著者
酒井 晴香 関 玲
出版者
全国大学国語教育学会
雑誌
国語科教育 (ISSN:02870479)
巻号頁・発行日
vol.88, pp.21-29, 2020-09-30 (Released:2020-10-23)
参考文献数
15

本研究は、大学生のアカデミック・ライティングの運用能力について、レポートの文末モダリティ表現(「と考えられる」等)に焦点を当てて問題を明らかにするものである。文末に出現する推量、蓋然性、証拠性に当たるモダリティ表現を分析対象とし、学術論文と大学生のレポートを収集して作成したコーパスを用いて調査を行った。その結果、1)動詞の形態に関して、学術論文ではラレル形が多く使用される一方、レポートではル、タ、テイル形の使用が多いこと、2)レポートでは漢語動詞のバリエーションが少なく、また学術論文には出現しない「と考察される」が特異的に使用されていること、3)「のではないか+と考える」のようなモダリティ重複表現がレポートに多く出現していることが明らかとなった。さらに、この結果から、学術論文では文末モダリティ表現がより広範な用法で使用されていること、レポートではモダリティ重複表現が定型化している可能性を指摘した。
著者
冨田 佑一 古関 潤一 龍岡 文夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学) (ISSN:21856516)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.197-209, 2022 (Released:2022-08-20)
参考文献数
13

盛土の設計に三軸圧縮試験を活用する場合,供試体は室内で側方を拘束したモールド内で一様に突き固めて作製される.一方,現場締固め土は剛な振動ローラーを地盤上で走行させるため,各締固め層内で乾燥密度ρdは深さ方向に減少し,また表層が局所的に乱され,非一様である.本研究では大型鋼製土槽内で小型締固め機械を用いて締め固めた砂質土の試験盛土から乱れの少ない供試体を採取し,不飽和状態,湿潤・飽和状態で排水三軸圧縮試験を行い,同一試料を締め固めた室内作製供試体等と比較した.その結果,強度・剛性を,締固めの方法とエネルギーに関わらずρdの増加関数と飽和度Srの減少関数の積を基本に,現場盛土表層のせん断破壊の影響と湿潤化・飽和化による影響を加えた経験式で表現し,最適飽和度状態が適切な現場締固め目標となることを示した.
著者
秋山 雅博 関 夏美 熊谷 嘉人 金 倫基
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第48回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-13, 2021 (Released:2021-08-12)

【目的】腸内細菌叢は食事や薬剤などの環境因子によって容易に変化し得る。我々は食事を介してメチル水銀(MeHg)を一定量摂取しており、それらが腸内細菌に影響を与える可能性は高い。一方で、腸管には硫酸還元菌が常在し硫化水素 (H2S)などのイオウを産生していることから、イオウ付加体形成を介したMeHgの不活性化に寄与している可能性が高い。そこで、MeHgによる腸内細菌への影響と、MeHgの毒性軽減作用に対する腸内細菌叢の役割を検証した。【方法】腸内細菌タンパク質中チオール(SH)基はBPMアッセイにて検出した。Lactobacillus属菌の増殖は好気条件下37℃で24時間培養し1時間ごとに600 nmの吸光度を測定することで検出した。H2SおよびH2S2はLC-ESI-MS/MSにより測定した。C57BL/6マウス臓器中の水銀濃度測定に際し、抗生剤を14日間飲水投与後、MeHgを経口投与した。臓器中の水銀濃度は原子吸光水銀検出器を用いて測定した。【結果】まず、腸内細菌由来のタンパク質がS-水銀化されるかを調べた。その結果、マウス糞便タンパク質中でBPMにより検出されたSH基はMeHg曝露濃度依存的に減少した。 次に、MeHgが腸内細菌の増殖に与える影響を検証するために、小腸から大腸まで幅広く存在する乳酸菌であるLactobacillus属菌を用い、MeHgを添加した培地で培養した。その結果、非添加培地で培養した場合と比べて、MeHgを曝露した培地では、MeHgの濃度依存的な増殖阻害作用がみられた。また、SPFマウスの糞便中からH2SだけでなくH2S2も検出され、その濃度は無菌マウスで有意に低かった。さらに、抗生剤によって腸内細菌叢を撹乱したマウスでは、MeHg曝露による小脳、肺、肝臓への水銀蓄積が促進された。【考察】本研究よりMeHgは腸内細菌タンパク質へのS-水銀化を介して悪影響を与えている可能性が示唆された。また一方で腸管常在菌により産生されるイオウ化合物がMeHg毒性から宿主を保護している可能性も示唆された。
著者
尾関 基行 山本 あすか
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.1, pp.77-83, 2023-05-05 (Released:2023-05-05)

2022年11月に公開されたChatGPTの高い性能と利便性は教育現場においても看過できないとして,その活用方法や懸念点に関する議論が早速始まっている.本研究では,少人数の遠隔グループディスカッションにおいて,1. ChatGPTを各自で利用,2. 一人が画面共有してChatGPTを利用,3. インターネット検索のみを利用の3パターンを比較した結果を報告する.
著者
斎藤 豊 岡 志郎 河村 卓二 下田 良 関口 正宇 玉井 尚人 堀田 欣一 松田 尚久 三澤 将史 田中 信治 入口 陽介 野崎 良一 山本 博徳 吉田 雅博 藤本 一眞 井上 晴洋
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.1519-1560, 2020 (Released:2020-08-20)
参考文献数
293
被引用文献数
3

日本消化器内視鏡学会は,新たに科学的な手法で作成した基本的な指針として,「大腸内視鏡スクリーニングとサーベイランスガイドライン」を作成した.大腸がんによる死亡率を下げるために,ポリープ・がんの発見までおよび治療後の両方における内視鏡によるスクリーニングおよびサーベイランス施行の重要性が認められてきている.この分野においてはレベルの高いエビデンスは少なく,専門家のコンセンサスに基づき推奨の強さを決定しなければならないものが多かった.本診療ガイドラインは,20のclinical questionおよび8のbackground knowledgeで構成し,現時点での指針とした.
著者
関 恵実
出版者
専修大学
巻号頁・発行日
2009

博士論文要旨および審査報告:学位授与年月日;平成21年3月22日,学位の種類;博士(文学),学位記番号;博文甲第46号
著者
関根 禎嘉
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.169-175, 2023-05-01 (Released:2023-05-01)

テレビ放送番組のアーカイブ利用のためのメタデータモデル構築を行う。「番組」は放送されるコンテンツを指す基礎的な用語でありながら,その範囲について明確な定義が存在しない。本研究では放送ライブラリー公開番組データベースを例にして,「番組」の階層構造や放送番組を特徴づける各実体を定義し,メタデータモデルを汎用的な記述言語であるRDFを用いて構築する。構築したメタデータモデルは,放送番組を構成する要素をContents,Agent,Eventの3つのドメインに分類した。その上で,必要に応じて独自語彙を用いてクラスおよびプロパティを設定した。
著者
関口 正宇 関根 茂樹 松田 尚久
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.457-469, 2020 (Released:2020-04-20)
参考文献数
59
被引用文献数
1

内視鏡医が日常診療で遭遇する機会の増えている直腸神経内分泌腫瘍(NET)であるが,診断,治療から治療後の対応に至るまで,十分にコンセンサスが得られていない事項が多く,その取り扱いに苦慮することが経験される.内視鏡治療適応についても,腫瘍径1~1.5cmの病変の扱いなどさらなる検証を要するが,少なくとも,最も高頻度に遭遇する,粘膜下層にとどまる1cm未満の直腸NETが内視鏡治療の適応であることについてはコンセンサスが得られている.そのような病変に対する内視鏡治療手技としては,有効性,安全性,患者負担の観点から,ESMR-LやEMR-Cといった通常のEMRに工夫を加えた手技が推奨される.内視鏡治療後には,切除病変の病理評価に基づき追加手術の必要性を判断するが,細胞増殖能や脈管侵襲などの結果によって判断に迷う症例も多い.特に脈管侵襲については,病理における免疫・特殊染色の使用に伴い,粘膜下層にとどまる小さなNET G1病変でも脈管侵襲陽性例が高頻度に見られることが報告されており,その取り扱いについてさらなる議論が望まれる.
著者
関 哲夫
出版者
国学院大学法学会
雑誌
國學院法學 (ISSN:04541723)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.66-35, 2015-12
著者
今関 光雄
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:24240508)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.367-387, 2003-03-30 (Released:2018-03-27)

本稿は、「ファン・コミュニティ」の文化人類学的研究というテーマの下に、あるラジオ番組のリスナーたちの行っている「集い」を、フィールドワークによる調査研究に基づいて分析し、オーディエンス/ファン同士のコミュニケーションの重層性を明らかにするものである。リスナーが番組に「告知」を投書し、行う集会を「集い」と呼ぶ。実際に出会うことで友人関係を構築しようという試みである。そこでは、同じ番組に関する情報を持つ「比較可能で代替可能な者」同士の関係を、具体的な「個別性を持った顔のある誰か」同士の関係に変換していくという実践が見られる。これは、メディアを介して作られたファン・コミュニティにおけるコミュニケーションを情報交換のみの関係として語ってきた「おたく」論の一面性を批判するものである。また、オーディエンス研究において「受け手」の能動性を考える場合、受け手の行う「流用」がよく議論される。ここで明らかになるのは、その「流用」がメディア上だけで、すなわち顔の見えない「サイバースペース」だけでなされるのとは違って、「個別性を持った顔のある誰か」との繋がりにおいてなされることが重要であるということである。本稿は、そのような顔の見えない「サイバースペース」における繋がりを「個別性を持った顔のある誰か」との繋がりに変換し、コミュニケーションの重層性を創りだしていることに注目する重要性を明らかにする。それらの実践がメディアによる人びとの分断や抽象空間としての「国民文化」への回収に抵抗する「流用」であるということを示唆する。
著者
関田 徳雄 山田 雅輝
出版者
北日本病害虫研究会
雑誌
北日本病害虫研究会報 (ISSN:0368623X)
巻号頁・発行日
vol.1973, no.24, pp.23-27, 1973-12-05 (Released:2011-08-11)
参考文献数
6

1. 室内実験の結果, 定温条件におけるミダレカクモンハマキの休眠終了後における卵発育の理論上の発育零点は6.4℃, 有効積算温度は140日度と計算された。この結果は他の実験者の結果とも矛眉するものではなかった。2. 変温条件でのふ化までに要する温量は定温条件での結果と大差なかった。3.野外での実際のふ化は樹表面温度に直接影響されることが明らかとなった。しかし, 巨視的にみれば気温と樹表面温度は平行的に変動しているものと思われるので, 有効気温の累積によってふ化の予測をしうるものと考え, 過去の資料を申いてその可能性を検討した。4.その結果, ある程度満足できる結果がえられ, 3月以降の6.5℃以上の累積温量によって, ふ化初発は40日度に達した日を起点にすれば平均4.4日後, ふ化50%日は60日度および80日度に達した日を起点にすれば, それぞれ7.8日後と2.4日後であった。
著者
関 満博
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.4-14, 2002-12-20 (Released:2022-08-03)
被引用文献数
2

日本の各地には興味深い工業集積地が広く成立している.そして,それは地域経済の主要な担い手としての役割を演じてきた.だが,全国の工業集積地は,地域内の大手企業のアジア移管などにより,現在,大きな曲がり角に直面している.本稿では,全国の工業集積地の中でも,精密機械工業の集積によって知られる長野県岡谷に注目していく.現状の岡谷の苦しみと,それに対する取り組みは,全国の工業集積地の先駆的なものであろう.