著者
青木 真希子 鈴木 雅登 岡山 久代
出版者
The Society for Nursing Science and Engineering
雑誌
看護理工学会誌 (ISSN:21884323)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.47-57, 2020 (Released:2020-11-30)
参考文献数
40

本研究は,成人女性の性周期に伴うワーキングメモリの変化をPMS症状の有無で比較するとともに影響要因を検討することを目的とした.PMS症状を有する群(n=15)では,黄体期に実施した2-back 課題の正答率が,PMS症状を有さない群(n=26)と比較して有意な傾向で低かった(p=.07).さらにProfile of Mood States の結果,Total Mood Disturbance 得点と「抑うつ−落ち込み」にPMS 有群とPMS 無群で有意な違いが認められた(p=.006, p=.043).一方,Self-rating Depression Scaleと性ホルモン濃度には違いが認められなかった.以上よりワーキングメモリ機能を評価する課題の1つであるn-back 課題の遂行能がPMS症状を有する女性において黄体期に低下し,その要因は負の気分に由来する可能性が示唆された.
著者
山岸 未沙子 青木 宏文 田中 貴紘 高橋 一誠 米川 隆 金森 等
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.122, 2015 (Released:2015-10-21)

本研究は,運転支援や機能訓練に役立てる知見を得るために,高齢ドライバの人間特性を多角的に把握することを目的とした.本報告は,そのうち運転適性検査を用いて高齢ドライバの刺激-反応特性を検討した.50代15名,60代40名,70歳以上45名が参加し,全員にインフォームド・コンセントを行った後,認知機能検査や高齢者講習と同種の運転適性検査器を用いて7つの検査を実施した.7つ中4つの検査の反応時間と正答率を用いた分析から,60代以上は刺激数が増加すると反応は遅延し,足反応と刺激数増加が同時に生じる場合には年齢差が顕著になることが示唆された.また,青色に対するパフォーマンス低下が60代以上の反応時間と正答率でみられ,赤色に対しては反応が速くなるという色の効果が示された.以上の結果から,運転適性検査により高齢ドライバの刺激-反応特性が得られ,運転時のパフォーマンス低下につながる要因が示唆された.
著者
川村 陸 青木 竜哉 上垣外 英剛 高村 大也 奥村 学
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.3Rin409, 2020

<p>SNS上のテキストにはスペルミス,強調文字,インターネットスラングなどの非標準的な単語が多く使用される.非標準的な単語を多く含んでいると読者が文章の意味を理解できないだけでなく,SNSを対象とした自然言語処理を行う上の障壁となる.この問題を解決するために,非標準的な単語を含む文を訂正するテキスト標準化が必要とされている.このような需要に対処するため本研究では,深層学習を用いて文字列・音の類似性をモデル化することで,より高度なテキスト標準化を目指す.提案手法では,文字列の類似性を考慮することでpepoleとpeopleの様な表記ゆれに対応することができる.さらに,音の類似性を考慮することで,yesssとyes,disとthisの様な発音に起因した文字の置き換えに対応することが可能である.評価実験では,文字列・音の類似性を考慮した提案手法が最高精度を達成することを確認した.</p>
著者
青木 宏之
出版者
高知短期大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、日本鉄鋼業における1960年代前後の生産現場の管理諸制度の変化を、大手高炉メーカーの事例分析を通じて明らかにした。第一に、職務の設計においては、下級管理職までが機能的な観点が導入され、原価や品質に関わる管理職能が付与された。さらに、第二に、そうした柔軟な働き方を評価する職能ランク制度が導入された。第三に、目標管理制度による部門業績の管理が導入され、各級管理者はより主体的な努力を求められるようになった。こうした相互補完性を持つ諸制度の構築が、現代日本鉄鋼業の現場管理システムへの直接的な契機となっていると考えられる。
著者
福井 勝則 大久保 誠介 森山 守 青木 智幸 小塚 孝 松原 誠
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
Journal of MMIJ : journal of the Mining and Materials Processing Institute of Japan (ISSN:18816118)
巻号頁・発行日
vol.123, no.9, pp.467-474, 2007-10-25
参考文献数
14
被引用文献数
2

The main drive of Hida Tunnel for Tokai-Hokuriku Highway was excavated by a world-largest-class TBM with the diameter of 12.84 m. The TBM have bored over 3.0 km of the tunnel through Nouhi Rhyolite, Granite Porphyry and Hida Gneiss. The uniaxial compressive strength of these rocks was found to be extremely high. Such high strength accompanied by high content of silicon dioxide resulted in significantly high wear rate of the disc cutters mounted on the TBM.<BR>In this study, cutter wear was carefully measured together with the operation conditions such as thrust force, penetration rate, cutter-head rotation rate and the rock properties such as uniaxial compressive strength, rock strength estimated from TBM cutting force, abrasivity obtained from turning operation test, chemical composition determined by X-ray analytical microscope.<BR>It was found that the extent of cutter wear largely depends on position of the disc cutter; cutter wear per unit rolling distance near the fringe of cutter head was extremely larger than that near the center of cutter head. A combination of rock strength estimated by TBM cutting force and length of wear flat in turning-operation test was found to be an excellent index to predict cutter wear rate.
著者
青木 康彦 龔 麗媛 野呂 文行
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.87-102, 2019-08-31 (Released:2020-08-31)
参考文献数
41

自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder, ASD)児の療育指導において社会的関わりによる強化は重要であると考えられるが、一部のASD児においては社会的関わりが強化子として機能していない可能性が指摘されており、社会的関わりを条件性強化子とする成立率が高い方法の検討が必要である。本研究では、ASD児、発達障害児や定型発達児を対象とした研究における年齢、診断、条件づけの方法、中性刺激の種類、強化子の種類、中性刺激の種類と強化子の種類の組み合わせごとに条件性強化子成立の差異を検討し、ASD児における条件性強化子成立の条件を検討することを目的とした。条件づけを実施した26篇の研究を対象に、「年齢」、「診断」、「条件づけの方法」、「中性刺激の種類」、「強化子の種類」ごとに条件性強化子の成立率を算出した。また、中性刺激の種類と強化子の種類の組み合わせにおける条件性強化子の成立率を算出した。その結果、年齢、診断、中性刺激、強化子の種類ごとに条件性強化子の成立率に差がみられた。また、中性刺激の種類と強化子の種類の組み合わせでは、ある中性刺激との組み合わせで条件性強化子成立率が高い強化子刺激であっても、別の中性刺激との組み合わせでは条件性強化子の成立率が低い場合がみられた。今後、ASD児にとって社会的関わりが強化子として機能するために、社会的関わりと組み合わせる強化子について検討する研究が多く実施されることが望まれる。
著者
青木 康彦 野呂 文行
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.25-32, 2019-03-31 (Released:2019-10-01)
参考文献数
18

本研究では、自己刺激行動が多くみられ、食べ物、玩具を強化子とした随伴ペアリングによって、称賛の条件性強化子が成立しなかった自閉スペクトラム症児に対して、自己刺激性強化子を産出する玩具を強化子とした称賛の条件づけを実施し、その効果を検討することを目的とした。指導では、標的行動が生起した際に、日常生活で聞いた経験の少ない称賛コメントと自己刺激性強化子を産出する玩具を同時に与えた。その結果、自己刺激性強化子を産出する玩具を強化子とした随伴ペアリング後において、12ブロックの間、称賛は強化子として拍手の生起頻度を高めた。また、随伴ペアリングを行なっていない他の行動についても、ベースライン期よりもペアリングⅡ期後の称賛期で生起頻度が高いという結果が得られた。本研究の結果から、自己刺激性強化子を産出する玩具を強化子とした称賛の条件づけの有効性が示唆された。
著者
青木,滋
出版者
土質工学会
雑誌
土と基礎
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, 1985-03-25
著者
青木 康彦 丸瀬 里菜 河南 佐和呼 金 晶 馬場 千歳 藤本 夏美 伊 薇琳 松尾 祐希 野呂 文行
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.249-261, 2020

本研究は,ASDの診断がある児童2名,定型発達児(対照児)1名に対して,シミュレーション訓練としてボードゲーム(野球盤)を使用したルール理解指導を実施し,ルール実施,ソーシャルスキルがキックベース場面へ般化するかを検討することを目的とした。その結果,2名中2名のASDのある児童において,野球盤でのルール指導期前よりも後でキックベース場面のルール実施率が高いことが明らかになった。また,ソーシャルスキルについては,2名中1名のASDのある児童にキックベース場面での生起率の上昇が認められた。対照児においては,キックベースの経験回数を重ねることで,キックベースのルール実施率の上昇傾向が認められたが,ソーシャルスキルの生起率については変動がなかった。考察では,野球盤を使用したキックベース指導の利点や,ソーシャルスキルについて指導効果が認められなかった児童に対する指導手続きの課題等について論じられた。
著者
荒木田 美香子 松田 有子 青木 恵美子 竹中 香名子 山下 留理子 六路 恵子 山崎 衣津子 町田 恵子 船川 由香
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.881-891, 2020-12-15 (Released:2020-12-31)
参考文献数
18

目的 全国健康保険協会(協会けんぽ)は保健師の保健指導能力の向上のための研修を各支部で実施している。そこで,協会けんぽの本部保健師と研究者らが都道府県支部のリーダー的保健師等を対象に,各支部でのロールプレイを活用した研修の企画とファシリテーション技術の獲得に向けた研修を実施した。本報告はその研修の効果を検討することを目的とした。方法 研修はインストラクショナルデザインを参考に構成し,対象者の分析,研修プログラムの開発,実施,評価を行った。研修の目標は,①ロールプレイの振り返りにおけるファシリテーションとファシリテーターの役割を理解する,②ファシリテーションの技法を理解する,③振り返りにおいてファシリテーターを行う自信ができる,④ファシリテーションの技法を用いた振り返りを行うことができるとした。研修の評価はKirkpatrick Modelに基づき,研修への反応,学習,行動の観点で質問紙による評価を行った。評価は研修開始前,研修直後,研修3か月後の3回実施した。研修は2016年8月に約4.5時間の1日研修を実施した。研修スタッフは3人であった。活動内容 研修の参加者は79人であった。知識・自信(0~10点)は,研修前の平均点は2.6~3.6であったが,研修直後は6.3~7.9,3か月後は6.0~6.9であった。研修内容への興味(0~10点)を3項目で尋ねたところ,平均点は8.1~8.6と高い評価であった。また,研修会終了後3か月間でロールプレイ研修会を支部内で開催した者は64.6%であった。ロールプレイのルールの周知やねらいの説明はそれぞれ96.1%,98.0%が実施していた。知識・自信は研修前にファシリテーション研修の受講経験のあった者のほうが,事前および3か月後で得点が高かった。研修3か月後の「ロールプレイにおいて,ファシリテーターの役割にはどのようなものがあるか」という自由記載は「ロールプレイ研修の基本と企画に関する意見」と「振り返りにおける役割に関する意見」に分類された。結論 参加者は本研修会での内容や使用した教材を概ね妥当と評価しており,研修後のファシリテーションの知識や自信が向上した。また,約65%が研修後にロールプレイを活用した研修を実施していた。これまでの学習経験の検討から,ファシリテーション技術の維持向上には繰り返しの研修が必要であることが示唆された。
著者
青木 啓治 Keiji Aoki
雑誌
英米評論 = English Review (ISSN:09170200)
巻号頁・発行日
no.7, pp.25-63, 1993-01-29

The problem of how to interpret the final scene of Shakespeare's The Two Gentleman of Verona has long been discussed but has yet to be convincingly solved. In that scene, Valentine catches his friend Proteus trying to seduce his love Silvia and blames him for his betrayal; but because his friend deeply regrets his crime, Valentine not only forgives him but also, to show his friendship to be true, is willing to surrender his love to him. This attitude of his has been made a focus of criticism; critics think it psychologically unnatural, cruel for Silvia, and absurd because Proteus is a worthless friend. Against such criticism, however, some critics have defended Valentine's behaviour on the ground that it reflects the traditional medieval idea that friendship is above love, which is the central theme of Shakespeare's source. In the tenth story of the Decameron by Giovanni Boccacio, Gisippus renounces all his interests in his betrothed Sophronia and gives her to his great friend Titus, who has passionately loved her; in medieval morality, a true friend should not scruple to do anything to show his friendship. Shakespeare seems to have known Boccacio's story through The Governor by Thomas Elyot; and the book is clearly one of his main sources, for Valentine, Proteus, and Silvia in his play correspond respectively to Gisippus, Titus, and Sophronia; and moreover even Valentine's speech to express his renunciation of Silvia is similar to that of Gisippus to renounce Sophronia. The main plot of the play consists of the story of Proteus and his betrothed Julia, who in the disguise of a page, goes to Milan where he is staying, and serves him, watching over his behavior. Shakespeare derived that story from Diana Enamorada by Jorge de Montemayor, a Portuguese poet, and by creating Valentine, Proteus' great friend, introduced into the play the friendship theme based on that of Gisippus and Titus. The problem, however, is that Proteus' character is portrayed much less favourably than Titus'. In the case of the two friends of The Governor, they are united by so deep a friendship that Titus becomes ill by trying to suppress his passion of love for his friend's fiancee; in contrast to this, Proteus, to win his friend's betrothed Silvia, reveals to the Duke, her father, Valentine's plan to elope with her, and consequently his friend is banished. Many critics, therefore, think it foolish of Valentine to surrender his love to such a worthless friend, and in this behaviour of his, they perceive Shakespeare's satire against the medieval conception of masculine friendship. For example, Hereward T. Price thinks Valentine's 'foolish' character to be consistent in the play, and Clifford Leech, the Arden editor of this play, agreeing to such a critical trend, thinks that Julia's swoon when she hears Valentine's famous speech is a conscious action by her to protest against his absurd attitude. However, is her swoon really a conscious performance? On the contrary, did not Shakespeare intend in it a comical effect like that of Rosalind's swoon in IV. iii of As You Like It? When I consider the problems of this play, what seems strange to me is that there should have been no critics who have noticed the ironical effect of Julia's swoon. When she hears that speech of Valentine's it is psychologically natural that she should feel hopeless and fall down in shock. To the present writer, her swoon is felt to be ironical, because she has often in an aside commented satirically using her advantageous position of disguise. What I think to be the conclusive evidence of her swoon's not being a performance is that, before she falls down, she does not make any satirical comment in an aside as she usually does when she feels something to be absurd. It shows that she swoons from true shock and that Valentine's speech is meant not as a satire against the speaker or against the friendship convention, but as an irony against Julia and Silvia. It may be difficult for some critics to feel the irony against Silvia, for she is the symbol of constancy and also partly represents the author's attitude. But soon after her 'O heaven be judge how I love Valentine,……' in the final scene, when she sees her lover willing to offer her to his friend whom she detests, I cannot imagine that the ironist Shakespeare was not conscious of the irony. 'False, perjured' Proteus is justly punished by a satire, but both Julia and Silvia have so long and severely mocked him that the author, knowing the magic power of love, may have felt it proper as a balance of irony to give the women some shock by Valentine's speech. According to E. K. Chambers's chronology, this play was written in the same season of the same year as Love's Labour's Lost, where female mocks male in love. Therefore, the story of Gisippus giving his love Sophronia to Titus may have been attractive to shakespeare as an irony against women; and in adapting the story of Felismena in Diana Enamorada, he may from the start have had the plan to use Gisippus' speech of heroic friendship as a device to make Julia in the disguise swoon and reveal her identity. Anyhow, we must note, it is Valentine's speech which effectively works in ending the complication of the play; and this seems to disprove the theory that, in the speech of friendship, the author intends a satire against the speaker and the convention of masculine friendship. Shakespeare appears to be much interested in the ironical effects produced by Julia's disguise. In using such a technique, one of the most comical effects is produced when the character who is in disguise is placed in an embarrassing situation because of that disguise. Is not such an effect aimed at in Julia's swoon? It will have a great influence on the interpretation of Valentine's famous speech and therefore of the whole play, whether Julia's swoon is meant to be a conscious one or not. To examine this, however, it is necessary to study the play more carefully from the viewpoint of comic technique. What I want to stress in this essay is that, unless critics notice the irony of Julia's swoon, it will be difficult to solve the problems of this play.
著者
竹田 宣典 石関 嘉一 青木 茂 入矢 桂史郎
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 = Concrete journal (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.49, no.12, pp.17-22, 2011-12-01
参考文献数
8
被引用文献数
1 3

コンクリートの使用材料として海水や未洗浄の海砂を用いることにより,高い緻密性をもつ"海水練り・海砂コンクリート(人工岩塩層)"を開発した。海水練り・海砂コンクリートは,特殊混和剤の使用により真水を用いた通常のコンクリートに比べて内部組織が緻密になり,水密性が向上し,さらに早期強度のみならず長期強度も増大することが明らかになった。また,真水や陸砂の入手が困難な離島や沿岸地域でのコンクリート工事に適用した場合,材料の地産地消化を図ることができ,建設コストと建設時のCO<sub>2</sub>排出量を削減できることを確認した。本文では,海水練り・海砂コンクリートの性質およびコンクリート構造物への適用に関して検討した結果について述べる。
著者
青木 孝之
出版者
日本菌学会
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.49-67, 2015 (Released:2016-06-15)

Fusarium属の種の分類,種概念の変遷,本属への分子系統学の導入とその発展,現状について,自らの研究例等を紹介することで概説した。Fusarium属の分類は従来,形態等の表現形質に基づいて行われてきたが,培養下を含めた顕微鏡レベルの表現型質は必ずしも安定でなく,その変異のため種の定義や範囲を巡る論争が絶えず,世界的に共通する合理的な分類・同定法の確立は長期に亘って難航した。1990年代から本格的にFusarium属菌の分類研究に導入された遺伝子DNAの塩基配列に基づく分子系統解析は,本属の分類学に多大な影響を及ぼし,本属の種概念を狭く細分して定義する方向へと収斂させた。その一方で,従来の緩い種の定義に隠れた多数の隠蔽種の発見など,既存の種をさらに細かく分割して記載する必要性も生じ,形態等の表現形質の記載方法もより精密かつ詳細になった。培地や照明条件等,そのデータ取得の条件も細かく定めることが求められる。種の分割も含めて,新たな種が多数記載される一方で,種を定義する上での表現形質の限界も伺われるようになり,分子系統学により識別される種(分子系統種)と表現形質で定義される種(形態種)の乖離も認められる。客観性の高い新種等の記載方法として,分子系統学的な違いに対応する表現形質を用いて記載等が行われる流れにあるが,種を定義するための分子系統データを直接的に記述し,また,命名規約にも準拠する手法の確立が望まれる。
著者
関口 康宣 森 茂久 青木 和利 樋口 敬和 西田 淳二
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.461-466, 2007 (Released:2007-12-31)
参考文献数
13

患者は69歳の男性.1994年5月に右手関節痛が出現し関節リウマチ(以下RA)と診断され,金チオリンゴ酸ナトリウム(以下GST)が投与され関節痛は軽快した.2003年1月より多発関節痛が増悪したため,同年8月埼玉社会保険病院リウマチ膠原病内科受診となった.GSTを中止し,サラゾスルファピリジン(以下SASP)へ変更し,多発関節痛は軽快した.2005年3月より発熱,汎血球減少,肝機能障害が出現したため同科入院となった.SASPによる薬剤性の造血および肝機能障害を疑い,入院後はSASPを中止しプレドニゾロン(以下PSL)10mgへ変更した.その後も症状が継続するため骨髄検査を施行し,急性リンパ性白血病(以下ALL)(PreB, L2)と診断した.4月8日自治医科大学付属大宮医療センターへ転院となり,JALSG-ALL202-Oのプロトコールによる寛解導入療法を開始したが,嚥下困難,胆道系酵素の上昇を認めたため途中で中止した.その後完全寛解(以下CR)を確認したものの誤嚥性肺炎を度々繰り返し,胃癌の併発,経口摂取不能など全身状態不良のため化学療法の継続は不可能と判断し,対症療法のみ行った.9月28日埼玉社会保険病院リウマチ膠原病内科へ再転院となった.ALLはCRで,無治療にてRAの活動性も認めなかったが,肺炎のため2006年8月1日死亡した.
著者
瀬渡 賢 青木 篤人 田代 真一 田中 学
出版者
一般社団法人 スマートプロセス学会 (旧高温学会)
雑誌
スマートプロセス学会誌 (ISSN:2186702X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.28-32, 2017
被引用文献数
4

In order to perform stable pure argon MIG welding, duplex current feeding MIG welding has been developed. In the previous experimental study, higher droplet temperature and deeper weld penetration were obtained in the duplex current feeding MIG welding compared with those of the conventional MIG welding. However, the similar effects are considered to be realized also by the conventional MIG welding with short wire extension through increase in welding current. In this paper, basic characteristics of the duplex current feeding MIG welding were compared with those of the conventional MIG welding with the short wire extension. Consequently, it was found that the duplex current feeding MIG welding achieved the deeper weld penetration without an undercut unlike in the case of the conventional MIG welding with the short wire extension.