著者
小関 至 山口 将功 中島 知明
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.117, no.7, pp.606-618, 2020-07-10 (Released:2020-07-10)
参考文献数
113

亜鉛は300種類以上の酵素の活性中心または補酵素として働くことから,生命維持にとって不可欠な微量元素であり,亜鉛欠乏により多彩な症状が出現する.従来,本邦では治療薬として承認された亜鉛製剤はなかったが,2017年3月,ウィルソン病に対して長期の安全性と効果が認められていた酢酸亜鉛水和物が低亜鉛血症に対して効能追加となった.慢性肝疾患の患者では低亜鉛血症の頻度が高く,低亜鉛血症の病態が種々の自覚症状の出現のみならず,肝線維化の進展や肝発癌リスクの増加と深い関係があることが近年明らかとされた.今後,酢酸亜鉛水和物による治療が普及するものと推測され,亜鉛欠乏と慢性肝疾患に対する知見を概説する.
著者
清水 敬樹 杉田 学 横手 龍 関井 肇 三宅 康史 坂本 哲也 清田 和也
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.14-17, 2004-02-20 (Released:2010-06-08)
参考文献数
15

2年間の縊頚44例を対象とし年齢, 性別, 精神科受診歴, 縊頚形態, ICU入室率, 転帰などを検討した。縊頚44例中, 来院時心肺停止 (CPAOA) は36例で4例 (11%) が心拍再開したが2週間以内に全例死亡した。精神科通院歴があるのは17例 (47%) で, 13例がうつ病であった。非CPAOA8例は全例が入院, 7例が社会復帰した。心拍再開した4例は全例死亡しておりそのうち3例は脳死に陥っており, 縊頚CPAOAは予後不良と考えられた。通常の蘇生後脳症との差は, 発見までの時間の長い点, もう一つは椎骨脳底動脈領域も完全閉塞し, 低酸素に強い脳幹もdamageが大きいことが関係している可能性がある。非CPAOAは8例中7例が, 社会復帰しており, 早期発見, 及び地域精神衛生活動が予後を向上させると思われる。
著者
関田 敬一
出版者
創価大学英文学会
雑誌
英語英文学研究 (ISSN:03882519)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.115-129, 2013-03-01
著者
髙橋 圭 関 豪
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.85-90, 2022-03-31 (Released:2023-06-01)

熱中症は暑熱環境に体が適応出来ずに体温が上がることで起きる疾患である.教育現場では毎年5000件程度発生している.また,毎年1000人以上の高齢者が亡くなっている.各省庁が熱中症予防のために指標やガイドラインを作成しているが,個々人の習慣によって予防することが重要だと考える.そこで今回,食事・栄養や運動に焦点を当てた熱中症予防の方法についてまとめた. 食事としての予防は,(1) 喉が渇いていなくても水分をこまめにとること,(2) 水分補給できる食材を食べること,(3) 塩分はとりすぎに注意して補給すること,(4) 朝ごはんもしっかり食べること,(5) 調理方法や食事内容を工夫することが考えられる.運動による予防は,暑熱順化が起きるよう汗をかく程度の運動を習慣づけて行うことが考えられる.
著者
関崎 博紀
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.155, pp.111-125, 2013 (Released:2017-02-17)
参考文献数
13

本研究では,日本人大学生同士の雑談の中で否定的評価として機能した発話を取り上げ,その言語的な表現方法を分析した。分析は,各発話が,評価の内容(「価値づけ」),評価の対象となる「事柄」,対象を評価する「基準」のいずれに言及したものかという観点から行い,次のことを明らかにした。「価値づけ」の表現方法には,語義として評価の意味を含んだ単語を利用する方法と比喩表現から価値づけを示唆する方法があった。また,「事柄」を表現する方法には,価値づける対象となる事柄を言語化する方法と,その事柄の結果として生じた事態を言語化する方法が見られた。価値づけの基準への言及方法には,モダリティ表現を用いた方法と基準を言語化する方法が見られた。最後に,本研究が日本語教育に示唆することについて考察した。
著者
井関 紗代
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.42-52, 2023-06-30 (Released:2023-06-30)
参考文献数
61

近年のデジタル化による技術革新は,短命で,アクセスベースで,脱物質的なリキッド消費を促進している。このような消費環境の変化は,心理的所有感(psychological ownership)を減衰させたり,他の対象へと転移させたり,維持するための新たな機会を生み出したりしている。本研究では,心理的所有感の根底にある動機として,コントロール欲求に着目し,音楽配信サービスに対する心理的所有感の醸成にどのような影響を及ぼしているのかについて検証した。調査は,音楽配信サービスであるSpotifyまたはApple Musicを週に1回以上利用する人を対象に実施された。分析の結果,コントロール欲求がサービスへの心理的所有感やロイヤルティに及ぼす影響は,利用頻度によって異なるだけでなく,サービスの違い(Spotify/Apple Music)によっても異なるパターンが示された。これらのことから,コントロール欲求が心理的所有感に及ぼす影響は,他の要因(e.g.,利用頻度)によって調整されるため,コントロール欲求が高いと心理的所有感も醸成されやすいというほど単純ではないことが示唆される。
著者
関屋 実
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.67-81, 1976-02-01 (Released:2009-11-13)
参考文献数
71
被引用文献数
3 3

In an abundance of the previous papers formic acid has been exhibited as a versatile reducing agent for diverse organic compounds. This article is an attempt to review its reduction reactions, but does not exhaustively cover every paper in the literature. Attention has been made, in the main, to a consideration of studies in the reduction induced by formic acid or formate itself. Therefore, the reductions which seem likely to depend upon its prior decomposition are left out of consideration. Particularly, emphasis in this article is laid upon the works in recent decade on the reductions by the use of the formic acid-trialkylamine azeotropes as reducing agents, which have been devoted to developing several fields of the reduction.
著者
関根 麻里恵 Marie Sekine
出版者
学習院大学身体表象文化学会
雑誌
身体表象 = Cultural Studies on C & V. Representation (ISSN:24340669)
巻号頁・発行日
no.1, pp.64-72, 2018-03-31

研究ノート(Progress Reports)
著者
丸山 晃平 吉田 郁政 関屋 英彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.22-00252, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
17

鋼橋において適切な維持管理を必要とする損傷の1つが疲労き裂である.疲労き裂の主な要因は活荷重によって生じるひずみであることから,活荷重の実態把握,すなわち交通荷重とその台数の計測が重要となる.交通量を計測する手法は様々あるが,本研究では加速度センサによる車軸通過時刻の検知手法の提案を行った.計測データには,車軸がセンサ直上を通過した際に生じるパルス波的なピーク応答以外にも,反対橋脚側や隣接車線から伝達する応答が含まれるため,誤検知を極力減らし,高精度にて車軸を検知するアルゴリズムを構築することが重要である.閾値のみによる検知手法の場合,再現率と適合率の調和平均であるF値は54.4%であったのに対し,提案手法では94.1%まで向上し,高精度に車軸の検知を実施できることを示した.
著者
川﨑 智子 平山 哲郎 多米 一矢 西田 直弥 小関 泰一 藤原 務 稲垣 郁哉 小関 博久 石田 行知 柿崎 藤泰
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0994, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】頚椎は胸郭上に位置しており,頚椎肢位や運動は胸郭のコンディションに依存する。特に胸郭は,前額面において左側方に偏位している割合が多いとの石塚ら2011)の報告があり,その要因から考えても頚椎肢位や運動に影響を及ぼすことが十分予測される。日常の臨床のなかで,胸郭の定型的な形状の定着により,頚椎肢位や運動のバリエーションの低下を引き起こす現象も多く観察している。そこで本研究では,頚椎側屈運動における水平面上の胸郭形状変化と左右座圧分布を観察するため,3次元動作解析装置と床反力計を用いて胸郭形状と頚椎運動の左右特性を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は,整形外科的疾患の既往がない健常成人男性10名(平均年齢27.7±3.6歳)とした。頚椎側屈運動における上下部胸郭前後径変化を観察するため,3次元動作解析装置VICON-MX(VICON社製)を用いた。赤外線反射マーカー貼付位置は,頭部マーカーを前後左右の計4点,上下部胸郭マーカーをそれぞれ左右第3胸肋関節の中点と剣状突起(A点),A点を背面に投影した棘突起上の点(B点),A点を通る水平線上に左右等距離に位置する点(C点,各3点)の計16点とした。また,同時に座圧分布を床反力計(Zebris社製)を用いて計測した。測定肢位は上肢をscapular plane上で腋窩レベルまで挙上した安静座位とし,上肢の影響を最小限に,また肩甲帯や体幹による代償が生じないよう考慮した。測定課題は安静呼気位における頚椎最大右側屈,頚椎最大左側屈の2条件とした。メトロノームに合わせて3秒間で最終域に達するよう指示し,実施前に十分な練習を行った。得られた標点の位置データから上部胸郭前後径をB-C点間,下部胸郭前後径をA-C点間の距離としてそれぞれ算出した。また,左右座圧分布は得られた床反力データからそれぞれ相対値を算出した。統計処理は安静時における上下部胸郭前後径と座圧分布の左右比較,頚椎右側屈と左側屈時における上下部胸郭前後径と座圧分布の左右差の比較に対応のあるt検定を用いて検討した。解析には統計ソフトウェアSPSS18J(SPSS社製)を使用し,有意水準はそれぞれ5%未満とした。【結果】安静時,頚椎右側屈,左側屈において,上部胸郭前後径と座圧分布の左右における変化に一様の傾向が示された。上部胸郭前後径と座圧分布は,安静時において全例で右側と比較して左側が有意に大きかった(p<0.01,p<0.01)。また,その差は頚椎右側屈時において有意に減少し,左側屈時においては有意に増加した(p<0.01,p<0.01)。しかし,下部胸郭前後径は,安静時において全例で左側と比較して右側が有意に大きかったものの(p<0.05),頚椎側屈時においては有意差がみられなかった。なお,頚椎最大側屈角度には左右で有意な差がみられなかった。【考察】本研究の検討から,全例において胸郭は左側方偏位していることが安静時座圧分布より観察され,石塚ら2011)の報告と同様の特徴が示された。また,胸郭形状においても臨床で観察される定型的な非対称性がみられた。この特徴が定着した状態で頚椎側屈運動を行うと,頭部質量の側方移動にともない,右側屈時には上半身質量中心の正中化が生じ,左側屈時には左側方偏位の増大が生じることがわかった。また,上半身質量中心の左側方偏位は上部胸郭形状の非対称性を増加させるものと考えられる。これらのことから,上部胸郭の定型的な形状や側方偏位の定着は,頚椎肢位や運動の多様性に影響を及ぼすことが考えられる。また,その結果として生じる頚椎運動の左右特性にともない,上部胸郭形状に一様の変化をもたらすことが示唆された。上部胸郭の可動性低下や上半身重心のコントロール機能低下は,頚椎側屈運動の制限因子となることが考えられ,疼痛やメカニカルストレスの原因となることが考えられる。【理学療法学研究としての意義】本研究の検討から,頚椎側屈運動における上部胸郭形状と座圧の変化には左右特性が存在することが示された。これは健常人においてもみられる特徴であり,ヒトに共通する形態や運動特性が存在することが考えられる。これらの強調や逆転は,整形外科疾患における病態や機能低下の一要因となることが考えられ,頚椎疾患をはじめとするあらゆる運動器疾患に対する理学療法に応用できるものと考えられる。
著者
関口 達也 林 直樹 寺田 悠希 大上 真礼 杉野 弘明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.23-00006, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
23
被引用文献数
1

新型コロナウイルス感染症の蔓延(コロナ禍)は,人々の日常生活の様々な場面で大きな変化を引き起こした.本稿では,このうち東京都内在住の一般の人々の食料品の購買行動に起こった行動・意識の変化に着目する.コロナ禍が始まり,緊急事態宣言下を経てさらに一定期間が経過し現在までの食料品の購買行動の変遷状況を整理することで,今後の類似事例発生時の対策検討に役立てること,さらに「買い物不便」に対する人々の意識構造とその変化を把握することが主な目的である.東京都を対象としたアンケート調査の結果を用いて,人々の食料品購入行動(例:店舗選択,交通手段,買い物頻度など)や意識に対する変化の内容と,コロナ禍前の状況との乖離度合いを,複数時点の比較分析から明らかにした.
著者
小関 右介 小松 典彦 小原 昌和
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.421-428, 2019-07-15 (Released:2019-07-31)
参考文献数
34

ため池の外来魚駆除に使用される強アルカリ剤である消石灰の魚毒性を調べた。石灰暴露試験に用いた4種(外来2種および在来2種)の間で6時間致死濃度に大きな違いはなかった。石灰水への池泥の添加は致死濃度を有意に上昇させたが,致死pH(約12.0)には影響しなかった。池泥を添加した致死濃度石灰水は調製後2週間でも高いpH値を示したが,同じ石灰水の50倍またはそれ以上の希釈液は調製後ただちに中性を示した。これらに基づき,殺魚剤としての消石灰の特性とため池の外来魚根絶のための石灰散布技術について議論した。
著者
山本 英弘 竹中 佳彦 海後 宗男 明石 純一 関 能徳 濱本 真輔 久保 慶明 柳 至 大倉 沙江
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

近年、経済的・社会的不平等の拡大への政治的対応が求められている。しかし、政治への参加や政策による応答に格差があるとしたら、かえって不平等を助長するおそれがある。そこで本研究では、政治参加と政策応答という2つの点から政治的不平等の実態を捉え、さらに経済的・社会的不平等と関連付けながら政治的不平等の生成メカニズムを解明する。具体的には、1)大規模質問紙調査に基づく個人と団体の政治参加における不平等の把握、2)個人や団体の政策選好と実際の政策との照合による政策応答における不平等の把握、3)事例研究に基づく具体的な政策争点における参加と応答をつなぐプロセスの把握、という3つの調査研究に取り組む。
著者
安藤 勝敏 須長 誠 三浦 重 関根 悦夫 鬼頭 誠 青木 一二三
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.536, pp.87-98, 1996-04-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
18
被引用文献数
2 2

経済的で信頼性の高い土路盤上省力化軌道の開発実用化を目的として, 鉄筋コンクリート路盤を提案した. 本構造を北陸新幹線高崎~軽井沢間の現場に試験敷設し, 実物大規模の静的・動的載荷試験を実施した. その結果, 新幹線荷重に対し路盤の表面応力および鉄筋応力は耐久性の観点から低いレベルにあり, 動的繰返荷重による路盤の累積沈下も極めて小さいことが確認された.
著者
福田 美穂 関根 聡
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.800-815, 2023 (Released:2023-06-15)
参考文献数
35

一般ドメインでの固有表現抽出が高い精度を実現するようになった今,研究の目標は化学や医療,金融などさまざまなドメインでの固有表現抽出技術の精緻化へとシフトしている.そこで本論文では,ドメイン依存の固有表現抽出技術応用に関する近年の国内研究動向を報告したい.技術に重点を置いた分析は他文献に譲り,具体的な問題を抱えるさまざまなドメインの読者を念頭に「どのようなドメインでどのような対象に対してどのように固有表現抽出が行われているか」を調査した.4 つの学会大会論文および3つの学会論文誌からドメイン依存の固有表現抽出技術に関する論文を調査したところ,該当する論文のうち約半数が,化学ドメインにおける新規商品開発等支援のための化学物質名・化学物質間関係抽出を主題としていた.その他のドメインは,医療,金融,機械加工,文学,食など多岐にわたり,多様な抽出目的・抽出対象を確認できた.技術的には機械学習を使った手法が主流となっており,とくに本論文の調査期間では BiLSTM-CRF および BERT を使う事例が大勢を占めているが,それらを補完する目的で辞書等の言語資源を組み合わせる手法も多く見られている.
著者
馬殿 恵 今川 彰久 阿比留 教生 粟田 卓也 池上 博司 内潟 安子 及川 洋一 大澤 春彦 梶尾 裕 川﨑 英二 川畑 由美子 小澤 純二 島田 朗 高橋 和眞 田中 昌一郎 中條 大輔 福井 智康 三浦 順之助 安田 和基 安田 尚史 小林 哲郎 花房 俊昭 日本人1型糖尿病の成因診断病態治療に関する調査研究委員会
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.37-46, 2019-01-30 (Released:2019-01-30)
参考文献数
34
被引用文献数
5

抗PD-1抗体投与後に発症する1型糖尿病について,日本糖尿病学会員への調査と文献検索を行い22症例を検討した.初回の薬剤投与日から発症までの平均期間は155日,発症時の平均年齢63歳,平均血糖値617 mg/dL,平均HbA1c8.1 %,尿中C-ペプチド4.1 μg/日(中央値),空腹時血中C-ペプチド0.46 ng/mL(中央値)であった.31.6 %に消化器症状,27.8 %に感冒様症状,16.7 %に意識障害を認め,85.0 %でケトーシス,38.9 %で糖尿病性ケトアシドーシスを発症した.50.0 %が劇症1型糖尿病,50.0 %が急性発症1型糖尿病と診断された.膵外分泌酵素は52.6 %で発症時に,28.6 %で発症前に上昇した.1例でGAD抗体陽性であった.抗PD-1抗体投与後に発症する1型糖尿病は,劇症1型糖尿病から急性発症1型糖尿病まで幅広い臨床病型を呈し,高頻度に糖尿病性ケトアシドーシスを発症するため,適切な診断と治療が不可欠である.
著者
岩井 俊 山形 愛可 関村 敦 本野 望 薄田 勝男 浦本 秀隆
出版者
一般社団法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.37-43, 2021-01-15 (Released:2021-01-15)
参考文献数
14

肺癌手術における偶発症として迷走神経反射や胸腔内温蒸留水による心機能異常は稀に認められる.しかし,術中の偶発的な心停止はその頻度,機序や患者背景などについての報告は認められない.今回,我々は術中に心臓への機械的圧迫や,破滅的な大出血を来たしていないにもかかわらず,突然心停止を来たした症例を4例経験した.1例は縦隔リンパ節郭清中に,3例は胸腔内の温蒸留水による洗浄中に心停止に至っていた.いずれの4症例も用手的な心臓圧迫や自然な自己心拍の再開などにより,停止時間は2分以内であり,術後に重篤な合併症,後遺症を来たすことはなかった.ただし,1例のみ,術後7日目に脳梗塞を来たした.しかし,脳梗塞はヘパリン投与により改善し,後遺症を残さなかった.術中の偶発的な心停止は胸腔内洗浄でも起こりうるが,麻酔科などと適切に対応することで重篤な合併症や後遺症を残すことなく,良好な経過を導き得る.