- 著者
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高橋 弘幸
- 出版者
- 社団法人日本産科婦人科学会
- 雑誌
- 日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
- 巻号頁・発行日
- vol.42, no.5, pp.443-449, 1990-05-01
- 被引用文献数
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胎動と心拍数の関係を客観的に評価するため, 時差相互相関係数を用いて検討した. 超音波ドプラ胎動心拍数計で得られた胎動信号と心拍数信号をパーソナルコンピュータでフロッピーディスクに収録後, 再生して各5分区間ごとに心拍数と胎動信号スパイクの3点移動平均との時差相互相関係数を算出し, 最大相関係数値とその遅延時間を求めた. 対象は妊娠14〜41週の正常妊婦68例, 461区間であった. 1)胎動バーストに伴い一過性頻脈が認められる胎児活動期と胎動バーストが見られない胎児安静期の相関係数曲線を検討すると, 前者で胎動信号をプラス数秒遅らせた時点に相関係数の有意なピークを認めるのに対し, 後者ではピークは不明で, 係数の絶対値は小さかった. 以上より, 胎動が起きてから数秒の時間的因果関係で一過性心拍数増加がピークになることが明らかとなった. そこで妊娠32週以上の症例で一過性頻脈の有無と最大相関係数値およびその遅延時間を検討した. 一過性頻脈の認められない5分区間と1個以上の一過性頻脈が見られた5分区間のそれぞれの平均最大関係数値は0.141±0.097(mean±SD, 以下略)と0.275±0.135, 平均遅延時間は13.1±8.6秒と7.6±5.7秒で, どちらも有意差を認めた. 一過性頻脈が1〜3個以上の場合, 一過性頻脈の数による相関係数値および遅延時間の差は認められなかった. 2)1回の検査について全区間中で最高となった最大相関係数値とその遅延時間を妊娠週数別に検討すると, 週数の進行により相関係数値は有意に増大し, 遅延時間は逆に短縮した. 3)典型的な胎児呼吸様運動としやつくり様運動が記録されている5分区間の相関係数曲線のピークは不明で, 係数はどちらの絶対値も小さかった. 超音波電子スキャンで確認した胎児吸啜様運動は, 周期性をもった胎動で, 遅延時間がプラス3秒の時点で相関係数のピークを記録し, 上記と同様の時間的遅れをもった同期性が認められた.