が実験に参加した。実験では,まず,「道徳」,「事実」,「曖昧な事実」,「好み」の4領域の意見について本人の考えを確認した。その後,本人の考えと同じ子ども(A),逆の考えの子ども(B)の2種を提示し,「どちらの考えが正しいか,両方の考えが正しいか(相対主義の理解)」,「A,Bそれぞれが実験参加児に遊ぼうと言ったらどう思うか(寛容性)」を尋ねた。幼児については誤信念課題もあわせて実施した。その結果,幼児においても課題によっては相対主義の理解がみられた。また,どの年齢群も,領域を考慮して判断していたが,寛容性判断において年齢とともに道徳領域が分化していった。「好み」に対する相対主義の理解がみられなかったのは,課題として提示されたアイスクリームのおいしさが,子どもにとって絶対的なものなのかもしれない。そこで,研究2では,子どもにとってあまり魅力的ではない食べ物(野菜)を材料にした補足実験を行った。その結果,「野菜」課題において相対主義理解の割合が増加した。また,心の理論と相対主義の理解に関係がみられた。最後に,本研究の結果をもとに,文化差について議論した。
著者
佐藤 弘和 長谷川 昇司 長坂 有
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.47-52, 2001-02-01
被引用文献数
6

畑地の浮遊土砂発生条件を明らかにするために,畑地(麦畑,秋まき大根畑)と対照区としての林地(落葉広葉樹林)において土壌物理性(貫入抵抗,基準浸入能,飽和透水係数)を測定し比較した。また,林地での浮遊土砂の捕捉効果を定量化するために緩傾斜林地に堰を設置し,降雨時の浮遊土砂濃度を測定した。貫入抵抗の鉛直プロファイルについてみると,麦畑と秋まき大根畑では時期によりプロファイルは異なり,麦畑と秋まき大根の畝間では表層約10cm程度に硬い層が存在した。また,営農活動が進行した麦畑と秋まき大根畑では,40cm程度の深さに硬い層が形成されていた。林地の貫入抵抗プロファイルは,時期による違いが認められず,畑地より低い値を示した。基準浸入能については,麦畑地では255mm h^<-1>,秋まき大根畑の畝では1000mm h^<-1>を超え,畝間では1mm h^<-1>と極めて低い値を示した。一方,林地の基準浸入能は1000mm h^<-1>を超えた。降雨時には,畑地で濁水化した地表流がみられた。これらの土壌物理性と現地観測結果から,営農活動が畑地の畝間の土壌浸透能ならびに土壌中の透水性を低下させることにより,地表流が発生しやすい状況になることが示唆された。林地を通過した濁水は,浮遊土砂負荷量が少ない場合が多く,濁水の大部分が基準浸入能の高い林地土壌に浸透したと考えられた。これより,畑地から河川への濁水負荷に対して,林地による濁水濾過効果は有効であることが確認された。
著者
本山 治 永井 洋子 小原 武博 長谷川 昭
出版者
社団法人 日本腎臓学会
雑誌
日本腎臓学会誌 (ISSN:03852385)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.279-286, 1992-03-25 (Released:2011-07-04)
参考文献数
19

It is presumed that graft size after renal transplantation from adult donor decreases in infant or very young recipient and increases in older recipient. Measurement of graft length, width, parenchymal thickness on intravenous pyelography (IVP) films, measurement of area of Bowman's capsule, glomerulus, capillary tuft and tubule on graft biopsy specimens were compared between 3 months and lyear after renal transplantation. The graft sizes decreased in recipients below 6 years-old or body height (Ht.) 90 cm and increased in recipients above 6 years-old, Ht. 100 cm. The case of decreased graft size was found a decrease of area of Bowman's capsule, glomerulus, capillary tuft and tubule. We suggest that it is caused by a difference between renal blood flow in infant and in adult. It is suggested that graft hypertrophy depends predominantly on increased tubular size and capillary tuft enlargement occurs prior to glomerular, tubular change. But, an increase in creatinine clearance (Ccr) was not found following graft hypertrophy.
著者
長谷川 浩史 重田 和夫 高橋 秀也 志水 英二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IE, 画像工学
巻号頁・発行日
vol.96, no.44, pp.31-36, 1996-05-17
被引用文献数
2

人間は正面顔や横顔, 種々の傾きを持つ顔や髪型を変えた顔からも個人を識別することができる. しかし, 顔画像識別の研究において提案されてきた手法は, 正面顔か横顔かのいずれかのみを主として利用したものであった. 本報告ではニューラルネットワークを用いて傾きを持つ多くの顔画像と少しの髪型を変えた顔画像からの識別とその顔の方向の検出を試みる.
著者
跡見 順子 清水 美穂 跡見 友章 廣瀬 昇 田中 和哉 長谷川 克也
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.28, 2014

筆者は、一昨年「細胞・身体の不安定性の二階層と制御要求性から探る「知の身体性」基盤」として発表し、昨年は諏訪正樹とともに「モノゴトの四階層で生の営みをみる」なかで、とくに「「身体」と「細胞」を“自分の生”に照らしてみて、モノゴトの四階層を考える」ことを行った。その際に、諏訪が提起した物理的構成軸としての社会、個体、身体、器官、細胞、分子の等値関係に抱いた異質性について「知の身体性」から再検討を加える。
著者
山口 清次 長谷川 有紀 小林 弘典 虫本 雄一 PUREVSUREN Jamiyan
出版者
島根大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

成人には無害でも小児に対して健康被害を起こす薬剤が知られている。そこで、培養細胞とタンデムマス質量分析計を用いるin vitro probe acylcarnitine(IVP) assayという方法を応用して、小児に対する薬物等の脂肪酸β酸化に対する毒性を評価するシステムを確立した。アスピリン、バルプロ酸などは、脂肪酸代謝の脆弱な細胞でβ酸化障害が増強された。ベザフィブレートはβ酸化異常症の代謝を改善した。
著者
前田 剛 春山 秀遠 山下 正義 大野 奈穂子 石崎 菜穂 長谷川 一弘 田中 茂男 渋谷 諄 小宮 正道 牧山 康秀 秋元 芳明 平山 晃康 片山 容一
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.7, pp.517-522, 2006-07-20
被引用文献数
4

スポーツによる顎顔面骨骨折は,交通事故,転落・転倒に次いで3番目に多く,10〜20歳代の男性が大多数を占めた.種目では野球/ソフトボールが最も多く,次いで空手,サッカー,ラグビー,ボクシングの順であった.受傷原因は,格闘技においては全例が打撃を含めた対人衝突であったが,球技においても大多数が対人衝突による受傷であった.骨折の好発部位は下顎骨体部であり,多発骨折例では下顎骨体部と対側の角部との骨折が最も多く認められた.スポーツによる頭蓋顎顔面骨骨折の特徴を十分理解したうえで,マウスガードやフェイスガード付ヘルメットなど各種スポーツの特性にあった予防対策の検討を行うことが必要であると考えられた.
著者
串田 壽明 串田 尚隆 嶋田 義治 長谷川 篤彦
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.121-125, 2003 (Released:2007-02-06)
参考文献数
3

皮膚糸状菌症の猫3例に対し,1回量約90~170 mg/kgのルフェヌロンを2週間隔で投与したとき,症例1と3では2回,症例2では5回の投与で臨床症状が改善され,治療開始後,症例1では8週目,症例2では11週目,症例3では4週目には,1部の脱毛部分を残したものの,皮膚は正常となり,直接検査,培養検査ともに陰性となった。症例3では,治癒と判定した後3週目に他の部位に新しい病巣が発生したため,125 mg/kg,さらに3週間後に133 mg/kgを投与した結果,完治した。以上のことから,本剤の皮膚糸状菌症に対する治療効果は,症例によっては期待できるものと思われた。
著者
長谷川 昌弘 藤沢 隆夫 駒田 幹彦 内田 幸憲 灰原 クリスティーナ
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.173-180, 1991
被引用文献数
12

小児気管支喘息患者において, 好酸球中に含まれる顆粒蛋白の一つである eosinophil cationic protein (ECP) の血中濃度を測定し臨床的パラメータ-との関連, 日内変動の有無について検討した. 対象は重症気管支喘息患児89名, 非アレルギー正常小児及び成人16名で, 6, 12, 17, 21, 翌朝6時に血清 ECP, 好酸球数(Eo), 肺機能を測定し, 臨床症状と合わせて検討した. ECP は radioimmunoassay にて測定した. 血清 ECP, Eo ともに非アレルギー群と比較して喘息群で高く特に採血時に喘息発作が認められたとき有意に高値を示した. 発作前後の変動では血清 ECP は発作後24時間まで高値であり, 7日以内に発作前値に戻った. 一方, 一定の日内変動リズムは認められなかったが, 喘息群 (非発作群) では有意に変動幅が大きく, 不安定であった. ECP と採血前2ないし8週間の発作点数の合計, 肺機能とは相関はなかった. 以上より血清 ECP は喘息特にその活動期に高値となり, 好酸球の活性化の状態を反映している可能性が考えられた. 今後, 気管支喘息の臨床評価の一手段として有用であると思われた.
著者
山本 貴士 長谷川 亮 鹿島 勇治 鈴木 幹夫 横田 大樹 吉田 幸弘 上東 浩 前原 裕治 木名瀬 敦 貴田 晶子
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集 第25回廃棄物資源循環学会研究発表会
巻号頁・発行日
pp.547, 2014 (Released:2014-12-16)

2011年3月の原発事故により,下水汚泥や焼却灰から放射性物質が高い濃度で検出される事例が東日本各地で多数報告され,原発事故由来の放射性物質に汚染された廃棄物の処理基準が定められたが,これまで廃棄物分野に特化した放射能濃度等の調査・測定法は存在しなかった。よって同年末に廃棄物等の放射能調査・測定法研究会から「廃棄物等の放射能調査・測定法暫定マニュアル」が発行された。その後,廃棄物関連分野での放射線・放射能の調査・測定に関しても事例や知見の集約が進んだことから,廃棄物資源循環学会内に設置された「廃棄物関連試料の放射能分析検討会」において改訂を行い、マニュアル(第2版)として公開した。今回は,この改訂されたマニュアルについて,改訂の経過と主な改訂点について紹介する。