- 著者
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高橋 真弓
- 出版者
- 日本鱗翅学会
- 雑誌
- 蝶と蛾 (ISSN:00240974)
- 巻号頁・発行日
- vol.21, no.1-2, pp.17-37, 1970-04-30 (Released:2017-08-10)
- 被引用文献数
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1.キマダラヒカゲNeope goschkevitschii (MENETRIES,1855)の中には,"平地型"と"山地型"とが知られているが,両者は,たがいに別種としてあつかわれるべきであり,前者をサトキマダラヒカゲ,後者をヤマキマダラヒカゲとよぶことにしたい.学名については,さらに慎重な検討が必要である.2.両種とも,日本列島に広く分布し,サトキマダラヒカゲは北海道中部から九州南部にいたる地域の平地および山地に,ヤマキマダラヒカゲはサハリンから九州南方の屋久島にいたる地域の,おもに山岳地帯に分布している.3.両種の成虫の差異は,翅形,縁毛の分岐数,および斑紋などにあらわれるが,たがいにきわめて近似であるために,同定のさいには,多くの特徴から総合的に判断する必要がある.これらの特徴は,山地種指数I(♀♂に共通)および山地種指数II(♂のみ)によって,かなりよくあらわすことができる.裏面の黒化の状態を黒化指数で示すと,一般にヤマキマダラヒカゲでは黒化がすすみ,また両種とも春型では夏型よりも黒化する傾向がみられる.黒化指数は,山地種指数にくらべて環境の影響をうけやすい.4.幼虫はおもに5令,一部は6令に達してから蛹化するが,各令期において両種の差がみとめられ,ことに2令幼虫においていちじるしい.両種の差は,形態のみでなく,習性にもみとめられる.5.両種とも落葉中で蛹化し,懸垂器によって尾端を枯葉に付着させる.蛹の形態には,両種間に大きな差はみられない.6.両種とも低地では年2回,高地では年1回の発生となるが,ヤマキマダラヒカゲでは,年2回発生の上限(標高)が高くなる傾向がある.サトキマダラヒカゲは,各種のタケ・ササ類の群落に発生するが,ヤマキマダラヒカゲの発生地はササ属Sasaの群落に限られる.成虫の習性にも,両種のちがいがみとめられる.